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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第110号)

第一 審査会の結論

実施機関の各決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成16年12月14日から同年12月24日にかけて、異議申立人らは、それぞれ、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「A地区市街地再開発組合設立の同意書」についての行政文書公開請求(以下「本件各請求」という。)を行った。
  2. 平成17年1月12日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件各請求に対応する行政文書として、A地区市街地再開発組合設立に係る同意書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、個人の同意書の全部並びに法人及び団体の同意書のうち代表者の印影(大阪府、B市及びB市土地開発公社を除く。)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件各決定」という。)をそれぞれ行い、公開しないことと決定した部分についての公開しない理由を次のとおり付して異議申立人らに通知した。
    • (公開しない理由)
      • 条例第9条第1号に該当する
        本件行政文書(非公開部分)には、個人が組合の設立に関し同意した事実が明らかになる情報が記載されており、これらの情報は個人の思想・信条等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。
      • 条例第8条第1項第1号に該当する
        本件行政文書(非公開部分)には、法人等の代表者の印影に関する情報が記載されており、これらを公開すると、法人の取引の安全を害するなど、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものである。
  3. 平成17年3月14日、異議申立人らはそれぞれ、本件各決定を不服として行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対し、異議申立て(以下「本件各異議申立て」という。)を行った。
  4. 平成17年3月28日、実施機関は、行政不服審査法第48条において準用する第36条の規定により、本件各異議申立てを併合審理することとし、その旨を異議申立人らに通知した。

第三 異議申立ての趣旨

本件各異議申立てはいずれも、本件各決定を取り消し、個人の同意書のうち印影を除く部分(以下「本件係争部分」という。)の公開を求めるものである。

第四 異議申立人らの主張要旨

異議申立人らの主張は概ね次のとおりである。

組合設立の同意書の確認を組合員の権利者の一員として知る権利を有するものと思料する。

同意書を閲覧する組合を構成する組合員が誰一人として確認及び閲覧していない現状では誰が為の組合になるのか。又、同意書の保護ばかりでなく他の組合員となる我々の生活権、思想信条等が無視されるべきものではないと考える。閲覧後一般に公開するものではない。

実施機関は、弁明書の中で、「市街地再開発事業とは、法第2条第3号に規定する市街地再開発事業を施行する土地の区域である施行地区内に従前の権利者が所有していた建物等を除去し、いったん更地とした上で、新しい道路・駅前広場・公園等と再開発ビル(施設建築物)の整備を行うものである。本件に係る事業は市街地再開発組合を施行者とする第1種市街地再開発事業であり、ある期日において、建物・土地の従前資産を施設建築物の床に等価交換する手法である。」としているが、A再開発の権利者の中で何人の人が等価交換の形で施設建築物に入れるかご存じなのか。

組合側から施設建築物には従前資産の50平米以下の人は入居出来ない、金銭を受け取って出ていくか、代替え地を貰って出ていくかのどちらかを選択するようにと云われており、もしどうしても施設建築物に入居したければ不足分をたして下さいと云うことである。

半数以上の人々が過少権利者と云うことで入居することが出来ない。又、私を含めてそれ以外の人達も等価交換となると従前の地価より施設建築物のある場所の地価の方が高いため、従前より狭い場所しか土地を提供されない。地権者が入れない再開発ビルを作って埃のまっている様な△△の様にするのか。

今社会では心のケア、心のケアと云っているが、私達の心の中を開いて見せようか。みんなストレスでボロボロになっている、今私達は再開発組合の事務局に因って毎日追い立てられて心の休まる時がない。補償金額はスズメの涙である。こんな再開発を本当にしてもいいのか。カヤの外の皆様方には他人事であろうが、私達にはこれからの大きな生活がかかっているのであり、これを苦にして情緒不安定になった人や、胃にポリープが出来た人もある。

私達にはこの土地で普通に生活をする権利がある。家にいても足が地に付かないような生活をどうしてしなければいけないのか。本当にこれでいいのか。

先般B簡易裁判所で再開発組合の理事長に対して調停をお願いした折に調停員の方が「この再開発は誰の為の再開発ですか?住民の為の再開発では無いのですか?もう少し住民の立場に立って事業を進めてはどうですか?」と理事長に云って下さった。私達は本当にうれしかった。

再開発事業というのは弱者を殺して作り上げるものなのか。教えていただきたい。

開示請求の根底には、その場所に住んでいない人達の手に依って再開発事業がなされている事に対する怒りと抗議から発生したもので、もっと住民の為の再開発をして欲しいのである。であるから一から見直す形で開示請求をお願いしたのである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 市街地再開発事業について

(1)市街地再開発事業とは

市街地再開発事業は、「市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、都市計画法(昭和43年法律第100号)及び都市再開発法(昭和44年法律第38号。以下「法」という。)で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業」と定義されている(法第2条第1号)。

