印刷

更新日:2009年12月3日

ページID:27981

ここから本文です。

大阪府情報公開審査会答申(大公審第87号)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立てに係る不存在による非公開決定を取り消し、「境界確定図(申請地 大阪狭山市(町名地番等略)、立会 平成3年○月○日に係る未結了のもの)の第二原図」を公開請求に対応する行政文書として特定の上、改めて、公開・非公開等の決定を行うべきである。

第二 本件異議申立てに至る経過

  1. 平成14年7月24日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「大阪狭山市(町名地番略)(以下「本件土地」という。)の土地買収にかかわる契約書、場所を特定する図面と交渉記録、その他一切の文書」、「河内長野美原線の拡幅工事の用地買収にかかわる図面(町名略)」、「東除川改修工事の用地買収にかかわる図面、及境界の立合に関する図面(地名略)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 平成14年8月22日、実施機関は、本件請求のうち「河内長野美原線の拡幅工事の用地買収にかかわる図面(町名略)」及び「東除川改修工事の境界の立合に関する図面(地名略)」に係る部分について、それぞれ「河内長野美原線の拡幅工事の用地買収に係る図面(町名略)」(丈量図)2枚及び「東除川改修工事に係る境界確定図(地名略)」(明示指令図)7枚を特定の上、個人の印影及び個人の住所(ただし、土地所有者を除く。)を除いて公開するとの部分公開決定を行うとともに、「大阪狭山市(町名地番略)の土地買収にかかわる契約書、場所を特定する図面と交渉記録、その他一切の文書」及び「東除川改修工事の用地買収にかかわる図面(地名略)」に係る部分について、不存在による非公開決定(以下「本件不存在決定」という。)を行い、「公開請求に係る行政文書については作成又は取得していないため、管理していない。」との理由を付して、異議申立人に通知した。
  3. 平成14年10月22日、異議申立人は、上記各決定のうち、本件不存在決定を不服とし、本件異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

公開請求書に記載した文書のうち「不存在による非公開決定」とした行政文書の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1「東除川改修工事の用地買収に係わる図面(地名略)」について

東除川改修工事の用地買収に係わる図面(地名略)については、平成3年○月○日頃に立会し作成された関係者全員が承認捺印したもので、保存管理されていなければならないものである。

本件土地買収につき、相続人Aは、他の相続人(異議申立人もこれに含まれる。)に対し「買収される土地は、かって、府道の建設によって本件土地が東西に分割された際、登記もれとなっていた東側の部分であり、登記されている西側の土地は地元に寄付する」と説明していた。

さらに平成4年○月には、相続人A宛に「買取り等の申し出証明書」が送付され、所有者の欄が相続人Aの名になっていたことなどから、買収される本件土地は、相続人Aの説明どおり、府道より東側の未登記の土地と思われる。

本件土地の場所を確認するため、平成4年10月、実施機関において、当該図面の開示を受けた。東除川とその両岸のもので、ロール状の長い図面であった。開示されたのは、府道より西側の登記されている部分だけで、この部分以外は開示を拒否された。今回請求しているのは、このとき拒否された部分であり、(地名略)としたのはこのためである。

実施機関のいう、「本件土地」の図面はこのとき開示された部分で、コピーももらっている。故に、実施機関がこの図面を、平成3年に廃棄したと述べているのは事実ではない。

当該図面には、地権者及び関係者の署名捺印があり、実施機関が独断で廃棄できるものではない。

なお、この図面は、黒台紙で巻物風に装丁してあり、実施機関の担当者は、大阪府の本庁にも同じものが管理されているとの説明であった。

2「大阪狭山市(町名地番略)の土地買収に係わる契約書、場所を特定する図面と交渉記録、その他一切の文書」について

「大阪狭山市(町名地番略)の土地買収に係わる契約書、場所を特定する図面と交渉記録、その他一切の文書」については「公共事業用資産の買取等の申出証明書」(以下「申出証明書」という。)を発行し、資産の所有者に送付している。これは公共用地買収手続の最終部分であり、この申出証明書発行に至る文書は当然作成され管理されているはずである。

