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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審第80号)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 異議申立人は、平成14年7月9日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「2000年6月2日、高石駅東B地区市街地再開発組合が、行った同事業の建設工事入札にかかる資料の一切」について公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 実施機関は、平成14年7月23日、条例第13条第2項の規定により不存在による非公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、「公開請求に係る行政文書については、作成、又は取得していないため、管理していない。」との理由を付して異議申立人に通知した。
  3. 異議申立人は、平成14年9月9日、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対し異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件処分の取消しと本件請求に対応する行政文書の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 異議の理由について

  • (1)都市再開発法(昭和44年法律第38号。以下「法」という。)の各条では、再開発組合が施行する再開発事業は、都市計画決定から、組合の設立の許認可、組合の定款認可、組合に対する全面的な監督権、組合の事業及び会計状況の検査権と是正命令権、組合運営に関する後見人的監督権、解散権などが実施機関の責任として規定されている。
    従って、再開発組合が執行した、建設工事に関する入札業務に係る文書が不存在であることは、以上の点からも理由にならないものであり、当然取得されるべきものである。
  • (2)本再開発事業は、多額の公金を投入して実施される公共事業であることから、当然のことながら、建設工事費に関して、公正・透明性が確保され、競争原理がはたらかなければならない。
    ちなみに、本事業は、総事業費208億円のうち、国・府・市の補助金は、70億円を超えている。加えて高石市の負担は、文化施設関係を取得するため、総額約100億円の公金支出を余儀なくされている。
    従って、これらの公金支出額は、建設工事費の請負額によって規定されるものであり、建設工事の入札結果によって左右される性質を有していることからも、当然のことながら、実施機関において取得され、公開されるべきものであると考える。
  • (3)結論として、今回、実施機関が行なった「非公開決定」は、以上の点から承服しがたいものである。

2 「組合の行う建設工事入札について」に関して

実施機関は、弁明書において、「法及び本件定款においては、建設工事入札の結果について実施機関への報告が義務づけられていない。」としているが、次の点で問題と新たな矛盾を引き起こしている。それは次の諸点である。

  • (1)実施機関が再開発組合設立を認可する際に、定款を確認し、指導できる立場にあることから、定款に報告の義務を課すことが可能であることを全く触れていない。(法第11条及び都市再開発法施行規則(昭和44年11月26日建設省令第54号。)第2条を参照)
  • (2)「補助金の金額は、本件事業の設計金額と実際の契約金額を基に算出される」と述べているが、実施機関は、一体どのようにして設計金額や実際の契約金額を知る手段を担保しているのか、弁明上の矛盾をきたしている。

本事業における国・府・市の補助金総額は70億円を超え、事業費の35%に当たる莫大な額にのぼっていることから、実施機関として、関知するものではない、という弁明は、全く無責任と言わなければならず、到底納得できない。

3「本件請求に対応する行政文書の特定及び本件処分の妥当性」に関して

  • (1)実施機関は、弁明書において、法第124条第1項を、「本件事業の施行の促進に必要な範囲において、・・・随時、報告を求めている」とし、「本件文書の取得は、事業促進に必要ではない」と言明しているが、果たしてそうであろうか、前述したように、本件事業の建設工事の入札執行が、適正で公明正大に行なわれているかどうかは、真に必要不可欠な文書であることは明白である。重ねて言えば補助金の額の確定に不可欠であることを、実施機関自身が認めているのではないか。
    さらに、付言すれば、「必要な範囲において」などの文言は、勝手な解釈であり、実施機関自らの権限を勝手に放棄するものであり、逃げ口上である。
  • (2)法第112条は、「組合の事業の継続が困難となるおそれがある場合」を想定しており、事業代行の手続きを定め、法第114条において、「事業代行者は、都道府県知事とする」と規定している。
    本規定からも、実施機関の責任は、最も重く、最終的な地位を与えられており、当然のこととして、本件請求に対応する行政文書は、作成・取得すべきものであり、法律を盾にとって、責任を回避することは許せない。
    さらに、この「事業代行」に関しては、再開発組合の許可に際して、高石市から、事前に、「事業代行者を高石市にする」旨の「誓約書」まで入れさせていることなどから判断するに、知事としての責任を回避するための弁明書である。

