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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第222号)
戦略本部会議提出資料の作成プロセスが分かる資料等公開決定異議申立事案
(答申日 平成25年3月11日)
第一 審査会の結論
実施機関は、本件の行政文書公開請求に対応する行政文書として、別紙中2記載の(1)から(8)までの文書を追加して特定し、これらの文書について、本審査会の結論の趣旨を踏まえ公開・非公開の決定を行うべきである。実施機関のその余の判断は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により平成23年12月7日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対して、「戦略本部会議に提出された資料(別紙)が行政改革課で作成されたプロセスが分かる資料・書類すべ て」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- 実施機関は、平成23年12月21日、本件請求に対応する文書として、次に掲げる文書(以下「本件公開文書」という。)を特定の上、条例第13条第1項の規定により、その全部を公開する旨の公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、異議申立人に通知した。
(公開することと決定した行政文書の名称)- a 他府県類似施設の比較(大阪府民牧場(以下「府民牧場」という。))
- b ハーベストの丘(ホームページ資料)
- c ワールド牧場(ホームページ資料)
- d 府有財産の無償譲渡について
- e 能勢町学校再編計画及び能勢町学校新構想
- f 大阪府立総合青少年野外活動センターの跡地利用
- g 平成23年当初予算(政策的経費)総合青少年野外活動センター管理費(大阪府予算編成過程公表ホームページ)
- h 府立総合青少年野外活動センター跡地の受け入れの検討について(依頼)(平成23年4月21日青少年第1141号)
- i 府立総合青少年野外活動センター跡地の受け入れの検討について(回答)(平成23年4月27日能総第36号)
- 異議申立人は、本件公開文書以外にも、第三記載のとおり対象となる文書があるはずであるとして、平成23年12月27日、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
- 本件異議申立てのほかに、異議申立人は、平成23年4月27日付けで行った「廃止された大阪府立野外活動センターについて能勢町と協議した資料一 式」の公開請求に対する実施機関の全部を公開する旨の決定について、平成23年6月23日付けで、この決定により公開された文書以外にも文書が存在するはずであるとして、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対し異議申立てを行っていた。
第三 異議申立ての趣旨
公開された文書だけで「府民牧場の廃止と無償譲渡について」を作成するのは難しく、他にも文書があるはずだ。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。
1 異議申立書における主張
府民牧場の廃止と無償譲渡等については、決定事項の確認と受け止められる大阪府戦略本部会議(以下「戦略本部会議」という。)であり、作成者はそれなりの資料を整え対応しているはずだが、開示された資料だけで作成は難しいと考えられる。また担当部署での協議内容の文書が何もないのも不自然だ。
- (1)府民牧場は運営費に対する改革案を示し運営の継続を望んでいたと聞く。そのような文書は開示されていない。
- (2)野外活動センター(以下「野外C」という。)は跡地受け入れを依頼し能勢町から回答も得ているが、府民牧場に対しては能勢町から依頼文書等がないのも不自然。
- (3)府民牧場には約18億円の起債が残っているが、その対応等について文書がないのも不自然。
- (4)大阪府は、野外Cは利用者の減少と施設の老朽化等で廃止が決まり、跡地利用にも展望がなく閉鎖した施設である。能勢町に老朽化した施設を現状有姿まま譲渡するのは無責任。それなりの協議した文書があるはず。