大まかな事業の流れとしては、法第2条第3号に規定する市街地再開発事業を施行する土地の区域である施行地区(以下「施行地区」という。)内に従前の権利者が所有していた建物等を除却し、いったん更地とした上で、新しい道路・駅前広場・公園等の公共施設と再開発ビル(施設建築物)の整備を行うものである。

本件に係る事業は市街地再開発組合を施行者とする第一種市街地再開発事業であり、ある期日において、建物・土地の従前資産を施設建築物(再開発ビル)の床に等価交換する手法である。

(2)B都市計画事業A地区第一種市街地再開発事業について

ア B都市計画事業A地区第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という。)の概要は次のとおりである。
  • (ア)事業名 A地区第一種市街地再開発事業
  • (イ)施行者 A地区市街地再開発組合(以下「本件組合」という。)
  • (ウ)施行地区 B市□□及び××の各一部
  • (エ)施行面積 1.3ha
  • (オ)主要な用途 商業施設、住宅、業務施設等
  • (カ)公共施設 駅前広場、都市計画道路等
イ 本件事業の進捗状況、予定は次のとおりである。
  • 平成15年4月 都市計画決定
  • 平成16年4月 本件組合設立認可
  • 平成17年度 権利変換、既設建築物除却工事予定
  • 平成18年度 建設工事着手予定
  • 平成19年度 施設建築物(再開発ビル)の完成予定
  • 平成20年度 公共施設(駅前広場、道路)の完成予定

2 市街地再開発組合について

(1)市街地再開発組合とは

市街地再開発組合(以下「組合」という。)は、施行地区において第一種市街地再開発事業を施行することができる事業施行者の一つであり(法第2条の2第2項)、施行地区の宅地(法第2条第5号にいう「宅地」をいう。以下同じ。)について所有権又は借地権を有する者で構成され(法第20条)、都道府県知事の認可を受けて設立される法人である(法第8条第1項、第11条第1項、第11条第2項)。

(2)組合設立の手続き

組合の設立には、施行地区の宅地について所有権又は借地権を有する者が5人以上共同して、定款及び事業計画を定め、知事の認可を受けて設立する場合(法第11条第1項)と、施行地区の宅地について所有権又は借地権を有する者が5人以上共同して、定款及び事業基本方針を定め、知事の認可を受けて設立する場合(法第11条第2項)の2種類があり、本件組合は前者に該当する。(以下、法第11条第1項による認可についてのみ記載する。)

認可を申請しようとする者は、組合の設立について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの三分の二以上の同意を得なければならず、かつ、その同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならないとされており(法第14条第1項)、組合設立の認可を申請しようとする者は、認可申請書とともに「宅地の所有者及び借地権者の同意を得たことを証する書類」を都道府県知事に提出する必要があると規定されている(都市再開発法施行規則(昭和44年建設省令第54号)第3条第1項第4号)。

認可の申請があった場合、都道府県知事は、施行地区を管轄する市町村長に当該事業計画を2週間公衆の縦覧に供させて、関係権利者に意見を述べる機会を付与する(法第16条)とともに、申請手続が法令に違反していること等の要件のいずれにも該当しないと認めるときは、その認可をしなければならない(法第17条)とされており、その認可により組合は成立する(法第18条)。

(3)A地区市街地再開発組合設立の概要

平成16年2月12日 設立認可申請者が組合設立認可申請書をB市長へ提出

13日 B市長から実施機関へ副申

20日 事業計画の縦覧について実施機関からB市長へ通知(都整第1828号)

24日~ B市長において事業計画を縦覧

3月8日

25日 B市長から実施機関へ縦覧結果及び意見書の提出状況報告
(縦覧件数0件、意見書提出件数0件)

4月6日 組合設立認可(大阪府告示第749号)

3 本件各決定の適法性について

(1)本件各請求に対応する行政文書について

本件各請求に対応する行政文書は、2(2)で述べたように、本件組合が設立認可申請の際に、認可申請書の添付書類として作成して実施機関に提出したもので、組合設立の要件(法第14条)を確認するための文書として、実施機関に存在している。

当該文書には、法第14条の規定に基づき組合の設立に同意する旨の文言と、同意の日付、住所、氏名(印影)、宅地の所在地、地番、地目、地籍、所有権又は借地権の別が記載されている。

(2)条例第9条第1号について

本号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

が記録された行政文書を公開してはならない旨を規定している。

本号は個人のプライバシー保護の観点から個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。本件行政文書には、個人が組合の設立に関し同意した事実が明らかになる情報が記載されており、これらの情報は同号が保護の対象とする個人のプライバシーに関する情報にあたる。また、組合の設立に関し同意した個人の住所、氏名(印影)が記載されているため、特定の個人が識別され得るものである。