4 本件建設工事入札の異常性に関して

  • (1)本件の建設工事入札は、平成12年6月2日に執行され、指名競争入札により、報道(日刊建設工業新聞)によれば、8社を指名しA株式会社が税込161億8050万円で落札した。
    しかし、落札したA株式会社は、本再開発組合が設立される以前の準備組合の段階から、「デベロッパー」として、本事業に深く関わり、準備組合と取り交わした「覚書」等において、建設工事入札に際して、特別の便宜を認めさせていたものである。
  • (2)また、同社は、準備組合への出向社員5人を派遣し、本事業に深く関わっていたものであり、建設工事入札に関する情報を知り得た立場であった。準備組合事務所に同居して、勤務していたことも、その証左になる。
  • (3)建設工事入札の結果を見てみると、高石市が公表した「事業計画概要書」(平成12年2月)による、「資金計画」での工事費は、165億2650万円が計上されている。この金額と落札金額の比率は、実に約98%にもなっている。

この点、本入札においては、全く競争性が発揮されていないとともに、本入札は、(1)、(2)で述べたように、異常な入札執行である。

5 公共事業の入札に関する今日の状況

  • (1)実施機関においても、近年の不正入札を防止するために、平成12年1月1日から、「大阪府建設工事予定価格等事前公表実施要綱」を制定し、予定価格と最低制限価格を事前に公表している。
    然るに、今回、本件請求した文書を作成・取得し、情報公開を拒否する姿勢は理解することができない。
  • (2)平成14年7月2日、和歌山地裁は、和歌山市発注の公共工事に関して、談合損害の支払いを命ずる判決をした。その判断基準では、予定価格と最低制限価格及び落札価格の公表が前提になっているものである。
    従って、多額の補助金を投入する再開発事業において、市民に対して全く情報を公開しないことは、異常な事態である。

6 結論

以上述べたように、実施機関の弁明は、法律に照らしても、今日の情勢に逆行するものであり、全く不当なものであり、「大阪府情報公開審査会」におかれては、実施機関が本件請求に対応する行政文書を作成・取得し、情報公開すべき、との措置をとられることを求める。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 市街地再開発事業について

(1)市街地再開発事業とは

市街地再開発事業は、「市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、都市計画法(昭和43年法律第100号)及び都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業」と定義されている(法第2条第1号)。

大まかな事業の流れとしては、法第2条第3号に規定する、市街地再開発事業を施行する土地の区域である施行地区(以下「施行地区」という。)内に従前の権利者が所有していた建物等を除却し、いったん更地としたうえで、新しい道路・駅前広場・公園等の公共施設と再開発ビル(施設建築物)の整備を行うものである。

なお、市街地再開発事業には、第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業があり(本件再開発事業は第一種市街地再開発事業)、第一種市街地再開発事業は、権利変換方式と呼ばれる事業で、ある期日において、建物・土地の従前資産を、再開発ビルの床に等価交換する手法である。

(2)高石都市計画事業高石駅東B地区第一種市街地再開発事業について

ア 高石都市計画事業高石駅東B地区第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という。)の概要は次の通りである。
  1. 事業名 高石駅東B地区第一種市街地再開発事業
  2. 施行者 高石駅東B地区市街地再開発組合(以下「本件組合」という。)
  3. 施行地区 高石市綾園一丁目の一部
  4. 施行面積 1.5ヘクタール
  5. 主要な用途 住宅、店舗、公益施設(図書館、ホール他)等
  6. 公共施設 駅前広場、都市計画道路等
イ 本件事業の進捗状況は次の通りである。

昭和60年9月 都市計画決定

平成11年2月 本件組合設立認可

平成12年2月 権利変換計画認可

平成12年6月 本件請求に係る建設工事入札実施

平成12年8月 建設工事着手

平成14年度 再開発ビル(施設建築物)建設工事完成

2 市街地再開発組合及びその入札について

次に、本件請求に対応する行政文書は、市街地再開発組合が行った建設工事入札に係る文書であるため、市街地再開発組合(以下「組合」という。)及びその建設工事入札について、以下で説明する。

