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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第81号)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 本件異議申立てに至る経過

  1. 平成14年9月6日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、請求に係る行政文書の名称、ファイル名等として「2000年1月以降の府立学校校長会の資料並びに会議録 ただし、卒業式・入学式に関する部分に限る」と記載した行政文書公開請求書を提出し、行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 平成14年9月18日、実施機関は、本件請求のうち「2000年1月以降の府立学校校長会の資料」の請求に係る文書として、「平成12年度府立学校に対する指示事項」「平成13年度府立学校に対する指示事項」「平成14年度府立学校に対する指示事項」(これら文書を合わせて以下「本件公開文書」という。)を特定し、これらについての公開決定(以下「本件公開決定」という。)を行うとともに、本件請求のうち「2000年1月以降の府立学校校長会の会議録」の請求に係る文書については、「公開請求に係る行政文書は作成していないため、管理していない。」ことを理由として不存在による非公開決定(以下「本件不存在決定」という。)を行い、それぞれ、異議申立人に通知した。
  3. 平成14年10月21日、異議申立人は、本件公開決定及び本件不存在決定を不服とし、本件異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件公開決定及び本件不存在決定の取消及び当該情報の全部公開。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 公開請求文書の特定に係る事実経過

そもそも異議申立人は、府立学校校長会(以下「校長会」という。)における実施機関の指導内容を知ることを目的として、これに関連する行政文書の公開を求めたものである。その際、異議申立人は先ず窓口である大阪府府政情報センターを所管する大阪府広報室府民情報課の職員にその請求趣旨を告げたところ、卒業式・入学式の担当課である大阪府教育委員会事務局教育振興室教務課の職員2名が府政情報センターまで来て異議申立人と直接面談することとなった。そこで、異議申立人は改めて教務課職員に公開請求の目的を説明し、その趣旨に添う請求対象文書の特定について件の教務課職員と相談し、その教示・示唆を受けた上、そのように公開請求書に記入したものである。

このように、本件請求に係る文書が「2000年1月以降の府立学校校長会の資料並びに会議録。ただし、卒業式・入学式に関する部分に限る。」とあるのは、異議申立人の公開請求趣旨に最も合致する文書として実施機関の側で示唆したものである。

ちなみに、行政文書の公開請求に際し、実施機関が請求者から直接にその請求趣旨を聴取し、当該趣旨に最も合致する行政文書を示唆することは、異議申立人が他に公開請求した場合にも同様に見られた対応であるが、本件請求に際しての教務課職員の態度は極めて憮然としたものであり、自らは請求人に対する質問等により請求趣旨を何ら積極的に理解しようとはせず、ただ府民情報課職員からの確認の言葉に頷くなどの消極的な意思表示に終始していた。

2 本件処分の違法・不当性

(1)条例の「精神」と実施機関の情報提供義務

「知る権利の保障と個人の尊厳の確保に資するとともに、地方自治の健全な発展に寄与するため」に制定された条例は、その前文において、「情報の公開は、府民の府政への信頼を確保し、生活の向上をめざす基礎的な条件であり、民主主義の活性化のために不可欠なものである。」とし、更に「府が保有する情報は、本来は府民のものであり、これを共有することにより、府民の生活と人権を守り、豊かな地域社会の形成に役立てるべきものであって、府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」と、条例制定の「精神」を明示している。特に、「府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。」という部分は、従前の大阪府公文書公開条例(以下「旧条例」という。)にはなく、市民の「知る権利」もしくは「行政文書の公開を求める権利」の保障を目的とする条例の「精神」をより一層具体化するために追加されたものである。

このような条例の「精神」からすれば、公開請求者に対する実施機関の誠実応答義務及び協力義務が論理必然的に要請されることになる。実際、条例第3条は、「実施機関の責務」として、旧条例と同じく、「実施機関は、行政文書の公開を求める権利が十分に保障されるように、この条例を解釈し、運用するとともに、行政文書の適切な保存と迅速な検索に資するための行政文書の管理体制の整備を図らなければならない。」と規定しているが、「情報提供」を定めた旧条例6条に替えて条例第7条は「公開請求の方法」としてより具体的かつ詳細に実施機関による積極的な情報提供を義務づけている。即ち、同条第2項が「実施機関は、公開請求をしようとするものに対し、当該公開請求に係る行政文書の特定に必要な情報を提供するよう努めなければならない。」とし、更に同条第3項が「実施機関は、請求書に形式上の不備があると認めるときは、公開請求をしたもの・・・に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。この場合において、実施機関は、請求者に対し、当該補正に必要な情報を提供するよう努めなければならない。」と規定しているのは、前文に示された条例の根本精神とも言うべきものの具現化に他ならない。

