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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第79号)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立てに係る部分公開決定において非公開とした部分のうち、異議申立人が公開を求めている「応募校のうち指定に至らなかった学校名及びそれらを特定しうる事項」を、大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する情報を除き、全部公開すべきである。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成14年9月3日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「『エル・ハイスクール』に応募した39校の各学校から提出した応募文書 学校状況調査票(様式1)及びエル・ハイスクール実施計画書(様式2)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年10月2日、実施機関は、本件請求に係る行政文書として「『次代をリードする人材育成研究開発重点校(エル・ハイスクール)』応募にかかる学校状況調査票」(以下「学校状況調査票」という。)並びに「『次代をリードする人材育成研究開発重点校(エル・ハイスクール)』応募にかかるエル・ハイスクール実施計画書」(以下「実施計画書」という。)を、添付資料を含めて特定の上、これらのうち「応募校のうち指定に至らなかった学校名及びそれらを特定しうる事項」並びに「個人名及びそれらを特定しうる事項」を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)条例第8条第1項第4号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)に記録された情報は、応募校の選定等に関する情報であって、応募校の評価を公にすることにより、関係校への固定的な社会の評価につながるおそれがあり、その学校に通学している生徒の学習活動等にも影響があるなど、特定のものに不利益を及ぼすおそれがあると認められるとともに、各学校が今後の応募を差し控えるなど、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなるおそれがあると認められる情報である。
    • (2)条例第9条第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)に記録された情報は、個人の氏名、学歴、職業等の個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別されうるもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。
  3. 同年10月15日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件処分において非公開とされた「応募校のうち指定に至らなかった学校名及びそれらを特定しうる事項」(以下「本件係争部分」という。)の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

応募した、しないにかかわらず、「エル・ハイスクール」という政策そのものが各府立高校への「固定的な社会の評価」をつくりだしているにもかかわらず、「情報公開」においては、応募校のうち指定に至らなかった学校名及びそれらを特定しうる事項を非公開とするのは、不当である。

「エル・ハイスクール」という政策そのものが、選ばれた17校と応募しながら選にもれた22校という固定的な社会の評価だけでなく、選ばれた17校とそうでない学校138校という固定的な社会の評価をつくり出すものである。実施機関は、自らの政策そのものがもつ、固定的な社会の評価をつくり出すという問題点を改めず、情報公開においてだけ、それをごまかそうとしている。

しかも、実施機関は「エル・スクール」の選定において、第一次選考で「学校状況調査票」について書類選考担当者3名が「指定基準」7項目と「追加項目」5項目をそれぞれ3点満点として採点、「エル・ハイスクール実施計画書」について書類選考担当者3名が「追加項目」について教育目標を加えて6項目とし、それぞれ3点満点として採点している。つまり、実施機関がそれぞれの学校の教育内容(「教育目標」まで)を点数化、評価するという教育行政がやってはならない、教育基本法第10条に反する教育への不当な介入を行っているのである。このように、実施機関がそれぞれの学校の教育内容を点数化し、評価し、「優劣を付け」ていながら、情報公開においてはそれをかくそうとしているのである。

特定の「エル・ハイスクール」のみ予算・教職員の配置などにおいて特別扱いするという政策を行うならば、指定に至らなかった学校名も明らかにすべきである。

その上、実施機関は「エル・ハイスクール」に選定した学校には予算や教職員数などで特別扱いするという目に見える固定的な評価をくだそうとしている。それは一方で選定されなかった学校は「エル・ハイスクール」より予算や教職員数が少なくなるという目に見える評価を与え、「精神的な苦痛を含め、生徒の学習活動などに多大などに影響を及ぼすなど、様々な場面において不利益を及ぼす」「教育活動に支障をきたす」ことになる。それは、情報公開において学校名を明らかにすることから起こることではなく、政策そのものにより起こることである。

実施機関が異議申立人に公開した文書において非公開とされている部分は、学校によっては公開されているし、公開部分に記録されている情報と一般に公表されている各高等学校の募集人員等の情報を突き合わせることにより、学校名を特定することが可能であって、本件係争部分を隠す意味は、現実にはないのである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 本件行政文書について