平成4年○月○日に、相続人Aに送付された申出証明書は、税金の確定申告書に添付するもので、同封の実施機関の案内書にも「この証明書は確定申告の手続きに必要な書類です」と記されており、土地代金が支払われていることを認めている。したがって、契約書その他の文書も、作成又は取得しているはずである。平成14年9月に実施機関は、異議申立人にこの証明書のファイルを開示し、管理されていることを認めた。

故に、これらの書類は、「作成又は取得していない」との実施機関の主張は事実ではない。

第五 実施機関の主張要旨

1 東除川改修事業について

本件異議申立てに係る東除川改修事業(以下「本件事業」という。)は、大阪狭山市内の狭山池から流れ出る東除川を、狭山池ダム改修計画(従来、農業用のため池であった狭山池に新たに治水機能を持たせようとした改修計画である。狭山池に治水機能を持たせるには、従前の180万立方メートル貯水量に洪水調整容量として100万立方メートルを追加する必要があり、そのため、狭山池の池底を約3m掘削し、堤体を約1m嵩上げようとしたものである。狭山池ダム改修計画に伴う工事は、昭和63年12月着工し、平成13年3月に完成している。)にあわせて改修しようとしたものである。この狭山池ダム改修計画により、狭山池の貯水位が約2m下がり、狭山池から東除川への放流口も約2m下がることとなることから、これに対応するため東除川の川床を約2m掘り下げる必要が生じたものである。

具体的な工事内容としては、狭山池から下流180mの区間にわたって、当初幅3~4m、深さ約2.5mの石張り構造であった水路を、幅2.5m、深さ約5.0mのコンクリート構造に改修したものであり、当該工事は平成4年9月に着手し、平成7年3月に竣工している。

2 公共事業における一般的な用地事務の概要について

(1)事業計画の決定

実施機関は、各種の公共事業を実施するに当たって具体的な目標を設定し、実現までの過程を明らかにする事業計画を策定しており、土木部が行う事業においても、まず事業計画を策定し、これに基づき事業を実施しているところである。事業計画は、事業地の範囲、事業施行期間、設計の概要を明らかにするものである。

(2)用地取得計画及び用地取得実施計画の策定

実施機関は、事業計画の決定により事業実施区域が確定すると、用地取得計画及び用地取得実施計画を策定する。

  • ア 事業を主管する担当課(以下「事業主管課」という。)は、工事実施計画に基づいて工事に必要な土地の取得計画(以下「用地取得計画」という。)を策定し用地室に提出する。
  • イ 用地室では、各事業主管課から提出された用地取得計画を総合調整し、土木部としての用地取得計画を策定するとともに、各土木事務所長等に対する用地の取得指令、又は大阪府土地開発公社(以下「公社」という。)に対する用地の取得依頼を行う。
  • ウ 各土木事務所長等及び公社は、取得指令又は取得依頼に基づき、1年間の用地取得実施計画を策定し、用地室長に提出する。

(3)現地調査等の実施

実施機関は、用地取得実施計画に基づき、現地調査等を行う。

  • ア 実施機関の担当者は、計画平面図や付近の住宅地図等を基に、取得又は使用しようとする土地及び支障物件についての形状や計画線に対する掛かり具合などを現地で確認する。
  • イ 現地調査により、取得又は使用しようとする土地及び支障物件の確認が済むと、それらが誰の所有であるかを地籍図や土地登記簿等の調査によって確定する。
  • ウ 土地登記簿等によって調査された事項について土地所有者等の権利者が、実態と合致しているかどうかを住民票等に基づき確認する。

(4)説明会

実施機関は、事業を施行しようとする場合、土地等の権利者及び地元関係者に対して説明会を開催し、事業の目的、概要、その他必要と認められる事項を周知し、当該工事及び土地の取得についての協力が得られるように努めている。