言うまでもなく、行政文書の公開請求者たる市民は、行政の素人であることを通常とし、それ故「府政への参加」を果たすべく必要な情報にアクセスしようにも、意図する情報を記載した行政文書を直ちに特定して請求できることはむしろ希である。また、条例上の実施機関としては、請求者が行政文書についての知識がないことを前提とすべきものである。その上でなお、実施機関をして「本来は府民のもの」である情報を府民自身が「共有」しようとする意思に忠実に添わしめようとする点にこそ条例第7条第2項及び第3項の意義があり、同第3条によりこれらはそのように解釈・運用されるべきものである。同様の義務規定は、憲法第16条の請願権を具体化した請願法にも見られるが、同条項はこれを行政文書の公開請求について特定的に規定しており、従ってまた格別に強く義務づけたものと言えよう。しかも、これらの条項は実施機関に課した行為規範として十分な具体性を有しており、これに反する不誠実対応ないし非協力という不作為はそれ自体これらの条項の課す義務の不履行(懈怠)として違法と言うべきものである。

(2)本件請求に係る実施機関の義務懈怠

異議申立人が実施機関に請求した情報は、実施機関が卒業式・入学式に関し校長会を通じて府立学校の校長に対して行った指導の具体的内容である。従って「校長会の資料」とは言え、校長会の実際の会議の場で形式的に「資料」と称して配布された文書は勿論、校長会における説示等による指導・助言のために言及された全ての文書を包含するものである。同様にまた、「校長会の会議録」とは言え、校長会の実際の会議の形式的な議事録のみを意味するものではなく、校長会を計画し開催するに当たって実施機関内部において会次第や議案等を起案し、事前に校長会の開催を各校長に通知し、実際の会議の場で校長に伝達する内容を担当課内で検討の上決定したであろうその全ての過程において作成された文書である。本来、本件請求に際して請求書に「2000年1月以降の府立学校校長会の資料並びに会議録。ただし、卒業式・入学式に関する部分に限る。」と記載したのはかかる内容であって、「校長会の資料並びに会議録」という表記は文字通りの表面的な「資料」と「会議録」とに分けられるものではなく一体のものであり、総じて校長会を通して卒業式・入学式に関し各校長に伝達された内容が認識できるであろう全ての文書に外ならないのである。

以上のことは異議申立人が実施機関に直接説明しており、常人の通常の注意力を持ってすればその請求意図を容易に理解されるはずのものである。にも拘わらず実施機関は、公開請求書に「校長会の資料並びに会議録」とあるのを形式的に分割し、その上で「資料」及び「会議録」のそれぞれにつき恣意的に解釈して本件各決定を行ったのである。本件請求に際して請求者の意図を聴取し、実施機関が自ら請求対象である行政文書を「校長会の資料並びに会議録」とするよう示唆しながら、実際には請求者の意図に全く反する決定をしたことは、条例第7条第2項の規定に反するのみならず、意図的な情報の隠蔽との疑念さえ懐かせかねないものである。

とはいえ、仮に本件請求時に実施機関の担当職員が異議申立人の意図を正しく理解し得なかったと言うことも考えられないではない。しかし、もしそうであったとしても、条例第7条第3項の規定に従って、たとえ請求後といえども異議申立人に連絡を取りその必要とする情報を理解し、あるいは請求書の補正を求める等により、該当する文書の確定、従ってその公開に努めるべきであったと言うべきである。本件各決定は、実施機関がかかる必要な努力を何ら払うことなく、請求書記載の文書を恣意的に解釈して行われたものであり、条例第7条第2項及び第3項に違反することは明白である。

(3)本件公開決定の不当性

実施機関が主張する本件公開決定の適法性とは、本件請求に係る校長会において実施機関が「資料」として配布したものは本件公開文書以外にはないという点に尽きる。実施機関の弁明書が言及している校長への「文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文」もまた本件請求の対象となりうる文書に外ならない。同様に弁明書で触れられている校長会での担当課による「口頭での説示」内容を示す「資料」も、本件請求の対象とするところである。その他、伝聞ではあるが、2000年の校長会では当時の文部省が作成した国旗国歌に関する資料集も配布されていると聞き及んでおり、校長会で実際に配布された「資料」にしても本件公開文書だけであるかについて疑念を懐かざるを得ないのである。

