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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第154号)

道路占用許可申請書様式関係文書公開決定(文書特定)異議申立事案

(答申日 平成20年3月11日)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経緯

  1. 平成19年6月1日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「別紙様式5の1について、
    1 別紙様式5の1の文書公示するまでの起案書、合議録、決裁書(以下「請求事項1」という。)、2 別紙様式5の1の申請者が水道部と給水申込者の連名になっている法的根拠(以下「請求事項2」という。)、3 別紙様式5の1を茨木土木事務所が使用している法的根拠(以下「請求事項3」という。)」の公開請求(以下「本件請求」という。)をした。
  2. 同年6月15日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、「給水管の変更申請手続に関する覚書の締結について(伺い)」及び「覚書」、「道路法施行令第8条」及び「施行規則第4条の3」並びに「府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則第1条の一部」(以下「本件公開文書」という。)を特定の上、全部公開するとの公開決定(以下「本件決定」という。)」を行い、異議申立人に通知した。
  3. 同年8月3日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件公開文書は、公開を求めている行政文書とは異なるものであり、本件請求に該当するすべての文書の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 請求事項1の開示について

別紙様式5の1は、当然公示されなければならない文書であるが、開示をされた起案書は、府行政文書管理規程の第13条から第17条に規定されていることが記載されていない。これが法的根拠を示す書類と言えるのか。道路法で定められている様式5を変えようとするならば、それなりの手続が必要である。それがないのであれば、不存在とすべきである。

2 請求事項2の開示について

開示された道路法施行令第8条は、異議申立人は承知している。第8条は、道路の占用の軽易な変更のことであり、給水申込者と水道部が連名で占用申請を出す根拠など記されていない。道路占用申請では、新規・更新・変更があるが、どれにも連名申請はない。道路法第32条の占用について異議申立人は、国土交通省に平成17年に見解を求め、確たる答申を得ている。水道の引込管は、当然個人の所有物であり、工事の段階での占用者は占用申請者であり、工事完了後は水道水を供給する水道局が実質の占用者となることから、占用者の変更届を提出すればよいだけのことであるとの答申を得ている。これは、工事中の事故等の責任の担保は、占用申請者になるからである。水道の引込占用申請が水道局連名の場合、水道局は工事中の責任を負うのか。各水道局は水道引込工事の責任はとれないと答えている。道路法を逸脱し、別紙様式5の1で連名で提出させるには、府が独自で定めたものがあるはずである。ないのであれば、不存在とすべきである。

3 請求事項3の開示について

開示された府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則では、道路占用許可権限が委任されているが、勝手に様式5を別紙様式5の1の書式に変えるまでのことは委任されていない。あるのであれば、府知事がこの書式を変えて使用してよいとの決裁書を開示すべきである。ないのであれば、不存在とすべきである。

4 異議申立人の意見

異議申立人は、以前から工事施工業者として施主から申請手伝いをして来たが、他の府土木事務所では、様式5を使用しても何ら問題がなかった。

今般、吹田市春日町(新御堂筋~国道)の茨木土木事務所区域で水道の占用申請をしたところ、別紙様式5の1でなければだめとのことなので、大阪府庁担当部に問合せをしたところ、様式5以外は承知していないとの回答で、茨木土木事務所だけは、府道路管理者から様式5の1の決裁を受けて使用しているものと思い開示請求をしたが、開示と称しながら、要求している文書の開示ではなかった。

道路法、水道法を無視してまでも平成12年に茨木土木事務所吏員が、様式5の1に変更したいきさつを各水道局に問合せをしたところ、占用申請、変更申請が面倒なので、茨木土木事務所吏員から呼出しを受け、強制的に変更申請手続の覚書を締結させられたとのことである。茨木土木事務所区域は4市1町とあるが、豊中市はなぜ抜けているのか不明である。各水道局に異議申立人から覚書締結について質問したところ、水道法及び各市水道条例に明確に違反している事は承知しているので、今後各市とも、覚書の締結を破棄し、平成12年以前の道路法に基づく申請にしたいとのことである。

異議申立人も請求事項1、2、3に対して不存在であれば、その答申を得て、府道管理者に是正を求める所存である。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 道路占用許可制度について

(1)占用許可制度の概要について

道路は、人・車の交通だけでなく、ライフラインと呼ばれる上下水道管、ガス管、電気などが埋設され、私たちの生活を支える重要な公共物として機能しており、その大部分の建設・管理を国、地方公共団体、公団、公社が担当している。

