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令和6年2月21日 府政運営方針説明(要旨)
本日、令和6年2月定例府議会の開会にあたり、私の所信の一端と今後の府政運営の方針について申し述べさせていただきます。
(能登半島地震)
1月1日に発生した能登半島地震では、広範囲にわたり甚大な被害が生じました。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
本府としても、この間、カウンターパートである輪島市に職員を派遣し、避難所の運営支援を行うとともに、義援金の受付や住まいの無償提供、キッチンカーによる温かい食事の提供など、被災地に寄り添った支援を行っています。
今なお、多くの方々が厳しい避難生活を余儀なくされています。被災された皆様が一日でも早く、安全で安心な日常を取り戻せるように、引き続き、オール大阪で多方面からの支援に取り組んでまいります。
(基本姿勢)
能登半島地震により、いつ起こるか分からない災害への備えの大切さを改めて痛感しているところです。近年、全国各地で甚大な災害が発生しており、また、今後、高い確率で南海トラフ巨大地震等の発生が見込まれています。
府民の命と財産を守り抜く。行政として最も重要な使命を果たすため、命はもとより、インフラや社会経済活動への影響など、災害に屈しない強靭な大阪をつくり上げていかなければなりません。
地震・津波の被害想定の見直しや防災・減災対策の推進をはじめ、ソフト・ハードの両面から災害対応力のさらなる強化を図っていきます。
そして、2025年大阪・関西万博の開幕までいよいよ1年あまりとなりました。国内外から来訪される多くの皆様を安全・安心にお迎えする対策に万全を期してまいります。
万博は「未来への羅針盤」です。世界の英知を結集し、地球温暖化や食料危機、貧困問題など、多岐にわたる世界の課題解決への針路を示し、未来に夢と希望を与えます。
ノーベル化学賞受賞者の吉野彰さんは、ワイヤレスホンが話題を呼んだ、1970年大阪万博の25年後に、モバイル・IT社会が幕を開けたと語られています。2025年の万博も、20年、30年先の暮らしや社会のあり方を変えていくイノベーションの萌芽につなげ、未来社会を創る世代を育んでいきたいと思います。私の強い思いです。
また、関連事業や来訪者の消費などによる経済効果は、大阪・関西、ひいては日本全体への波及が見込まれます。
こうした万博の意義や効果に加え、パビリオンの展示内容など、会場でどのような体験ができるのかといった具体的な情報発信をより一層強化し、「行ってみたい」と思える期待感を高めていきます。成功に向けて関係者一丸となり、全力を尽くしてまいります。
そして、万博をインパクトに、府市一体の成長戦略のもと、成長軌道をさらに高みに引き上げ、世界の中で存在感を発揮し、都市間競争に打ち勝つ大阪をめざしていきます。
大阪の強みである、ライフサイエンスのリーディング産業化や、カーボンニュートラルで世界を先導する取組を加速させるとともに、空飛ぶクルマや自動運転バスなど、先端技術やサービスの社会実装に向けて取り組みます。
また、新たな成長エンジンの柱となり、都市格の向上につながるIRや国際金融都市に加え、スマートシティの実現に向けた取組を推し進めます。
あわせて、大阪のポテンシャルを活かした都市魅力の創造や、グランドデザインに基づくまちづくり、成長を支える都市基盤の整備を着実に進めていきます。
いつの時代にあっても、成長の源泉となるのは「人」の力であります。
こうした取組により、世界中の人々を惹きつけ、投資を呼び込み、大阪で挑戦する人材や企業が集まる流れを生み出していきます。
加えて、人材不足が懸念される業種や企業における、持続可能な経営に向けた人材確保への支援や、多様な人材が活躍できる環境整備を進めます。
そして、少子高齢化が進行する中、次代を担う人づくりは、今を生きる私たちの責務です。未来を切り拓く主役となる、子どもたちへの投資に力を注ぎます。