ところで、校長会での「説示」についてであるが、170校近くもある府立学校の全校長を集めて行うそれが、担当者のその場の思いつきでなされることは常識的に考えられないであろう。事前に担当課内においてなすべき「説示」の趣旨を検討し、また実際に「説示」をおこなうであろう教育監や教育次長あるいは教育振興室長などとの打合せを行う等、相応に周到な準備がなされたはずである。その際に作成された文書(場合によっては担当者のメモ)もまた、条例第2条に規定される「行政文書」に当たるものであり、かつ、本件請求の請求書に表記された「資料」というべきものである。この点で例えば、校長会での「説示」内容の一端として弁明書に示されている「卒業式・入学式の実施状況の報告」なるものが、担当者が何らの「資料」も参照せずに言えるような事柄ではあるまい。

(4)本件不存在決定の不当性

実施機関が主張する本件不存在決定の「適法性」とは、校長会の「会議録」なるものを作成することは法的に義務づけられていないが故に作成していず、従って存在しないというに過ぎない。仮に校長会の「会議録」ないし「議事録」なるものが真に存在しないとしても、弁明書は単に、公的会議の記録を作成していないという社会通念からは遥かに乖離した状態がなお違法ではないと釈明しているに過ぎない。しかし、実施機関が本来弁明すべきであるのは、本件請求の趣旨に添った「会議録」、即ち会議(校長会)の議事内容や会次第を示す何らの文書も存在しないのは何故かについてである。例えば、弁明書に別紙として添付された「2000年1月以降の府立学校校長会の開催状況」は、本件請求の趣旨からすればそれ自体立派な「会議録」である。しかも、数年前に遡って会議内容の一々の項目が確認できるとすれば、各校長会の会次第なり議事録なりの何らかの記録が保管されていることを意味しており、この点で実施機関は自家撞着に陥っている。

そもそも本件請求の対象たる校長会の「会議録」なるものが、実施機関の担当課の示唆によって請求書に記載された経緯に鑑みれば、該当文書不存在を理由とする非公開決定は原理的にありえないと言うべきである。「会議録」作成の法的義務の有無は勿論、慣行的な事実上の記録作成の有無についても、担当課はその事実を知悉しているはずである。従って、形式的な「会議録」ないし「議事録」の存在・不存在については、本件請求がなされた場でその旨を請求者に伝え得るのであり、条例第7条第2項により実施機関は、それが可能ならば実際にそうするよう義務づけられているのである。仮に百歩譲って、担当職員がその場では気づかなかったかもしくは失念していたとしても、そのことに気づいた段階で、従って不存在による非公開を決定する以前には、請求者に対して同条第3項による「補正を求め」かつ「当該補正に必要な情報を提供する」努力義務がある。従って、この義務が履行され、請求者の意図に添う公開請求がなされる限りは、不存在といういわば門前払いにも等しい結果は論理的にあり得ないのである。

以上のとおり、本件各決定は、条例の趣旨を蔑ろにし、また特にその条例第7条第2項及び第3項に明白に反してなされたものであり、公開請求者の人格を愚弄し、ひいてはその人権を侵害する違法かつ不当なものである。

情報公開制度において本件各決定のような決定が罷り通るのであれば、行政機関は公開請求者に対しいつでも自己の望む結論に至るよう公開請求を操作しうることになり、条例制定の目的は画餅に帰すことになろう。従って、本件各決定はともに当然に取り消されるべきものであり、実施機関は異議申立人に謝罪の上、異議申立人の当初の意図に添う情報の公開をなすべきである。しかし、仮に実施機関において異議申立人の意図する行政文書が今なお不明瞭であるというのであれば、再度本件請求当初の段階に立ち戻り、条例第7条第2項及び第3項に忠実に従い、異議申立人の意図を最大限実現すべく公開対象とすべき行政文書の特定のための情報提供に誠実に努めるべきである。

第五 実施機関の主張要旨

1 校長会について

(1)校長会の概要について

校長会は、府立高等学校長及び府立盲・聾・養護学校長を対象として、それぞれ担当課が所管する事項を説示するために、教育委員会事務局の各担当課が必要に応じて開催する。特に、設置要領等は設けていない。

