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植物の生育を支える植栽基盤
植物の生育を支える「根」の役割
植物にとって、生きるために最も重要かつ不可欠なものは、空気、水、養分です。
このうち水と養分は、土壌中から根によって吸収されます。水は、植物体を構成する最も主要な物質であり、植物は水と二酸化炭素、太陽エネルギーを利用して光合成を行い、炭水化物を蓄積することで生長しています。また、水はミネラル養分を溶かして根に供給する働きもしています。
このように根は、植物が生きるために欠かせない役割を担っています。
引用文献 一般財団法人 日本緑化センター(2009):植栽基盤整備技術マニュアル
根の役割と土壌との関係
植物体支持 |
主根、支持根を土壌中に伸長することにより、植物体を支持する。 |
---|---|
水分及び養分の供給・吸収 |
土壌中に張った吸収根から、水分・養分を吸収し、炭酸同化作用等により植物体をつくると共に、空気中に酸素を供給する。 |
酸素供給・吸収 |
根は、地中の酸素を吸収し、呼吸をすることで、生命を維持するエネルギーを得る。 |
地中生態系多様化 | 根が土壌中に伸長することにより、土壌構造の変化や微小生物の増加等、地中の生態系を豊かにする。 |
以上のように、根と土壌は密接に関係しており、植栽基盤の整備により、植物の根に好ましい土壌環境を整備することが重要です。
引用文献 一般財団法人 日本緑化センター(2009):植栽基盤整備技術マニュアル
植栽基盤の定義と構成
植栽基盤とは、「植物の根が支障なく伸長して、水分や養分を吸収することができる条件を備え、ある程度以上の広がりがあり、植物を植栽するという目的に供せられる土層」と定義しています。
この植栽基盤は、下図のとおり「有効土層」と「排水層」から構成され、有効土層は十分な保水力と適度の養分を含む「上層」と、主に植物体支持と水分吸収のための根の広がりを確保する「下層」で構成されます。
植栽基盤整備のポイント
植栽基盤の広がりと厚さの確保
有効土層の厚さについては、1 「根鉢の厚さ」+「根が下方へ伸長するのに必要な厚さ」、2 強風時にも倒伏しない根張り、3 干ばつ時にも潅水(かんすい)なしで枯れないだけの水分を保てる、以上3点の条件によって規定され、下表が標準とされています。
また、水分や養分を吸収する細根は、一般に樹冠の投影面積と同程度の広がりを持つとされており、将来の目標樹形に合わせて、植栽する植物の根が十分に生長するだけの広がりを確保する必要があります。植栽基盤の広がりと厚さの標準は下表のとおりです。
高木/低木 |
高木 |
低木 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|
目標樹高 |
12メートル以上 |
7から12メートル |
3から7メートル |
1から3メートル |
1メートル以下 |
|
植栽基盤の広がりの標準 |
面積 |
約110平方メートル |
約80平方メートル |
約20平方メートル |
約5平方メートル |
約0.3平方メートル |
直径 |
12メートル |
10メートル |
5メートル |
2.5メートル |
0.6メートル |
|
有効土層の厚さ |
上層 |
60センチメートル |
60センチメートル |
40センチメートル |
30から40センチメートル |
|
下層 |
40から90センチメートル |
20から40センチメートル |
20から40センチメートル |
20から30センチメートル |
植栽基盤の成立条件
植栽基盤は、植物の根が生長しやすい場所(根の伸長が容易、根を傷める有害物質を含んでいない)であるとともに、植物が必要とする水分・養分・酸素を過不足なく供給できるような条件を備えている必要があります。その条件は下記のとおりです。
- 植物の生育に障害を及ぼす有害物質を含まないこと
- 透水性(通気性)が良好であり、かつ下層との境界等で水が停滞しないこと
- 硬さが適当であること
- 酸度(pH)が適当であること
- ある程度以上の養分を含み、適度の保水性があること
引用文献 一般財団法人 日本緑化センター(2009):植栽基盤整備技術マニュアル
みどり豊かな景観づくりは植栽基盤の確保から
みどり豊かな公園や街路樹等で構成される美しい景観は、風格ある国際競争力の高い都市形成に大きく寄与します。このためには、街路樹等が健全に生育していることが必要ですが、植栽空間に制約がある街路樹や舗装した広場の植桝では、植栽基盤の面的な広がりの確保が大きな課題です。この対策としては、植桝を連続桝(植樹帯)にしたり、舗装の下に樹木の根の生育空間を確保する基盤の整備等が望まれます。
これにより、根上がりを防止するなど良好な樹木の生育が図られ、みどりの持つ様々な機能の発揮につながります。
雨水貯留浸透基盤の整備事例 横浜市グランモール公園「美術の広場地区」
<提供>グリーンインフラ総研
根の伸長を促し、舗装路盤としての機能も持つ雨水貯留浸透基盤を整備
側溝などから入った雨水は雨水貯留浸透基盤で保持され、根と保水性舗装に水を供給し、舗装面からの蒸発により路面の温度上昇を抑制
「保水性舗装+雨水貯留浸透基盤」の施工箇所(約28から32℃)は「石張り舗装」の地表面温度(約36から43℃)より10℃前後低い
緑陰の形成による放射熱の低減との相乗効果により、夏でも涼しい都市空間を創出