説明会では、a 事業の必要性及び工事の概要、b 取得又は使用しようとする土地の範囲、c 交渉の方針、d 補償方針の概要、e 課税の特例の概要、f 現地測量調査、g 物件の立入り調査等に関する説明を行っている。

(5)測量調査等

説明会の終了後、用地取得の範囲を確定するため、計画線にしたがって現地に幅杭の打設が行われる。また、幅杭の打設後、現地において関係者の立会いのもとに公共用地境界、民々境界を確定して、これに基づき境界杭の打設が行われる。

民々の境界においては、権利者(土地所有者、借地権者等)及び隣接地の所有者の現地立会が必要となる。また、公共用地との境界については、公共用地の管理者及び隣接地の所有者の現地立会が必要となる。このためには、あらかじめ公共用地の管理者に対する境界確定申請が必要とされている。

現地立会の主な目的は、a 各土地の境界、b 所有権以外の権利の種類及びその範囲、c 事前調査により調査した権利者の住所、氏名等の確認を行うことである。

(6)丈量図の作成

現地において確認された境界点に基づき、丈量図を作成する。

丈量図は、買収に係る土地の面積を求積すること等を目的として作成されるものであり、土地の地番、形状、寸法、面積等が記載されるものである。

(7)土地の評価等

土地評価は、取得する必要のある土地の価格を算定しようとするものであり、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」等に基づき、近傍類地の取引価格、公示価格、基準地価格、鑑定評価価格等を基に算定するものである。

(8)用地取得交渉

土地の評価額、補償金額の算定が終わると、用地取得交渉に入ることとなる。

担当者は、用地取得交渉の際に権利者等に対し、a 事業の計画概要等、b 用地取得面積、土地格差、金額、c 補償金額とその内訳、内容、d 収用等の課税の特例、e 契約書等様式と支払方法、支払時期等についての説明を行うこととされており、用地取得交渉を終えた後は、その都度交渉経過票に交渉内容を記録することとされている。

(9)契約締結等

用地取得について各権利者からの同意が得られると、各権利者と契約を締結し、土地所有権の移転登記及び各権利者等への補償金の支出を行う。

3 本件異議申立てに係る行政文書が不存在であることについて

(1)「東除川改修工事の用地買収にかかわる図面(地名略)」が不存在であることについて

当初、実施機関は、本件事業について原則的に現状の河川区域内で改修を行うこととしていたため用地買収を行う予定はなかったが、調査の結果、本件土地が本件事業の計画線にかかる可能性が出てきたため本件土地を買収することとし、上述の用地事務の手順に従って手続を進めることにした。

当時、実施機関は、本件土地の元の所有者が死亡し、相続が開始されていることを調査により把握していた。そこで、実施機関は、相続人のうち1人(相続人A)に連絡をとったところ、同人が他の相続人の委任を受けているとして交渉窓口となったため、相続人Aとの間で用地取得のための準備を行い、平成3年○月○日、相続人A及び隣接地所有者ら利害関係人が現地で立会い、本件土地の境界についていったん同意を得た。しかし、相続人Aから、他の相続人の委任状が提出されず、また、平成3年○月には、異議申立人から本件土地の境界等について異議が出されたため、結局、境界確定は不調に終わったのである。

以上の経緯で、本件土地の境界確定及び買収が困難となったため、実施機関は工事内容を再検討し、その結果、本件土地に係る区間の工事を施工しなくても、対岸の改修工事によって事業の目的を達成し得ると判断したため、本件土地の境界確定及び買収を行わないこととしたものであり、本件土地の境界確定の必要はなくなったのである。

なお、実施機関は、本件事業の実施に当たり、河川改修工事によって土地の形状が変わり、公共用地境界及び民々境界が不明瞭になることを防止する観点から、東除川両岸の付近一帯の土地について、一括して公共用地境界及び民々境界の確定を行ったが、本件土地については境界確定に至っていないものである。

