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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第114号)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立ての対象となった部分公開決定において公開しないこととした部分のうち、別表「公開すべき部分」に掲げる部分を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 本件異議申立てに至る経過

  1. 平成17年2月7日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「社会福祉法人等指導監査資料(社会福祉法人○○○○○ 直近のもの)」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 平成17年3月8日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(2)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を(3)のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)本件請求に対応する行政文書
      • ア 平成15年3月26日付け医福第104-272号社会福祉法人及び社会福祉施設の指導監査の結果について(通知)〔写し〕
      • イ 社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監査結果について(伺い)
      • ウ 指導監査の結果に対する是正又は改善報告について(供覧)
    • (2)公開しないことと決定した部分
      • (1)イの行政文書のうち次の部分
        • ア 社会福祉法人等指導監査結果復命書 施設長を除く法人の出席者の氏名
        • イ 平成14年度法人指導監査調書 表紙を除く
        • ウ 平成14年度施設指導監査調書 表紙を除く
        • エ 評価総括表及び集計表 全部
    • (3)公開しない理由
      • ア 条例第8条第1項第4号に該当する。
        本件行政文書(非公開部分)のうち、法人・施設指導監査調書、評価総括表及び集計表には、具体的な監査の着眼点等が記載されており、府が行う監査の事務に関する情報であって、これらを公にすることにより、監査若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるものである。
      • イ 条例第9条第1号に該当する。
        本件行政文書(非公開部分)には、個人の氏名(施設長を除く。)が記載されており、これらの情報は個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。
  3. 平成17年4月4日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定の取り消しを求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

  1. 条例第8条第1項第4号、第9条第1号に該当しない。
    監査方法が十分でない場合は、正しい監査報告を作成することが出来ない。
    厚生労働省に対して、支援計画を作成していないと施設は説明しているが、福岡県に提出した文書では、作成していることになっている事例がある。
    障害のある本人のプライバシーを守り、生活を豊かにする為の監査をする必要がある。障害者施設を監査する行政の指導、助言、監査能力を向上させる体制が必要とされている。委託に係る事業で事件が発生すれば、大阪府の責任になる場合がある。
  2. 大阪府はこの法人がどのような活動をしているのかを把握して開示決定をしていただきたい。
    この法人は、特定の人に対して実績を公表している。講師になるということについて、了解している。厚生労働省へ提供している情報については開示すべきである。この研修会等の講師の所属している機関の事業は公表を予定されているものと理解すべきである。
  3. どのような活動をしているのかの報告に大阪府の責任として開示していただきたい。自閉症・発達障害支援センター研修で発表したことが「事実である」という資料を提示していただきたい。他の行政機関が公表している内容は公表すべきである。大阪府が不開示にした氏名はすでに多くの行政機関に開示していると考える。

第五 実施機関の主張要旨

1 社会福祉法人及び社会福祉施設の指導監査について

(1)指導監査の法的根拠及び目的

社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監査は、社会福祉法人の指導監査にあっては、社会福祉法第56条第1項、社会福祉施設の指導監査にあっては、同法第70条及び児童福祉法第46条第1項、老人福祉法第18条、身体障害者福祉法第39条、知的障害者福祉法第21条の2、生活保護法第44条第1項、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第50条の2の4の規定に基づき、実施するものであり、関係法令、通知による指導事項について監査を行うとともに、運営全般について積極的に助言・指導を行うことによって適正な法人・施設運営と円滑な社会福祉事業の経営の確保を図ることを目的に実施するものである。

(2)指導監査の指針

指導監査の実施にあたっては、社会福祉法人及び社会福祉施設の適正な運営を確保する観点から、厚生労働省において指導監査事務に関し、各種指導監査指針が示されている。

具体的には、法人指導監査にあっては、「社会福祉法人指導監査要綱」(平成13年7月23日厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長連名通知)により、施設指導監査にあっては、「児童福祉行政指導監査実施要綱」(平成12年4月25日児発第471号)、「老人福祉施設指導監査指針」(平成12年5月12日老発481号)、「障害福祉施設指導監査指針」(平成15年3月28日障発0328016号)「生活保護法保護施設指導監査要綱」(平成15年3月28日社援発0328017号)による。

