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障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 要望書(2)
(1) (2) ※2ページに分割して掲載しています。
要望書
地域移行・地域生活に関する要求項目
コロナ禍によって入所施設や精神科病院では、外部との接触を遮断せざる得ない状況が続き、外出もできない閉鎖的な環境となっています。地域からのアプローチもほとんどできなくなり、今の状況が長引けば地域移行はストップしたままとなります。府はコロナ禍においても実施可能な地域移行の進め方を早急に検討し、具体的に示していかなければなりません。また、今年度からの報酬改定では地域移行支援サービス費が3ランクに拡大されましたが、一番高い類型1は「前年度3人以上の地域移行実績がある」等、非常に高いハードルが設けられました。特に長期入所・入院の状態では地域生活のイメージを持つことすら難しい状況にあることから、まずは地域で暮らしたいと思えるアプローチが非常に重要ですが、全く報酬に反映されないままです。
入所施設・精神科病院からの地域移行は、府の「障がい者計画」ではずっと最重点施策とされていますが、府はこの間「地域移行の実施主体は市町村」としてほとんど取り組んできませんでした。一昨年度「基盤整備促進ワーキング」において「施設入所者の地域移行推進に関する提言」が発出されましたが、「入所施設の今後のあり方」と併せ、具体的な推進方策と仕組みの検討が求められます。
また、地域では8050問題など緊急ケース、困難ケース、虐待事案への対応が増えており、相談支援体制の強化と併せて、地域生活支援拠点機能の確立を急がなければなりません。今回の報酬改定でも計画相談の報酬はさほど増額されず、府では計画相談の対象者、重度障害者の利用も多いことから、この間バーンアウト等により撤退する事業所が後を絶たず厳しい状況が続いています。地域の相談支援でも地域移行においても、相談支援体制の強化と併せて行動障害者、重度障害者の受け皿を増やしていくことが喫緊の課題となっています。国が推進する「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の検討と併せ、関係機関がしっかりと連携した仕組み、地域基盤を作らなければなりません。なお、就労支援B型の成果主義に基づく平均工賃月額体系は、日々体調変化のある精神障害者には厳しく、今回の改定で一律報酬体系も設けられたものの利用しづらく、更なる見直しが必要です。
「大阪府全体の底上げ」をめざし重度障害者の受け皿を増やすために、各障害に対応した事業者研修の充実と併せ、ピアサポート研修やスーパーバイザー派遣の実施など、府が先頭に立って市町村を牽引していくことが必要です。福祉と各部局・事業者・地域住民が連携することにより構築される強固な地域基盤は、昨今急増する災害対策においても全ての人に必ず役立つものと考えます。
以上の認識に立ち、以下要求します。
- 地域移行の取り組みに関する国への要望
- 地域移行支援サービス費について、重度障害者の地域移行での労力やスキルに見合った報酬の増額、体験加算15日制限の撤廃、施設・病院までの交通費保障を求めること。
- 地域移行を進めるためには、地域移行支援の契約前の「前段階支援」やコーディネートが不可欠であることから、明確な報酬や加算を設けるよう強く働きかけること。特に重度障害者の地域の受け皿を増やすために、グループホームの地域移行特別加算の対象者や適用年数を拡大すること。
- 地域移行支援には体験外出・体験宿泊も不可欠であるため、移動支援の利用を求めること。
- 大阪府での地域移行取り組みの推進、地域基盤づくりに向けて
- (1) 「第5次障がい者計画」でも示されているように、何十年もの長期入所の状態を解消していくために、「長期入所状態に至る前に地域移行できる循環型の仕組み」「入所施設の今後の機能のあり方」を併せて検討する場を設置すること。