本件土地以外の境界確定に係る図面については、本件請求を受け、個人の住所及び印影といった個人のプライバシーに関する情報を除いて公開する旨を決定し、平成14年9月4日、異議申立人に対して公開を実施したところである。

異議申立人が請求している「東除川改修工事の用地買収にかかわる図面(地名略)」とは、平成3年○月○日に行われた現地立会において、実施機関が用意していた図面を指すものと考えるが、本件土地の境界確定に係る経緯については上述のとおりであるから、当該図面については、本件境界確定が不調に終わった時点で不要となったため廃棄しており、したがって実施機関は、異議申立人の請求する図面を現に管理していないものである。

(2)「大阪狭山市(町名地番略)の土地買収にかかわる契約書、場所を特定する図面と交渉記録、その他一切の文書」が不存在であることについて

実施機関は、本件土地を買収する予定であったが、相続人Aを除く本件土地の相続人から同意を得ることができなかったため本件土地に係る境界確定を実施することができず、丈量図の作成及びその後の用地取得交渉を行うことができなかったものである。

したがって、実施機関は、本件土地に係る売買契約書、場所を特定する図面及びこれに類する書類を作成又は取得していなかったものである。また、交渉記録については、相続人Aとの間で用地取得交渉が順調に推移していたことから、交渉経過表を作成していなかったため、現に管理していないものである。

(3)申出証明書について

異議申立人は、異議申立書に本件土地に係る申出証明書の写しを添付し、これをもって「公共用地買収手続の最終部分」であると主張するので、申出証明書について説明を行う。

公共事業のために資産(土地、借地権、建物等)を地方公共団体等に譲渡したものに対しては、租税特別措置法によって、当該資産の譲渡によって生じる所得について税負担を軽減することを内容とする課税の特例が認められている。

この特例が適用されるためには、一定の要件を満たすことが求められるが、その要件の一つとして、「買取り等の申出があった日から6か月以内に譲渡が行われること」がある。また、地方公共団体等は、被買収者に対し、課税の特例が適用される事業のために買取りを申し出た旨の証明書(申出証明書)を交付する一方、所轄税務署長に対し「不動産等の譲受けの対価の支払調書」等を所定の期限までに提出しなければならないこととされている。

申出証明書には、「買取り等の申出年月日」を記載する欄があり、当該欄には、上記「買取り等の申出があった日」が記載されるものである。しかしながら、土地売買契約等の締結の可否は、地方公共団体等と被買収者との間で行われる交渉の如何にもよるものであり、申出証明書は、必ずしも土地売買契約等の成立を証明するものではない。

なお、平成3年○月○日現在で、本件土地に係る境界確定が未了であるにもかかわらず、相続人Aに対して申出証明書を交付したのは、同年○月○日の本件境界確定のための現地立会において、相続人A及び隣接地所有者ら利害関係人の同意を得ることができ、その後の用地取得交渉が順調に進むものと判断されたためであるが、本件土地に係る相続人A以外の相続人からの異議により、用地取得交渉が一切進展しないまま、現在に至ったものである。

第六 審査会の判断

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに、府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このような理念の下に実施されている行政文書公開制度の対象となる「行政文書」の範囲については、条例第2条第1項において、a 「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)並びに電磁的記録」であって、b 「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいうと規定されており、実施機関は、請求に係る情報が上記の各要件を満たす「行政文書」に記録されている場合には、当該情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除き、その行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件不存在決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)大阪府富田林土木事務所において、公共事業用地の買収の過程で通常作成又は取得される文書とその保存について

実施機関の説明等により、事務の進行に応じて、通常次のとおり文書が作成又は取得され、保存されるものであることが認められる。

ア 用地取得計画の策定まで

事業計画の決定に際しては、「現況平面図」と「計画平面図」が作成される。これらの図面は、住宅地図や地籍図とともに用地買収のための現地調査の資料となるほか、関係者に対する説明会の資料として利用されるものであり、5年保存することとされている。