なお、指導監査指針には、目的や指導監査方法のほか指導監査項目、指導監査事項等が記載されている。

本府においては、これらの指導監査指針に基づき、法人指導監査及び施設指導監査に関し、必要な事項を定めた「大阪府社会福祉法人等指導監査要綱」を策定し、指導監査にあたっている。

なお、法人監査事務については、地方分権一括法の施行に伴い法定受託事務、施設監査事務については、自治事務と整理されている。

(3)本府における指導監査

法人監査は、法人運営及び会計管理の状況を監査内容としており、これに対し、施設監査は、施設運営、職員処遇、利用者支援、栄養給食及び会計管理の状況を監査内容としている。監査の種類は、一般監査と特別監査に分類され、一般監査は、さらに実地監査、集合監査、書面監査に細分類されている。監査の事務は、監査の実施、法人に対する結果の通知、法人の評価の実施、指摘事項についての法人からの改善報告、という流れになっている。

今回、本件決定に当たり非公開とした法人指導監査調書及び施設指導監査調書については、監査時において作成され、社会福祉法人等指導監査結果復命書並びに評価総括表及び集計表については、監査終了後において作成されるものである。

2 本件非公開部分について

(1)「社会福祉法人等指導監査結果復命書」のうち、施設長を除く法人の出席者の氏名について

「社会福祉法人等指導監査結果復命書」は、文字通り、監査結果を復命したものである。

(2)「平成14年度法人指導監査調書」及び「平成14年度施設指導監査調書」の表紙を除く全部並びに「評価総括表」、「法人5段階評価集計表」及び「施設5段階評価集計表」の全部について

法人指導監査調書及び施設指導監査調書(以下「監査調書」という。)は、法人及び施設の監査を効率的に実施するため、また、監査を担当する職員により監査の内容にバラつきが出るようなことを防ぐため、監査項目ごとに具体的な着眼点を定めることを目的としたものであり、チェックシートの形式を採るとともに詳細な内容となっている。また、これらに記入された監査結果をもとに法人を評価することとしている。

評価総括表、法人5段階評価集計表及び施設5段階評価集計表(以下「評価集計表」という。)は、監査結果に基づき法人を評価し、次回の指導監査の手法の選択の判断等に生かすことを目的としたものであり、評価基準や各評価項目ごとの配点、採点基準を明らかにしたものである。法人の評価は、減点方式を採用しており、評価項目ごとに口頭指摘、文書指摘の有無により配点から減点したものを集計し、評価点の配点合計に対する比率をもって、「優良な法人・施設」「良好な法人・施設」「概ね良好な法人・施設」「懸案を抱えている法人・施設(点数によりさらに2分化)」の5段階評価としている。監査調書とともに具体的な監査の着眼点等が記載されている。

なお、監査調書、評価総括表及び評価集計表は、法令等に基づく様式ではなく、大阪府が独自に考案したものである。

3 本件非公開部分が条例第8条第1項第4号及び第9条第1号に該当することについて

(1)条例第8条第1項第4号に該当することについて

行政が行う事務事業に係る情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれのあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすものもある。このような支障を防止するため、これらの情報については、公開しないことができるとするのが、条例第8条第1項第4号の趣旨である。

社会福祉法人において適正な法人運営・施設経営が図られるためには、法人による自主点検はもとより、行政において法人や施設に関するありとあらゆる事項を臨機応変に監査し、不適正な事項が常に発見できる体制を整えることが望ましい。

しかし、毎年度全ての法人に対し(書面監査も含め)監査を実施しなければならないということを与件とすると、法人の数、監査に当たる人員、限られた時間を考慮すれば、監査実施の効率化を図る必要がある。

他方、監査は、その結果をもって、法人を評価することとしていることから、指導監査にあたる職員によって、監査手法に大きなバラつきが出ないようにする必要がある。

監査調書は、これらの要請に応えるため、国が示した指導監査事項や、施設の最低基準をもとに、監査におけるより具体的な着眼点を様式化したものである。

また、評価総括表及び評価集計表は、監査調書に記載された監査結果をもとに評価点を算出できるよう、各項目を対応付けたうえ、当該各項目ごとに配点を行った様式としている。