- (2) 地域移行の推進に向けて、府基盤整備促進ワーキングを再開し、以下の具体策を打ち出すこと。
- コロナ禍においても地域移行取り組みが継続できるよう、オンラインも活用した施設や病院へのアプローチの仕組み作り、感染防止に十分配慮した体験外出や体験宿泊の進め方を検討すること。
- 府や圏域ごとに地域移行コーディネーターを配置し、定期的に施設を訪問・アプローチする仕組みや、市域をまたがった地域移行希望者を確実に出身市につなぐ仕組みを府で検討すること。
- 府で地域移行支援契約前の「前段階支援」への補助制度を設け、市町村にも実施を促すとともに事業推進のためのバックアップを行うこと。また、体験外出・体験宿泊での移動支援の利用を積極的に認めるよう市町村に働きかけること。
- 施設職員、入所者の家族に対して、障害者の地域生活や体験宿泊の見学、研修を実施すること。
- 「重度化・高齢化に対応した地域の受け皿づくり」に向けて、グループホームや介護等の基盤づくりのための研修拡充、相談支援や受け皿に対するスーパーバイザー派遣の仕組みを作ること。
- (3) 兵庫県・神出病院での職員集団による虐待事件を「対岸の火事」と見ることなく、府の精神科医療機関療養環境協議会をより充実し権利擁護システムを構築するとともに、障害者・高齢者の虐待防止法において精神科病院が通報義務化対象とされるよう、国に対して強く働きかけること。
- (4) 国が進める「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について、地域移行や地域支援の基盤整備に向けて、市各部局・精神科病院・障害福祉事業所の連携、地域で孤立しない仕組み作りを検討するとともに、住まいの確保のために市町村単位で居住支援協議会を開催し、行政、家主、宅建業者、支援団体の関係作りが進むよう府住宅部局と連携して市町村に働きかけること。
- 地域生活支援拠点等の機能について、府として市町村の取り組みの紹介にとどまらず、各市町村での課題を集約して、「大阪での地域生活支援拠点機能のあり方」について検討し、各市町村にも機能拡充に向けて積極的に働きかけること。また緊急・困難ケースへの地域支援力を高めるために、市町村とも共同して緊急対応補助やスーパーバイザー派遣補助を府内全域で実施すること。
強度行動障害者の受け皿確保のための研修事業である府の「重度知的障がい者地域生活支援体制整備事業」について、受託団体、受講対象者を更に拡大して受け皿を増やすとともに、高次脳機能障害や医療的ケアの受け皿拡充に向け、生活支援のための研修・マニュアルを整備すること。 - 相談支援事業について
- (1) 今回の報酬改定で多少の上積みと要件緩和がなされ改善されたものの、まだまだ相談員1人事業所が多い中で要件を満たすことが難しい事業所も少なくないことから、引き続き事業所調査を実施するとともに、国に対して相談員を複数配置できる報酬に増額するよう強く求めること。
- (2) どの市町村も指定事業所数が伸び悩み、未だにセルフプランが多く相談員1人事業所も多い中、多くのケースを抱え込んでバーンアウトするなど悪循環に陥っており、事業撤退の連鎖も懸念される。この状況を打開するには新規事業所や相談員の確保が急務であり、市独自で新規開設補助を設けて基盤拡充を図っている所が4市に増えている。どの市町村でも基盤を拡充していくために、府で実態把握の上、全市町村に制度紹介・啓発を行うとともに、市町村任せにするのではなく、府で補助制度を実施するなど基盤拡充の方策を早急に検討すること。
- 今年度から導入されたピアサポート加算について、多職種との協働により地域移行や相談支援、意思決定支援等でピアサポートが有効に活用されるよう、実施状況を集約しながら、府として市町村・各障害団体とも連携し、来年度から受講枠を十分確保してピアサポート養成講座・フォローアップ講座を実施すること。
- 防災対策について、近年の猛烈な台風・豪雨災害の発生に備え、車いす利用者等が直ちに上階に垂直避難できるよう、学校校舎、ホテル、府市有施設、物販店等、多様な避難場所を市町村・各業界とも連携して十分確保し、水害時の事前避難や緊急避難で利用できるようにしておくこと。