このような公共物である道路の管理については、誰でも自由、気ままに道路を使用したり、占用することを許さず、道路管理者の管理の下に適正な使用が求められており、このことから道路占用の許可制度が制定されている。

道路占用許可制度は、道路法第32条第1項に基づき、道路に工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合に、道路管理者の許可を受けなければならないとする制度であり、細部については、道路法施行令、施行規則に規定されている。

道路占用許可申請に当たっては、道路法第32条第2項に基づき道路占用の目的・期間・場所、工作物、物件又は施設の構造、工事の実施の方法、道路の復旧方法などを記した書類を道路管理者に提出することになっており、申請を受けた道路管理者は、法定の基準に適合する場合に限り占用許可を与えることができる(道路法第33条第1項)。

申請書の様式については、道路法施行規則第4条の3で様式5が指定されている。

なお、政令市を除く府域内の府道及び府管理の国道の道路管理者は、大阪府知事であるが、「府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則」第1条第4項により、各土木事務所長に道路占用許可権限が委任されている。

茨木土木事務所は、吹田市、高槻市、茨木市、摂津市及び島本町の4市1町を所管区域とし、この管内の道路管理の事務を分掌し、その業務の1つとして、道路の占用許可を行っている。

道路占用許可には新規、変更、継続の3種類がある。

このうち、「新規」とは、道路管理者が管理する道路で、同一市町村の区域の同一路線において過去に許可したことのない物件や申請者が許可申請する場合及び、許可したことがある物件であるが、申請者が異なる場合の道路占用許可申請のことで、その他を「道路占用の変更許可」としている。

また、「継続」とは、占用許可には許可期間があり、許可期間が満了した後も引き続き占用したい場合に占用の継続の許可を得ることである。

府の管理する道路の道路占用においては、同一市町村では路線単位で許可を行っており、本件請求で問われている水道本管から水道を引込みする給水管(以下「水道引込管」という。)も同様に行われている。

道路占用許可を与えられることができる占用者は、その占用物件を適正に維持管理できる能力が求められるため、水道引込管の占用者は、茨木土木事務所では原則、水道事業管理者に限定してきた。

すでに水道引込管を許可したことがある路線については、水道引込管の道路占用許可申請が新たになされた場合、従前から許可されている水道引込管の延長(員数)が変更されることになるので、変更許可申請という形態をとっている。

(2)茨木土木事務所における水道引込管の道路占用許可申請の取扱いについて

電柱、ガス管、下水道管などの占用物件は、その事業者に維持管理能力があり、当該法人や自治体が直接責任を持って、占用物件を維持管理しているが、水道引込管については、次の特殊性がある。

茨木土木事務所管内における水道事業管理者の定める給水条例施行規程等では水道引込管(給水管ないし給水装置)は、給水申込者に所有権があり、その維持管理を原則として所有者に求めている。しかし、個人の給水申込者が本来の管理知識や意識を持つことは難しく、また、転売や借家などによりさらに、水道引込管の管理意識が希薄化してしまっているのが実態である。

一方、水道引込管内に存する「水」は、水道事業管理者の所有に属しており、この「水」もまた、道路を占用していることになる。また、水道引込管は、道路の路面下に敷設され、常に圧力(水圧)がかかることから、漏水による道路の陥没などに緊急に対応する必要があるため、水道引込管の維持管理を所有権者に委ねることは道路の通常維持すべき安全性を確保する観点から適切でなく、水道事業管理者で行うことが許可の前提となる。

このため、茨木土木事務所では、水道引込管の占用許可は当該水道事業管理者に与えているが、上述のとおり水道事業管理者と給水申込者が同時に占用することになるため、申請には、給水申込者にも連名で記載させている。

(3)本件事務所における道路占用許可申請の様式について

道路占用許可申請書の様式は、道路法施行規則第4条の3に規定されているが、茨木土木事務所では、水道引込管の道路占用許可申請については、様式5の1を使用している。

様式5の1は、水道引込管の道路占用許可申請書の申請者に、「水道部名」及び「給水申込者」と表記した様式であるが、道路法施行規則第4条の3に基づく様式5の様式に変更を加えたものでなく、申請における過誤がないように「水道部名」及び「給水申込者」を注記しているにすぎず、様式5と同一のものである。

本件様式5の1の使用については、水道引込管による漏水事故に対し緊急に対応する能力が占用者に求められるため、水道引込管の工事竣工後の維持管理は、水道事業管理者であることを明確にするために、茨木土木事務所管内の水道事業管理者と協議し、合意したものである。

