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更新日:2013年2月4日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第219号)

卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に係る資料等部分公開決定異議申立事案(平成24年2月7日決定分)

(答申日平成25年2月4日)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立てに係る部分公開決定において非公開とした部分のうち、別紙において「公開」とした部分を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により平成24年1月24日、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対して、「教育長が出した府立学校校長・准校長、府立学校教職員への『入学式及び卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について(通達)』に関しての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
    • 『通達』発出に際する教育委員会での審議が分かる内容
    • 『通達』に関わって校長・准校長に指示した内容の全て(想定問答集など)
    • 『通達』に関して知事、府議会、府市統合本部に報告した内容の全て
    • その他『通達』に関する一切の資料」
  2. 同年2月7日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書として、下記(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、同(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、同(3)のとおり公開しない理由を付して異議申立人に通知した。
    • (1)行政文書の名称
      • ア.職務命令に関する手続きについて
      • イ.校長・准校長限り Q A取扱注意
    • (2)本件決定により公開しないこととされた部分
      • ア.「職務命令に関する手続きについて」における校長の事務、指導等に関する部分
      • イ.「校長・准校長限りQ A取扱注意」における校長の事務、指導等に関する部分
      • なお、具体的な非公開部分は、別紙の「非公開部分」欄に記載されたとおりである。
    • (3)公開しない理由
      大阪府情報公開条例第8条第1項第4号
      府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
  3. 異議申立人は、本件決定を不服として、同年2月13日、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件「部分公開決定処分」の取り消し、及び当該情報の全部公開