また学校校舎等の上階も実際に利用可能としておくために、車いすトイレの設置や、行政・福祉事業所・地域住民が連携して事前の現地検証を進めていくこと。 - 日中活動について、就労支援B型の平均工賃月額体系による減算問題から、今年度から一律評価報酬体系が新たに導入されたものの、なかなか実際に利用することができず、問題解決に至っていないことから、引き続き国に対して、障害特性等による少日数・短時間利用者が平均工賃月額体系での算定カウントから除外することや、一律評価報酬体系の柔軟な適用について働きかけること。
権利の実現に関する要求項目
障害者差別解消法・大阪府差別解消条例が施行され6年目となり、今年は大きな動きがありました。まず大阪府差別解消条例が4月に改正され「事業者の合理的配慮」が義務化されました。それに伴い、不当な差別的取り扱いに加え、事業者の合理的配慮の不提供も「あっせん・勧告」の対象となります。
さらに障害者差別解消法は、5月末に国会で改正案が可決されました。府条例と同様、事業者の合理的配慮が義務化されるとともに、差別解消のための支援措置の強化(相談人員の育成・確保、事例等収集・整理)等が定められます。今後、早期に改正法案を施行するために、基本方針の早急な改定が求められます。また府でも法改正に伴い、更なる体制強化・条例改正等を検討する必要があります。
この間コロナの影響もあり、大阪府の差別解消の取り組みや推進体制は、やや立ち止まっている感があります。府内の差別解消協議会未設置の市町村はまだ20程度もあり、昨年から進んでいません。設置されている所でも各事案の概要すら示されず、件数報告だけでとどまっている市もあります。
今回の条例・法改正を機にアフターコロナを見据え、大阪府内全体での差別解消に向けた体制の見直しや、事業者や府民に対して差別のない社会を創るための啓発、各業種ごとで発生しやすい差別をふまえた具体的な合理的配慮の研修・啓発を、より一層進めていかなければなりません。
障害者に対する入居差別は未だ根強く残っており、住宅を借りる際に断られる事例が相次いでいます。障害者に対する明確な差別意識だけでなく、障害者の入居に対して家主が「漠然とした不安」を抱いて拒否する事例も多くあり、また家主の意向を受けて宅建業者や保証業者が入居を拒否する動きも広がっています。また大阪市内では、長くマンションに暮らしてこられたグループホームを、地域住民が追い出そうとして訴え、今年も裁判が続いています。
府としてこのような差別を決して看過することなく、この間発生した差別事例と併せて入居差別を許さない姿勢を毅然と示しながら、差別解消担当と住宅部局が責任を押しつけ合うことなく積極的に連携し、家主や事業者、地域住民に対する啓発媒体の作成を進め、実際の障害者の暮らしぶり、「提供すべき合理的配慮」も併せて具体的に啓発を進めていくことが必要です。障害者等の入居を拒否しないセーフティネット住居等を広げていくためにも、「障害を理由に決して拒否してはならないこと」を、様々な機会を通じて啓発していかなければなりません。
また、府の障害者医療費助成は、中軽度の高齢障害者(約3万6千人)への助成が、3年間の経過措置を経て今年3月末に打ち切られてしまいました。コロナ禍のさなかにありながら助成継続の検討もされないまま、障害者の命を脅かす仕打ちが強行されたことは、決して許されるものではありません。また制度の再構築によって精神障害1級、難病1級にも対象を拡大したと言われていますが、新規利用者は当初の想定人数に比べて一向に増えておらず、再度制度を設計し直す必要があります。
生活保護についても、コロナ禍により企業や店舗等が大きな打撃を受け、大幅に収入が減ったり、失業するケースが続出していることから、影響を受けた障害者が生活を維持できるよう積極的に保護を活用するとともに、障害者の実情をしっかりふまえた柔軟な運用が図られなければなりません。
