ここから本文です。
人権学習シリーズ ちがいのとびら 多様性と人権課題
フツーの感覚?
ねらい
私たちは、日常会話の中で「フツー」という言葉をよく使います。「フツー」っていったい何を基準にフツーなのでしょうか? 今までに、自分自身が学んできたもの、身につけてしまっているものについて、「フツー」という表現で感覚を表します。では、この「フツー」と言われる感覚は、みな同じなのでしょうか?感覚の違いがあることについて、私たち自身の自覚も必要です。表面的には見えてこない多様な感覚について知り、私にとってあたり前と思っている感覚が、決めつけや偏見などにつながることを理解しましょう。
基本概念
感覚の違い、感覚の自覚
時間
130分
準備するもの
ワークシート「気持ちに耳を傾けよう」(参加人数分)
ワークシート「どう感じてる?」(参加人数分)
「思う」「ちょっと思う」「あまり思わない」「なんとも思わない」の各項目をA3程度の白紙に書いたもの(項目数につき1枚)
A4白紙(参加人数分)
模造紙(グループ数)
マーカー(グループ数)
プログラムの流れ
私が見えているものは
私たちは、人が自然体であることをどう見ているのでしょう?
生きている自覚を、人は見えることだけで判断したり決めつけたり、つくり上げていることが多分にあることを振り返ってみましょう。
【アクティビティ】
宇宙人に自己紹介
↓
多様な感じ方をきいてみよう
人が持つさまざまな感覚は、どのように表されましたか?
4コママンガにある状況からそれぞれの感じ方や気持ちの違いをみてみましょう。
【アクティビティ】
気持ちに耳を傾けよう
↓
常識(普通)って何?
私たちの日常の生活の中でも、人が持つ感覚で常識(普通)と思い込んでいる事柄や事象にはどんなことがあるでしょうか?
そして、実際にその常識(普通)はどこから学んでいるのでしょう?
【アクティビティ】
常識(普通)って何?
↓
多様性を尊重する社会でわたしにできること
多様な感覚や、感じ方がある中で、何か行動を起こそうとする時に、私たちが自分の感覚を自覚し、他者の多様な感覚を理解しながらお互いを尊重するにはどのようにしたらよいでしょうか?
【アクティビティ】
ペアで部屋の四隅
アクティビティの進め方
宇宙人に自己紹介(20分)
椅子だけの状態で座ってもらいます。2人組になって簡単にお互いの自己紹介をしてもらいます。
その後、どちらか1人が宇宙人になって、もう1人が宇宙人に地球人を紹介します。お互いに交互に宇宙人の役になります。
2人で地球人をどう紹介したかを全体で紹介してもらいます。
ファシリテーターの問いかけ
「地球人の紹介は、難しかったですか」
「地球人の紹介では、どのようなことが出ましたか」
「難しかったのはなぜですか」
「この活動で、私たちが捉えている“人”について気づいたことはありましたか」
気持ちに耳を傾けよう(30分)
ワークシート「気持ちに耳を傾けよう」を各参加者に配布します。
事例を読みながら、「その子が感じていることは」の欄に、感情について例にあげられているものをあてはめてもらいます。その際、感情の例の他にもっとふさわしい感情があれば書きたしてもらいます。
グループ(4~5人)になって、その子がどのように感じていると思ったのかを出しあいます。ここでは、どれが正しいということではなく、なぜその感情がふさわしいと思ったかなどを交流しあいます。
次に、ワークシート「どう感じてる?」を各参加者に配布します。
4コママンガを見ながら、最後のコマの場面での登場人物がどのような気持ちなのかを考えて、ふきだしに書いてもらいます。
グループで、4コママンガについて書いた気持ちを出しあいます。そして、これを通して思ったことや感じたことを話しあってもらいます。
ここでは、感じ方の違い、感覚の違いを否定したり、評価したりせず、感じ方や感覚の違いを聴くように働きかけます。
グループから、どのようなことが出たかを全体に紹介してもらいます。
ファシリテーターから、感覚や感じ方の違い、反応や行動の違いで、認められなかったり、排除されたりといった問題があることを伝えます。
その1つの問題として、発達障がいがあることを説明してコメントしてもよいと思います。
(説明例)
発達障がいとは、心身の発達において、認知、言語、社会性、運動などの機能の獲得が阻害された状態の障がいをいいます。知的障がい、広汎性発達障がい(自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症など)、学習障がい(LD)、注意欠陥多動性障がい(AD/HD)などがあります。発達障がいは、生まれながらの可能性や個性の1つに捉え、その障がいに対する理解を持つとともに、多様な個性を尊重するという観点から、ともに暮らしていく方法をつくっていくことが求められています。