2 本件決定における行政文書の特定について

(1)給水管の変更申請手続に関する覚書の締結について(伺い)及び覚書(以下「本件公開文書1」という。)について

「本件公開文書1」のうち、「給水管の変更申請手続に関する覚書の締結について(伺い)」は、水道引込管を道路に入れるために道路占用しようとする場合に「様式5の1」を使用することを取り決めするための意思決定を行った決裁文書である。

また、本件公開文書のうち「覚書」は、前記の意思決定に基づき、茨木土木事務所と各水道事業管理者との間で「覚書の締結」を行う際に交わした文書である。

請求事項1は、様式5の1を使用することとしたことを定めるに至った起案書、合議録、決裁書を求めていると考えることから、1(3)で述べた茨木土木事務所と水道事業管理者の合意を得る際の手続である「給水管の変更申請手続に関する覚書の締結について(伺い)」及び当該茨木土木所管内の各水道事業管理者との「給水管の変更申請手続に関する覚書」の締結文書を特定したものである。また、請求事項2及び請求事項3に対応する法的根拠についても、1(3)のとおり連名の様式を茨木土木事務所管内の各水道事業管理者との間で決めたものであることから、本件行政文書を特定し、全部公開決定を行ったものである。

(2)道路法施行令第8条、施行規則第4条の3(以下「本件公開文書2」という。)及び府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則第1条の一部(以下「本件公開文書3」という。)について

本件公開文書2のうち、道路法施行令第8条は、水道の給水管の引込みに係る延長の変更は、道路管理者の許可のいらない軽易な変更にあたらないことを示す規定であり、施行規則第4条の3は、様式5を定めた法令に基づく規則であり、道路占用許可申請書の法的根拠である。

本件公開文書3は、茨木土木事務所長の職務権限を定めた規定であり、茨木土木事務所の管理する道路の道路占用についての許可権限(変更許可権限を含む。)が茨木土木事務所長にあることの法的根拠を示したものである。

本件公開文書2は、道路占用許可申請書の様式を決めている法的根拠であり、茨木土木事務所が、管内の各水道事業管理者と合意のうえで、この規定に基づいて水道引込管の申請様式5の1を決めたもので法令に基づく規則で定めた様式を変更したものでないという理由により、全部公開決定を行ったものである。

さらに、本件公開文書3は、道路の占用についての許可権限(変更許可権限を含む。)が土木事務所長に委任されており、本件の覚書の締結は、委任された権限の範囲内であることを明示する法的根拠であるとの理由により、公開決定したものである。

3 異議申立人の主張について
  • (1)異議申立人は、様式5の1を使用するための起案書、合議録、決裁書を要求しており、本件公開文書1は、給水管の変更申請手続において、様式5の1を使用することを決めた文書とは違うと主張するが、水道引込管の申請における申請者は原則、水道事業管理者であり、茨木土木事務所における事務処理では、水道引込管の新たな申請は、基本的には水道引込管の員数の増減でしかなく、事務処理上、占用許可の変更申請となるものであり、かつ、本件公開文書1の中で様式5の1を使用することまで決めていることから、本件公開文書1が異議申立人の主張する文書であり、本件決定した文書が根拠である。
  • (2)異議申立人は、請求事項2において「連名になっている法的根拠の開示」を要求し、異議申立の理由を「連名でなければならない確たる法的根拠」を要求しているが、前述の水道事業の特殊性にかんがみ、各水道事業管理者と茨木土木事務所の間で様式5の1を使用することに合意したもので、この様式に基づき道路占用許可を進めているものであり、かつ様式5の1は、本件公開文書2で示した様式5と同一のものであり、その内容に変更を加えたものではなく、法令・規則を逸脱したものでないものであることから、本件決定した文書が異議申立人の求める文書である。
  • (3)異議申立人は、様式5の1を茨木土木事務所のみが使用している法的根拠の開示を主張するが、本件公開文書1のうち「覚書の締結」により、さらに本件公開文書3で示した許可権限者である茨木土木事務所長がその権限に付随して各水道事業管理者との間で記載方法を定めた文書として決定したものであり、本件決定した文書が異議申立人の求める文書である。

4 結論

以上のとおり、本件決定は、異議申立人の要求に基づき決定し、公開したものであり妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 水道引込管の埋設に係る道路占用許可申請の茨木土木事務所における取扱いについて