2019年4月、旧優生保護法の下で行われた強制不妊手術に対する「一時金の支給等に関する法律」が成立しました。全国的に裁判が行われる中、大阪でも知的障害1名・聴覚障害2名の方が係争中であり、昨年11月、大阪地裁では「優生保護法は憲法違反だが、損害賠償の法律を作らなかったこと(救済しなかったこと)は違法ではない」という不当判決が、仙台地裁に続いて出されました。国・自治体による人権侵害を受けた当事者の権利の回復は未だになされていません。
また、大阪府においては全国で5番目に多い619人に対して優生手術が行われたとされているにも関わらず、この2年間の一時金支給の認定件数は21件と非常に低調です。2018年に行われた「医療機関・福祉施設に対する調査」で、「個人記録がある可能性がある」と示された10施設をはじめ手術を行った可能性のある病院・障害児者施設に対して、あらためて再調査を行うなど、被害者の掘り起しを進め、一人でも多く救済されるよう、真摯な取り組みを強く求める次第です。
以上の認識に立ち、以下要求します。
- 府の差別解消条例、差別解消取り組みについて
- (1) 今年4月に事業者の合理的配慮が義務化されたが、差別の未然防止に向け、特に深刻な差別対応事例のある業種に対して、適切な合理的配慮の内容も示した研修・啓発活動を行うこと。また大阪府として府民に対する啓発を進めるとともに、市町村へも啓発活動の強化を指導すること。
- (2) 府内市町村の差別解消支援協議会は、いまだ19市町村が設置検討中であるなど一向に進んでいない。府内障害者団体とも連携し、早期に全市町村で設置されるよう対策を講じること。
各市町村の相談窓口対応において、「まず受け止め、当事者に寄り添った適切な対応」ができているか状況を集約し、課題がある場合は直接市町村に出向くなど機動的な助言・指導を行うこと。 - (3) 府条例施行6年目を迎え、相談支援専門員の入れ替わり等、府の差別解消を担う人材の確保とスキルアップが大きな課題である。障害者の視点・立場に立った相談が進められるよう、研修を強化するとともに、事例検証型の合議体を年間複数回、開催すること。また改正差別解消法の施行に向け、附帯決議の内容も含め、府として体制拡充や更なる条例改正の検討を行うこと。
- 住宅の入居差別について
障害者の入居拒否、グループホームに対する入居拒否や追出し等の差別が相次いでいることから、差別解消と宅建業指導、安心居住担当が連携して、家主・宅建業者・保証業者等に対する啓発チラシやマニュアルを作成し、障害を理由に入居拒否してはならないことのみならず、典型的な差別事例と、どのような合理的配慮を提供すべきかを併せて示す実効性ある研修・啓発を進めること。
また、実際に入居差別が発生した際には、府として調査・事業者指導を行うとともに、家主に対してもセーフティネット住宅等の啓発と併せ、障害者の受け入れを積極的に働きかけること。 - 障害者医療費助成について
今年3月末の経過措置終了に伴い、中軽度の高齢障害者への助成が打ち切られた問題について、その影響調査を直ちに実施し、調査結果を障害者団体に示すとともに、費用負担がかさむことでの受診控えが決して起こらないよう、低所得者等に対する助成を復活させること。
その検討を進めるために、障害者団体、家族団体等が参画した検討の場を設置すること。 - 生活保護について
コロナ禍の影響により減収・失業となった障害者に対しても、積極的に生活保護を適用すること。この間、手持金額による保護の停廃止の他、災害等でのやむを得ない転居でも住宅扶助が減額されたり、みなし2号対象者での「介護扶助と障害サービスの適用関係」規定等により、生活に支障が出るケースが発生している。いずれも障害者の保護利用における課題・実情を十分ふまえ、可能な限り支障をきたすことなく従来通りの生活を保障するよう、各市町村に対してしっかりと周知・啓発を行うこと。 - 強制不妊手術の問題について
優生思想に基づく極めて重大な人権侵害事案であることをふまえ、府としてもその一端を担った事実を重く受け止めること。「一時金法」成立後2年が経過したが、今年5月時点で、大阪府での申請件数はたった24件、認定数は21件に過ぎない。5年の申請期限がある中、積極的な掘り起こしと情報伝達がなければ、本人に対する人権侵害への謝罪と補償の機会が奪われてしまうことから、一時金申請・認定が進まない現実に対して、府としての認識・危機感を示すこと。