入学式・卒業式に関する指導は、機会をとらえて繰り返し実施してきた。校長が学校を離れて会議に出席することは負担になるので、担当課同士で調整を行い、できるだけ複数の案件を一度の会議で扱うようにしており、入学式・卒業式に関する指導は、他課が開催する校長会の時間の一部を利用して説示していることが多い。

(2)平成12年1月以降の開催状況について

該当時期における校長会は、28回開催された。このうち、卒業式・入学式に関わる議題を扱った校長会は、17回である。

これら17回の会議のうち、平成12年4月6日開催の会議において「平成12年度府立学校に対する指示事項」、平成13年4月6日開催の会議において「平成13年度府立学校に対する指示事項」、平成14年4月5日開催の会議において「平成14年度府立学校に対する指示事項」を配布した。これらは、毎年度当初、実施機関が府立学校長に対して、学校として取り組むべき課題を指示したものである。そして、その他の会議においては、文部科学省並びに実施機関の卒業式・入学式に関する通知文、「指示事項」の内容の徹底や卒業式・入学式の実施状況等の報告を行ったものである。

これらの会議においては、文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文、「指示事項」の内容の徹底や卒業式・入学式の実施状況等の報告を行ったものであるが、これらの通知文については、校長会とは別に各府立学校あてに送付したものであり、「指示事項」については、校長会において配布したものであることから、実施機関としては、その他の会議において、特に資料を必要とするものでないと判断し、実施機関の担当課において資料を作成、配布することなく、口頭で説示したものである。

2 行政文書の特定並びに本件各決定の適法性について

(1)本件公開決定における行政文書の特定について

実施機関が作成し校長会で配布した資料のうち、卒業式・入学式に関するものは、本件公開文書である各年度の「指示事項」のみである。「指示事項」は、毎年度当初に、実施機関が府立学校長に対して、その年度に学校として重点的に取り組むべき課題を示したもので、この中に卒業式・入学式に関する項目もある。卒業式・入学式に関しては、これを基にして、さまざまな機会をとらえて説明しているところである。

該当する校長会の議題が、文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文や「指示事項」の内容の徹底、卒業式・入学式の実施状況等の報告を行うものであり、特に資料を必要とするものではないと判断したことから、実施機関において、本件公開文書以外の資料を作成、配布することなく、口頭による説示を行ったものである。

したがって、本件請求のうち、「2000年1月以降の府立学校校長会の資料。ただし、卒業式・入学式に関する部分に限る。」の部分について、本件公開文書以外の文書は、作成していないため、管理しておらず、本件公開決定における行政文書の特定は適法である。

(2)本件不存在決定について

本件請求に係る校長会は、卒業式・入学式に関する文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文や指示事項の内容の徹底等について担当課が必要とする事項を説示するために開催したものであり、その内容について検討、協議を行うことが目的ではない。したがって、実施機関においては、本件請求に係る校長会に関して、会議録を作成する必要がないと判断し、会議録を作成していないため、本件請求に係る行政文書を管理しておらず、本件不存在決定は適法である。

3 条例第7条第2項及び第3項の義務を怠っていないことについて

本件請求に際して、実施機関の担当職員が異議申立人から直接説明を受けたことは事実であるが、実施機関の職員は、請求書に記載された内容どおりに請求者の意図を理解した。異議申立人の話からは、請求意図が異議申立人が主張するように、「全ての文書を包含するもの」とは理解できるものではなかった。また、実施機関の職員は、請求書を受け取る際に、異議申立人に「府立学校校長会の資料とは何か。」と確認して、「府立学校校長会で配付された資料である」ことを念を押して確認している。会議録についても同様である。この際、異議申立人からは特段の発言がなかったので、合意が得られたものと判断した。請求者から聴取した内容、請求書に記載された文面から判断する限り、実施機関の対象文書の特定には間違いはないと考えている。

なお、郵送による公開実施の後も、異議申立人から特に条例第7条第2項及び第3項違反についての指摘はなく、両者の間で齟齬があるとは、思い至らなかった。

以上のとおり、実施機関は、意図的に対象文書の範囲を狭めたり、情報を隠蔽しようとしたものでは決してなく、条例第7条第2項及び第3項の義務を怠ったものではない。

第六 審査会の判断

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに、府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保して、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このような理念の下に実施されている行政文書公開制度の対象となる「行政文書」の範囲については、条例第2条第1項において、a「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)並びに電磁的記録」であって、b「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいうと規定されており、実施機関は、請求に係る情報が上記要件を満たす「行政文書」に記録されている場合には、当該情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除き、その行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件各決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)本件請求の趣旨について