(1)道路占用許可について

道路に、一定の工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合は、道路法の規定に基づき、道路管理者の許可を受けなければならない(道路法第32条第1項)。また、この許可を受けた者が、その内容を変更しようとする場合も、その変更が道路法施行令に定める軽易なものである場合を除き、道路管理者の許可を受けなければならない(道路法第32条第3項)。水道引込管の道路への埋設に関しても、これらの許可が必要である。

なお、政令市の区域を除く大阪府域内の府道及び府が管理する国道については、道路管理者は大阪府知事であるが、道路占用許可の権限は、各土木事務所長に委任されており(大阪府土木事務所長等の職にある職員に権限を委任する規則第1条第4号)、吹田市、高槻市、茨木市、摂津市及び三島郡島本町の区域においては、茨木土木事務所長が許可を行っている(異議申立人が指摘する豊中市の区域については池田土木事務所長が許可を行っている。)。

(2)水道引込管の埋設に係る道路占用許可申請の茨木土木事務所における取扱について

道路占用許可を受けようとする者は、所定の事項を記載した申請書を道路管理者に提出しなければならないとされており(道路法第32条第2項)、その様式については、道路法施行規則別記様式第五(以下「規則様式」という。)を用いることとされている(道路法施行規則第4条の3第1項)。

茨木土木事務所においても、これらの規定に基づいて道路占用許可の事務を行っているが、水道引込管を道路に埋設する場合の道路占用許可の申請に関しては、管内の4市1町と、平成12年2月15日付け「給水管の変更申請手続に関する覚書」で取り決めを行っており、規則様式に申請者欄を水道部及び給水申込者の連名で記入するようにするなどの注記をした様式第5の1を使用することとしている。

なお、茨木土木事務所において、申請者を水道部と給水申込者の連名とする様式第5の1を使用している理由については、茨木土木事務所管内の水道事業管理者の定める給水条例施行規程等によると、水道引込管の所有権は、給水申込者にあるとされるが、水道引込管内の「水」は、水道事業者の所有であり「水」もまた道路を占用していること、また、水道引込管で漏水事故が起きた場合の緊急対応を水道引込管の所有者である個人の給水申込者に求めることは困難で、水道事業者の対応が必要であることから、水道事業者の責任を明らかにするためとのことである。

また、茨木土木事務所においては、別紙様式第5の1は規則様式に必要な注記を行ったもので規則様式を変更するものではなく、規則様式を用いていることに変わりはないとして、別紙様式第5の1を使用することについて一般に公示するなどの措置はとっていない。

3 本件公開文書について

(1)本件公開文書1について
ア「給水管の変更申請手続に関する覚書の締結について(伺い)」

茨木土木事務所が管内水道事業者と水道引込管の申請変更手続の覚書の締結を行うことについて、所内で意思決定を行った際の起案文書一式であり、次の文書からなっている。

  • (ア)起案文書本文
  • (イ)給水管の変更申請手続に関する覚書(案)
  • (ウ)各種様式の案等
    • 道路占用許可申請書(様式第5の1)と道路占用許可申請書(様式第5)の新旧対照
    • 道路占用許可申請書(様式第5)
    • 道路占用許可申請書(様式第5の1)
    • 道路占用料(減額・免除)申請書(様式第6)
    • 道路占用料(減額・免除)申請書(様式第6の1)
    • 占用数量変更表
    • 道路占用関係者意見調書
  • (エ)「給水管の変更申請手続に関する覚書の締結依頼」

茨木土木事務所管内の水道事業管理者(高槻市水道事業管理者、吹田市水道事業管理者、茨木市水道事業管理者、摂津市水道事業管理者、島本町水道事業町長)から、各管理者ごとに提出された、茨木土木事務所長宛の「給水管の変更申請手続に関する覚書の締結依頼」である。

イ 「覚書」

府と茨木土木事務所管内の市町(高槻市、吹田市、茨木市、摂津市、島本町)が、平成12年2月15日付けで各市町ごとに締結した「給水管の変更申請手続に関する覚書」である。

(2)本件公開文書2について

「道路法解説(第1版)」(道路法令研究会編著、大成出版社刊)の抜粋(道路法施行令第8条、道路法施行規則第4条の3及び規則様式が掲載されている部分に手書きで若干の加筆をしたもの)である。

なお、当該文書に記録されている道路法施行規則第4条の3は、平成12年建設省令第13号による改正前のもの、別記様式第五は、平成11年建設省令第1号による改正前のものである。