知事再任後、直ちに取り組んだ、高校や大阪公立大学等の授業料等の完全無償化は、この春からスタートをします。子どもたちが生まれ育った環境に左右されず、自らの可能性を追求できる社会の実現をめざし、確実に実施していきます。
足元の経済状況を見ると、消費者物価指数が依然として高い水準で推移するなど、長引く物価高騰への対応が急務です。
国の臨時交付金を活用し、府民や事業者への影響を軽減する対策を迅速に講じるなど、暮らしや事業活動を下支えするセーフティーネットの充実にもしっかり取り組んでいきます。
「大阪をさらに元気にする」、「大阪が変われば日本が変わる」。この思いを胸に、「万博の成功」「府市一体の成長戦略」「教育の無償化」、この3本を柱として、施策を推し進めていきます。
そのうえで、基礎自治機能の充実・強化を図りつつ、東西二極の一極として、日本の成長、有事の際の首都機能のバックアップを担う、副首都・大阪の確かな土台をつくっていきます。
以上のような考え方のもと、令和6年度当初予算を編成いたしました。
(令和6年度当初予算)
本府の財政は、今年度末に減債基金の復元が完了する見通しが立ち、また、府税収入が堅調に推移するものの、社会保障関連経費の増大など、今後も収支不足が生じる見込みです。
さらに、物価上昇や賃上げ等が及ぼす影響や、海外経済等の動向による景気の下振れリスクがあり、依然として楽観できない状況にあります。
引き続き、財政規律を堅持しつつ、万博開催や次世代への投資、万博後の大阪の持続的な成長に向けた施策に重点的に取り組んでまいります。
それでは、来年度の主要施策について、順次、説明いたします。
2018年11月の万博開催決定から5年。いよいよ開催前のラストイヤーを迎えました。人々を惹きつけ、魅力ある万博の実現に向けて、オールジャパン体制で準備を加速させていきます。
会場整備に向けては、博覧会協会をはじめ、政府・自治体・民間により、建設工事が進められています。
大阪ヘルスケアパビリオンについては、iPS細胞による生きる心臓モデルをはじめ、大阪の魅力やポテンシャルを世界にアピールする展示コンテンツの製作や催事の実施に向けて取り組んでいきます。
さらに、交通アクセスに関する取組として、大阪メトロ中央線の輸送力増強を図るとともに、鉄道や道路等の一般交通の分散・平準化に向けて、時差出勤やテレワークなどを働きかける交通需要マネジメントを試行実施します。
一人でも多くの方が万博に興味を持ち、来場していただけるよう、万博への機運をより一層高めることが喫緊の課題です。
開幕1年前や、来場・パビリオン予約の開始などの節目を捉えたイベントの開催やシティドレッシング、SNS等による若年層をターゲットにした情報発信などに取り組んでいきます。
また、子どもたちの招待やボランティアの活動開始に向けた研修の実施、さらに、「祭」をキーワードとする多彩な催事により「大阪」を体感できる「(仮称)大阪ウィーク」の開催に向けて、市町村とともに準備を進めます。
加えて、万博に向けた様々な需要を地元大阪の事業者が取り込めるように、「万博商談もずやんモール」の運用や、事業者のCO₂削減量を府が一括してクレジット化し、万博へ寄附するスキームの構築など、事業者の参加促進を図っていきます。
万博に訪れた方々が安全・安心で快適に過ごしていただけるよう、受入環境の整備を加速させます。
会場内外の警備体制や医療・衛生対策の強化、駅前広場や観光スポットにおける緑化やミスト発生器の設置支援等による猛暑対策を進めます。
さらに、開催時の交通需要の増大に対応するため、新たな移動手段となるライドシェアの制度運用開始にあわせた取組や、開催期間中のアクセスルートの路面標示や舗装の補修など、交通環境の整備を図ります。
万博をインパクトに大阪の持続的な成長と都市格の向上につながる取組を推し進めます。
