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更新日:2014年8月29日

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人権学習シリーズ ちがいのとびら 多様性を読み解く視点や概念

“うわさ”をよむ

ねらい

さまざまな差別に関連して、うわさの流れることが少なからずあります。うわさの多くは身近な人から聞かれるため、うわさを理屈だけで否定しようとしてもなかなか納得しにくいものです。うわさについての学習はさまざまな人権課題に関する学習にとって重要なテーマです。誤った情報がどのように発生してどのように広がるおそれがあるのか、擬似的であっても具体的に体験していることで、うわさを安易に信じたり広げたりすることに疑問を感じるようになりやすいものです。学習を集団が経験することによって、その集団のなかで安易なうわさの流れる度合いが低下すると期待できます。

基本概念

うわさ、情報、ステレオタイプ、偏見、メディア・リテラシー

時間

110分

準備するもの

1枚の絵(参加者が見える大きなものか、参加者すべてに資料として配れる大きさのもの)
コミュニケーションカード(感想を書いてもらう用紙)(参加人数分)
A4白紙(参加人数分)
ホワイトボード

プログラムの流れ

自分にとって思い出深いうわさ話を思い出す
うわさという問題を自分に引きつけて考えやすくするために、それぞれの体験を出しあいます。交流することにより、うわさという問題の身近さや重要性を認識します。
【アクティビティ】
ウソ入り自己紹介・思い出深いうわさ

うわさが広がる上での問題点を考える
うわさを疑似体験することにより、うわさに含まれる問題点を体験的に知ることができます。疑似体験を振り返って、どこにどのような問題があるのかを考えます。また、うわさに出会ったときにどうすればよいかというアイデアを出し合います。
【アクティビティ】
私はメディア

思い出深いうわさ話に対して何ができたかを考える
最初の自分たちの体験を思い出し、それぞれの場面で何をどうできたかを考えます。
【アクティビティ】
うわさをあばく

アクティビティの進め方

ウソ入り自己紹介(20分)

各グループ(4~5人)に分かれ、自己紹介します。それにむけて、自分について説明する4項目をあげ、A4白紙に書いてもらいます。
4項目のうち1つだけはウソを入れます(例えば「私はワニを飼っています」など)。他の人たちは話しあって、そのうちどれがウソであるかを当てるようにします。
(時間的に余裕があれば、各グループからもっとも話題性のあるウソをいれて、全体に向けて1グループのメンバーそれぞれが1項目だけで自己紹介し、誰の項目がウソであるかをみんなが当てるという活動を入れることもできます。)

ファシリテーターの問いかけ
「どんなところからウソだと判断しましたか」
「ウソにはどんな種類があったでしょうか」
「ウソのなかにどんな願いや経験が込められていると思いましたか」
「“楽しいウソ”にはどんな特徴があったでしょうか」

思い出深いうわさ(15分)

先ほどのグループのままで、これまでに出会った印象深いうわさを出し合います。先ほどのA4白紙の裏を使って簡単にそのうわさをめぐるエピソードをメモ書きし、それを見ながらグループで紹介しあってもらいます。あとでもう一度使うので全ての人から出てきている方がやりやすいですが、出てきにくい場合は書ける人だけで結構です。
参加者にヒントになるよう、ファシリテーターは、自分の経験したうわさをいくつか紹介した上で活動を始めてもらいます。

例)

  • 「中2になったうちの子どもが、携帯メールで『テストでカンニングしていた』といううわさを流された」
  • 「近所の文化住宅で在日のお年寄りのお葬式があった。葬式には、親元を離れて世帯を設けている息子や娘が集まった。夜になったとき、その人たちは大声で喧嘩していた。それを聞いた人たちの間には、『葬式だというのに、財産の取り合いをしている』といったうわさが流れた。しかし、あとでわかったのは、口論の原因は、残されたおばあさんを誰が引き取るかであるということだった。『私が引き取る』とみんながいって喧嘩になっていたのだ」