次いで、事業計画に基づいて取得すべき土地を定め又は指示する文書として、「用地取得計画書」又は「取得指令書」が作成される。これらの文書は、長期保存することとされている。

イ 説明会

説明会は、事業担当課が主催し、用地課はそれに参加する形で開催される。「説明会の次第」のほか、説明会の内容に応じて、「計画平面図」などの資料が、適宜用意される。これらの説明会に関する資料は、事業担当課が作成し、説明会終了後は、契約書等経費支出関係文書とは別に長期保存することとされているが、実際には、保管スペースの関係もあり、会計検査院の検査(国費を含む買収の場合)、監査委員の事務監査(府費単独による買収の場合)等が終了した段階で廃棄していることがある。

ウ 測量調査から土地の評価まで

測量調査の際には、現地立会をした地権者の名簿である「立会参加者名簿」が作成され、次いで、測量調査の結果に基づき買収すべき土地の境界を確定する「境界確定図(明示指令図)」と確定した境界をもとに土地所有者ごと一筆ごとに面積を算定した「丈量図」が作成される。土木事務所内の公共事業に係る「境界確定図(明示指令図)」は3部作成され、境界明示手続完了後、明示担当の部署が2部持って長期保存するほか、事業担当の部署が1部を持つことになっている。

また、境界及び面積が確定された買収予定地については、価格を試算して「土地評価調書」が作成され、関係の図面等とともに財産評価審査会への諮問の資料とされる。「土地評価調書」は、5年保存することとされている。

エ 買収交渉

買収交渉に際しては、地権者との交渉の経過を記録した「交渉経過表」を作成し、長期保存することとされているが、交渉が順調に推移した場合、実際には、作成されないことがあり、作成された場合も、長期にわたる事業であるときや工事に関する約束事があるときなどを除き、買収手続完了後に、廃棄している場合が多い。

また、価格提示については、現在は「補償金提示書」を作成して行っているが、本件土地に係る買収交渉が行われた当時は、文書を作成して提示することは義務づけられておらず、平成3~4年頃の富田林土木事務所においては、「売買契約書の案」を示して、価格提示を行うことが多かった。

なお、価格提示を行った際には、相手方に対して、譲渡所得等に対する課税の特例を受けるための必要書類として、申出証明書を発行している(公社が買収する場合は、公社が発行する。)。

オ 契約及び登記

買収交渉が合意に達すると契約締結及び支出についての起案決裁を経て、「売買契約書」が作成される。契約締結及び支出についての起案文書には、契約書案のほか、必要に応じて、財産評価審査会の「評価答申書の写し」、「用地取得調書」、「登記簿の写し」等の書類と「位置図」、「計画平面図」、「丈量図」等の図面が添付されており、用地担当の部署において、長期保存されている。

また、契約締結後は、売買契約書の規定に基づいて地権者から売買代金の「請求書」と「登記承諾書」が提出されるのと引き換えに、所有権移転の嘱託登記と売買代金の支払の手続が行われる。これらの文書も、長期保存することとされている。

なお、買取りの申出をした日から6か月を経過するまでに契約を行った場合は、相手方に対し、譲渡所得等に対する課税の特例を受けるための必要書類として、「公共事業用資産の買取り等の証明書」(以下「買取り等証明書」という。)を発行している(公社が買収する場合は、公社が発行する。)。

