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更新日:2014年8月29日

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人権学習シリーズ ちがいのとびら 多様性と人権課題

さまざまな性と生

ねらい

人を理解しようとするとき、性別を手がかりに判断していることがあるのではないでしょうか。自分自身についても、自覚しているといないとに関わらず、女性/男性であるという意識から大きな影響を受けているといえるでしょう。女性/男性であるとは、いったいどういうことをさすのかを改めて問い直し、一人ひとりが自分らしく生きていくために、大切なことを考えます。
また、身体の性、社会的につくられた性、心の性、性的関心の向かい方など、「性」にはさまざまな角度からの捉え方があることを知り、自らの性を振り返りながら、性の多様性を尊重できるあり方について考えます。

基本概念

ジェンダー、セクシュアリティ、性の多様性、自己決定

ジェンダー:社会的・文化的に形成される男 女の意識、役割などの差異
セックス:生物上の男女の差異
セクシュアリティ:性的特質、興味、意識させるものなどの総体

時間

120分

準備するもの

ワークシート「わたしは_です。」(参加人数分)
資料「性の多様性」(参加人数分)
のり付きふせん紙(7~8cm角 2色)参加人数分×6枚程度※多めにあるとよい)
A4白紙(参加人数分)
模造紙(グループ数)
マーカー(グループ数)「名刺カード」(参加人数分)〈55ページ〉

プログラムの流れ

女性のイメージ・男性のイメージ
今の社会の中での女性/男性について、どのようなイメージを持っているでしょうか。それぞれの立場で感じていることを具体的に出しあい、共有します。
【アクティビティ】
もしも生まれかわるなら…

「らしさ」から一人ひとりの生きやすさへ
自分の意見だけでなく、一般的に言われているようなことも材料にしながら、2つの軸で整理します。“対”にして正反対のように語られることも多い女性と男性ですが、どのくらい違うのでしょうか。違っていることをどのように扱うべきでしょうか。性による違いと個人差はどちらが大きいでしょうか。
【アクティビティ】
男女の社会的性差/生物的性

性の多様性に出会う
性は女性と男性の2種類のように言われています。しかし、実際にはさまざまな性のあり方があります。興味本位でなく、性の多様性を、自分もそのバリエーションの1つとして位置づけながら受けとめ、多様なあり方を尊重するために大切なことを考えましょう。
【アクティビティ】
あなたは女?男?それとも…?・多様な性が尊重されるために

アクティビティの進め方

もしも生まれかわるなら…(15分)

性別についての捉え方を出しあいます。参加者に円になって座ってもらいます。「もし生まれかわるなら、どんな性がいいですか」と問いかけます。「男女」の二者択一ではなく、「80%くらいは女性に生まれかわりたいけれど、20%くらいは男性」「どちらでも構わないので50%ずつ」「男でも女でもない存在がいい」など、自由に考えてもらいます。割合の順に席を移動し並び変わります。自分の思う割合とその理由を一言ずつ紹介してもらいます。

ファシリテーターの問いかけ
「なぜ、女性/男性がいいと思ったのですか(イヤだと思ったのですか)」
「女性/男性に生まれかわったらどんなことをしてみたいですか」

男女の社会的性差/生物的性(45分)

性による違いを整理して考えます。
参加者を4人程度のグループに分け、かたまって座ってもらいます(「もしも生まれかわるなら…」で希望した性が違う人どうしがグループになるようにするとよい)。
1人につき2色ののり付きふせん紙を3枚ずつ配ります。片方の色のふせん紙には「男は~~だ」、もう片方の色ののり付きふせん紙には「女は~~だ」という文を、1枚に1つずつ書いてもらいます。自分の考えでも、世間一般やメディアなどでよく言われているようなものでも構いません。
「ジェンダー(gender)」は社会的に規定された性別、「セックス(sex)」は生物学的性であることを短く説明します。模造紙に「ジェンダー⇔セックス」「事実⇔推定」の2次元軸を書き、グループ(4~5人)で書き出したのり付ふせん紙をどこに配置するかを話しあいながら貼っていきます。特に合意が難しかったものについて全体で共有し、話しあいます。

性差

ファシリテーターのコメント
「生物的・事実に分類されたものはどんなものがあったでしょうか。性による違いは確かにあります。そのときに大切なのは、社会の中で違いを不利益につなげないということです」
「事実と言いきるのに難しい項目はどのくらいあったでしょうか。女性/男性というカテゴリーの傾向にあてはめて「女性/男性らしいか、らしくないか」を判断するのではなく、実際に目の前にいる人自身に向きあい、「その人らしさ」を尊重する姿勢が大切なのではないでしょうか」
「性による違いで、圧倒的に多いのはジェンダーによるものです。ということは、社会や文化の変化とともに、それぞれの性のイメージは変化していく可能性が大きいということがいえます」

あなたは女?男?それとも…?(45分)

性の多様性について知ります。
ワークシート「わたしは_です。」を各参加者に配ります。紙の一番上に「わたしは○○です」と、自分の性別について書いてもらいます。男、女、両方、どちらでもない、など自分の思うものを書いてもらって構いません。下のところに、自分がその性別だと思う理由を「なぜなら○○だから」と、できるだけたくさん書いていきます。書きにくいと感じる参加者がいたら、「自分があたり前に受けとめていて、理由まで考えていないことをあえて考えてもらうための活動です」「理由がなくても自分の性を“こうだ”と思えるのはなぜでしょう」と問いかけます。全員がある程度書き終わったら、書いた項目を分類してもらいます。それぞれの項目の右側に、理由が生物的なものであれば「S(セックス)」、社会的・文化的なものなら「G(ジェンダー)」、どちらか分からなければ「?」、というように書いていきます。
その上で、グループでどのような項目を書いたかを話しあい、理由が生物的なものなのか、社会的・文化的なものなのかを話しあいます。グループで話しあった内容について、発表し全体で共有します。
この活動にあたっては、書いたものや内容は、自分が開示してよいと思う範囲で出す(発表しなければならないわけではない)ことを強調しておきます。