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。

1 異議申立書における主張要旨

本件「部分公開」決定処分は大阪府情報公開条例第1条の趣旨に反する。

2 反論書における主張要旨

(1)本件行政文書の公文書としての性格と実施機関の府民への情報提供義務
  • ア 異議申立人は、2012年2月7日、実施機関に対して、教育長が出した府立学校長・准校長、府立学校教職員への『入学式及び卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について』に関する一切の資料(以下、「本件行政文書」という。)の公開を求めた。しかし、2012年2月24日、実施機関は「職務命令に関する手続きについて」における校長の事務、指導等に関する部分と「校長・准校長限りQ A取扱注意」における校長の事務、指導等に関する部分(以下「本件行政文書の非公開部分」という。)を非公開とする部分公開決定を行った。
  • イ 本件行政文書は、2012年1月17日に大阪府教育委員会教育長から全教職員に「君が代」起立斉唱を求めた職務命令に関わる資料である。全教職員への職務命令は、大阪では初めてのことであり、府立学校に通う生徒・保護者も含めて極めて広範な府民に影響を与えるものである。マスコミ報道等からも府民の関心の高い内容である。
    職務命令を教職員に発出するのは、校長である。その意味では、職務命令そのものとその発出手続き及び校長への指導内容は一連のものであり、それを切り離して考えることはできない。府民の関心の高いこの問題において、職務命令がどのような手順で出されたのか、校長は具体的にどのようにして発出したのか、等々、府民の知る権利から、当然公開されてしかるべきである。
  • ウ 「『知る権利』の保障と個人の尊厳の確保に資するとともに、地方自治の健全な発展に寄与するため」に制定された「大阪府情報公開条例」は、周知のようにその前文において、「情報の公開は、府民の府政への信頼を確保し、生活の向上をめざす基礎的な条件であり、民主主義の活性化のために不可欠なものである。」とし、更に「府が保有する情報は、本来は府民のものであり、これを共有することにより、府民の生活と人権を守り、豊かな地域社会の形成に役立てるべきものであって、府はその諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」と、条例制定の「精神」を明示している。特に、「府はその諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」という部分は従前の大阪府公文書公開条例(1984年大阪府条例第2号、以下「旧条例」という。)にはなく、市民の「知る権利」(前文)もしくは「行政文書の公開を求める権利」(第1条)の保障を目的とする条例の「精神」をより一層具体化するために追加されたものである。
  • 従って、実施機関が、大阪府情報公開条例の「精神」に沿って本件行政文書の公開を行うことは、大阪府民に対する責務である。
(2)弁明書の主張に対する反論について
  • ア 弁明書では、「本件行政文書の非公開部分」に関して、「その内容が、公開されることになれば、校長・准校長の指導を無視あるいは逆手に取るような行動を行い、卒業式及び全般にわたる運営を滞らせる恐れがあるなどの適正な事務執行ができなくなることが予想される。」と指摘している。まず、現に発することになる校長への指導等の公表できない職務命令などその公正性が全く担保されていないと言うべきである。この卒・入学式においては、「君が代」で不起立だった教職員が多数、本職務命令違反として戒告処分にされている。そのことの重大性を考えれば、本職務命令とその発出過程を全て公開し、その公正性を府民に対し明らかにすべきである。
    しかも、上記の弁明は教職員に対する不信に塗り固められている。府民にのみならず、本職務命令を受けることになる教職員に対しても、明らかに出来ない指導など、一層校長と教職員の信頼関係を破壊することになり、そのことは府民に提供される教育に大きな悪影響を与えるものである。校長と教職員を強めるためにも、公開が妥当である。
  • イ 「本件文書の非公開部分」には、「校長・准校長限りQ A取扱注意」の大部分が含まれている。この内容は、墨ぬりでほとんど分からないが、本職務命令に対する教職員からの質問や疑問に答えることを想定して作成していると思われる。だとすれば、校長は、教職員からの質問に対しては、口頭等で回答してきたはずのものである。その文書を公開できないというのは矛盾した態度としか言いようがない。
  • ウ 弁明書では、「公開されることにより、今後、実施機関から校長及び准校長に対し同種の指導及び指示が出来なくなる懸念」を表明している。相手に知られると出来なくなる「指導及び指示」などあるのか、はなはだ疑問である。校長・准校長への「指導及び指示」は、職務命令に関わる「通達」を補足するものであり、その趣旨は職務命令の内容から逸脱することはあり得ないはずである。部分公開決定は、職務命令の趣旨とは、別の論理による「指導・指示」が合ったのではないかと、疑念を生じさせる。
  • エ 今年の卒・入学式はすでに終わっている。「本件行政文書の非公開部分」そのものが対象とした期間はすでに終わっている。現時点で、「本件行政文書の非公開部分」を公開したとしても、実施機関が懸念する事態は起こらない。しかし、上記の弁論は、今後のことを主張することで、これからも公開できないことを伺わせる。少なくとも、現時点においては、全ての文書の公開は、この春の職務命令―戒告処分に至る過程の公正性を明らかにするためにも、府民に広く公開すべきだと考える。この点についても、審査会の答申を求めるものである。
(3)結論

以上の通り、本件処分は、条例の趣旨を蔑ろにし、情報公開条例第1条に明確に反するもので、実施機関の「弁明書」には、何ら正当性がない。従って、実施機関の決定は不当との決定をのぞむものである。

3 追加反論書における主張要旨

(1)「適正な手続きの遂行」には、透明性が不可欠

実施機関は、「追加弁明書」の「2 非公開の理由の補足」において、「当該文書のうち、職務命令にかかる手続きの詳細や、服務管理に関する事項、懲戒処分の手続きや効果に関する事項」は、「適正な手続きの遂行を担保するため」に「非公開とすべき」と主張している。

しかし、この主張は全く不当なものである。実施機関は教育行政として行う行為が「適正」かどうかを「担保」するためには、何よりもその過程の透明性が必要不可欠である。とりわけ、実施機関が非公開と主張する上記3点に関しては、適正な手続きにおいて実施しているのであれば、堂々と公開すべきものである。もし、府民にそれらを隠して行うのであれば、今回の実施機関の手続きに対しての不信をまねくのではないかと考える。しかも、実施機関が書いているとおり、今春の職務命令の発出は、校長・准校長にとって初めてのことであり、マスコミや府民の中でも高い関心をよんだ。そうであるならばなおさら、隠すのではなく堂々と公開することが、府民の「知る権利」に応えることになるのではないか、と考える。