ファシリテーターの問いかけ
「《気持ちに耳を傾けよう》では、それぞれの状況で感じていることを書いてみましょう」
「同じ状況でも、皆さんの感じていることは同じでしたか。違いましたか」
「《どう感じてる?》では、登場人物が感じたことに、どのようなものがありましたか」
「4コママンガを通して感じたことを紹介してください」
「感覚の違いや感じ方の違いについて話しあいましょう」
「同じことができないといった違いがありますが、それが排除につながらないようにすることが大切です」
常識(普通)って何?(30分)
グループ(4~5人)に分かれてもらいます。
日常生活の中で、各参加者が「常識」「普通」だと思っていることをA4白紙に10個書き出してもらいます。その後、グループで話しあってもらいます。各グループで「常識」「普通」であることのベスト10を選んでもらい、模造紙にまとめて全体で発表しあいます。そのときに、ベスト10に入らなかったものについても紹介し、実際に「常識」「普通」がどのように形成されるかを理解します。
終了後、外国や少数派の異なる文化、生活習慣、歩みなどの例を紹介し、それぞれが「常識」「普通」と思っていることは日本だけのもの、あるいは同世代、同業者、嗜好が同じだけの人たちの意見に過ぎないことを説明します。
紹介できる資料を配布することも考えられます。
ファシリテーターの問いかけ
「日常生活の中で「常識」・「普通」として思っていることを聞いてどう思いましたか」
「ベスト10をグループで選ぶときの基準は何でしたか」
「「常識」・「普通」はどのように形成されているのでしょうか」
ペアで部屋の四隅(40分)
部屋の四隅に次のように書いた紙を張ります。
『思う』『ちょっと思う』『あまり思わない』『なんとも思わない』
いろいろな2人組になって、これから読み上げる文章について4つのコーナーのどこかを、2人組で考え、選んで動いてもらいます。30秒から1分程度の時間をとって、2人組で話しあった上で動いてもらいます。
2人組は、1問ずつ相手を変えて行動してもらいます(例えば、好きな色で2人組、好きな季節で2人組などと組んでもらいます)。
※部屋の四隅で使う文章例
- 人間は本来みんな善良である。
- 嫌いな人にはうそをついてもよい。
- 怒りを表すには多少、相手を傷つけてもやむをえない。
- 人間関係づくりにあいさつは基本である。
- 感動的な映画で涙を見せないのは冷たい。
- どんな場合でも正直に言うのが一番だ。
いくつかの文章例で動いた後、各グループ(4~5人)になって、異なる感じや考え方が共存するために、必要な考え方や関わり方は何かを具体的に出しあいます。
ファシリテーターの問いかけ
「2人組で部屋の四隅をしていかがでしたか」
「行動を起こすとき、2人組でよかったことはありましたか」
「行動を起こすとき、2人組で困ったことはありましたか」
「行動を起こすとき、感覚や感じ方が違っていた場合どうしましたか」
「この感覚や感じ方の違いについて、考えを聞かせてください」
ふりかえり(10分)
多様な感覚や感じ方を尊重する社会のために、私たちの心がけとして必要なことは何かを出しあいます。
ファシリテーターのコメント
「人それぞれの感覚や感じ方は、その人にしかわかりません。でも見えないその感覚や感じ方の違いを、常識や普通というカテゴリーの中にあてはめて私たちは気がつかないうちに決め付けや偏見、差別、暴力に向けているかもしれません」
「人間関係づくりが困難だといわれている中で、この感覚の違いを自覚し、お互いの感覚を知り、理解することが人間関係づくりの一歩になると考えます」
「特に、発達障がいについては、「常識」・「普通」で決めつけるのではなく、個性として捉えていきたいと思います。このプログラムは、発達障がいへの理解の出発点にすぎません」
ワークシート
気持ちに耳を傾けよう
【感情】
誇り 不安 満足 疎外感 感謝 とり残された感じ 恐れ 依存 競争 両親の不和 おびえ 評価 当惑 不安定 喜び 孤独・・・
もっとふさわしいと感じるものがあれば付け加えましょう。
10代の男の子や女の子が以下のように言う時 | その子が感じていることは |
---|---|
|
「気持ちに耳を傾けよう」『わたし、あなた、そしてみんな 人間形成のためのグループ活動ハンドブック』43ページ
ワークシート「気持ちに耳を傾けよう」/気持ちに耳を傾けよう(PDF:892KB)
ワークシート「どう感じてる?」/どう感じてる?(PDF:955KB)