(1)組合について

組合は、地方公共団体、都市基盤整備公団、地域振興整備公団等と並んで、施行地区において第一種市街地再開発事業を施行することができる事業施行者の一つである(法第2条の2第2項)。

組合は、施行地区の宅地(法第2条第5号にいう「宅地」をいう。以下同じ。)について所有権又は借地権を有する者で構成され(法第20条)、都道府県知事の認可を受けて設立される法人である(法第8条第1項、第11条第1項)。

そして、組合は、法第11条第1項により定款を定めなければならず、本件組合においては、「高石駅東B地区市街地再開発組合定款」(以下「本件定款」という。)を定め、本件事業を推進しているところである。

(2)組合の行う建設工事入札について

組合が発注する建設工事は、市街地再開発事業の一環であり、その発注方法や内容に係る情報の都道府県知事への報告義務については、法には特段の定めはなく、組合が定めることとなっている。組合は、先に述べたとおり、法第8条第1項の規定により法人格を有することから、法人として、定款の定める範囲内で、独自の判断に基づき、工事発注、契約等の行為を自律的に行うことができる団体である。

本件組合については、本件定款第59条において「工事の請負(略)は、指名競争入札の方法によらなければならない。ただし、あらかじめ総会の議決を経て定める契約規程に規定する条件に該当する場合は、理事会の決定を経て随意契約によることができる。」と規定されており、本件組合が、この規定に基づき、平成12年6月2日に指名競争入札(以下「本件入札」という。)を実施し、これに必要な文書の作成等を行ったところである。

そして、本件請求は、本件入札に係る資料の一切の公開を求めるものであるが、法及び本件定款においては、建設工事入札の結果について実施機関へ報告することを義務づけられておらず、本件請求に対応する行政文書が本件組合から実施機関に提出された事実はない。また、これ以外に任意に本件組合から実施機関へ提出された事実もない。

なお、法人格を持つ本件組合が自律的に行った本件入札に必要な図書は、先に述べたとおり、本件組合がその責任において、作成するものであることから、本件請求に対応する行政文書は、いうまでもなく実施機関では作成していない。

3 本件請求に対応する行政文書の特定及び本件処分の妥当性

(1)本件請求に対応する行政文書を実施機関が作成していないことについて

本件請求に対応する行政文書は、本件組合が自律的に行う建設工事入札に係る文書であるため、上記2(2)でも述べたとおり、そもそも本件組合で作成するものであり、実施機関が作成するものではない。

(2)本件請求に対応する行政文書を実施機関が取得していないことについて

ア 都道府県知事の監督等により文書を取得していないことについて

異議申立人は、都市再開発法の各条では、組合に対する全面的な監督権、組合運営に関する後見人的監督権等が実施機関の責任として規定されており、本件組合が執行した建設工事に関する入札業務に係る文書は、当然取得されるべきものである旨、主張する。

法第124条第1項及び法第125条第1項、第2項においては、都道府県知事が行う監督等について定めているが、実施機関は以下のとおり、この監督等によっても本件請求に対応する行政文書を取得していない。

  • a 法第124条第1項の規定では、都道府県知事は組合に対し、市街地再開発事業に関し、必要な限度において、報告若しくは資料の提出を求め、又はその施行する市街地再開発事業の施行の促進を図るため必要な勧告、助言若しくは援助をすることができるとされているが、その趣旨は、あくまでも、事業の促進に必要な範囲に限られ、異議申立人のいうように、組合の全活動に関与するという「後見人的監督」ではない。
    したがって、実施機関は本件組合に対し、本件事業の施行の促進に必要な範囲において、本件事業の進捗状況等に関して、随時、報告を求めているが、本件文書の取得は、事業促進に必要ではなく、その提出を求めたことはない。すなわち、実施機関において、法第124条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書を取得したことはない。
  • b 法第125条第1項の規定では、都道府県知事は、組合の施行する事業又は会計が法、定款、事業計画若しくは権利変換計画等に違反すると認めるとき、その他監督上必要があるときは、その組合の事業又は会計の状況を検査することができることとされている。
    本件入札を含め、本件組合の運営に関して、法、本件定款、本件事業に係る事業計画若しくは権利変換計画等に違反する事実がこれまでになく、また、監督上も特に必要がなかったため、法第125条第1項の規定による検査を実施したことはなく、実施機関が同項の規定により、本件請求に対応する行政文書を取得した事実はない。
  • c 法第125条第2項の規定では、都道府県知事は、組合の組合員が、総組合員の10分の1以上の同意を得て、その組合の事業又は会計が法又は定款等に違反する疑いがあることを理由として組合の事業又は会計の状況の検査を請求したときは、その組合の事業又は会計の状況を検査しなければならないとされている。
    本件組合の組合員から法第125条第2項の規定による検査の請求はこれまでになく、同項の規定による検査によって取得した文書はない。