(2)卒・入学式後も非公開は、不当

実施機関は、「今後、職務命令違反がなくなるまで当分の間」、非公開にしていくことを主張している。実施機関が主張するとおり、今回の卒・入学式では職務命令違反によって多くの戒告処分者を出し、大きな反響を呼んだ。それにもかかわらず、その戒告処分にいたる実施機関からの職務命令に関するマニュアル等の資料が秘密とされていることは理解に苦しむ。実施機関は戒告処分を出し、職務命令に関わる一連の流れが終わった現在、実施機関の職務命令が、現に学校現場にどのような作用をもたらしたのか、府民感覚からの検証が不可欠である。百歩譲って考えても、現時点では、卒・入学式は終わっているのだから、当該文書を公開することに何ら問題はないはずである。むしろ、積極的に公開して、府民に「手続きの適正さ」を示す義務がある。

以上の理由により、実施機関の「追加弁明書」は、当該文書を非公開にする合理的な理由にならず失当である。異議申立人は、改めて早期の全面公開を求めるものである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね以下のとおりである。

1 弁明書における主張要旨

(1)公開しないことと決定した部分が大阪府情報公開条例第8条第1項第4号に該当することについて

本件行政文書は平成24年1月17日に開催された国旗掲揚及び国歌斉唱に関する臨時校長会において、府立学校・准校長に対して配布し、説明された文書のうち「職務命令に関する手続き」と、各校校長・准校長あて配布した「校長・准校長限りQ A取扱注意」の二つの行政文書である。

卒業式及び入学式に関する国旗掲揚及び国歌斉唱の指導においては、この間、国歌斉唱時において起立斉唱しない者がおり、校長及び准校長はその指導に懸命に努めている。今年度は実施機関としても指導の徹底を図るため、教育長から全府立学校教職員に対して職務命令を発出し、併せて、校長及び准校長からも自校の教職員に対して職務命令を発したところである。

本件文書は、校長及び准校長が自校の教職員に対し、職務命令を円滑に発出するよう、その手順や手続等を校長・准校長に示したものである。

その内容が公開されることになれば、校長・准校長の指導を無視あるいは逆手に取るような行動を行い、卒業式及全般にわたる運営を滞らせる恐れがあるなど、適正な事務執行ができなくなることが予想される。

こうした点を考慮すれば、当該事由を非公開とすることは、正当な判断に基づくものである。

また、公開されることにより、今後、実施機関から校長及び准校長に対し同種の指導及び指示ができなくなる懸念があり、実施機関から学校への指導事務が困難になる。

(2)異議申立人の「条例第1条の趣旨に反する」という主張について

今回、部分開示を実施しており、

  • ア 該当文書が他の文書で公開されていると判断できる部分
  • イ 実施機関の一般的な認識が記載されており、校長の事務、指導に関して懸念の少ないもの
  • ウ 一般的な指導を表現しており、今回の職務命令を発するに際し、校長の事務、指導に支障がないと考えられるもの

は公開している。

2 追加弁明書における主張要旨

(1)入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の経過

入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱については、児童生徒に国際社会に生きる日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てるとともに、すべての国の国旗及び国歌を尊重する態度を育てる観点から、平成6年度実施の高等学校学習指導要領に「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定され、平成15年度実施の現行の学習指導要領及び来年度より全面実施となる学習指導要領においても同様に規定されている。

また、この間、国において、平成11年8月に「国旗及び国歌に関する法律」が制定されたことを受け、実施機関は、平成11年の9月府議会において、「国旗は壇上に掲げ、国歌斉唱は式次第に入れ、起立して斉唱する」という、いわゆる「望ましい形」を示した。以降、実施機関と各学校の校長・准校長は、一体となって、「望ましい形」の実施に向け、全力を尽くしてきた。