ファシリテーターの問いかけ
「出てきたうわさにはどんなものが多かったですか」
「“罪のないうわさ”はあったでしょうか」
「うわさが起こる背景にはどんな要因があるでしょうか」

私はメディア(50分)

「今日はうわさについて考える活動をします」と説明し、お話を伝えてくれる4~6人のボランティアを募ります。ボランティアの人たちには、一端部屋の外に出てもらいます。(ファシリテーターを2人確保できるなら、1人がボランティアをガイドしたり、ボランティア向けの説明や進行などを担当したりします。)
ボランティアの人たちが出て行った後、残った人たちにグループ(4~5人)ずつの小グループに分かれてもらい、グループごとに小さな輪になって座ってもらいます。
グループ分けがすんだら、ボランティアに戻ってきてもらい、その中の1人にだけ絵を見せます(この段階で絵を見ているのはこのボランティアのみであるように設定します)。絵を見たボランティアは、その絵のことを他の3~5人のボランティアに伝えます。伝えられたボランティアは、それぞれが1つのグループを担当して、そのグループのところに行って自分の聞いたことを伝えます。
聞いたグループは、1人代表を選んで、次のグループに伝えます。グループ代表から次のグループへの伝言を3回以上繰り返して、全てのグループに話が伝わるようにします。これで、ボランティアの人数に応じて3~5通りのルートができることになります。
最後に聞いた3~5つのグループは、1人代表を決めてもらい、その人たちが前のホワイトボードに自分が聞いた話を絵に描いてもらいます。
絵ができあがった段階で、もとの絵を配るか、または大きく掲示することにより全員に見せます。ホワイトボードに描かれた3~5枚の絵と、初めに見た絵を比べて話しあってもらいます。それぞれのルートごとに、人から人へと伝わる中でどのように変化していったのかを跡づけします。
「この学習で起こったことと、現実世界で起こるうわさとは、どこが同じでどこが違うでしょう」といった質問により、現実に引きつけて振り返ってもらいます。

※全体プロセスを観察するグループを設け、その人たちには、全体をみての感想を出してもらうこともできます。逆に人数が少ないなどの場合には、みんなの前でボランティアの4~6人に順番に伝えていってもらい、それをみんなで見るというやり方もできます。

ファシリテーターの問いかけ
「初めの絵と最後の絵ではどんな違いと共通点があるでしょう」
「グループ間の共通点や相違点はどんなところにありますか」
「違いが出てきたのはなぜだと思いますか」
「最初の絵と決定的に違う点があるとすれば、それはどの絵のどの部分でしょうか」
「この活動と実際のうわさではどこが同じでどこが違うでしょうか」
「うわさかどうかを判断するにはどうすればよいでしょうか」
「怪しいうわさ話に出会ったときにはどうすることができるでしょう」

参考:『多様性教育入門─参加型人権教育の展開』「うわさのしくみ」(解放出版社 2005年)

ファシリテーターの情報提供
次のような方法を紹介して、怪しいうわさに出会ったときの対応の仕方を考え出すヒントにしてもらいます。

  • できごとの場合「それはいつどこであったことなんやろう。直に見た人は誰」などと5W1Hを確かめる。
  • 「なぜその人はそう思ったんやろうね。根拠は何やったんやろう」と問う。
  • 「それって気分悪いうわさやなあ」とはっきり言う。
  • うわさが間違っていたということを思い知らされた自分の経験を相手に伝える。
  • そのうわさで誰がどんなふうに傷つくかを考えようと提案する。

うわさをあばく(20分)

先にあげてあった「思い出深いうわさ」に対して、自分は何をできたかを考えます。
「思い出深いうわさ」でエピソードを書いたA4白紙を出して、それに対して自分は何ができたかを考え、グループの中で紹介しあいます。

ふりかえり(5分)

コミュニケーションカードに感想を記入してもらいます。

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