行政文書の公開請求は、請求権の行使であり、請求内容を明確にして手続を進める必要がある。このため、行政文書の公開請求は、行政文書公開請求書を提出して行わなければならないこととされており(条例第7条第1項)、実施機関は、当該請求書の記載内容に即して公開請求の趣旨を判断すべきものである。

本件請求は、異議申立人が行政文書公開請求の受付窓口である府政情報センターに来所して行ったものである。本件請求に係る行政文書公開請求書(以下「本件請求書」という。)は、府政情報センターに赴いた実施機関の担当職員が、異議申立人と面談の上把握した請求の趣旨について示唆したところに従って、異議申立人が所定の事項を記入し提出したものである。このような場合にあっても、請求の趣旨は、第一義的には、当該請求書の記載内容から判断すべきものであり、面談中の請求者の発言内容等当該請求書の記載内容以外の事情は、請求書の記載内容から請求の趣旨を明確に把握することができない場合など特別な事情のある場合に限って考慮すべきものと考えられる。

このような観点から、本件請求書の記載内容を検討すると、「2000年1月以降の府立学校校長会の資料並びに会議録」という文言は、常人の通常の解釈としては、2000年1月以降の校長会の「会議で使用する会議参加者の共通の資料として事前又は当日に配布された文書」及び「会議の結果を記録した文書」と十分明確に解釈されるものである。異議申立人は「校長会における説示等による指導・助言のために言及された全ての文書を包含するもの」や「校長会を計画し開催するに当たって実施機関内部において会次第や議案等を起案し、事前に校長会の開催を各校長に通知し、実際の会議の場で校長に伝達する内容を担当課内で検討の上決定したであろうその全ての過程において作成された文書」と広く解釈されるべきである旨主張しているが、かかる主張は本件請求書の文言上無理がある。

以上のことから、当審査会は、本件請求に係る行政文書について、「2000年1月以降の府立学校校長会の『会議で使用する会議参加者の共通の資料として事前又は当日に配布された文書』及び『会議の結果を記録した文書』」であるとの解釈に立って、本件各決定が妥当であったかどうかを検討することとした。

なお、異議申立人は、実施機関が「公開請求書に『校長会の資料並びに会議録』とあるのを形式的に分割し、その上で『資料』及び『会議録』のそれぞれにつき恣意的に解釈して本件各決定を行ったのである。」と主張しているが、公開請求に対応する行政文書の一部が不存在である場合、本件のように区分して2通の決定通知書を作成することは、公開請求への対応として通常行われる措置であり、実施機関において恣意的に行った措置ではないことは明らかである。

(2)卒業式・入学式に関する校長会の開催の実情について

実施機関の説明等により、概ね次のとおり認められる。

校長会は、府立高等学校長、府立盲・聾・養護学校長及び府立高等専門学校長を対象として、教育委員会事務局の各担当課が、所管する事項について必要な伝達等を行うために、必要に応じて開催するものであり、特に、設置要領等は設けられていない。校長会の会議の事務局は、開催目的である事項を所管する課が担当しており、複数の担当課が共催することもある。会議の開催については、各担当課から、原則として、文書(最近では電子メール)にて通知される。会議次第は、担当課によって作成される場合と作成されない場合があり、会議資料についても議題によって用意される場合と用意されない場合がある。出席者は、当日出席者に名簿への記入を求めるなどにより確認し、欠席者がある場合は、後日、校長を教育委員会事務局に招致するなどして会議出席者と同様の事項の伝達を行っている。

校長会における入学式・卒業式に関する指導は、機会をとらえて繰り返し実施されており、他課が開催する校長会の時間の一部を利用して行われていることが多い。本件請求に係る期間において、校長会は28回開催されているが、うち17回の校長会で卒業式・入学式に関わる議題が扱われている。その際の説示内容は、「府立学校に対する指示事項」等の趣旨の徹底が中心となっている。

なお、校長会の会議は、府立学校の長が組織する任意団体である大阪府立高等学校校長協会の会議に合わせて開催する場合もあるが、あくまでも別途の会議として区分して扱われている。