以上のように、異議申立人は、実施機関には、本件組合に対する全面的な監督権があることから本件請求に対応する行政文書を実施機関が取得すべき旨、主張するが、実施機関の本件組合に対する監督権は、法に基づく必要な範囲のものであり、これらにより、本件請求に対応する行政文書を取得したことはない。

イ 補助金の執行手続に伴い文書を取得していないことについて

次に、異議申立人は、国・府・市の補助金の支出額が、建設工事費の請負額によって規定されるものであり、建設工事の入札結果により左右される性質を有していることから、実施機関において本件請求に対応する行政文書が取得され、公開されるべきである旨、主張する。

国、地方公共団体は、予算の範囲内において、第一種市街地再開発事業の施行者に対して、その事業に要する費用の一部を補助している。

国の補助金には、府に交付される補助金(以下「補助金1」という。)と高石市に交付される補助金(以下「補助金2」という。)がある。

府は、補助金1を補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)(以下「適化法」という。)、国土交通省所管補助金交付規則(平成12年総理府・建設省令第9号)、都市・地域整備局所管国庫補助金交付申請等要領(平成13年6月27日付け国都総第2000号都市・地域整備局長通知)、市街地再開発事業費補助交付要綱(昭和49年6月5日付け建設省都再発第77号)、大阪府補助金交付規則(昭和45年大阪府規則第85号)、大阪府地域整備関係事業補助金交付要綱(昭和52年4月1日施行)及び大阪府地域整備関係事業補助金交付取扱要領(総称して、以下「府規則等」という。)に基づいて交付している。

平成12年度に係る補助金1については、平成12年6月に交付申請、交付決定が行われ、更に翌年3月変更交付申請及び同交付決定がなされた。

一方、補助金2については、適化法、国土交通省所管補助金交付規則、都市・地域整備局所管国庫補助金交付申請等要領及びまちづくり総合支援事業制度要綱(平成12年3月24日付け建設省都計発第35-4号)に基づき、実施機関は、高石市からの当該申請に係る経由機関として、国に進達している。

平成12年度に係る補助金2については、平成12年6月に交付申請、進達、交付決定が行われ、翌年3月変更交付申請、同進達、同交付決定された。

いずれの場合についても、それぞれ、上記に述べた各々の法規等に基づいて処理を行うこととされており、必要な図書もこれに従っている。これら、一連の手続きに必要な図書は、別紙1及び別紙2のとおりであり、本件請求に対応する行政文書は含まれておらず、実施機関は、本件請求に対応する行政文書を取得していない。

また、補助金1の執行が適正に行われているかの確認は、大阪府補助金交付規則第13条及び昭和49年4月25日付け、審第31号、財第51号の依命通達「府補助金に係る予算の執行等の適正化について」(以下「府補助金適正化通達」という。)に基づき、補助金執行に必要な図書と、府補助金適正化通達に基づく事業実績報告等を十分に検討し、補助金交付の決定内容及び交付条件に適合しているかどうかについて、的確に行うこととしている。

他方、実施機関は、補助金2については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第26条第2項及び同法施行令(昭和30年政令第255号)第17条第1項及び第4項に基づく告示(都道府県の知事が行う補助金等の交付に関する事務、平成12年4月13日付建設省告示第1171号)により、補助金の額の確定を行っている。

補助金の金額は組合から提出される別紙1及び別紙2の文書に記載された設計金額と実際の契約金額を基に算出されるものであり、実施機関は、補助金交付事務において個々の入札の過程を逐一確認することはなく、設計金額の妥当性を確認するとともに、実際の契約金額が設計金額の範囲内にあることを確認することなどにより補助金申請金額の妥当性を判断しているところである。

