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おおさかの環境2010 大阪府環境白書 「巻頭特集 大阪エコライフ(生物多様性と私たちのくらし編)」
3.私たちの生活と生物多様性
大阪の食文化と生物多様性
かつて大阪は「天下の台所」と呼ばれ、日本の食文化を支えてきました。現在でも、大阪は「くいだおれ」の街とよばれるように食文化が豊かです。
そこで、食べ物に焦点を当てて、食べ物からみた私たちの生活と生物多様性の関わりについてご紹介しましょう。
図4「雑喉場魚市」(『摂津名所図会 4下 大坂部』より)
写真4 くいだおれの街・道頓堀通り(大阪市中央区)
大阪の食文化の中でも代表的な食べ物のひとつといえば「お好み焼」。このお好み焼きと生物多様性はどのような関係があるのでしょうか。
お好み焼きで使われる主な材料をあげてみましょう。図5のように、多くの材料が使われていることがわかります。また、ソースには砂糖や味噌、野菜や果物、香辛料などが含まれ、マヨネーズは主に植物油脂と酢、卵から作られます。
図5 お好み焼きの材料
これらの材料が作られる過程までみると、さらに多くの種類の生きものが関わっています。例えば、豚肉を作るためには、えさとして大量の穀物が必要ですし(図6)、その穀物を作るためには肥料が必要です。肥料の中でも、有機肥料は、植物から作られたり、動物のふんに微生物の働きを利用して作られます。
様々な生きものを利用していること、それはつまり生物多様性の恩恵を受けているということですが、お好み焼きをひとつとっても、非常に多くの生きものが関わっていることから、私たちの生活に生物多様性がどれほど密接に関わっているかがわかります。
図6 お好み焼きができるまで
コラム4 なにわの伝統野菜
毛馬胡瓜(けまきゅうり)、勝間南瓜(こつまなんきん)、天王寺蕪(てんのうじかぶら)、…皆さんはこれらの野菜がどのようなものかお分かりでしょうか?これらは「なにわの伝統野菜」とよばれているものの一部です。
かつて大阪には大阪独特の野菜が多数ありました。しかし、戦後、農産物の生産性をあげるための品種改良や食生活の洋風化が進み、地域独特の歴史や伝統を持つ品種が影をひそめるようになりました。
近年、こうした伝統ある野菜を見直そうという機運が高まり、復活しつつあります。常設の販売店もありますので、なにわの伝統野菜を味わい楽しむことで、生物多様性の恵みを感じるのもいいのではないでしょうか。
写真5 なにわの伝統野菜
食生活が生物多様性に与える影響
一方、私たちの食生活が生物多様性に影響を与えることもあります。
お菓子やインスタント食品、マーガリンなどの食品のほか、洗剤や化粧品などの日用品の原料として使用されている植物油にパーム油があります。パーム油はアブラヤシから採れる油のことで、その需要は世界全体で伸び続けています。アブラヤシは主に熱帯地域で栽培されおり、その農園を開発するために熱帯雨林が伐採され、野生動物が生息地を失う危機にさらされています。パーム油を国内で生産できない日本は、輸入に依存しており、日本で使われている製品の中には、熱帯雨林を伐採して生産されたパーム油が、少なからず含まれている可能性があります。
パーム油を扱う企業には、自然環境と地域住民の暮らしに配慮したパーム油の生産を目指したRSPO(コラム5参照)に参加しているところが出てきています。※8、9
写真6 アブラヤシ農園
コラム5 RSPO※8、9
RSPOは、「持続可能なパーム油のための円卓会議」の略で、パーム油生産者や製油会社、パーム油を利用する会社など、パーム油に関連する様々な関係者が参加し、自然環境を保全し、地域住民の権利を尊重しながら持続的なパーム油の生産・利用を探ろうと設立された国際的なNGO(非政府組織)です。環境に配慮して生産されたパーム油の認証などの活動をしており、世界で394のメンバーが参加し、日本からは9社が参加しています(2010年11月現在)。