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令和7年2月25日 府政運営方針説明(要旨)
本日、令和7年2月定例府議会の開会にあたり、私の所信の一端と今後の府政運営の方針について申し述べます。
(物価高騰対策)
まずは、長引く物価高騰への対応です。
消費者物価指数、企業物価指数ともに、高い水準で推移し、米をはじめとする食品価格、燃料価格等の高騰は、府民の暮らしや事業活動を直撃しています。
国の交付金を最大限活用し、特に影響を受ける府民の暮らしや、事業者の活動を下支えする取組を、スピード感をもって進めてまいります。
(基本姿勢)
こうした現下の課題に対応しつつ、いよいよ4月には、2025年大阪・関西万博が開幕をします。
2015年の誘致の構想の検討開始から足掛け10年となりました。府市一体で、国、経済界、博覧会協会などオールジャパン体制で進めてきた準備も大詰めとなっています。
会場建設やインフラ整備も進み、先月には、大阪メトロ「夢洲駅」が開業をいたしました。
また、多くの企業において、万博に向け「空飛ぶクルマ」や「水素船」、「ペロブスカイト太陽電池」など、革新的技術にチャレンジし、未来社会を先取りする取組が進められています。特に大阪ヘルスケアパビリオンでは、万博という国際舞台で、400を超える大阪の中小企業・スタートアップが、個性あふれる技術力や魅力を発信するため、着々と準備を進めています。
万博にあわせ、大阪のまちも、ダイナミックに変わりつつあります。
昨年、都心にみどりを備えた「うめきた2期」が先行まちびらきをし、新たな大阪の顔として賑わいを見せています。また、未来医療の産業化拠点である「Nakanoshima Qross」が開業しました。IRの開業を控える「夢洲」や、今年の秋、大阪公立大学の新キャンパスが開校する「大阪城東部」のまちづくりなど、万博をめがけて大阪の都市づくりも大きく前進をしています。
成長の大きな柱である観光面でも、コロナで激減していたインバウンドも急激に回復し、昨年は過去最多の1,500万人にのぼる見通しです。
この流れを確かなものとし、将来にわたって持続させ、大阪が世界に伍する都市へと大きく飛躍していくための最大のチャンスが万博でもあります。
私は、「万博の成功」というものを公約で掲げました。まさに万博は大阪の未来を左右する一大プロジェクトである、そのことを常に念頭に置いて、この間準備を進めてきました。そして来年度予算は、その集大成であると同時に、万博後もそのレガシーを活かし、大阪が持続的に成長し、名実ともに国際都市として飛躍する布石を打つために編成をいたしました。
あわせて、未来を担う子どもたちへの投資という面も、府政の重要な柱として、来年度予算でも重点化を図っています。
とりわけ万博は、世界の革新的な技術やアイデアはもとより、大阪にいながら、世界の多様な文化や価値観に触れることができる特別な空間です。子どもたちには直接会場で「未来社会」や「世界」を体感してほしいと思います。そして、自分の将来に向けてチャレンジするきっかけにしてほしいと考えます。
昨年スタートした高校、そして大阪公立大学等における授業料等の完全無償化。このチャレンジングな取組も2年目を迎えます。子どもたちが生まれ育った環境に左右されず、自らの可能性を追求できる社会の実現をめざし、着実に進めます。
さらに子どもたちには、語学力はもとより、これからのグローバル社会を生き抜く国際感覚を養ってもらいたいと思います。そういう思いから、全府立高校で、海外姉妹校と提携した短期留学制度の導入に取り組みます。
もう一つの柱が、高い確率で発生が予想される南海トラフ巨大地震など、自然災害への備えに万全を期すということです。
今年は、多くの尊い命が失われ、甚大な被害をもたらした阪神・淡路大震災から30年。昨年も、能登半島地震が発生するなど、日本各地で災害が激甚化・頻発化しています。
府民の命と暮らしを守ることは、揺らぐことのない府政の使命です。これまでの振り返りを通じて、府民の安全と安心をより高めるための措置を講じます。
以上のような考えを柱に、令和7年度当初予算を編成いたしました。
(令和7年度当初予算)
本府の財政は、昨年度末に減債基金の復元が完了し、来年度の府税収入は過去最大になると見込んでいます。
この背景には、2022年度の大阪府の実質成長率が3.2%と全国を上回る伸びを示したこと。府内総生産は名目で約43兆円と過去最高を記録したことなど、万博をめざし、官民による成長に向けた取組が、着実に進んでいることにあると考えます。
令和7年度当初予算においては、こうした状況を踏まえ、万博の成功に向けた取組や、大阪の持続的な成長・発展に向けた施策に重点的に取り組みつつ、引き続き財政規律はしっかり堅持した編成に努めています。