2 意見書における主張
能勢町長は、府民牧場と野外Cの譲渡は、知事(当時)にお願いし「政治判断で決めたことだ」と議会等で明言している。しかし2011(H23)年6月6日に開催された「大阪府戦略本部会議」では、そのようなことは一言も述べられておらず、とってつけたような理屈を並べて無償譲渡が決定されている。この間の経過とそれについての意見を記す。
- (1)知事と能勢町長がどの時期に話し合われたかは定かではないが、2008(H20)年9月から能勢町教育委員会が学校教育検討委員会に、統廃合や学校の耐震化について諮問し協議を始め、その答申を出したのが2009(H21)年8月27日で、その後教育委員会は会議を4回開催し、同年11月30日に教育委員会の方針を決定し、翌12月1日に町長に、「学校再編整備に関する基本方針及び施設取得」の要請を行っている。しかし能勢町の総務部長は、同年8月25日にすでに大阪府と府民牧場の譲渡について協議を始めていた。
- (2)大阪府との協議の中で、府民牧場と同時に2010(H22)年度末に廃止が決定していた野外C(敷地面積200ヘクタール)の引き受けも協議されていた。
2010(H22)年2月8日に知事と能勢町議会との懇談会で、知事は「府民牧場と野外Cはセットで考えている」と述べている。翌日開催された部長会議で知事は、「副知事をマネージャーとして一体で考えていく必要がある」と指示し、副知事も「府民牧場の件はセットで考えるようにしている」と答えている。すでに確定事項として動いていることが明らかである。 - (3)そのため能勢町は、2009(H21)年7月には、大阪府の内諾を得たと考えたのか、野外Cの主要道路の両脇に1500本のサクラの植樹を計画、約1500万円の事業費を付け、受託業者の入札(随意契約)も終えていた。このことからもすでに能勢町への譲渡が確定していたと思われる。
しかしながら、10月には大阪府は事業地の行政財産の貸付について決済を済ませていたにも関わらず、能勢町は12月に申請を取り下げて事業地の変更をしている。 - (4)野外Cの廃止は、2008(H20)年に策定した「大阪府財政再建プログラム(案)」に廃止が示されているが、その理由として、1.施設の老朽化(開設後約40年が経過)、2.他の代替施設あり、となっている。
府は2009(H21)年度に野外Cの不動産鑑定を行い、2010年(H22)年3月31日に鑑定書を受理している。鑑定書には「規模が広大で用途が特殊でかつ利用用途が限定されており、需要者が限定され市場性が劣る」、「老朽化した建物及び耐震性に問題のある建物が一部存し、将来的に改修、修繕、取り壊し等の費用が発生することが確実であり、かつ当該費用等の土地建物総額に占める割合が過大なため市場性が劣る」としている。また保安林等の行政的条件が多々あることも指摘されている。このような条件の施設を、財政力のない能勢町に安易に有姿のまま無償譲渡することは無責任で、何らかの協議がなされているはずである。老朽化した施設を解体すれば数億円の費用がかかる。また府は現地を大阪府立北摂自然公園に指定している以上、明確な責任を負っているはずである。 - (5)2011(H23)年4月に大阪府政策企画部青少年・地域安全室長から能勢町に対し、野外C跡地受け入れの検討を文書で出しているが、能勢町は「府民牧揚の跡地の町への譲渡をお願いしているところでありますので、本件についても府におかれては併せて検討いただきますようお願いいたします。」と回答書に付け加えていて、あたかも野外Cの老朽化した施設付きで引き受けますので、府民牧場も無償でお願いしますよと言っているようだ。
- (6)府民牧場の廃止については、大阪府の財政健全化プランで「民間等への受け皿探しの検討」の方向性を示した。しかし受け入れる団体がなかったとして2009(H21)年10月に断念している。しかし2006(H18)年度からの指定管理者の公募に対しては、現在運営している(財)みどり公社と民間の一団体の応募があった。その団体の評価は失格ではなく次点であったにもかかわらず、大阪府からは何の打診もなかったため、廃止決定後抗議に来たと聞く。民間団体は府の補助金を当てにせず運営を目指す計画書を提出していた。