(3)本件各決定の妥当性について

当審査会においては、本件各決定の妥当性について判断するに当たって、実施機関の府立学校に対する入学式・卒業式に関する指導における校長会の位置づけを踏まえつつ、「2000年1月以降の校長会の『会議で使用する会議参加者の共通の資料として事前又は当日に配布された文書』」が本件公開文書以外にあるかどうか、また、何らかの「2000年1月以降の府立学校校長会の『会議の結果を記録した文書』」があるかどうかについて、調査検討を行った。その結果は、以下のとおりである。

ア 本件公開決定における対象行政文書の特定の妥当性について

本件公開決定に基づいて公開された各年度の「府立学校に対する指示事項」(本件公開文書)以外に卒業式・入学式に関して本件請求に係る期間に開催された校長会の「会議で使用する会議参加者の共通の資料」を管理していないことについての実施機関の説明は、概ね「該当する校長会の議題が、文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文や『府立学校に対する指示事項』の内容の徹底、卒業式・入学式の実施状況等の報告を行うものであり、特に資料を必要とするものではないと判断したことから、実施機関において、本件公開文書以外の資料を作成、配布することなく、口頭による説示を行ったものである。」というものであった。また、異議申立人が特に指摘する「文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文」が校長会で配布されていないことについての実施機関の説明は、概ね「『府立学校に対する指示事項』以外は、そのつど別途、文書等で通知しており、校長会の会議の場で重ねて配布することはしていない。」ということであり、「文部省が作成した国旗国歌に関する資料集」についての実施機関の説明は、「『文部省が作成した国旗国歌に関する資料集』は平成11年(1999年)10月の校長会で配布されており、本件請求に係る期間の校長会では配布されていない。」ということである。

これらの説明は、(2)で述べた校長会の性格及び校長会において卒業式・入学式に関して伝達されている内容も考慮すると、特段不自然・不合理な点が認められないところであり、その他審査会において調査したところによっても、上記請求の趣旨に該当する行政文書の存在は確認されなかった。

以上のことから、本件公開決定における対象行政文書の特定は妥当であったと認められる。

イ 本件不存在決定の妥当性について

卒業式・入学式に関して本件請求に係る期間に開催された校長会の「会議の開催結果を記録した文書」を管理していないことについての実施機関の説明は、概ね「本件請求に係る校長会は、卒業式・入学式に関する文部科学省並びに実施機関の卒業式及び入学式に関する通知文や指示事項の内容の徹底等について担当課が必要とする事項を説示するために開催したものであり、その内容について検討、協議を行うことが目的ではないことから、会議録(会議の開催結果を記録した文書)は作成していないため、本件請求に係る行政文書を管理していない。」というものであった。

これらの説明は、(2)で述べた校長会の性格及び校長会において卒業式・入学式に関して伝達されている内容からすると、特段不自然・不合理な点が認められないところであり、その他審査会において調査したところによっても、当該会議の開催結果の記録に該当する行政文書の存在は確認されなかった。

なお、異議申立人が指摘する弁明書添付の「開催状況」は、実施機関が弁明書の提出に際して作成したものであり、本件請求の時点、さらには本件各決定の時点には存在しないものであって、対象行政文書とはなり得ない。内容的にも日時と議題をまとめたに過ぎないものであって、会議の開催結果について何らかの記録があったことの証左と見ることもできないものである。

以上のことから、本件不存在決定は妥当であったと認められる。

(4)条例第7条第2項の努力義務について

条例第7条第2項は、「実施機関は、公開請求をしようとするものに対し、当該公開請求に係る行政文書の特定に必要な情報を提供するよう努めなければならない。」と規定している。この規定は、請求者が自ら知りたい情報を記録した行政文書を公開請求するにあたって、実施機関がどのような行政文書を保有しているのかを容易には把握しがたいことから、実施機関に対して必要な情報を提供するよう努力義務を課したものである。

このため、実施機関においては、公開請求の受付窓口である府政情報センターに行政文書ファイル目録や長期保存文書目録を備え付けて一般の閲覧に供するとともに、府のインターネットホームページにおいても行政文書ファイルを検索できるようにしていること、また、府政情報センターにおける公開請求の受付に際しては、原則として、当該請求に係る業務を所管する担当課の職員が直接に請求者と面談して、請求に係る行政文書の特定に必要な情報の提供に努めることとしていることが認められる。