したがって、監査調書並びに評価総括表及び評価集計表を用いることで、効率的かつ公平な監査や、効率的な法人の評価ができるようにしているものである。

ともにこれらを公にすることで、監査を受ける法人が、府が監査する事項を事前に予測することができるようになり、当該事項にかかる部分について、集中的な対応を行うなどにより監査が形骸化してしまう。

例えば、監査調書を公にした場合、社会福祉法人のうち一部の者が監査の具体的な方法を予測し、不正手口の巧妙化を図るなどにより、所轄庁による正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為の発見を困難にするおそれがあると予想される。

また、監査項目について、監査調書に記載されている具体的な着眼点以外の観点からは監査が行われないと予測し、不適正な法人運営・施設経営を行い、結果として、施設利用者の処遇を低下させたり、不正につながるような不祥事を招くといったことになりかねない。このようなことになれば、監査の目的が達成できなくなってしまう。

よって、監査調書並びにこれらと一体的に機能する評価総括表及び評価集計表を公にすることは、監査の目的を達成できなくなり、又は、監査の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる。

このような理由から、監査調書並びに評価総括表及び評価集計表については、その一部であっても公にすべきではなく、全部を非開示とすべきである。

したがって、法人指導監査調書及び施設指導監査調書並びに評価総括表及び集計表は、条例第8条第1項第4号に該当する。

なお、同種の事例として、国において、税務署が行った「所得税調査事績整理票」及び「個人調査事績チェックリスト」の不開示決定につき、審査請求を受け、情報公開審査会へ諮問した国税庁長官に対し、同審査会から「「所得税調査事績整理票」及び「個人調査事績チェックリスト」につき、全部を不開示とした決定は妥当である」との答申(答申日 平成15年12月1日 平成15年度(行情)答申第414号)を受けている。当該答申における審査会の判断理由として、上記と同内容の理由が示されている。

(2)条例第9条第1号に該当することについて

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨規定している。このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止を定めたのが、条例第9条第1号の趣旨である。

本件非公開部分のうち、「社会福祉法人等指導監査結果復命書」に記載された施設長を除く法人の出席者の氏名については、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。

したがって、「社会福祉法人等指導監査結果復命書」に記載された施設長を除く法人の出席者の氏名は、条例第9条第1号に該当する。

4 結論

以上のとおり、本件決定は条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監査について

実施機関の説明等により、次のとおり認められる。

実施機関では、社会福祉法人及び社会福祉施設の適正な運営と円滑な社会福祉事業の経営の確保を図ることを目的に、社会福祉法第56条及び第70条の規定に基づく指導監査(以下「指導監査」という。)を実施している。

指導監査については、監査の対象(法人又は施設の種類)ごとに、厚生労働省が、監査の目的や指導監査方法、指導監査項目、指導監査事項等を記載した指導監査指針(以下「国指針」という。)を定めており、実施機関では、これらの国指針に基づき、「大阪府社会福祉法人等指導監査要綱」(以下「府要綱」という。)を策定して、指導監査を実施している。

実施機関が行う指導監査には、全ての社会福祉法人等に対して毎年度1回実施する一般監査と必要があると認めるときに特定の社会福祉法人等に対して行う特別監査がある。このうち一般監査の実施方法には、職員が社会福祉法人等の事務所等に赴いて実施する実地指導監査、一定の場所に関係者を招致して実施する集合指導監査、一定の書類を提出させて実施する書面指導監査の3つがあるが、本件請求に係る指導監査は、実地指導監査の方法による一般監査として実施されたものである。

実地指導監査の方法による一般監査においては、複数の監査員が監査調書に必要事項を記録しながら監査を実施しており、その結果は、監査当日に指導監査結果メモとして監査員から交付するとともに、後日、文書により通知している。監査の結果判明した問題点等は、監査当日に指導監査メモに記載して口頭で指導する(口頭指導)とともに、重要な事項を監査結果通知書に記載し(文書指摘)、是正結果又は改善計画の報告を求めている(その後の対応によっては、改善命令を発することも可能である。)。