(2)本件土地に係る工事等の経過について

実施機関の説明及び審査会において調査した結果により、以下のことが認められる。

  • ア 本件事業は、狭山池ダム建設工事に関連する河川改修工事として、富田林土木事務所が担当して施行されたものである。本件事業は、原則的に現状の河川区域内で改修を行う工事であり、工事用に必要な土地の一時使用のほかに、用地買収まで検討されたのは、本件土地のみであった。
  • イ 本件土地の買収交渉は、登記名義人が死亡していたため、法定相続人のうち当時最も近い場所に住所地のあった相続人Aとの間で進められ、平成3年○月頃には、買収価格を提示するとともに、同年○月に、申出証明書(公社の発行に係るもの。)を交付するまでに進行していた。
  • ウ この間、平成3年○月○日に近隣の地権者とともに相続人Aが立会して行われた測量調査の結果に基づき、富田林土木事務所が、境界確定用の図面3部を作成し、相続人Aを含む地権者の署名押印を得ていたが、本件土地については、他の相続人の委任状又は権利放棄証明書が必要なため、相続人Aに提出を求めていたところ、提出がなかったことから、境界明示が結了に至らず、本件土地の買収手続を進めることができなくなった。この結果、6か月以内に契約を行った場合に発行される買取り等証明書は、本件土地に関しては、発行されていない。
  • エ その後、本件土地付近の改修工事については、本件土地の買収をしないで行える対岸部分のみの工事に変更して実施され、平成7年3月に終了している。本件土地付近の境界に関しては、対岸部分に限定した図面が新たに作成され、関係地権者の署名押印を得て、平成5年○月○日決裁により、境界明示が結了している。

(3)富田林土木事務所が異議申立人に対して公開又は提供した情報について

実施機関の説明及び異議申立人の口頭意見陳述の内容並びに審査会において調査した結果等により、以下のことが認められる。

  • ア 平成3年○月頃、相続人A以外の法定相続人の1人である異議申立人が富田林土木事務所に赴き、本件土地の買収に関して問い合わせるとともに境界に関する異議の申出を行った。この際の対応については、記録が現存せず、具体的な内容を確認することができなかったが、異議申立人の口頭意見陳述の内容等も総合すると、富田林土木事務所の担当者は、異議申立人に対し、相続人Aに提示した「売買契約書の案」などを閲覧に供するとともに写しの提供を行ったものと推定される。
  • イ その後(異議申立人の主張によれば平成4年10月。実施機関に記録が現存せず、具体的な時期や内容を確認することはできない。)、富田林土木事務所は、異議申立人に対して、本件土地の用地買収のために準備し相続人Aを含む地権者の署名捺印を得ていた未結了の境界確定図面を閲覧に供するとともに、その縮小コピー(異議申立書添付の図面)を交付したと推定される。
  • ウ 平成14年9月4日、富田林土木事務所の担当者が大阪府府政情報センターに赴き、異議申立人に対し、本件請求により部分公開決定がなされた府道河内長野美原線の拡幅工事の用地買収に係る「丈量図」2枚((町名略)に係るもの)と東除川改修工事に係る「境界確定図(明示指令図)」7枚((地名略)に係るもの。ただし、買収に係るものではない。)の公開を実施した。
  • エ 平成14年9月25日、富田林土木事務所は、同事務所に赴いた異議申立人に対し、本件請求による公開の実施とは別に、本件土地に係る申出証明書(公社の発行に係るもの)の控を閲覧に供するとともに、写しを交付した。

(4)「大阪狭山市(町名地番略)の土地買収にかかわる契約書、場所を特定する図面と交渉記録、その他一切の文書」に対応する行政文書の存否について

異議申立人は、本項において、本件土地の買収に関する文書を広く公開請求の対象としたものであり、本項の記載のみからは、不調に終わった買収に係る文書を含める趣旨であったのか必ずしも明らかではないが、異議申立人が、富田林土木事務所に対して、かねてより本件土地の買収の成否について追及していた状況からすると、不調に終わった買収交渉に係る文書を含む趣旨であったと解される。

このような観点から、(2)で述べた経過をみると、現存すれば本項に該当し得る文書として、「仮の丈量図」、「未結了の境界確定図(明示指令図)」、「売買契約書の案」が作成されていたことが認められるが、これらの文書が現存しないことについての実施機関の説明は、概ね、「これらの文書は、境界明示が結了し、売買契約の締結に至れば、長期保存されるものであるが、本件土地については、境界明示が結了に至らず、また、売買契約が締結されなかったため、不要と判断して廃棄した。『未結了の境界確定図(明示指令図)』についても、本件土地付近の改修工事を対岸部分のみの工事に変更し、当該部分のみの境界確定図等を作成したことから、不要となったのであり、後の混乱を避けるため、廃棄した。」というものである。