さらに、公開請求の受付に際して、請求に係る行政文書が「明らかに」存在しない公開請求を行おうとした場合には、請求の見直しを要請することとするとともに(大阪府情報公開条例解釈運用基準条例第7条の項の運用5)、請求に係る行政文書の存否がその場で明確に把握できない場合には、その旨を請求者に説明し、請求者に対応を考えてもらったり、あらかじめ不存在の決定があり得ることを了解してもらうなど可能な限り請求者との間に齟齬をきたさないような対応に努めることとしていることも認められるところである。

本件においても、実施機関の担当課の職員が直接に請求者と面談して、請求に係る行政文書の特定に必要な情報の提供に当たったものであるが、異議申立人は、本件請求の意図と異なる結果になった旨主張している。特に、本件不存在決定に関しては、「校長会の『会議録』なるものが、実施機関の担当課の示唆によって請求書に記載された」として、「該当文書不存在を理由とする非公開決定は原理的にあり得ない」と主張しているが、この点についての実施機関の説明は、概ね「会議の結果を記録した行政文書が存在しないことについて、窓口で対応した職員は了知しておらず、請求の見直しを要請するに至らなかった。本件請求に対する決定について検討する際に、不存在の事実が明らかになった。」というものであり、この説明について、特段不自然・不合理な点は認められなかった。

以上のことから、本件における実施機関の対応が条例第7条第2項の規定に照らして適切であったかどうかを検討するに、会議の結果を記録した行政文書が存在しないことを了知していなかった実施機関の職員が請求の見直しを求めなかったこと自体は、上記の解釈運用基準の内容に照らし、特段不当であったとは言えず、請求書に請求に係る行政文書が明確に記載されている本件において、対象行政文書の特定は、請求書の記載に即してなされるべきであることからすると、本件各決定に至った経過自体は、止むを得ないものであったと考えられる。

しかしながら、本件においては、実施機関の職員との面談による示唆のもとに「会議録」という記載がなされたという経緯があるにもかかわらず、「会議録」について不存在による非公開決定を行っており、明らかに異議申立人の期待を裏切る結果となっている。実施機関においては、行政文書公開請求の受付に際し、対象行政文書の存否の見通しに関する情報を的確に提供することの重要性に十分留意し、今後一層、慎重な対応を心がけられるよう望みたい。

(5)条例第7条第3項について

異議申立人は、実施機関は「条例第7条第3項の規定に従って、たとえ請求後といえども異議申立人に連絡を取りその必要とする情報を理解し、あるいは請求書の補正を求める等により、該当する文書の確定、従ってその公開に努めるべきであった」と主張しているが、同項は「請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」が十分記載されていないなど請求書に形式上の不備がある場合に補正を要求することを定めているものであり、請求書の記載内容が明確で、請求書に形式上の不備が認められない本件のような場合について、補正を要求する必要はなく、この点についての異議申立人の主張は当を得ないものである。

3 校長会に関する行政文書の保存について

本件各決定についての審査会の判断は以上のとおりであるが、実施機関における校長会に関する行政文書の保存に関して、本件異議申立ての審査を通じて明らかとなった問題点について以下のとおり付け加える。

行政文書公開制度は、実施機関が現に管理している行政文書について公開を求める権利を府民等に認めるものであり、本制度がその機能を十分に果たすためには、実施機関において適正な文書管理を行うことが重要である。このことは条例においても、実施機関の責務として明記されているところである(条例第3条)。

一方、校長会は、その開催形態や内容は多岐にわたっているが、実施機関が百数十校に及ぶ府立学校の責任者を集めて重要事項の伝達を行う最高レベルの会議であり、その開催に関する文書は、何らかの形で系統だって保存されるべきものである。

しかしながら、本件の審査に当たって校長会に関する文書の保存の実情について調査したところ、会議の開催通知や会議次第などの関係資料が系統だって保存されておらず、開催日時や主催者、出席者、議題等の概括的な事項さえ、個人的なメモを参照しなければ確認できない会議が散見された。実施機関の府立学校に対する指導事務における校長会の重要性に鑑み、実施機関として「府民に説明する責務」(条例前文)を全うすることができるよう、校長会に関する文書の作成及び保存のあり方について見直しを行われたい。

4 結論

?以上のとおりであるから、実施機関が行った本件公開決定及び本件不存在決定は妥当である。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり、答申するものである。

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