さらに、実施機関が、補助金1及び補助金2について、それぞれ平成13年3月に本件組合の事務所及び本件事業の施行地区において、平成12年度に係るこれら全ての補助金の執行状況を確認した結果、補助金が適正に執行されていることが認められ、上記交付手続きに基づく図書以外に追加して取得した文書はない。

異議申立人は、「公金支出額は、建設工事費の請負額によって規定されるものであり、建設工事の入札結果に左右される性質を有していることから、当然のことながら、実施機関において本件文書を取得され、公開すべきものである。」と主張しているが、補助金の金額は、上記のとおり、本件事業の設計金額と実際の契約金額を基に算出され、また、補助金の交付手続きに必要な図書は、上述の補助金交付手続きに基づくものであり、異議申立人がいうように、「当然のことながら」取得すべきとの主張は当たらない。

なお、本件組合が、本件請求に対応する行政文書を任意に実施機関に提出したことがないことは、上記2に述べたとおりである。

以上のことから実施機関においては、本件請求に対応する行政文書を作成しておらず、また、取得もしていない。

4 結論

以上のとおり、本件処分は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

条例においては、不存在による非公開決定に対する不服申立てについても、実施機関は、原則として当審査会に諮問しなければならないこととしており、こうした諮問が行われた場合、当審査会は、条例第23条に規定する調査権限を適切に行使して調査審議を行い、公正かつ簡易・迅速な救済の実現に努めることとなる。

2 組合施行の第一種市街地再開発事業における知事と組合の関係について

市街地再開発事業は、「市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、都市計画法及び都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業並びにこれに付帯する事業」(法第2条第1号)である。

組合は、第一種市街地再開発事業を施行することができる事業施行者であり、市街地再開発事業の施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有するすべての者を組合員とする法人である(法第8条第1項、法第20条)。また、組合は法に定める一定の事項について定款を定めなければならないこととされており(法第9条、第11条第1項)、理事長等役員の資格、選挙・選任及び職務等(法第23条~第28条)、総会の組織、議決事項及び議事等(法第29条~第33条)など、その組織、運営に関する事項が法によって定められている。

一方、組合に対する都道府県知事の権限については、組合の設立認可(法第11条)、定款、事業計画の変更認可(法第38条)、権利変換計画の認可(法第72条)、報告、勧告等(法第124条)、組合に対する監督(法第125条)等が規定されており、市街地再開発事業の公共性に鑑み、法に定める一定の事項については都道府県知事が組合に対して権限を行使することができるものである。

このように、組合は、一定の事項については都道府県知事の監督を受けながらも、市街地再開発事業を施行する法人として、定款の定める範囲内で自律的に事業を遂行することができるものである。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

(1)当審査会における調査について

本件事業は、第一種市街地再開発事業として昭和60年9月に都市計画決定された事業であり、平成11年2月に本件組合設立認可、平成12年2月に権利変換計画認可がそれぞれ行われ、平成12年6月2日には、本件組合において、本件入札が実施されている。

従って、本件入札に係る文書は、第一次的には、本件入札を実施するとともに建設請負契約を締結し、本件事業を遂行してきた本件組合が、作成又は取得し管理しているものであると考えられる。本件においては、実施機関が本件入札に係る行政文書を管理しているか否かが問題となっていることから、当審査会としては、まず、実施機関が有する権限について調査した上で、実施機関の説明や提示された資料、異議申立人の主張内容などをもとに、実施機関の職員が、本件入札に係る何らかの文書を作成又は取得したか否かについて検討した。そして、当該作成又は取得した文書が存在する場合には、当該文書が本件請求の内容に合致するものであるか否かについて、また、当該文書が条例第2条第1項に規定する行政文書に該当するものであるか否かについて検討することとした。

(2)本件請求に対応する行政文書の存否について

ア 都市再開発法に基づく作成・取得の有無について

法においては、上記2のとおり、実施機関の諸々の権限について規定されているものの、組合が行う建設入札関係文書を都道府県知事に提出させる権限又は組合が都道府県知事に建設入札関係文書を提出する義務について明文で定めた規定は見当たらない。