- (7)府民牧場は能勢町の最大の観光施設で、能勢町は計り知れない恩恵を受けていた。この施設の廃止について、能勢町と協議せず大阪府が一方的に廃止を決定するとは考えられない。公開された資料によれば「能勢町が保有する規模が過大」と決めつけているが、能勢町側に検討した形跡はない。
- (8)大阪府の財産の交換・譲渡及び貸付に関する条例に付随する運用指針では、無償譲渡は事業継承が原則になっている。どのように打ち合わせがあったかはわからないが、能勢町が新設校のキャッチフレーズにしたのが「牧場の学校」である。戦略本部会議の議事録でも運用指針との兼ね合いで「特殊な例か」との問に「例外として認めて頂きたい」と述べている。
- (9)府民牧場を管理する担当課は、2010(H22)年度末に指定管理の契約期間が切れるため、指定管理者に対し暫定的に1年の委託契約を行うが、その時提出した資料では、これまでの府の負担金、年間7000万円を5000万円にし効率化を図る事業計画書も提出されている。
しかしその計画書は戦略本部会で検討された形跡もなく、2011(H23)年度は従来通り7000万円の負担金で委託されている。 - (10)大阪府は2010(H22)年度に府民牧場の不動産鑑定(3月17日付け)を行っている。部分公開で全体の評価額はわからないが、土地は約3億円の評価がなされている。
- (11)上記に示した日時を時系列に整理した。
2008(H20)年9月 能勢町教育委員会…学校教育検討委員会に諮問
2009(H21)年7月 大阪府の内諾を得て野外Cにサクラの植樹を計画
8月25日 大阪府と府民牧場の譲渡について協議
8月27日 学校教育検討委員会答申をまとめる
10月 府民牧場民間譲渡断念
11月30日 教育委員会の方針を決定
12月1日 町長に「学校再編整備に関する基本方針及び施設取得」の要請
2010(H22)年2月8日 知事と能勢町議会との懇談会…セットで
2月9日 副知事…セットで考えている - (12)まとめ
戦略本部会議に提出された資料及び今回公開された資料は、後付の資料でしかなく、知事及び副知事、そして能勢町長との政治判断に及んだ経過がわかる資料の公開を求める。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね以下のとおりである。
1 戦略本部会議における決定について
府民牧場については、平成20年に策定した「大阪府財政再建プログラム(案)」(以下「財プロ(案)」という。)及び平成22年に策定した「大阪府財政構造改革プラン(案)」(以下「構造改革プラン(案)」という。)において、あり方を検討するための方向性が示された。
構造改革プラン(案)については以下のとおりである。
- プログラム案の方針である民営化は、受け手がなく断念する。
- 民間等による代替施設が存在することや、かなりの運営費を要していること等から、府民牧場(ふれあい事業・子牛育成事業)については、23年中に廃止を含めその在り方を決める。
- 府民牧場を小中学校候補地にしたいという地元能勢町の意向を受け、地元自治体との連携・支援等の観点から、並行して能勢町との調整に努める。
なお、これらの方向性を示すに至った経緯についても、異議申立人からの請求に基づき、「部局長とPT長の意見交換会資料(平成22年6月9日)」、「大阪府財政構造改革プラン≪たたき台」≫(平成22年6月)」、「大阪府構造改革プラン≪素案≫(平成22年8月)」を公開済みである。
その後、構造改革プラン(案)に基づき、府民牧場のあり方を検討したところ、
府民牧場の廃止について
- 府内あるいは近隣府県において民間団体等が運営する同様の事業が存在していることや、他府県調査においても必ずしも府県が同様の事業を実施していない状況にあること。(本件公開文書aにて文書公開済み)
- 観光牧場の運営に府が関与しつづける必要性は低く、厳しい財政状況の中、引き続き多額の事業費を支出することについては困難と考えていること。(大阪府ホームページ「公の施設の基本情報」において府民牧場の運営費の経年動向について公表)
府民牧場の無償譲渡について
公共利用の視点
町の学校再編整備により、公共目的で跡地の有効活用を図ることができる(本件公開文書eにて文書公開済み)。
町の住民サービス向上・行革の視点
将来的に少子化が進む中で、6小学校、2中学校の町立校を再編整備することにより、よりよい教育環境を確保しつつ、教育資源の集約化も行い、適切な学校運営が可能となる(これら先進的取組への府としての支援)(本件公開文書eにて文書公開済み)。