それでは、来年度の主要施策について、順次、説明いたします。
物価高騰対策として、今年度補正と来年度当初予算で217億円余りを計上し、府民生活と事業活動を下支えします。
全ての大阪の子どもたちを対象とした子ども食費支援は、支援額を一人当たり7千円に引き上げます。そのほか、府立学校の給食費無償化や働く若者への奨学金返還支援などを行います。
あわせて、医療機関・社会福祉施設等における光熱費などの負担を軽減するとともに、高効率空調機の導入、新規事業や生産性向上に取り組む中小企業への支援など、事業者に対する施策を講じます。
そして、開幕まで47日となった万博の成功に向け、全力を尽くします。
何よりも安全・安心に万博を開催するため、会場内外の警備体制の強化はもとより、自然災害や感染症パンデミック等に備えた危機管理体制、救急患者の受入体制の整備などに取り組みます。
大阪府市で出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」では、自身の健康データを基に25年後の自分に出会える「ミライのじぶん」や、iPS細胞による「自ら動く心筋シート」、中小企業・スタートアップの技術力や魅力などを展示・発信していきます。
一人でも多くの方に、万博の魅力を感じ、行ってみたいと思っていただけるよう、一層の機運醸成を図ります。
会場内催事や各パビリオンで体験できる内容を、SNSやイベントで効果的に発信し、来場意欲の向上につなげます。加えて、主要ターミナル・集客エリアでのシティドレッシングにより、万博開幕の歓迎ムードなどを創出します。
あわせて、府内の公共施設や民間施設などに「万博来場サポートデスク」を拡充し、チケット購入や来場⽇時予約、パビリオン入場予約等を⽀援します。
大阪の子どもたちや、能登半島地震等で被災した地域の子どもたちを招待します。学校単位での来場が安全・円滑に進むよう、専用列車の導入や熱中症対策、緊急相談窓口の設置などの対策を講じていきます。
さらに、国内外から来訪される賓客を含む多くの皆様を、大阪ならではのおもてなしでお迎えします。
加えて、府域全域・24時間で運行されるライドシェアなどにより、移動の円滑化を図るとともに、交通混雑の緩和を目的に、時差出勤やテレワークなどを働きかける交通需要マネジメントを実施します。
国内外の注目が集まる万博を機に、大阪の魅力をアピールします。
会場では、府内市町村とともに、春・夏・秋の3期にわたり、「祭」をテーマにだんじりや神輿などが味わえる「大阪ウィーク」を開催します。また、会場外でも、御堂筋イルミネーションやウォーターショーなど、多くの人をひきつけ、大阪の魅力向上につながる取組を展開します。
国内外の政府関係者や経済団体等の来阪を、府内企業のビジネスチャンスにつなげるため、ビジネスミッションを一元的に受け付ける「大阪海外ビジネスワンストップ窓口」や、「大阪街中ものづくりパビリオン」などを運用します。
万博のインパクトを最大限に活かし、大阪の飛躍に向けた取組を加速させるため、府市一体で、万博後の大阪の未来を描く「Beyond EXPO 2025」の策定に取り組みます。
万博後も継続的に投資を呼び込んでいくため、ライフサイエンス分野では、未来医療の産業化を進める「Nakanoshima Qross」において、リーディングプロジェクトの創出や、投資家とのマッチングにより、スタートアップの海外展開を支援します。
カーボンニュートラル分野では、新技術のビジネス化を推進する全国初の拠点機能を整備します。また、ゼロエミッション車など脱炭素モビリティの導入を促進していきます。
空飛ぶクルマのビジネス化に向けて、飛行実証等の取組や観光分野におけるビジネスモデルの構築などを支援します。
さらに、民間資金を活用したイノベーション創出基金を設置し、新技術等を実装化します。また、ディープテックスタートアップの創出に重点を置いた支援に取り組みます。
あわせて、こうした取組を金融面で支える国際金融都市の実現に向け、金融系外国企業等の誘致や投資家と企業のマッチングなどを進めていきます。
新たな成長分野にもチャレンジします。大阪の食の魅力を活かして周遊につなげる「ガストロノミーツーリズム」や、近年人気が拡大している「eスポーツ」などに取り組みます。
今後とも増加が見込まれるインバウンド需要を取り込むため、世界最高水準の成長型IRを核とした国際観光拠点の形成により、突き抜けたエンターテインメントを創出し、世界でここにしかないという魅力を生み出します。
2030年秋頃のIR開業をめざし、取組を着実に推進するとともに、ギャンブル等依存症対策にもしっかりと取り組みます。