さらに一時金の周知について現在どのように進めているか明らかにすること。また単に周知を継続するだけでは、申請件数等は到底増えないことから、不妊手術を実施していたと思われる医療機関・福祉施設、府の所管施設に再調査を実施するとともに、府として取り得る対策を全て示すこと。また、府単独の判断では新たな対策を実施できないと言うなら、その理由を明らかにするとともに、他府県とも急ぎ連携して、国に「再調査の指示」等、新たな対策の実施を強く要求すること。
教育・保育に関する要求項目
長期に渡る新型コロナウイルスの影響は、障害のある児童・生徒の学校生活にも大きな影響を与えています。昨年度は「一斉休校」の影響等で、2021年度に就学するための相談、学校行事への参加の仕方、高校受験に向けての準備などについて、充分な相談等が行われなかった事例もありました。
今年度も引き続き「コロナの状況で、ともに学ぶことを求めるのは本人・家族のわがまま」という声・差別が学校や周囲から出たりすることが決してないよう、府教育庁から市町村教委、学校への指導・助言を適切に行うことが求められます。
特別支援教育が導入されてから10数年が経過しましたが、この間大阪では教育への政治介入の影響もあり、できる・できないの基準で子ども達を分ける方向に進んでいます。その結果障害のある児童・生徒は、徐々に普通学級から支援学級へ、地域の学校から支援学校へと押しやられてきています。今回のコロナ禍でこの流れが変わるよう、「互いに助け合いながら共に学ぶ環境を整えていくこと」を、すべての教職員・児童・生徒の共通認識としていくことが重要です。
知的障害児童・生徒数の将来推計が以前の水準を上回っている等の理由で、「知的障がい支援学校の新設」に向けた予算が計上されています。なぜいつまでも支援学校を増やし続けるのか。「希望者がいるからその希望に応じて増設する」のではなく、分けられることの弊害をふまえ、分けない教育=インクルーシブ教育の推進に向けて、地域の学校で充実した学びができるよう環境を整えるのが府の責務です。府教育庁は昨年度末、市町村の小中学校へ通うための補助制度(市町村教委が通学支援制度を作った場合1/2以内で費用を補助する)を新規に策定しました。一歩前進ではありますが、更に市町村教委へ制度実施を働きかけ、府内全域でともに学ぶ教育が推進される必要があります。
今年に入り、大阪府学校教育審議会において「今後の府立高校のあり方等について」の議論が始ままっています。中学校卒業後の進路が支援学校に集中するのは、高校入学が閉ざされているからです。小中学校でともに学び一般高校への進学を希望しても、入試制度の壁によって支援学校高等部へ行かざるを得ないのは、構造としての差別であり、「ともに学び・育つ」教育を掲げ続けてきた大阪府で解決すべき第一の課題と言えます。学校教育審議会から提言が出された後、希望するすべての生徒が高校へ進むことができるよう、施策を抜本的に改めなければなりません。
昨年「バリアフリー法」が改正され、公立小中学校のバリアフリー整備が基準化されました。文科省から、既存の学校も含め「5年間に緊急かつ集中的に」整備を行うよう通知が出されています。府教育庁として、府立学校のバリアフリー整備を進めるとともに、市町村の小中学校についても整備が進むよう、様々な働きかけを行っていくことが求められます。
その他、障害者差別解消法、府差別解消条例が施行されて6年目を迎えますが、高校・小中学校から、差別的取り扱い・合理的配慮の不提供といった「差別事例」がほとんど報告されない問題、府が先駆的に創設した「医療的ケア体制整備推進事業」が、今年度から国・市町村事業に移管した問題等、インクルーシブ教育を進めていくための、地域の小中学校、高校を取り巻く課題は山積しています。
以上の認識に立ち、以下要求します。
- 就学における本人・保護者の意向尊重、および就学指導について