市街地再開発事業においては、組合設立に同意したか否かにかかわらず、組合設立後は、施行区域内宅地の所有権又は借地権を有する者全員が組合員として同じ立場で事業に携わることとなる。組合設立に同意したか否かにより、組合員が賛成派反対派に分かれることは一般に望むものではなく、従って、個人が組合の設立に関し同意した事実は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。

以上のとおり、異議申立人らが公開を求めている部分に記載された情報は、条例第9条第1号に該当し、公開してはならない情報に当たる。

4 結論

以上のとおり、本件各決定は大阪府情報公開条例の非公開事由の要件に該当するものを非公開として処分したものであり、違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 市街地再開発事業と組合の設立について

市街地再開発事業は、「市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、都市計画法及び都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業」(法第2条第1号)である。

組合は、施行地区において第一種市街地再開発事業を施行することができる事業施行者であり(法第2条の2第2項)、施行地区の宅地について所有権又は借地権を有する者で構成され(法第20条)、都道府県知事の認可を受けて設立される法人である(法第8条第1項、第11条第1項、第11条第2項)。

組合の設立にあたっては、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者及びその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれ三分の二以上の同意を得るとともに、その同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者のその区域内の借地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地の総地積との合計の三分の二以上でなければならないとされており(法第14条第1項)、組合設立の認可を申請しようとする者は、認可申請書とともに「宅地の所有者及び借地権者の同意を得たことを証する書類」を都道府県知事に提出する必要があると規定されている(都市再開発法施行規則(昭和44年建設省令第54号)第3条第1項第4号)。

認可の申請があった場合、都道府県知事は、施行地区を管轄する市町村長に当該事業計画を2週間公衆の縦覧に供させて、関係権利者に意見を述べる機会を付与する(法第16条)とともに、申請手続が法令に違反していること等の要件のいずれにも該当しないと認めるときは、その認可をしなければならない(法第17条)とされており、その認可により組合は成立する(法第18条)。

本件組合は、平成16年2月12日付けで組合設立認可申請書がB市長へ提出されており、B市長から実施機関へ副申されたのち、事業計画の縦覧を経て、同年4月6日付けで設立を認可されている。

3 本件各決定に係る具体的な判断及びその理由

(1)本件係争部分について

本件行政文書は、本件組合が設立認可申請に際して実施機関に提出した認可申請書に添付された施行区域内の宅地の所有者及び借地権者の同意書であり、法第14条の規定に基づき組合の設立に同意する旨の文言のほか、同意の日付、同意を行った者の住所、氏名、印影、宅地の所在地、地番、地目、地籍、所有権又は借地権の別等が記録されている。

本件行政文書のうち、本件各決定において公開しないことと決定された部分は、個人から提出された同意書の全部並びに法人及び団体から提出された同意書のうち代表者の印影(大阪府、B市及びB市土地開発公社を除く。)の部分であり、本件係争部分は、これらのうち、個人から提出された同意書の印影を除く部分である。

実施機関は、本件係争部分に記録された情報が条例第9条第1号に該当すると主張するので、以下検討する。

(2)条例第9条第1号該当性について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨をうけて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報

が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

これを本件について検討すると、個人の同意書は、先に述べたとおり、施行区域内の宅地の所有者又は借地権者である特定の個人が、組合の設立に際して、同意を行ったという事実が明らかになる情報が記録された文書であり、上記ア、イの要件に該当する。

次に、本件係争部分に記録されている情報が、上記ウの要件に該当するかどうか検討するに、個人が、自らの居住地域における市街地再開発組合の設立(市街地再開発事業の実施)に同意したという情報は、まちづくりについての個人的な意見、自己の財産の管理・処分についての考え方が明らかとなる情報として、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるものである。また、本件のような組合施行に係る第1種市街地再開発事業においては、当該組合の設立に同意したか否かにかかわらず、施行区域内宅地の所有権又は借地権を有する者は、全員が組合員として事業にかかわらざるを得ないものであり、少なからぬ権利者が、他の権利者との人間関係への影響等を考えて、自らの組合設立に対する賛否を他人に知られたくないと望むことも否定できないところである。

以上のことからすると、本件係争部分に記録されている情報は、上記ウの要件にも該当すると認められるものであり、条例第9条第1号の規定により、これを公開することはできない。

なお、異議申立人らは、本件組合の組合員として、組合設立に係る同意書を確認する権利を有しており、閲覧後においても他に公開するものではないとして、本件係争部分についての公開を求めている。

しかしながら、条例第6条は、何人も、実施機関に対して、行政文書の公開を請求することができる旨定めており、請求人が事案の関係者であるか否かを問わず、全て同じ判断をもって対応するという情報公開制度の趣旨からすると、本件係争部分について、条例第9条第1号に該当するとして非公開を維持することは、やむをえないものである。

また、異議申立人らが主張する本件組合の設立手続等に関する問題については、当事者間の問題として、適切に解決されるべきものである。

4 結論

以上のとおりであるから、本件各異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

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