各校における校長・准校長の「粘り強い指導」により、「望ましい形」の実施率は、平成15年度の入学式74.3%、卒業式81.7%であったものが、平成19年度までには100%となった。この段階で、「国旗が掲揚されていない」「国歌斉唱が式次第として実施されていない」入学式、卒業式はなくなり、式の実施そのものについては一定の目標を達成したと言える。

以降、国旗・国歌の指導は、国歌斉唱時の教職員の起立状況の改善にその力点を移すこととなった。実施機関と校長・准校長が一体となり、時間をかけて、不起立を表明する教職員の指導に当たることを基本としつつ、特に、教職員の起立状況に課題がある学校において、校長・准校長の度重なる指導に対しても効果がないような場合には、職務命令の発出も辞さずという強い姿勢で指導に当たった。

平成21年度の卒業式において、個別の学校で初めて、校長による職務命令が発出された。当該校は、前年度の卒業式でも3年担任団全員が不起立という由々しき状況であった。校長は、事態の重大さに鑑み、卒業式に向け、1年をかけて教職員の指導に当たった。また、式の直前まで起立するよう粘り強く説得したが、最後まで、3年の担任団の数名から起立の意思が確認できず、ついに職務命令の発出に至った。結果、国歌斉唱時4名が不起立で戒告処分となった。平成23年の入学式においても、別の学校で校長による職務命令が発出され、2名が不起立で戒告処分となっている。個別の学校における職務命令違反による戒告処分はこの2件6名である。これらを含め、不起立者は、平成22年度卒業式で39校84名、平成23年度入学式で27校38名であり、教職員の起立状況に課題が残る学校が少なからずあることは厳然たる事実であった。

式典において、指導すべき教員が着席したままであることは、極めて不適切なことである。また、これは参列している保護者や府民の信頼を損なう行為でもあり、実施機関としては、教員の起立について、なお一層の指導の徹底を図る必要があった。

以上のような経緯と長年にわたる取組を経て、平成23年6月13日、「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が公布・施行された。本条例制定の議案は、府議会議員により提出されたものであり、まさに「府民の声」と言えるものであった。これを踏まえ、平成24年1月17日、実施機関は、臨時府立学校長会を招集し、府教育長から全府立学校教職員に対して、「入学式及び卒業式等国旗を掲揚し、国歌斉唱が行われる学校行事において、式場内のすべての教職員は、国歌斉唱に当たっては、起立して斉唱する」旨、職務命令の効力を有する通達を発出した。併せて、校長・准校長に対して、職務命令に関する手続き等について説明を行ったところである。

(2)非公開の理由の補足

(1)で示したように、個別の学校で校長が職務命令を発出したことはこれまで2件あるが、教育長が、府立学校のすべての教職員及びすべての校長・准校長に職務命令を発出するのは今回が初めてのことである。校長・准校長にとっても、自校のすべての教職員に対し、職務命令を発出するのは初めてのことである。本件文書は、すべてが初めての状況で、校長・准校長が、教育長からの通達を受け、自校の教職員に対し、滞りなく職務命令を発出できるよう、その手順や必要な手続等を示したものである。学校によっては、(1)で述べたように、長年にわたる校長の「粘り強い指導」にもかかわらず、国歌斉唱時に「起立斉唱しない」教職員が依然存在する状況にあって、今回の職務命令の発出を、共通の手順により、すべての学校で混乱なく適正に行うことは、極めて重要なことであった。