  • (1)実施機関は平成14年3月27日に、平成13年7月31日付け大阪府学校教育審議会中間答申「今後の後期中等教育のあり方について-生徒のニーズの変化等を踏まえた府立高等学校全日制の課程及び定時制の課程等の今後のあり方について-」の趣旨を踏まえ、府立高等学校において、21世紀をリードする創造力溢れた人材や先端的な科学技術を支える人材などの育成を推進するため、組織的で計画的な教育実践に主体的・意欲的に取り組むとともに、その実践成果を他の高等学校の教育活動に提供する府立高等学校を「次代をリードする人材育成研究開発重点校」(以下「エル・ハイスクール」という。)として指定を行うことと定め、平成14年3月29日に全府立高等学校に対して通知した。
    エル・ハイスクールに指定された高等学校においては、次の時代をリードするにふさわしい、生涯にわたって主体的に学ぶ力とそれを支える体力・精神力、他者を思いやることのできる豊かな心や洗練された感性などを生徒の身に付けさせるため、様々な取組を行い、実施機関の指導のもとに、その取組の成果を他校へ積極的に提供していくものである。
  • (2)学校状況調査票の概要は以下のとおりである。
    • ア 学校名、校長名、設置課程・学科
      府立学校名、文書作成者である校長名、課程・学科の他設置している小学科、専門コース等が記載されている。
    • イ 学級・生徒数、入学者選抜状況、卒業生の進路状況、部活動の状況
      各項目の数値が記載されている。
    • ウ 生徒会活動・学校行事等の取組、学校改革のための取組及び推進体制等、教育課程及び学習指導上の工夫、進路実現のための取組、教職員の指導力向上のための研修体制、その他特色のある取組
      記述式により、各取組内容が記載されている。
  • (3)実施計画書の概要は以下のとおりである。
    • ア 学校名、校長名
      府立学校名、文書作成者である校長名が記載されている。
    • イ 教育目標及び学校経営方針、中期的課題、初年度の目標、具体的方策、評価及び他校への提供方法
      記述式により、各計画内容が記載されている。
  • (4)エル・ハイスクールの選考については、学校状況調査票及び実施計画書に記載された項目について、下記a~gの視点により、校長からのヒアリングを通して、より詳細に聴取し、研究指定の趣旨に沿う取組や今後の計画の実現性を評価し、地域バランスを考慮して行った。
    なお、エル・ハイスクールに応募のあった高等学校は39校、指定した高等学校は17校、指定に至らなかった高等学校は22校であった。
    また、エル・ハイスクールの指定期間は、平成15年4月から5年間である。
    • a 発展的学習のための教育課程編成や教育内容及び指導方法の工夫改善に対する取組状況及び今後の計画
    • b 自主的学習活動支援のための講習・補習などの取組状況及び今後の計画
    • c 高等教育機関等への進路実現を図るための学校の取組状況及び今後の計画
    • d 豊かな知性、感性などを育むための学校行事の取組状況及び今後の計画
    • e 生徒の自主性、社会性を育むための生徒会活動、部活動などの取組状況及び今後の計画
    • f 教職員の資質向上及び指導力向上のための取組状況及び今後の計画
    • g その他本事業に関連した学校独自の取組状況及び今後の計画
  • (5)エル・ハイスクールについては、各種の研究指定校の一つとして取り扱っており、平成15年度においても、指定校17校で構成する協議会の運営経費として約400万円の予算措置がなされているほか、エル・ハイスクール固有の予算措置はなく、府立高等学校全校を対象とするスクールカラーサポートプラン支援事業の予算の中から、各学校の申請に基づいて若干の備品・消耗品費を措置しているだけである。教職員配置についても、何ら加配等の特別措置は講じていない。

2 条例第8条第1項第4号に該当する理由

  • (1)「府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、交渉、渉外、訴訟等の事務に関する情報であって」の要件について
    本件行政文書は、実施機関が、エル・ハイスクールに応募のあった高等学校の選定に使用するものであり、本要件に該当する。
  • (2)「公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」の要件について
    ​各府立高等学校は、それぞれの特色を持って日々の教育活動を行っており、エル・ハイスクールは、その研究の趣旨に、より合致する教育活動を行っている高等学校を、応募校から選定するものであり、この選定結果のみで、応募のあった府立高等学校の総合的な価値を決めているものではない。しかし、応募校の学校名や評価など、選定等に関する情報を公にすることにより、エル・ハイスクールに指定した高等学校と指定に至らなかった高等学校に優劣を付けるなど、誤った固定的な社会の評価につながるおそれがある。特に指定に至らなかった高等学校の生徒や保護者には、誤った社会の評価により、精神的な苦痛を含め、生徒の学習活動などに多大な影響を及ぼすなど、様々な場面において不利益を及ぼすおそれがあると認められる。
    エル・ハイスクールの指定は、その実践や研究の成果を全ての府立高等学校に普及させることにより、高校教育の充実をめざす事業である。誤った固定的な社会の評価により、生徒の学習活動に影響が及ぶこととなれば、指定した高等学校においては、正確な研究成果が得られず、指定に至らなかった高等学校においては、教育活動に支障をきたすこととなり、本来の事業目的を果たせなくなることとなる。
    また、実施機関は、国の委嘱事業を含め、エル・ハイスクールと同様に、様々な教育分野において研究指定校を定め、その実践や研究の成果を他の学校に普及する事業を展開している。本件非公開部分の公開がなされれば、応募により選定している、これらの研究指定にかかる事業についても適用されることとなり、先に述べた、固定的な社会の評価を意識して、募集に応じない学校が増加することが危惧され、事業の目的が達成できなくなり、事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
    以上により、本件係争部分に記録された情報は、本要件に該当する。