また、実施機関においては、指導監査の結果に基づいて、社会福祉法人等の運営状況の評価を行っており、その結果は、次年度以降の当該社会福祉法人等に対する一般監査の実施方法に反映されている。

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

本件行政文書のうち、本件決定において非公開とされた部分は、「社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監査結果について(伺い)」に添付されている「社会福祉法人等指導監査結果復命書」の一部、「平成14年度法人指導監査調書」及び「平成14年度施設指導監査調書」の大半並びに「評価総括表」、「法人5段階評価集計表」及び「施設5段階評価集計表」の全部である。

実施機関は、「社会福祉法人等指導監査結果復命書」の非公開部分については、条例第9条第1号に該当し、「平成14年度法人指導監査調書」及び「平成14年度施設指導監査調書」並びに「評価総括表」、「法人5段階評価集計表」及び「施設5段階評価集計表」の非公開部分については、条例第8条第1項第4号に該当すると主張するので、以下検討する。

また、「平成14年度法人指導監査調書」及び「平成14年度施設指導監査調書」並びに「評価総括表」、「法人5段階評価集計表」及び「施設5段階評価集計表」の非公開部分のうち、手書きで記入された部分には、本件請求に係る指導監査の対象となった社会福祉法人(以下「本件監査対象法人」という。)及びその関係者の情報が記録されていることから、条例第8条第1項第1号又は第9条第1号に該当するか否かについても併せて検討する。

(1)「社会福祉法人等指導監査結果復命書」の非公開部分についての判断

ア 本項の行政文書について

「社会福祉法人等指導監査結果復命書」は、本件請求に係る指導監査の終了後に、監査員が、上司への復命のため作成した文書であり、監査を実施した法人名、施設種別、施設名、監査年月日、監査実施場所、監査の方法、法人(施設)出席者、法人指導課監査員、事業課監査員及び市町村等立会者が記載されている。本件決定において非公開とされた部分は、法人(施設)出席者のうち、施設長を除く法人職員の氏名が記載された部分である。

イ 条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条においては、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨を規定している。

本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。

同号は、

  • (ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • (イ)特定の個人が識別され得るもののうち、
  • (ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記載されている行政文書を公開してはならない旨定めている。

ウ 条例第9条第1号該当性について

本項の非公開部分には、本件監査対象法人の職員の氏名が記載されており、当該情報を公にすると、特定の個人が本件監査対象法人に勤務していることが明らかとなる。このような情報は、個人の職業及び所属団体に関する情報であって、氏名により特定の個人が識別されるから、イ(ア)及び(イ)の要件に該当することは明らかである。

また、一般に、民間社会福祉施設の職員の氏名については、施設長を除き、公表する慣行はなく、本項の非公開部分に氏名が記録されている本件監査対象法人の職員について特に氏名が公表されている事実も確認されなかったから、イ(ウ)の要件にも該当する。

以上のことから、本項の非公開部分に記載されている情報については、条例第9条第1号に該当し、公開してはならない情報であると認められる。

(2)「平成14年度法人指導監査調書」及び「平成14年度施設指導監査調書」並びに「評価総括表」、「法人5段階評価集計表」及び「施設5段階評価集計表」の非公開部分についての判断

ア 本項の行政文書について

本項の行政文書は、本件請求に係る指導監査の際に、監査員が作成した調書及びその結果をもとに行った本件監査対象法人及びその所管する施設の運営の評価に関する文書であり、その内容及び本件決定において非公開とされた部分は、(ア)~(ウ)のとおりである。

(ア)「平成14年度法人指導監査調書」及び「平成14年度施設指導監査調書」

これらの監査調書は、国指針に示されている指導監査事項を基に、実施機関が独自に作成した様式によるチェックシート形式の監査メモであり、表紙には、「法人名(施設種別・施設名)」、「指導監査年月日」、「前回監査(年月日、実施方法)」、「監査員」を記入する欄が設けられている。

また、調書の本体は、「監査項目」(大項目、小項目)、「監査内容」(チェック項目)のほか、「備考」欄に参考とすべき関係規定の摘記等が印刷された表形式の様式になっており、各チェック項目に係る本件監査対象法人の状況とその適否の区分等が一部欄外を含めて手書きで記入されている。