今回、異議申立てのあった文書は、府立学校における入学式、卒業式等における国歌斉唱時の教職員の起立斉唱の徹底を図るため、実施機関が、所属長である校長・准校長に示した対応マニュアルである。このことから、当該文書のうち、職務命令にかかる手続きの詳細や、服務管理に関する事項、懲戒処分の手続きや効果に関する事項は、所属長が各教職員に対して指導等をすべき事項であるため、これらの事項を公開することで、円滑な職務命令の発出に支障を来したり、今後の指導や服務管理等に影響が生じる可能性がきわめて高い。このため非公開とすべきであると考える。

起立斉唱にかかる職務命令は実施機関の強い姿勢を示すものであり、それだけに適正な手続きの遂行を必要とするものである。かかる適正な手続きの遂行を担保するために、先に示した手続きの詳細、服務管理、懲戒処分に関する部分は非公開とすべきである。

また、入学式や卒業式を担当する教職員の集団がローテーションで順次入れ替わっていく学校の組織体制を考えれば、今後、職務命令違反がなくなるまで当分の間は、本件に係る円滑かつ適正な事務執行に特段の配慮を払い、各学校において、教職員の起立状況が改善されているかどうかをしっかりと見極めていく責務が実施機関にあるのは当然のことである。実施機関として、校長・准校長の指導を無視あるいは逆手に取るような対抗行動や、入学式・卒業式全般にわたる事務執行や運営を滞らせる行動等は、厳に回避せねばならないのである。

なお、平成23年度卒業式においては、職務命令にもかかわらず、21校29名が不起立で戒告処分となっている。また、平成24年度入学式でも2校2名が不起立で戒告処分となっており、状況の改善には、なおしばらく時間がかかると考えるのが相当である。

以上の点を考慮すれば、今回の部分公開の決定は、きわめて正当な判断に基づくものであると言える。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)条例第8条第1項第4号について

行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。

このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第4号の趣旨である。

同号は、

  • ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの

は、公開しないことができる旨を定めている。

(2)条例第8条第1項第4号該当性について
  • ア 非公開部分(別紙参照)につき、審査会において当該対象文書を見分し、実施機関によって口頭で説明されたところによると、本件の文書は、府立学校における入学式、卒業式等における国歌斉唱時の教職員の起立斉唱の徹底を図るため、実施機関が、所属長である校長・准校長に示した対応マニュアルとして作成された文書であることから、「府の機関又は国等の機関が行う人事管理等の事務に関する情報」として、(1)アの要件に該当する。
  • イ 次に、本件係争情報が(1)イの要件に該当するかどうかについて、実施機関によって審査会に対し口頭で説明された内容及び審査会において確認した本件係争情報の内容に基づいて検討したところ、以下のとおりである。
    • (ア)(1)イの要件に該当するか否かは、条例第8条第1項第4号によると、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程での公開により、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるか否かにつき、判断する必要がある。
      また、反復継続的な事務事業に関しては、事務事業の性質、目的等からみて、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるか否かにつき判断する必要がある。
      そして、2(1)で示した条例第8条第1項第4号の趣旨からすると、「おそれがあるもの」に該当して公開しないことができるのは、当該情報を公開することによって、「事務の目的が達成できなくなり」、又は、「事務の公正かつ適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」について、蓋然性が具体的かつ客観的に認められる場合に限られる。
    • (イ)以上の基準につき、実施機関によって行われた、別紙「事務執行支障の内容」に係る説明を基に実施機関の主張内容を検討する。
      別紙の「公開・非公開の判断」欄において「公開」と記載されている部分は、公開によって対抗行動が発生する具体的な蓋然性が示されていないもの又は一般論に過ぎないものなど、公開されても具体的な支障がないものと判断することができることから、(1)イの要件に該当しない。
      一方、別紙の「公開・非公開の判断」欄において「原処分妥当」と記載されている部分は、公開によって、卒業式及び入学式を実施する事務の公正かつ適正な遂行に著しい支障を及ぼすと認められることから、(1)イの要件に該当する。

3 結論

以上のとおりであるから、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

大和正史、岩本洋子、野呂充、松本哲治

別紙(ワード:109KB)

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