ファシリテーターの問いかけ
「皆さんが自分の性別の理由としてあげたものは、どういったものだったでしょうか」
「性は、男性と女性の2つに分けられ、それは身体の性(セックス)によって決まるという捉え方があります。しかし、実際には性にはかなり多様なあり方があります」

※資料「性の多様性」を配り、適宜、解説します。
「今日、紹介したことの中には、皆さんが初めて知ることや聞いたことがあるかもしれません。関心を持った人は、本もいろいろ出ていますので読んでみてください」
「ただ、知識を増やすことが大切なのではありません。知っておいてほしいことは、“性には多様性があり、正しいあり方があるわけではない”ということです」

多様な性が尊重されるために(15分)

ここまでの内容を振り返って、多様な性のあり方を尊重するために、大切なことはなにかを2人組またはグループで話しあい共有します。

ファシリテーターのコメント
「身近に性的少数者に出会ったことがないという人もいるかもしれませんが、それは、“出会ったことがない”のではなく、“当事者が気づかれないようにしていた”ということなのかもしれません」
「自分の性のあり方を、どこで/誰に、どのくらいオープンにするかは、その人自身が決めることです。多数派が考えておきたいのは、性的少数者が自分のことをオープンにしたいと思ったときに、安心して自己開示できるには、ふだんからどんなことに留意しておくことが大切かということです」
「他の人権課題にも共通することですが、自分の認識を“ふつう”“あたりまえ”として前提にしてしまわない、相手のあり方やどうしたいかということを尊重するということからはじめましょう」

ワークシート

あなたは女?男?それとも・・・?
わたしは___です。

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

なぜなら____________________だから( )

ワークシート「あなたは女?男?それとも・・・?」/あなたは女?男?それとも・・・?(PDF:701KB)

資料

性の多様性

性は、男性と女性の2つ…?

人間は、男性と女性の2つに分けられ、それは身体の性(セックス)によって決まるという捉え方があります。しかし、身体の性だけが私たちの性別の認識の根拠なのでしょうか?例えば、性器がなくなったら、性別への認識や行動はどのくらい変わるのでしょうか?

実際には、私たちの性のあり方は、身体的な要素だけでなく、社会的な捉え方や自分自身の認識が大きく影響しているのです。

そして、身体の性や性の認識・あり方は、男女の2つだけではなく、もっと多様なのです。

身体の性について―インターセックス

ヒトの性別は、遺伝学的には性染色体がXXなら女、XYなら男と規定されます。しかし、ヒトの生殖腺、内性器、外性器の組み合せには多様性があります。男と女の二分法の典型的なパターンに収まらない性をインターセックスと呼びます。インターセックスは、ヒトの性別が二分法で割り切れるような単純なものではなく、むしろ連続体(グラデーション)であることを示しているといえます。

※なお、最近では、インターセックスではなく、「性分化障がい」「性発達障がい」という言葉が、当事者や専門家の間で用いられるようになっています。遺伝情報や内分泌の変異により、生殖器や泌尿器に分化や発達の障がいが生じているということをより適切に表現するためです。また、日本小児内分泌学会は「障がい」という言葉を用いず、「性分化疾患」という用語(染色体、性腺、または解剖学的性の発達が非典型的である先天的状態を指す医学用語)を提唱しています。

性のありようのさまざまな側面―性自認/性役割/性的指向性

自分が女あるいは男であるという性的な自己認知、つまり性自認のことをジェンダー・アイデンティティ(性同一性)といいます。ジェンダー・アイデンティティは、単に性別の認知にとどまらず、「一人の人間が、男性、女性もしくは両性としてもっている個性の、統一性、持続性、一貫性」(J.マネー、P.タッカー『性の署名』(1975年、邦訳1979年))という人格全体にかかわる内容としても捉えられており、精神医学の領域では、次の3つの構成要素に整理されています。

  • 1)中核性同一性:自分が男あるいは女であるという自己認知と基本的確信
  • 2)性役割:社会的・文化的レベルでの性別に基づく役割期待および役割遂行
  • 3)性的指向性:性的な興味、関心、欲望の対象が異性、同性、あるいは両性のいずれに向いているかという性的対象選択

自認している性と身体の性が一致しない状態を性同一性障がいといいます。「女性」「男性」以外の性自認をもつ人もいます。

性役割とは、言葉づかいやふるまい、服装、職業などについて、女性/男性にふさわしいあり方として社会でイメージされているもののことを指します。

性的指向性(性指向)が異性に向かう人のことを異性愛、同性に向かう人のことを同性愛といいます。また、性別を大きな基準としない(異性か同性かが重要ではない)バイセクシュアルの人もいますし、性指向が明確でない、またはない人もいます。

※性の好みという意味での「性的嗜好」とは異なります。

性の多様性

私たちの社会は、男女のいずれかの典型的な特徴をもった身体をもち、身体の性と性自認が一致し、その性にふさわしいとされる振る舞い(性役割)を身につけ、異性を愛するという人を“ふつう”と捉えています。しかし、それは身体の性、性自認、性役割、性指向の組み合わせからいけば、ごく一部のパターンでしかありません。実際には性同一性障がい、同性愛やバイセクシュアルの人など、多様な性のありようがあるのです。

『女性学事典』(岩波書店、2002年)、『性分化異常症の実態把握と治療指針作成:研究報告書』(国立成育利用センター、2010年)などを参考に作成

資料「性の多様性」/性の多様性(PDF:862KB)

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