障害児の就学にあたっては、地域で「ともに学び・ともに育つ」という原則に立ち、本人ならびに保護者の意向を最大限尊重した就学相談を実施することを、府内各市町村教育委員会に徹底するとともに、府政だよりへの掲載など、府民全体に対する啓発について具体的な内容を示すこと。また小学校の就学通知を対象年齢児全員に対し年内に発出するよう、市町村教委に働きかけること。 - 義務教育段階の支援等について
- (1) 大阪府独自の市町村教委に対する通学支援補助は、府内小中学校のインクルーシブ教育を進める制度として評価する。この制度が府内全市町村で活用されるよう、働きかけを強めること。
- (2) 知的障害児童生徒の増加推計に基づく具体案について、「知的障がい支援学校の新設」の撤回・見直しを行うこと。地域の小中学校在籍者を増やすため、通学支援に続く具体的な手立てを示すとともに、高校入学のあり方を再検討し、高校で学ぶ障害生徒の拡大のための方策を示すこと。
- (3) 支援学級の設置は、同じ場でともに学ぶためであることを明確にするとともに、学年が進むにつれて分離が行われていないか検証すること。またコロナ禍の中、安心・安全を理由に保護者の付添い等が、決して実質的に強いられることのないよう、市町村教委を指導すること。
- (4) 国の「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議報告」にもあるように、「障害の社会モデル」を浸透させるための研修を、全教職員対象に行うこと。
- 医療的ケアが必要な児童・生徒について(府内市町村の小中学校について)
- (1) 府内における医療的ケアが必要な児童・生徒が、親の付添いなしで学校教育全ての活動(授業・校外活動・放課後活動等)に参加できているか調査し、「医療的ケア連絡会」等を通じ、府内全市町村で「付添いなしの学校生活」を早期に実現すること。
- (2) 医療的ケアが必要な児童・生徒が在籍する学校で、全職員対象の医療的ケア研修を行うよう市町村教委を指導すること。また緊急時・災害時への備えも含め、看護師以外の医療的ケア実施者を増やすために、教員・支援員等、学校関係者が「府教育庁で実施する第三号研修」に参加できるようにするなど、実施主体の拡充を行うこと。
- インクルーシブ教育を実体化するための、合理的配慮・環境整備について
医療的ケアが必要な生徒の合理的配慮について、今年4月に全府立高校へ文書で通知された。他の障害についても、府内のすべての公立学校で、プール等の特別な授業・校外学習・宿泊を伴う修学旅行等、すべての教育活動において「共に学ぶ教育」が受けられるよう、合理的配慮の好事例を集約し、広く府民全体に示すこと。 - 障害のある生徒の高校問題(入試・入学後)について
- (1) 障害によって、入試で合格点を取るのが困難であっても、高校に入学できるよう自立支援コースの拡充整備を検討すること。また希望するすべての生徒が高校で学べるよう、現在の公立高校の入試制度を改善すること。さらに「定員内不合格者を出さない」原則を貫くよう徹底すること。
- (2) 合理的配慮の不提供は障害者差別であるという認識の下、障害のある生徒の受検時には各種障害による不利益が生じないよう、最大限の配慮を行うこと。特に機器の利用については積極的に認めるようにすること。
- (3) 府立高校入学後、看護師、学習支援員等が必要に応じて配置されるよう予算を拡充すること。特に学習支援員・介助員については、単価を上げるとともに、団体等でも登録できるよう、早急に事務手続きを改善すること。また障害福祉事業者との連携をはかるよう府立高校に指導・助言し、福祉制度の活用による在学中の支援、卒業後の進路選択の可能性を拡げるようにすること。
- バリアフリー法改正による、小中高の整備について
- (1) 府内市町村小中学校のバリアフリー整備計画については、インクルーシブ教育を進めるという視点に加え、府教育庁の雇用率達成という観点からも、全市町村で策定されるよう働きかけを行うこと。また国に対しても整備補助制度等の創設を求めること。
