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グリーンインフラを活かしたまちづくり事例集
1 はじめに
大都市・大阪の将来像を示す「グランドデザイン・大阪」及び「グランドデザイン・大阪都市圏」では、圧倒的な魅力を備えた都市空間を持つ強い大阪を実現するためには、付加的ではなく、社会が持続的に発展するために基本となる、基盤としての「みどり」を最大限に活用することが重要であるとしています。
大阪府では、概ね10年を見据えた基盤としての「みどり」の活用に向けて、「3つの視点」、「4つの方策」及び「8つの戦略」でリーディングプロジェクトを整理した「グリーンデザイン推進戦略」を平成30(2018)年3月にとりまとめました。
この4つの方策の一つである「グリーンインフラ」は、「みどり」の多様な機能をインフラ整備やまちづくりに活用するもので、新しいインフラ整備の概念として近年定着しつつあります。
また、「グリーンインフラ」の推進は、多くの社会的課題の解決策となる可能性を有しており、平成27(2015)年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の達成に貢献することが期待されています。
本冊子では、グリーンデザイン推進戦略に掲げる8つの戦略に沿って、「グリーンインフラ」を活用したまちづくりの先駆的な事例を紹介しています。
皆様には本冊子を参考にしていただきながら、圧倒的な魅力を備えた都市空間創造の実現に向け、みどりを活かしたまちづくりをより一層推進していただきますよう、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
2 グリーンインフラへの期待
自然の機能の発揮を促す機運の高まり
多様な分野の学識者・実務家が参加するグリーンインフラ研究会では、グリーンインフラを「自然が持つ多様な機能を賢く利用することで、持続可能な社会と経済の発展に寄与するインフラや土地利用計画」と定義しており、自然環境のプラスの価値を引き出すことで、防災・減災、経済振興等の様々な社会課題に貢献する取組みと捉えています。
グリーンインフラへの期待は、自然の様々な機能(サービス、便益)の発揮を促す機運の高まりと捉えています。
自然を守るから自然の機能を活かすへ
グリーンインフラに示される自然の機能を活用した社会資本整備や土地利用の推進は、自然を守る(保護、保全)から、自然の機能を活かす(活用)に焦点をあてているところに大きな特徴があり、人口減少時代である現代では、グリーンインフラの自然の機能を活用する考え方は極めて有効と考えられます。
この考え方が広がることで、自然環境に関わる関係者の理解や認識の共有化が進み、主体間の円滑な連携が広がり、これまで以上に、時間的・空間的な広がりを持った取組みが展開されることが期待されます。
グリーンインフラとは「協働・連携」のキーワード
自然の多機能性をいかんなく発揮させるためには、点としての取組みをネットワーク化し、面的な効果を生み出しながら、さらに経済的な需給関係を構築して波及先を広げることが必要です。そのためには、多様な主体による「協働・連携」がますます重要になります。
その際、グリーンインフラという言葉は、自然の様々な機能(サービス、便益)の発揮に向けた取組みを進めるための多様な主体による「協働・連携」を促す際の共通認識となるキーワードになってくると期待されます。
引用文献:西田貴明(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)「日本のグリーンインフラの推進状況と今後の展望」(公益社団法人雨水貯留浸透技術協会「水循環 貯留と浸透 109号」:3ページから8ページまで)
3 グリーンインフラが果たす機能
機能分類 | グリーンインフラが果たす機能 |
---|---|
食料・エネルギー供給 | 食料生産、水源・地下水涵養、自然エネルギー供給、土砂供給、害虫抑制・受粉 |
環境保全 | 都市気候緩和、CO2固定、資源循環、水質浄化 |
防災・減災 | 避難場所、土砂災害抑制、治水、高潮・津波の軽減 |
生物生息の場の提供 | 生物生息の場 |
レクリエーション・健康 | レクリエーション、健康増進・治療、福祉 |
コミュニティ・教育 | コミュニティ維持、環境教育 |
景観・観光 |
景観向上、観光資源、歴史・文化、やさしい交通路 |
引用文献:「岩浅有記・西田貴明(2017) 人口減少・成熟社会におけるグリーンインフラストラクチャーの社会的ポテンシャル.日本生態学会誌,67,239ページから245ページまで」を基に大阪府が作成
4 グリーンインフラを活かしたまちづくり事例
戦略1 圧倒的な魅力を備えたみどりにつつまれた都市(まち)をつくる!
戦略2 みどりの軸でにぎわい空間や歩行者空間をつくる!
戦略3 みどりの都市空間でイノベーションをうみだす!
戦略4 河川と街道でつなぐみどりの都市空間をつくる!
サイクリストにやさしいまちづくりの取組み(淀川沿川8市2町)
戦略5 海や空港の見えるみどりのにぎわい空間をつくる!
戦略6 ニュータウンをみどりで再生・創生する!
戦略7 密集市街地をみどりの力で甦らせる!
戦略8 みどりを活かした健康・長寿につながるまちをつくる!
5 参考資料
グリーンインフラが持つ多様な機能を発揮するためには、植物の特性や土壌環境などに応じた整備や植物の健全な生育のために効果的な管理(手入れ)を実施することが必要です。
ここでは、植物の生育に必要な根の生活空間である植栽基盤の整備方法、コミュニティによる植栽管理の工夫、さらには、樹木の持つ防火機能や防火効果を高める植栽計画について紹介します。