また、ラグジュアリー・ツーリズムの推進や観光コンテンツのデジタルプロモーションなどにより、大阪の魅力を発信し、誘客を促進します。加えて、大型スーツケース等の輸送サービスの利用促進や公共交通機関におけるキャッシュレス対応機器の導入など、受入環境の整備を進めます。
成長を加速させる多様な人材の活躍と、生産性の向上が不可欠です。
外国人留学生のインターンシップの受入支援や、リスキリングを通じた働く人のスキルアップ支援などに取り組みます。
大阪公立大学においては、グローバル社会で活躍できる人材育成等に向けて、秋入学の学士課程への導入に向けた調査・検討を実施します。
さらに、中小企業が行う新規事業のための設備投資や、新たな販路開拓に向けた展示商談会への出展などを支援します。
大阪の成長を支える都市基盤の強化については、グランドデザインのもと、大阪のポテンシャルを活かしたダイナミックなまちづくりを推進します。
「夢洲2期」では、府市でマスタープランを策定し、万博の理念を継承したまちづくりを進めることとしており、来年度は、開発事業者の募集を予定しています。また、「大阪城東部」においては、2028年春からのまちびらきをめざし、取組を進めていきます。
あわせて、なにわ筋線や大阪モノレールの延伸、淀川左岸線など鉄道・道路ネットワークの充実を図ります。
次代を担う子どもたちの成長と学びを支えることが、大阪の明るい未来への「架け橋」となります。
高校、大阪公立大学等の授業料等の完全無償化について、令和8年度の制度完成に向け、着実に進めます。
また、府立高校において、AIを搭載した英語学習ツールの活用を進めるとともに、海外の学校との姉妹校提携、短期留学を通じて、実践的な英語力の向上をめざします。
さらに、増加する不登校児童等を支援するため、オンライン学習支援等の実施により学びの機会を確保するとともに、ヤングケアラーへの支援や児童虐待への対応力強化を図っていきます。
誰もが安全・安心に暮らせる環境づくりを進めます。
特殊詐欺は、高齢者の老後の大切な生活資金を騙し取る悪質な犯罪です。昨年の府内の被害額は、一日当たり1,700万円以上と深刻な状況です。根絶に向け、事業者に対策を義務付ける条例改正を行うなど、全国初の取組を進めます。
性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる卑劣な犯罪行為です。被害者に寄り添った適切な支援を早期に行えるよう、「ワンストップ支援センター」について、移転先を「こころの健康総合センター」内とし、府の責務としてしっかりと運営していきます。
また、健やかな妊娠・出産に向けて、ライフプランを考え、日々の健康と向き合う「プレコンセプションケア」を推進するとともに、医学的支援が必要な方への卵子凍結等の妊よう性温存治療をサポートします。
将来にわたり、安定的に行政サービスを提供できるよう、基礎自治機能の充実・強化に取り組む市町村に対して、あり方検討の場づくりや広域連携の促進など、よりきめ細かな支援を行います。
万博で運行する自動運転バスを活用し、南河内地域においてテスト走行等の実証実験をスタートさせるなど、地域公共交通の課題解消に向けた取組を進めます。
さらに、デジタルサービスの実装による暮らしの利便性の向上をめざし、オンラインで行政手続等が行える「my door OSAKA」の運用や、許認可に関する業務のデジタル化を進めていきます。
いつ起こるかわからない自然災害に平時から備え、災害リスクを軽減することが重要です。
能登半島地震の振り返りなどを踏まえ、携帯電話基地局の機能強化や、避難所における備蓄物資の拡充、保健所における自家用発電設備の整備など災害対応力の強化・充実を図ります。
あわせて、建築物の耐震化や三大水門の更新、森林整備による防災・減災対策などを着実に進め、ソフト・ハードの両面から災害に強いまちづくりを進めます。
以上、令和7年度当初予算の主要な事業について、説明をいたしました。
万博の成功。そして、持続的な成長・発展の実現。その先に、名実ともに東西二極の一極となる副首都・大阪の実現。
東京一極集中、旧態依然とした国と地方の関係、これを転換し、国の成長エンジンを東西二極に、そして多極分散型の国の形に変えていきます。
こうした大きなうねりを創っていくためにも、万博からの「よき流れ」を次の「よき流れ」につなげ、さらに高みに引き上げていきます。大阪の果たす役割は大きいと考えます。2025年、大阪の歴史が変わる年となるよう、全ての関係者の思いを一つに、果敢に取り組んでまいります。
議員並びに府民の皆様におかれましては、今後の府政の推進に一層のご支援、ご協力を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。