府の行革の視点
- 野外C跡地は、府立北摂自然公園区域内にあるため、民間等への売却が困難な中、府の要請に応え町においてその利活用を行って頂ける予定。(現在、町に委託している跡地の管理が不要となる(年間約1.3千万円)(本件公開文書fgにて文書公開済み)。
- 廃止後の府民牧場跡地の管理が不要となる(年間1千万円(推定))。
以上のことから、平成23年6月6日、大阪府の組織として「決定」を担う機関である「大阪府戦略本部会議」において、「府民牧場の廃止と無償譲渡等について」議論がなされ、府民牧場の平成24年3月末の廃止及び府民牧場・野外Cの能勢町への無償譲渡について決定した。
大阪府戦略本部会議における資料「府民牧場の廃止と無償譲渡について」は、本件行政文書等をもとに、公の施設のあり方検討を担う総務部行政改革課(以下「行政改革課」という。)において作成したものである。
- (1)府民牧場の運営について
財プロ(案)において、「民間企業や酪農業者等による観光牧場としての経営の受け皿探しを検討」したが、民営化については受け手がなく断念した。
また、「運営の一層効率化」としての運営費縮減についても抜本的な取組みにまでは至らなかった。
その後、構造改革プラン(案)に基づき、コスト面の取組みのみならず都道府県としての関与のあり方を踏まえた府民牧場の今後のあり方を検討した結果、前述の6月6日の「大阪府戦略本部会議」で廃止を決定したものである。 - (2)府民牧場の譲渡についての能勢町からの依頼について
平成22年10月19日付け能総第122号により、能勢町長から大阪府知事あてに「能勢町学校再編整備にかかる『おおさか府民牧場』の譲渡について」の依頼文書が発出されており、以下の記載のとおり、能勢町より大阪府に対して府民牧場の譲渡についての依頼があった。
「新しい学校用地については、別添『能勢町学校再編計画』でお示ししているとおり『おおさか府民牧場』が最適と判断したものであります。(中略)今後、『大阪府財政構造改革プラン』に沿いまして能勢町小・中学校候補地としてご決定を賜りたいと存じます。(中略)何卒、本町の児童・生徒のよりよい教育環境の整備にご理解賜り、『おおさか府民牧場』を譲渡いただきますようお願いいたします。」
なお、当該文書については、異議申立人の請求に基づき、平成23年5月11日に文書公開済みである。 - (3)起債について
大阪府は、この間、社会情勢の変化等により、府として関与し続けることがふさわしくない施設について、廃止、売却、市町村移管等の対応を行ってきたが、基本的には、施設の存廃等の判断と起債残高の有無は、別の話である。
府民牧場に残債が存在することは当然承知している。残債については、これまで廃止等を行った施設と同様、大阪府が償還していく。 - (4)野外Cの能勢町への無償譲渡について
平成23年4月21日付け青少年第1141号により、大阪府政策企画部青少年・地域安全室長より能勢町長あてに発出された「府立総合青少年野外活動センター跡地の受け入れの検討について(依頼)」(本件公開文書hにより文書公開済み)によれば、「同地域が府立北摂自然公園の剣尾山地区に位置し、自然環境を保全するため敷地内において建物・工作物の新増改築等を行う場合には知事の許可等が必要となる地域であること、また、地元との関係が深い地域であることなどを踏まえ、地元町において自然公園区域内にふさわしい公共的な利活用を図っていただくことが望ましいと考えております。」との記載がある。
これに対して、平成23年4月27日付け能総第36号により、能勢町長より大阪府政策企画部青少年・地域安全室長あてに発出された「府立総合青少年野外活動センター跡地の受け入れの検討について(回答)」(本件公開文書iにより文書公開済み)によれば、「同センター跡地を行政財産として、自然公園区域内にふさわしい利活用をして行きたいと考えており、今回、ご依頼のあった同センター跡地の受け入れについては、今後、管理、及び活用方法について、府とも十分協議しながら検討を進めて行きたいと考えています。」との記載がある。
この協議文書をもって、戦略本部会議での議論を経て、現在、行政財産として自然公園区域内にふさわしい公共的な利活用を図ることを前提に、野外Cの能勢町への譲渡に向けた手続きを進めているところである。
2 結論