3 公開部分に記録された情報による学校名の特定可能性について

異議申立人は、本件処分における公開部分に記録されている情報と一般に公表されている各学校の募集人員等の情報を突き合わせることにより、学校名を特定することが可能である旨主張するが、いずれも類推の域を出ないものである。本件処分に係る公開部分・非公開部分の振り分けに当たっては、該当校が1校になる情報は非公開としており、学校名が特定されることはない。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保するとともに、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件行政文書について

審査会において、本件行政文書を見分した結果及び実施機関の説明等を総合すると、本件行政文書について、以下のことが認められる。

平成13年7月31日付け大阪府学校教育審議会中間答申「今後の後期中等教育のあり方について-生徒のニーズの変化等を踏まえた府立高等学校全日制の課程及び定時制の課程等の今後のあり方について-」の趣旨を踏まえ、府立高等学校において、21世紀をリードする創造力溢れた人材や先端的な科学技術を支える人材などの育成を推進するため、実施機関は、組織的で計画的な教育実践に主体的・意欲的に取り組むとともに、その実践成果を他の高等学校の教育活動に提供する府立高等学校を「次代をリードする人材育成研究開発重点校」(エル・ハイスクール)として指定することとし、平成14年3月29日付けで、指定を希望する学校は所定の資料を提出するよう全府立高等学校に通知した。本件行政文書は、この通知に応じて府立高等学校39校が実施機関に提出した資料であり、うち17校については、その後エル・ハイスクールとしての指定が行われ、学校名も公表されている。

本件行政文書は、学校状況調査票と実施計画書からなる。

このうち、学校状況調査票には、「学校名」及び「校長名」、「設置課程・学科」、「設置小学科、系列・エリア、専門コース等」、「生徒数等(学年別学級数及び生徒数、全日制については平成14、13、12年度の選抜区分別の募集人員及び志願者数)」、「卒業生の進路状況(平成14年度)(進路の種類別・当年度・過年度別の人数等、主な進路決定先)」、「部活動の状況(全学年合計)(運動部・文化部別入部者数及び加入率、主な活動実績(過去5年間))」、「生徒会活動、学校行事等の取組」、「学校改革のための取組及び推進体制等」、「教育課程及び学習指導上の工夫」、「進路実現のための取組(ガイダンス、インターンシップ、高大連携等)」、「教職員の指導力向上のための研修体制」、「その他特色ある取組」の各欄があり、それぞれ所定の事項が数値等のデータ又は記述式で記入されている。

一方、実施計画書には、冒頭に「学校名」及び「校長名」が記入されているほか、「1 教育目標及び学校経営方針」、「2 中期的課題(3~5年後)」、「3 2に基づく初年度の目標」、「4 目標達成のための具体的方策(校内体制、取組内容等)」、「5 実践成果に対する評価及び他の高校への提供方法」の各欄があり、それぞれ所定の事項が記述式で記入されている。

また、一部の学校から提出された資料には、学校状況調査票及び実施計画書中に記述式で記入されている各学校の取組の実績及び方針等に関する原資料や詳細な資料あるいは新聞記事の写しなどが適宜添付されている。

なお、本件処分において「応募校のうち指定に至らなかった学校名及びそれらを特定しうる事項」として非公開とされた部分は、応募校のうち指定に至らなかった学校の「学校名」及び「校長名」のほか、エル・ハイスクールとして指定された学校を除く該当校が1校に限定される場合の「設置課程・学科」、「設置小学科、系列・エリア、専門コース等」、「生徒数等(学年別学級数及び生徒数、全日制については平成14、13、12年度の選抜区分別の募集人員及び志願者数)」等のデータ並びに具体的な学習活動や部活動に関して学校名が特定しうる情報が記録された部分である。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件非公開部分に記録された情報について、条例第8条第1項第4号に該当するほか、条例第9条第1号にも該当する旨の決定を行っているが、異議申立人は、本件非公開部分のうち実施機関が条例第8条第1項第4号に該当すると主張している「応募校のうち指定に至らなかった学校名及びそれらを特定しうる事項」(本件係争部分)についてのみ公開を求めているので、以下においては、本件係争部分に記録されている情報が条例第8条第1項第4号に該当するかどうかについて、判断するものとする。