- (2) 府立高校のエレベーター設置は、昨年の回答では95校(約140校中)に留まっている。小中学校では加速化が求められることに鑑み、早期に府立高校全校設置に向けた具体的計画を示すこと。また府立高校のバリアチェックについて、知見のある障害当事者も参加する形で行うこと。
- 大阪府教育庁における、障害者の法定雇用率が未達成であることについて、その理由を示すこと。また雇用率2.4%の早期達成に向け、全府立学校での採用等、抜本的な方策について検討すること。
交通・まちづくりに関する要求項目
2014年に日本が批准した障害者権利条約では、「共生社会(インクルーシブ)の実現」に向けて、障害の有無に関わらず、同じ権利が保障されるための「社会的障壁の除去」「差別の禁止」等が謳われました。今年策定された大阪府の「第5次大阪府障がい者計画」でも、権利条約と同じ基本視点のもと、基本原則として「多様な主体の協働による地域づくり」「合理的配慮によるバリアフリーの充実」等が掲げられています。大阪府差別解消条例も昨年12月に改正され、この間課題とされていた「事業者による合理的配慮の提供」が義務化されたところです。
差別解消法には「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、…必要な環境の整備に努めなければならない」とされています。駅や建物、公園、道路など様々な場において、「ユニバーサルデザインの推進」を着実に進めていくために、府としての「環境整備」の明確な指針が求められています。
無人駅の問題は、この間の新型コロナ禍の影響で更に深刻になっています。社会全般に不要不急の外出の自粛が求められる中、利用客の減少により、明らかに駅員配置が減らされる駅が増えてきており、今後、各事業者が「経営の効率化」をめざしてより一層、駅員の無配置化を進める恐れもあります。また併せて、駅員配置が減ることで、視覚障害者等にとっても駅はこれまで以上に危険な場所となっており、人命を守る措置としてホーム柵の設置は急務です。第5次計画に記されているように、「ホーム柵の設置促進や無人駅への対応の他、…障がい者の安全で安心な地域生活を支えるための環境整備を進める」ために、具体的な対策を打ち出す必要があります。
そもそも、障害者の声を聞くこともなく、駅を含めた「まち」の再開発が増えていることは非常に問題です。国は、障害者参画の協議会により策定するバリアフリー法の「マスタープラン」を、5年の間に全国2割の市町村で策定することを目標としていますが、大阪府の策定数は一向に進んでいません。神戸市では、障害者の意見を聞かずに駅を改修した結果、その後、国の指導によりエレベーターを付け替えることになりました。大阪府でも同様の過ちを犯すことのないよう、これまで以上に積極的に、府内各市町村に対してマスタープラン・基本構想の策定に向けた働きかけを行わなければなりません。
大阪府として「ユニバーサルデザインの推進」を図るには、府福祉のまちづくり条例を、地域課題の発生に併せて逐次改正していくことが必須となります。府まちづくり条例の審議会等の場を活用し、とりわけ災害発生時には避難所となる学校と、2025年の大阪万博で多くの障害者を迎えるホテルの課題については、早急に検討を開始する必要があります。地域の小中学校については、「5年の内に、緊急かつ集中的なバリアフリー化を進めること」が文科省より示されました。学校は児童・教師等関係者だけでなく、地域の避難所として障害者・高齢者等も含め利用できるようにしておかなければなりません。車いすトイレを例に挙げれば、既設のものが現在の府条例の要件に適合するものかどうかも不明であり、エレベーターのある校舎の上階にも設置が必要となります。そのような視点で、障害者が安心して避難所として利用できる学校のバリアフリー基準について見直しを進める必要があり、避難所指定されている学校は新築・既設に関わらず急ぎバリアフリー化するという方針を作成し、急ぎ実態の把握を行い、改善計画を策定すべきです。