一方、法第124条第1項では、「都道府県知事は、組合に対し、その施行する市街地再開発事業に関し、この法律の施行のため必要な限度において、報告若しくは資料の提出を求め、又は、その施行する市街地再開発事業の施行の促進を図るため必要な勧告、助言若しくは援助をすることができる。」旨、規定されている。これに関する実施機関の説明は、概ね「法第124条第1項の趣旨は、あくまでも事業の促進に必要な範囲に限られるものであり、本件文書の取得は事業促進に必要ではなく、その提出を求めたことはない。」というものである。

さらに、法第125条第1項では、「都道府県知事は、組合の施行する第一種市街地再開発事業につき、その事業又は会計がこの法律若しくはこれに基づく行政庁の処分又は定款、事業計画、事業基本方針若しくは権利変換計画に違反すると認めるときその他監督上必要があるときは、その組合の事業又は会計の状況を検査することができる。」と規定され、法第125条第2項では、「都道府県知事は、組合の組合員が総組合員の10分の1以上の同意を得て、その組合の事業又は会計がこの法律若しくはこれに基づく行政庁の処分又は定款、事業計画、事業基本方針若しくは権利変換計画に違反する疑いがあることを理由として組合の事業又は会計の状況の検査を請求したときは、その組合の事業又は会計の状況を検査しなければならない。」と規定されている。これらに関する実施機関の説明は、それぞれ、概ね「本件組合の運営に関して、法、本件定款、本件事業に係る事業計画若しくは権利変換計画等に違反する事実がこれまでになく、また監督上も特に必要がなかったため、実施機関が法第125条第1項の規定による検査を実施したことはなく、本件請求に対応する行政文書を取得した事実はない。」及び「本件組合の組合員から法第125条第2項の規定による検査の請求はこれまでになく、同項の規定による検査によって取得した文書はない。」というものである。

当審査会で調査したところ、法第124条第1項、法第125条第1項、法第125条第2項に基づき、実施機関が本件組合から本件入札に係る文書を取得した事実は確認されず、当該文書が実施機関に存在することも確認されなかった。また、これに関する実施機関の説明にも、特段、不自然・不合理な点は認められないものである。

なお、本件組合の定款においても、本件組合が行う建設入札関係文書を都道府県知事に提出することを定めた規定は見当たらないことから、実施機関が、本件定款の規定を根拠として、本件入札に係る文書を取得したことはないと認められる。

イ 補助事業の実施に伴う作成・取得の有無について

本件事業に係る補助金には、府が国からの補助を受けて本件組合に交付する補助金と、高石市が国から補助を受けて本件組合に交付する補助金がある。このうち、前者については、実施機関が補助金交付事務に必要な文書を取得することとなる。また、後者についても、高石市から提出される補助金交付に必要な文書は府を通じて国に進達することとされているため、実施機関が当該文書を取得することとなる。

一方、適化法第26条第2項、同法施行令第17条第1項及び第4項に基づく告示並びに大阪府補助金交付規則第12条、同規則第13条及び府補助金適正化通達に基づき、組合は補助事業が完了したときや補助金の交付の決定に係る会計年度が終了したときには、補助事業実績報告書等を実施機関に提出することとされており、これを受けて、実施機関は当該報告書等の書類審査及び必要に応じて行う現地調査等により、その報告に係る補助事業の成果が補助金交付決定の内容及びこれに付した条件に適合するものであるかどうかを調査することとされている。

補助金交付事務に関連して実施機関が本件請求に対応する行政文書を取得したか否かについて、実施機関の説明は、概ね「補助金交付の一連の手続に必要な図書は、別紙1及び別紙2のとおりであり、この中には、本件請求に対応する行政文書は含まれていないことから、実施機関は、本件請求に対応する行政文書を取得していない。」、「補助金の金額は組合から提出される別紙1及び別紙2の文書に記載された設計金額と実際の契約金額を基に算出されるものであり、実施機関は、補助金交付事務において個々の入札の過程を逐一確認することはなく、設計金額の妥当性を確認するとともに、実際の契約金額が設計金額の範囲内にあることを確認することなどにより補助金申請金額の妥当性を判断している。」及び「平成13年3月に本件組合の事務所及び本件事業の施行地区において、平成12年度に係る全ての補助金の執行状況を確認した結果、補助金が適正に執行されていることが認められ、上記手続に基づく図書以外に追加して取得した文書はない。」というものである。