以上のとおり、これまで異議申立人からの行政文書公開請求で公開した文書及び本件公開文書以外の文書は存在せず、本件決定は条例の規定に基づき適正に行われており、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 府民牧場の廃止と無償譲渡等の決定に至るまでの経緯について
異議申立人は、本件公開資料は後付けの資料であり、能勢町と担当部署との協議文書や、知事及び副知事の政治判断に及んだ経過が分かる資料などがあるはずであると主張するので、府民牧場の廃止と無償譲渡等を戦略本部会議で決定するまでの経緯について、本件にかかる戦略本部会議に提出された資料を作成した行政改革課に確認したところ、以下のような補足説明があった。
行政改革課が戦略本部会議に提出した資料(以下「本件資料」という。)は、府民牧場の施設所管課から収集した資料を基に作成したものであり、その際実際に使用した資料は本件公開文書が全てである。また、府民牧場の見直しの方針が示された財プロ(案)策定以降の文書を保存しているが、その内容は既にホームページで公表済みである。
3 本件決定とその妥当性について
- (1)異議申立人及び実施機関の主張等について
本件資料は、施設所管課から収集した資料等を基に作成したものであり、その際、実際に使用した資料は本件公開文書以外にはないとする実施機関の主張は一定理解することができるものの、野外Cの譲渡を受けることは能勢町にとって財政負担が大きいことなどから、能勢町と協議した文書が存在するはずであるとする、異議申立人の主張にも無理からぬ点があると考える。
そこで、当審査会としては実施機関から本件資料に関連して保有している全ての文書の提出を求め、その内容を検分することとした(検分に際し、実施機関から提出された文書は、別紙中1記載のとおり)。 - (2)文書の検分等について
別紙中1記載の文書について、当審査会が検分したところでは、本件公開文書以外に本件請求(「戦略本部会議に提出された資料(別紙)が行政改革課で作成されたプロセスが分かる資料・書類すべて」)の対象となると考えられる行政文書は認められなかった。
しかし、異議申立人が、野外Cや府民牧場の無償譲渡に関し、本件請求以外にも、数次にわたって情報公開請求を行うなど、野外Cと府民牧場の無償譲渡に係る一連の経過を知りたいという意向が認められることから、実施機関の同意を得た上で、異議申立人に対し、別紙中1記載の文書?閲覧する機会を設けることとした(その際、実施機関が条例に基づき非公開とするのが相当であると考える部分については黒塗りする等の処理を施した。)。
文書を閲覧した結果、異議申立人は、別紙中2記載の11件の文書が本件請求の対象文書に該当すると主張したため、当審査会において、これらの文書が対象文書に該当するかについて検討を行った。これらの文書について実施機関の説明を聴取した上で、その内容を検分したところ、(1)から(8)の文書については、本件資料作成に当たって直接用いられてはいないが、府民牧場の廃止及び無償譲渡の検討経過が記載されていると認められるが、(9)から(11)の文書については、本件資料作成に用いられておらず、府民牧場の廃止及び無償譲渡の検討経過も記載されていないと認められる(11文書に記載された内容は、別紙中2の内容欄記載のとおり)。
府民牧場の廃止と無償譲渡の決定に至った経過を知りたいという異議申立人の請求の趣旨・目的を踏まえて考えるに、本件請求の対象である「戦略本部会議に提出された資料(別紙)が作成されたプロセスが分かる資料・書類すべて」とは、戦略本部会議に提出された資料を作成するに当たって直接使用した資料のみではなく、府民牧場の在り方の検討当初から、戦略本部会議で府民牧場の廃止及び無償譲渡の決定を行うに至るまでの検討経過が記載された、全ての文書を含むものであると解すべきである。
したがって、別紙中2記載の(1)から(8)の文書については、本件請求の対象文書として特定すべきであったと認められる。
4 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立ては、本件請求のうち、別紙中2記載の(1)から(8)の行政文書を本件請求の対象文書として特定すべきであるとする部分については理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
鈴木秀美、山口孝司、松田聰子、細見三英子