実施機関は、本件決定において、これらの監査調書の表紙部分を除く全部を非公開としている。

(イ)「法人5段階評価集計表」及び「施設5段階評価集計表」

これらの評価集計表は、各監査調書の様式に印刷されている監査項目に対応した評価項目(大項目、小項目)とその配点及び採点基準が印刷されている横に、前回及び今回の監査結果における適否並びに今回の評価点等を記入する欄が設けられた表形式の様式になっており、本件監査対象法人及びその経営する施設の運営に関して評価項目ごとの状況が手書きで記入されている。

実施機関は、本件決定において、これら評価集計表の全部を非公開としている。

(ウ)「評価総括表」

「評価総括表」は、各評価集計表による評価結果を1枚にまとめたもので、監査の対象(法人・施設)別に監査項目(大項目)ごとの評価結果を記載した「個別評価」、個別評価の結果を集計して行った総合評価の結果を記載した「総合評価」及びこれら評価を行う際の基準があらかじめ印刷されている「評価基準」の3つの表からなっている。

実施機関は、本件決定において、その全部を非公開としている。

イ 条例第8条第1項第4号について

行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれのあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の実施後であっても、公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。

このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • (ア)府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
  • (イ)公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの

が記録された行政文書を公開しないことができる旨定めている。

ウ 条例第8条第1項第4号該当性について

本項の行政文書は、いずれも実施機関が行った指導監査の際に作成された文書であり、本項の非公開部分に記録されている情報が、イ(ア)の要件に該当することは明らかである。

次に、本項の非公開部分に記録されている情報がイ(イ)の要件に該当するか否かについて検討する。本件請求に係る指導監査そのものは、監査結果の通知やこれに対する是正又は改善の報告を含めて既に手続きが終結しており、本項の非公開部分を公開することにより、当該指導監査の目的を達成できなくなり、又は、その公正かつ適切な実施に著しい支障を及ぼすことはあり得ない。そこで、本項の非公開部分を公開することにより、今後とも、実施機関が行う同種の指導監査の目的を達成できなくなり、又は、その公正かつ適切な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるか否かについて、検討する。

まず、本項の非公開部分のうち、監査調書の様式にあらかじめ印刷されている部分に記録されている情報、評価集計表の様式にあらかじめ印刷されている部分のうち、配点及び採点基準中の点数以外の情報、評価総括表の様式にあらかじめ印刷されている部分のうち、個別評価の表及び総合評価の表に記録されている情報について、それぞれ検討する。

これらの情報は、実施機関の説明及び審査会において本項の非公開部分を見分した結果によれば、いずれも、国指針及び府要綱の内容から容易に推測し得る範囲の監査項目、評価項目、監査内容としてのチェック項目及び参考とすべき関係規定の摘記等、あるいは、単に当該部分に記載されている項目を示すに過ぎない情報などであることが認められる。

国指針は厚生労働省のホームページに掲載されるなど広く公表されており、府要綱も、条例の規定に照らし全部公開されるべきものと認められる。

さらに、このような監査項目や評価項目、チェック項目等については、指導監査を受ける社会福祉法人等においても、指導監査を受けることを通じて、その大方の内容を知るところとなるものであって、むしろ、これらを広く周知することによって、法人の自主努力による法人運営及び施設運営の適正確保に資するところがあるとも考えられる。

以上のことからすると、監査調書の様式にあらかじめ印刷されている部分に記録されている情報、評価集計表の様式にあらかじめ印刷されている部分のうち配点及び採点基準中の点数以外の情報、評価総括表の様式にあらかじめ印刷されている部分のうち個別評価の表及び総合評価の表に記録されている情報については、いずれも公開したとしても、そのこと自体によって、今後とも実施機関が行う同種の指導監査において、監査が形骸化したり、不正手口の巧妙化を招くなどにより、指導監査の目的を達成できなくなったり、その公正かつ適切な実施に著しい支障があるとは認められず、イ(イ)の要件には該当しない。