また、交渉経過表を作成していないことについての説明は、「『交渉経過表』は、通常、交渉が円滑に進行した場合には作成していなかったものであり、本件土地の買収交渉が相続人Aとの間で円滑に進行していたため、作成していない。本件土地の価格提示は『売買契約書の案』で行ったため、価格提示のための文書は特に作成していない。」というものである。

これらの説明については、特段、不自然な点は認められず、また、審査会において富田林土木事務所を調査したところによっても、当該文書そのものを確認することはできなかったが、本件事業を担当していた富田林土木事務所の出先機関が一時期置かれていた狭山池ダム管理事務所(現在、平時は無人となっている。)内の書庫を調査したところ、「境界確定図(申請地 大阪狭山市(町名地番等略)、立会 平成3年○月○日に係る未結了のもの)の第二原図」(平成3年○月○日に近隣の地権者とともに相続人Aが立会して署名押印した未結了の境界確定図から作成された第二原図(通常3部作成されるもののうち1部を電子式複写機によりトレース用紙に複写したもの。内容的には、異議申立書に写しが添付されたものと同じであるが、別の原本から複写されたものである。))が保管されていることが確認された。同第二原図は、他の行政文書の写しであり、作成当時、それ自体は、条例第2条第1項に規定する行政文書には、該当しないものであったと考えられるが、原本が失われ、共用の書庫に保管されている現状においては、条例第2条第1項に規定する行政文書に該当するものである。同第二原図は、最終的には境界確定が未了となり、不調に終わったものの、本件土地の買収交渉の過程で、本件土地の範囲を画定するために作成された図面の写しであり、上述の本項における公開請求の趣旨からすれば、本件請求に対応する行政文書であると認められるから、実施機関においては、同第二原図を対象文書として特定の上、公開・非公開等の決定を行う必要がある。

(5)「東除川改修工事の用地買収にかかわる図面(地名略)」に対応する行政文書の存否について

異議申立人は、本項において、本件土地を含む特定の区間の東除川改修工事の用地買収に係る図面及び境界確定の立会に関する図面について、広く公開請求の対象としたものであり、本項の記載のみからは、不調に終わった買収に係る文書を含める趣旨であったのか必ずしも明らかではないが、異議申立人が、富田林土木事務所に対して、かねてより本件土地の買収の成否について追及していた状況からすると、不調に終わった買収交渉に係る文書を含む趣旨であったと解される。

しかしながら、本件事業において、用地買収が検討されたのは、(2)で述べたとおり、本件土地のみであり、本件土地に関して、公共工事用地の買収にかかわる図面として通常作成される「丈量図」や官民境界の「境界確定図(明示指令図)」が仮のものも含めて存在しないことは、(4)で述べたとおりである。

また、異議申立人は、「本件土地は府道より東側の未登記の土地と思われる。本件土地の場所を確認するため、平成4年10月実施機関において、当該図面の開示を受けた。東除川とその両岸のもので、ロール状の長い図面であった。開示されたのは、府道より西側の登記されている部分だけで、この部分以外は開示を拒否された。今回公開請求しているのは、このとき拒否された部分であり、(地名略)としたのはこのためである。」として、「実施機関のいう『本件土地』の図面はこの開示された部分で、コピーももらっている(異議申立書に添付。)。故に、実施機関がこの図面を、平成3年に廃棄したと述べているのは事実ではない。」と主張しているが、この点についての実施機関の説明は、概ね「平成4年10月に異議申立人に図面を開示したかどうか現時点で確認はできないが、当時は、対岸部分に限定した境界明示の手続が終わっておらず、本件土地を含む境界確定用に作成した図面を残していたはずなので、開示した可能性はある。当該図面を廃棄したのは、対岸部分の境界明示の決裁を終えた平成5年○月以降と考えられるので、平成4年10月に当該図面を異議申立人に開示していたとしても、矛盾はない。」というものであり、この説明には、特段、不自然な点は認められなかった。