また、府営公園のハートフルゲートは5年前の交渉で、撤去も含め出入口の改善を行うことを確認し、社会実験の実施を経て2カ所の公園で一部改善されましたが、このままのペースでは27カ所の府営公園全てが改善されるまでに50年もかかってしまいます。現在の改善内容も、出入口の一部の改善であったり日中のみ開放されたものだけで未だに制限されており、地域の公園も柵により障害者の利用を阻む所は未だに多く、早急に改善計画の策定が求められます。
以上の認識に立ち、以下要求します。
- 駅ホームの安全・平等な移動の確保について
- (1) 府のホーム柵設置補助要綱について、昨年11月の国・バリアフリー法基本方針の改正をふまえる形で改正されたことは評価する。併せて今後の府内設置ケースに十分対応できる予算確保に努め、より一層ホーム柵の設置が進むよう、府から各市町村に対して更に働きかけを強めること。
- (2) ホーム柵設置と同時に実施されている「車両とホームの隙間・段差解消工事」について、国は「段差3センチ・隙間7センチ」を標準としているが、その基準では車いす利用者の一部は単独乗降できない。大阪メトロ・千日前線では既に「段差2センチ・隙間3センチ」としていることからも、少なくとも国の推奨基準である「段差2センチ・隙間5センチ」を大阪の設置基準とし、別途補助事業を設けるなど、設置促進策を検討すること。
- (3) 昨年改正されたバリアフリー法基本方針では、ホーム柵の設置対象駅が1日乗降2000人の駅まで拡大された。今後実施予定も含め府で把握しているホーム柵設置補助要綱を持つ市町村名を明らかにし、未策定の市町村には策定を働きかけること。
- (4) コロナ禍により、時間帯無人を含め駅員を削減する駅は増えており、これまで当たり前に利用できた駅から「降車希望駅は現在無人の為、乗車は1時間後になる」と言われたケースもある。
国への要望はもとより、早急に実態把握を行い、府の第5次障がい者計画にある「障がい者の安全で安心な地域生活を支えるための環境整備」に向け、「利用者の視点に立った無人駅における十分な配慮の働きかけ」の具体方策について、障害当事者参画のもと、課題解決のための検討を開始すること。
- 府まちづくり条例関係
- (1) 大阪府として、バリアフリー施策を推進するために、市町村マスタープラン、基本構想策定、障害者参画による協議会の設置等を促進すること。また、大阪府において、バリアフリー化が計画的に進められるよう、兵庫県のように「福祉のまちづくり条例に基づく基本方針(仮称)」を制定し、年度目標を数値化する等、具体策を講じること。
- (2) 緊急かつ集中的に実施することとされている学校のバリアフリー化が推進されるよう、府条例、ガイドライン等について位置づけを強化するよう検討すること。その際に、既存の学校校舎も含めて推進できるよう、府教育庁とも連携して実態把握や情報公開等の取り組みを進めること。
- (3) ホテルのバリアフリー化は、法令で定められた事項の推進のみならず、観光都市・大阪の発展、万博の開催などに備え、既存建築物も踏まえて、整備の推進、情報提供の推進を図ること。また、その際には、滋賀県で実施された「車いすハート調査隊による宿泊施設・公共交通機関のバリアフリー調査」のように、障害当事者の視点を踏まえた調査事業の実施を検討すること。
- (4) 小規模店舗にかかる建築設計標準の改訂を踏まえ、府条例審議会等によりガイドラインを改正し、その周知を図るとともに、商店街や関係団体とも連携し、既存店舗も含めて改善が進むよう、府としての取り組みを検討すること。
- 府営公園のバリアフリーについて
- (1) 大阪府営公園のバリアフリー化を進め、誰もがいつでも安心して自由に利用できる公園にするために、ハートフルゲートの早急な撤去も含め、具体的な改善計画を作成すること。
- (2) 府営公園のバリアフリー化のための社会実験の検証結果を明らかにするとともに、大阪市等の公園バリアフリー化の状況との比較も行い、具体的な課題について障害当事者と協議を進めながら、社会実験の対象箇所を大幅に増やし、改善を確実に進めていくこと。
- (3) 東京のインクルーシブ公園のように、様々な障害特性に配慮された公園整備事業を参考にしながら、公園全体の在り方の見直しについてモデル実施も含め検討すること。