大阪の強みであるライフサイエンス分野では、未来医療の新たな国際拠点として、「Nakanoshima Qross(中之島クロス)」が開業します。医療機関、企業、スタートアップ、支援機関等の交流・共創を促進することで、再生医療の実用化・産業化を加速させます。
次世代モビリティとして期待される空飛ぶクルマは、万博での運航実現と、その後のビジネス化に向けて、離着陸場の整備や飛行実証の支援、さらには、ビジネス拠点の創出の支援などに取り組みます。
カーボンニュートラルの実現に向けては、技術開発や実証を行う事業者の支援や、府民の行動変容を促すカーボンフットプリントの取組を推進します。
さらに、万博会場周辺海域における藻場の再生・創出を進め、「大阪湾MOBAリンク構想」の実現をめざします。
あわせて、技術革新により、社会課題の解決に向けたポテンシャルを有するスタートアップ、いわゆるディープテックへの支援の強化や、大阪の食の魅力を活かしたガストロノミーツーリズムなど、新たな成長分野の促進を図っていきます。
府内の中小企業や小規模事業者にとっても、ビジネス拡大のチャンスです。
万博期間中の主要駅や空港などでの販路拡大に向けて、「大阪代表商品」を選考し、磨き上げていきます。また、海外からの問い合わせに対応するワンストップ窓口の設置や工場視察の受入れ等によるビジネス交流の創出に取り組みます。
大阪が将来にわたり、活気にあふれ、元気なまちであり続けられるよう、人材育成や次世代への投資を強化していきます。
人材不足が深刻化する運輸・建設業における新事業展開への支援や働く人のスキルアップ支援などに取り組みます。
外国人材の受入れに向けては、海外へのアウトリーチや定着支援、多文化共生の取組などを進めていきます。
次代を担う子どもたちへの施策に一層、力を入れていきます。
高校、大阪公立大学等の授業料等については、これまで一定の所得制限の下で無償化を実施してきましたが、子育て世代の教育費負担をさらに軽減し、大阪が子育てしやすいまちとなるよう、完全無償化を実施します。
来年度から所得制限を段階的に撤廃し、令和8年の制度完成をめざします。
世界の注目が大阪に集まる今こそ、大阪の魅力創出や発信の絶好の機会です。
大阪のビジネス・都市魅力などをSNS等により海外に発信するとともに、新たにVR技術等を活かした世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」 のPRなどに取り組みます。
加えて、「大阪来てな!キャンペーン」や、兵庫県と連携した広域観光コンテンツのプロモーションにより、来阪者の府内滞在や周辺地域への周遊促進を図ります。
さらに、水都大阪の魅力を国内外に発信するため、川と海の結節点である「中之島GATE」の整備や新たな舟運ルートの発掘など、水辺・水上のにぎわいづくりを推進します。
今年9月、うめきた2期区域の先行まちびらきとして、「グラングリーン大阪」が始動します。
先行まちびらきを弾みに、新大阪駅前や夢洲、大阪城東部など、「大阪のまちづくりグランドデザイン」に基づき、大阪のポテンシャルを活かした魅力あるまちづくりを推進していきます。
また、来月、北大阪地域と大阪都心部を直結する北大阪急行線延伸部が開業します。引き続き、淀川左岸線やなにわ筋線、大阪モノレール延伸など、成長を支える交通インフラの整備を着実に進めます。
これからの大阪の成長のエンジンの一つとなるのが、IRと国際金融都市です。
世界最高水準の成長型IRを核とした国際観光拠点の形成に向けて、来年度は準備工事に着手するなど、2030年秋頃のIR開業をめざし、着実に取組を進めます。
あわせて、府民説明会や地元企業等に対するセミナーなどにより、理解促進を図るとともに、ギャンブル等依存症対策にしっかりと取り組みます。
国際金融都市の実現に向けて、企業への個別アプローチやビジネスマッチング・進出企業のフォロー等を実施し、誘致を加速させていきます。
また、先日、国に対して「金融・資産運用特区」の提案をしました。今後、提案事項の実現に向けて、国との協議を進めていきます。