当審査会において調査したところ、補助金交付に係る一連の事務手続において本件組合から提出された文書の中には、補助金の根拠数値としての設計金額や契約金額は記載されているものの、予定価格、最低制限価格、入札金額、落札金額、入札参加者名及び落札者名等の建設請負入札に係る情報は含まれていないことが確認された。

また、当審査会において、実施機関が作成した補助事業検査調書を調査したところ、当該文書中の「証拠書類の整備状況」欄、「検査評価」欄はともに「適正」と記載され、「その他参考事項」欄も「なし」と記載されていることが確認された一方で、本件入札に係る文書が存在していることは確認されなかった。

さらに、適化法、大阪府補助金交付規則をはじめとする国及び大阪府の補助金関連の法令には、都道府県知事が組合に対して建設工事入札関係文書を提出させる権限又は組合が建設工事入札関係文書を都道府県知事に提出する義務について明文で定めた規定は見当たらない。

以上のとおり、補助事業の実施に伴って、実施機関が本件組合から本件入札に係る文書を取得した事実は確認されず、当該文書が実施機関に存在することも確認されなかった。また、これに関する実施機関の説明にも、特段、不自然・不合理な点は認められないものである。

上記ア、イのとおり、本件に対する実施機関の説明には、特段、不自然・不合理な点は認められない。そして、上記ア、イの調査を含め、当審査会が調査した結果でも、実施機関において、本件入札に関する文書が作成又は取得され存在していることは確認されなかった。

(3)異議申立人のその余の主張について

異議申立人は、「大阪府情報公開審査会においては、実施機関が本件請求に対応する行政文書を作成・取得し、情報公開すべきとの措置をとることを求める。」旨、主張している。

確かに、実施機関は、法令に基づき、本件組合に対して報告や資料の提出を求めたり、検査を行ったりするなどの権限を有している。

しかしながら、条例第6条の規定は、請求者に対して、実施機関が現に管理している行政文書の公開を請求する権利を認めるものであって、実施機関が現に管理していない文書を他から取り寄せたり、新たに実施機関が文書を作成した上で公開することを請求する権利を認めたものではないから、当審査会としては、異議申立人の主張するような措置はとり得ないものである。

4 結論

以上のとおり、本件請求に対応する行政文書の存在を確認することはできないから、実施機関が行った不存在による非公開決定は妥当である。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり答申する。

別紙1

補助金1及び補助金2共通

根拠:都市・地域整備局所管国庫補助金交付申請等要領

  • (1)補助金交付申請書
  • (2)補助金交付申請(市町村)報告書
  • (3)補助金交付決定変更申請書
  • (4)補助金交付決定変更申請(市町村)報告書
  • (5)補助事業の完了予定期日変更報告書
  • (6)工事設計書及び変更工事設計書
    • イ 本体工事費内訳表
    • ロ 附帯工事費内訳表
    • ハ 測量及び試験費内訳表
    • ニ 用地費及び補償費内訳表
    • ホ 機械器具費内訳表
    • ヘ 営繕費内訳表
    • ト 権利変換諸費内訳表
  • (7)完了実績報告書

別紙2

補助金1のみに係るもの

根拠:大阪府地域整備関係事業補助金交付要綱及び大阪府地域整備関係事業補助金交付取扱要領

  • (1)補助金交付申請書
  • (2)補助金交付決定変更申請書
  • (3)歳入歳出予算書抜粋
  • (4)調査設計計画費総括表
  • (5)事業計画作成費内訳表
  • (6)地盤調査費内訳表
  • (7)建築設計費内訳表
  • (8)権利変換計画作成費内訳表
  • (9)土地整備費総括表
  • (10)建築物除却費内訳表
  • (11)仮設店舗等設置費内訳表
  • (12)補償費等内訳表
  • (13)補償費等明細表
  • (14)施設建築物建設費内訳表
  • (15)共同施設整備費総括表
  • (16)共同施設整備費明細表
  • (17)付帯事務費の使途明細表
  • (18)補助金精算調書
  • (19)決算見込調書
  • (20)契約調書
  • (21)その他必要と認めるもの

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