次に、評価総括表の様式にあらかじめ印刷されている部分のうち、評価基準の部分に記録されている情報は、実施機関が、配点合計に対する総得点の割合のランクによって次回の指導監査の実施方法を決めるための基準である。これらの情報は、実施機関が、社会福祉法人等に対して適切な指導監査を行っているか否かを府民に明らかにするという意味で、公開することの公益性が高い一方、指導監査を受けた社会福祉法人等においては、これらの情報のみによっては、次回の指導監査の実施方法を正確に推測することができないものと認められ、イ(イ)の要件に該当しない。

また、監査調書に手書きで記入されている部分に記録されている情報は、本件監査対象法人の各チェック項目に係る状況を監査員が具体的に記録したものである。その内容は、多岐にわたっており、本件監査対象法人及びその関係者に関する情報が記録されていることから、別途、条例第8条第1項第1号又は第9条第1号に該当する情報が含まれているか否かを検討する必要があるものの、実施機関が行う指導監査が、社会福祉法等の法律の根拠規定に基づいて実施されるものであることからすると、これらの情報を公にすることにより、今後とも実施機関が行う同種の指導監査の目的を達成できなくなり、又は、その公正かつ適切な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、イ(イ)の要件には該当しない。

一方、評価集計表の様式に印刷されている配点及び採点基準の点数並びに評価集計表及び評価総括表に手書きで記入されている情報については、次年度以降の監査の実施方法を決める評価の具体的な基準及び当該基準の適用に必要な本件監査対象法人の具体的情報並びに評価結果そのものである。このような情報を公にすることとすると、今後、指導監査の対象となる社会福祉法人等が次回の監査の実施方法をあらかじめ知り得ることとなり、不適正な法人運営や施設運営を誘発するなど、実施機関が行う同種の指導監査に関する事務の目的を達成することができなくなると認められ、イ(イ)の要件に該当する。

以上により、本項の非公開部分のうち、評価集計表の様式に印刷されている配点及び採点基準の点数並びに評価集計表及び評価総括表に手書きで記入されている情報は、条例第8条第1項第4号に該当するが、その他の情報は、条例第8条第1項第4号に該当しないと認められる。

エ 条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • (ア)法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
  • (イ)公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報(以下「例外公開情報」という。)を除く。)

が記録された行政文書を公開しないことができる旨定めている。

また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果になると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や不当な社会的評価の低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきである。

オ 条例第8条第1項第1号該当性について

本項の非公開部分のうち本件監査対象法人に関する情報が手書きで記入されている部分について、条例第8条第1項第1号に該当する情報が記録されているか否かを検討する。

これらの非公開部分には、本件監査対象法人の各チェック項目又は評価項目に係る状況が具体的に記録されており、エ(ア)の要件に該当することは明らかである。

そこで、これらの非公開部分に記録された情報がエ(イ)の要件に該当するか否かについて、本件行政文書を見分し、検討したところ、「平成14年度施設指導監査調書」18頁の1(1)bエの表中の法人名及び金額については、本件監査対象法人の取引先である法人の名称及び当該法人との契約金額であり、このような情報は、通常、当事者間の取引上の秘密として取り扱われるものであることから、これらの情報については、たとえ社会福祉法人及びその経営する施設の公益性を考慮しても、公にすることにより、本件監査対象法人及びその取引先である法人の競争上の地位その他正当な利益を害するものであり、エ(イ)の要件に該当すると認められ、条例第8条第1項第1号に該当するが、その他の情報は、同号に該当するとは認められない。

カ 条例第9条第1号該当性について

条例第9条第1号の趣旨については、(1)イで述べたとおりである。

本項の非公開部分のうち本件監査対象法人の関係者の情報が手書きで記入されている部分について、条例第9条第1号に該当する情報が記録されているか否かを検討する。

本項の非公開部分のうち各監査調書のチェック項目の中には、本件監査対象法人の関係者に関する項目が含まれていることから、これらの項目に手書きで記入されている情報について、本件行政文書を見分し、検討したところ、「平成14年度法人指導監査調書」11頁の1(2)aの表の2行目3列目の欄の人名、同17頁の5(2)aイの表の2行目1列目の欄の人名等、「平成14年度施設指導監査調書」1頁の欄外の人名、同3頁の2(2)eの表の3行目1列目の欄及び同表欄外の人名、同9頁の欄外の人名、同11頁の欄外の人名、同18頁の欄外の人名並びに同23頁の1(2)aの表の3行目3列目の欄の人名については、公にすることにより特定個人が本件監査対象法人に勤務していることや資金を貸し付けていることが明らかになる情報であって、(1)イ(ア)~(ウ)の要件の全てに該当すると認められ、条例第9条第1号に該当するが、その他の情報は、同号に該当するとは認められない。