安全・安心は成長の土台です。誰もが安全・安心で豊かに暮らせる環境づくりを進めます。
今般の能登半島地震を受けて、組立式洋式水洗トイレやトイレトレーラーの配備などの対策を講じます。また、これまでの地震・津波対策や国の被害想定の見直しなどを踏まえ、南海トラフ巨大地震等の被害想定の見直しの検討を行い、地域防災計画や次期地震防災アクションプランに反映します。
加えて、密集市街地対策や三大水門の更新、森林整備による防災・減災対策などを着実に進めるとともに、広域防災機能の充実や消防の広域化のさらなる推進、医療機関の浸水対策など、大阪全体で災害対応力を強化していきます。
長引く物価高騰への対策をしっかり講じていきます。子ども食費支援事業の第3弾の実施をはじめ、府立学校の給食費無償化、奨学金を返還しながら働く若者の支援、LPガス利用者の負担軽減などを図ります。事業者に対しては、特別高圧電気料金や飼料価格の高騰による負担の軽減、高効率空調機の導入支援などを行います。
コロナ禍の経験から見えてきた課題や教訓を今後の健康危機事象の対応に活かしていかなければなりません。
新興感染症を想定した医療機関等との協定の締結や、大阪公立大学、大阪健康安全基盤研究所における先進的な感染症対策に関する調査・研究を推進し、感染症に強い都市を進めていきます。
また、持続可能な医療提供体制の構築に向けて、大阪母子医療センターの現地建替えの整備や、小児医療体制における、地域医療機関の連携強化などに取り組みます。
さらに、認知症に関する理解の増進や障がい者の地域移行、インターネット上の人権侵害事象への対応など、府民の命や健康、暮らしを守る取組を充実させていきます。
暮らしの利便性向上につながるスマートシティの実現に向けた取組を加速させます。
昨年12月、金剛バスが撤退するなど、地域の移動手段の確保が課題です。持続可能な公共交通を確保するため、地元市町村や民間バス会社等の取組に加え、将来の自動運転バスの導入に向け、南河内地域において、調査検討を進めます。
さらに、府立高校入学者選抜等のオンライン出願、採点業務のデジタル化や、府公式Webサイトの全面リニューアルなどを実施します。
コロナ禍を経て、不登校の生徒数は年々増加傾向にあります。
「誰もが安心して学べる魅力ある学校づくり」や「すべての子どもが学びへアクセスできる環境整備」に向けて、「大阪府不登校支援パッケージ」を取りまとめました。
スクールカウンセラーや校内教育支援員の配置強化を図るとともに、「学びの多様化学校」の設置に向けて取り組みます。
また、知的障がい支援学校の児童生徒の教育環境を確保するため、新たな支援学校の整備を計画的に進めます。加えて、生徒が自分らしく意欲的に学べるステップスクールの設置など、府立高校の再編整備・魅力化に向けた取組を推進します。
さらに、ヤングケアラーへの支援やSNSを活用した子ども相談窓口、児童虐待対応の強化など、子どもたちの健やかな成長に向けた支援の充実に取り組んでいきます。
以上、令和6年度当初予算の主要な事業について、説明をいたしました。
万博会場の夢洲では、「万博の華」と言われる海外パビリオン等の槌音が響き、大屋根(リング)の建設も着々と進んでいます。いよいよ、世界の約160か国が一堂に会する「未来社会の実験場」が全貌を現し始めます。
開幕まで1年あまりです。この1年は、世界に伍する大都市・大阪への飛躍に向けて、持続的な成長と将来を担う人材育成を確かなものとする、「成長と未来への投資の好循環」を作れるかどうか、その試金石となる重要な年です。
為すべきことをぶれずに実行する。府市一体でこれからの成長の布石となる取組を確実に推し進めるとともに、市町村とも協力し、オール大阪で果敢に取り組んでまいります。
議員並びに府民の皆様におかれましては、今後の府政の推進に一層のご支援、ご協力を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。