さらに、異議申立人は、「当該図面には、地権者及び関係者の署名捺印があり、実施機関が独断で廃棄できるものではない。」「実施機関の担当者は、大阪府の本庁にも同じものが管理されているとの説明であった。」とも主張しているが、これらの点についての実施機関の説明は、概ね「当該図面には、確かに地権者等の署名捺印があったが、境界確定が不調に終わった時点で、正式のものではなくなっており、実施機関が不要と判断した時点で廃棄した。」「公共事業に伴う土木事務所内の境界明示申請の場合、同じ図面を3部作成するが、土木事務所に3部とも保管する(境界明示が結了すれば、うち2部を明示担当、残り1部を事業担当が保管する。)ものであり、本庁に保管(管理)することはあり得ない。」というものであり、これら説明にも、特段、不自然な点は認められなかった。

しかしながら、(4)で述べた経緯で今回新たに存在が確認された第二原図は、本項における公開請求の趣旨からみても、本件請求に対応する行政文書であると認められるから、本項との関係においても、実施機関は、同第二原図を対象文書として特定の上、公開・非公開等の決定を行う必要がある。

(6)不成立に終わった用地買収に関する文書の取扱いについて

本件不存在決定についての審査会の判断は以上のとおりであるが、審査の過程で明らかとなった文書管理上の問題点に関して、以下のとおり付け加える。

本件異議申立てに係る行政文書は、いずれも、不成立に終わった本件土地の買収に関する文書であり、必ずしも実際に成立した用地買収契約に係る文書と同様の管理がなされる必要はないが、当該文書の内容や性質、さらには事務の状況に応じて相応の適正な管理がなされるべきものである。

本件異議申立ての審査の過程において、本件土地の買収に関して作成されていたほとんどの地権者等の署名押印のある境界確定用の図面や本件土地の買収交渉の相手方に対する価格提示用の契約書の案といった文書が、具体的な取扱の基準や手続があいまいなままに廃棄されており、廃棄の記録も作成されていないことが明らかになったが、当時の文書管理のルールを定めていた旧大阪府文書管理規程(昭和57年大阪府訓令第25号)の下においても、少なくとも地権者の署名押印のある図面などについては、「公文書」として文書管理者が保存期間を定めた上で、適正に管理すべきものであったと考えられるところである。

また、現行の文書管理のルールを定める大阪府行政文書管理規則(平成14年大阪府規則第122号)においては、一時的かつ補助的な用途に用いる行政文書として保存期間を定めないものを除き、同規則別表の基準に従って定めた期間、保存するとともに、保存期間が満了するときは、予め所定の手続により廃棄の決定をした上で処分しなければならず、保存期間を定めない行政文書についても、文書管理者が事務の遂行上必要があると認める期間保管した上、処分しなければならないこととされているが、不成立に終わった用地買収に関する文書の取扱についての具体的な基準や手続は、定められていないことが認められた。

当審査会としては、条例第3条において、「実施機関は、・・・行政文書の適切な保存と迅速な検索に資するための行政文書の管理体制の整備を図らなければならない。」とされていることに鑑み、用地買収に関して外部に提示した文書、とりわけ、外部の者の署名押印を得た文書などの保存(保管)と廃棄について、文書管理者である土木事務所長等の拠り所となるルールの明確化を図られるよう、要望するものである。

3 結論

以上のとおりであるから、本件不存在決定は、狭山池ダム管理事務所内の書庫に保管されている「境界確定図(申請地 大阪狭山市(町名地番等略)、立会 平成3年○月○日に係る未結了のもの)の第二原図」を公開請求に対応する行政文書として特定しなかった点において取消しを免れず、実施機関は、同第二原図について、改めて公開・非公開等の決定を行う必要がある。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり、答申するものである。

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?