以上ア~カで述べたところにより、本項の非公開部分のうち、評価集計表の様式に印刷されている配点及び採点基準の点数並びに評価集計表及び評価総括表に手書きで記入されている情報は、条例第8条第1項第4号に、「平成14年度施設指導監査調書」18頁の1(1)bエの表中の法人名及び金額は、条例第8条第1項第1号に、それぞれ該当して公開しないことができ、また、「平成14年度法人指導監査調書」11頁の1(2)aの表の2行目3列目の欄の人名、同17頁の5(2)aイの表の2行目1列目の欄の人名等、「平成14年度施設指導監査調書」1頁の欄外の人名、同3頁の2(2)eの表の3行目1列目の欄及び同表欄外の人名、同9頁の欄外の人名、同11頁の欄外の人名、同18頁の欄外の人名並びに同23頁の1(2)aの表の3行目3列目の欄の人名については、条例第9条第1号に該当し公開してはならないが、その他の情報は、公開すべきである。

4 異議申立人の主張について

異議申立人は、「大阪府はこの法人がどのような活動をしているのかを把握して開示決定をしていただきたい。この法人は、特定の人に対して実績を公表している。講師になるということについて、了解している。厚生労働省へ提供している情報については開示すべきである。この研修会等の講師の所属している機関の事業は公表を予定されているものと理解すべきである。」と主張しているが、条例に基づく行政文書の公開は、何人に対しても同様に公開する制度であり、特定の関係者や関係官庁に情報提供を行っているからといって、当該情報を公開する根拠とはなり得ないから、異議申立人の主張は当を得ないものである。なお、異議申立人が研修会等の講師をしている旨指摘する法人職員の氏名は、本件行政文書のいずれにも記録されていない。

また、異議申立人は、「どのような活動をしているのかの報告を大阪府の責任として開示していただきたい。自閉症・発達障害支援センター研修で発表したことが『事実である』という資料を提示していただきたい。他の行政機関が公表している内容は公表すべきである。大阪府が不開示にした氏名はすでに多くの行政機関に開示していると考える。」と主張しているが、条例に基づく行政文書の公開は、実施機関が現に保有している行政文書について条例第8条及び第9条に規定する非公開情報を除いて公開する制度であって、特定の事項を証明する資料の開示を求めることはできない。また、行政文書公開制度は、府独自の条例に基づいて実施しているものであり、他の行政機関が同様の情報を公開していたとしても、そのことをもって直ちに府においても公開することにはならないものである。

5 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立ては、本件決定において非公開とされた部分のうち別表「公開すべき部分」の公開を求める部分について理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

別表

行政文書の名称

公開すべき部分

平成14年度法人指導監査調書

11頁の1(2)aの表の2行目3列目の欄の人名及び17頁の5(2)aイの表の2行目1列目の欄の人名等を除く部分

平成14年度施設指導監査調書

1頁の欄外の人名、3頁の2(2)eの表の3行目1列目の欄及び同表欄外の人名、9頁の欄外の人名、11頁の欄外の人名、18頁の1(1)bエの表中の法人名及び金額、18頁の欄外の人名並びに23頁の1(2)aの表の3行目3列目の欄の人名を除く部分

評価総括表

手書きで記入されている情報を除く部分

法人5段階評価集計表
施設5段階評価集計表

配点、採点基準の点数及び手書きで記入されている情報を除く部分

※本文中(別表含む)において、読み上げソフトに対応するため、「丸1(数字の1を丸で囲んだもの。以下同様。)」を「a」、「丸2」を「b」、「丸5」を「e」とそれぞれ置き換えている。

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