(1)条例第8条第1項第4号について

行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。

このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが本号の趣旨であり、同号は、a「府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、交渉、渉外、争訟等の事務に関する事務であって」、b「公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」について、公開しないことができる旨定めている。また、本号における「おそれのあるもの」に該当するのは、当該情報を公開することによって「事務の目的が達成できなくなり」、又は「事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」程度が名目的なものに止まらず具体的かつ客観的なものであり、また、それらの「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性がある場合に限られると解すべきである。

(2)本件係争部分に記録された情報の条例第8条第1項第4号該当性について

これを本件係争部分に記録された情報について検討するに、(1)aの要件は府の機関等の代表的な事務を例示列挙したものであり、本件行政文書が、府の機関である実施機関が行ったエル・ハイスクールの指定に係る事務に関する情報を記録した文書であることから、本件係争部分に記録された情報が、(1)aの要件を満たすことは明らかである。

次に、本件係争部分に記録された情報が(1)bの要件を満たすものであるかどうかについて検討するに、この点についての実施機関の主張は、要するに、本件係争部分に記録された情報を公開すると、次のa~cの支障が生じるというものである。

  • a エル・ハイスクールは、その研究の趣旨に、より合致する教育活動を行っている高等学校を、応募校から選定するものであり、この選定結果のみで、応募のあった府立高等学校の総合的な価値を決めているものではないにもかかわらず、エル・ハイスクールに指定した高等学校と指定に至らなかった高等学校に優劣を付けるなど、誤った固定的な社会の評価につながるおそれがある。
  • b 特に指定に至らなかった高等学校の生徒や保護者には、誤った社会の評価により、精神的な苦痛を含め、生徒の学習活動などに多大の影響を及ぼすなど、様々な場面において不利益を及ぼすおそれがある。
  • c エル・ハイスクールと同様に、様々な教育分野において応募により選定している研究指定にかかる事業についても、固定的な社会の評価を意識して、募集に応じない学校が増加することが危惧され、事業の目的が達成できなくなる。

しかしながら、ある府立高等学校が、エル・ハイスクールのような研究指定の事業に応募したかどうかという情報は、仮に指定に至らなくとも、当該学校が目指す教育の方向を示す情報として、府民に公開する意義が大きいと考えられる一方、上記の実施機関が主張する支障については、以下のとおり考えられるところである。

  • a エル・ハイスクールは、現在、実施機関が学校教育審議会の答申をうけて取り組んでいる府立高等学校の特色づくりの一環として指定されることとなったもので、その指定の如何は、一般に府立高等学校が有する多様な特色の一つであると理解されると考えられるものであり、仮に誤った固定的な社会の評価につながる懸念があるとしても、それは、エル・ハイスクールという施策に内在する問題であって、実施機関として、その施策が正しく理解されるよう府民に説明し、そうした懸念を解消するよう努めるべきものである。
  • b エル・ハイスクールに応募したが指定されなかったという事実が明らかになったとしても、当該学校において生徒・保護者が期待する充実した教育が行われている限り、そのことが直ちに、生徒・保護者に精神的苦痛を与えたり、学習活動に影響を及ぼすことは考えにくく、仮に、誤った固定的な社会の評価により、そのような事態を招く懸念があるとしても、実施機関としては、aと同様に、施策が正しく理解されるよう生徒や保護者をはじめとする府民に説明し、そうした懸念を解消するよう努めるべきものである。
  • c 府立高等学校がそれぞれの特色づくりに積極的に取り組むことを求められている現在、各学校においては、様々な分野において実施機関が実施している研究指定の事業の中から、当該学校に合ったものに自発的かつ積極的に応募することが期待されるところである。従って、実施機関として、その施策が正しく理解されるよう各学校に対して説明することにより、実施機関が懸念するような弊害は、相当程度軽減され得るものであり、仮にそのような努力にもかかわらず、研究指定の事業に応募する学校が少なくなるような状況が生じた場合には、実施機関において、その指導力を発揮し、応募の促進を図るべきものである。

以上のことからすると、本件係争部分に記録された情報は、条例第8条第1項第4号に規定する「公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのある」情報には該当せず、異議申立人のその余の主張について検討するまでもなく、同号に基づき公開しないこととすることはできないものと判断される。

4 結論

以上のとおりであるから、本件非公開部分のうち、本件係争部分の公開を求める本件異議申立てには理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

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