(3)本件公開文書3について

大阪府例規集(ウェブ版)の一部(府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則第1条第1号から第14号の3までと第14号の4の一部が記録されている部分)をプリントアウトしたものである。

なお、当該文書に記録されている「府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則」は、平成19年大阪府規則第34号による改正前のもので、平成19年4月1日をもって、同規則の名称は、「府土木事務所長等の職にある職員に権限を委任する規則」に改正されている。

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

異議申立人は、本件公開文書は、本件請求で公開を求めている行政文書とは異なるとして、本件決定を取り消し、改めて該当する行政文書を公開することを求めていると解されるので、検討する。

なお、行政文書の公開請求は、請求権の行使であり、請求内容を明確にして手続を進める必要があるため、請求者は、行政文書公開請求書等において、請求に係る行政文書を特定するに足りる事項を明確にすることとされており(条例第7条第1項及び第2項)、実施機関は、その内容に即して公開・非公開等の決定の対象とする行政文書を適切に特定すべきものである。

このため、以下の検討に当たっては、本件請求における各請求事項ごとに、実施機関が特定した対象行政文書が公開請求書の内容に照らし妥当か否か等について検討することとする。

(1)請求事項1に係る対象行政文書の特定について

請求事項1は、「様式5の1の文書公示するまでの起案書、合議録、決裁書」であり、別紙様式第5の1の起案から、合議、決裁、公示に至る一連の事務処理に係る行政文書の公開を求めているものと認められる。

実施機関は、このうち、起案、合議、決裁に係る対象行政文書として、本件公開文書1を特定したものであり、公示に係る対象行政文書は特定していないが、2(2)で述べたとおり、茨木土木事務所は、別紙様式第5の1そのものの公示は行っていないから、公示に係る対象行政文書を特定していないのは事務の実情に即した適切な措置と認められる。

また、異議申立人は、「茨木土木事務所が占用許可申請書として使用する様式5の1は、道路法で定められた様式を変更するものであるから、変更にあたっては、公示が必要である。公開された文書については、公示の手続きについての起案書、合議録、決裁書でないことから、異議申立人が求める文書には該当しない。該当する文書がないのであれば、不存在決定を行うべきである。」と主張しているが、請求事項1は、その文言からすると、様式第5の1の文書公示に至るまでの起案、合議、決裁の各段階における行政文書の全てが対象となり得ると解すべきであり、公示以外の部分について該当する行政文書がある以上、不存在による非公開決定を行うことは妥当でない。

さらに、請求事項1のうち公示に係る部分以外に該当する行政文書が本件公開文書1以外に存する事実も認められなった。

以上のことから、請求事項1に係る対象行政文書の特定は妥当であると認められる。

(2)請求事項2に係る対象行政文書の特定について

請求事項2は、「別紙様式5の1の申請者が水道部と給水申込者の連名になっている法的根拠」であり、別紙様式第5の1において、申請者欄が水道部と給水申込者の連名になっていることの法的根拠が記録されている行政文書の公開を求めているものと認められる。

これに対して、実施機関は、請求事項2に該当する行政文書として、本件公開文書1及び本件公開文書2を特定している。その理由については、本件公開文書1は、直接、連名による様式を取り決めた行政文書として、本件公開文書2のうち「道路法施行令第8条」は、水道の給水管の引込みに係る延長の変更は、道路管理者の許可の不要な軽易な変更にあたらず、占用許可申請が必要であることを示す法的根拠として、「施行規則第4条の3」は、道路占用許可申請書である規則様式の法的根拠として、それぞれ特定したものであるとしており、これらは、別紙様式第5の1を水道部と給水申込者の連名とすることについて、茨木土木事務所が法的根拠としている行政文書を幅広く特定したもので、請求事項2の内容を逸脱したものとは言えない。

また、異議申立人は、「道路法施行令第8条は、道路の占用の軽易な変更のことであり、給水申込者と水道部が連名で占用申請を出す根拠など記されていない。道路法を逸脱し、別紙様式5の1で連名で提出させるには、府が独自で定めたものがあるはずである。ないのであれば、不存在とすべきである。」と主張しているが、2(2)で述べたところからすると、茨木土木事務所が、別紙様式第5の1で水道部と給水申込者の連名で提出とすることとした直接の根拠は、各水道部との間の覚書であり、現に茨木土木事務所が法的根拠としている行政文書が存在する以上、不存在による非公開決定を行うことは、妥当でない。

以上のことから、請求事項2に係る対象行政文書の特定は妥当であると認められる。

(3)請求事項3に係る対象行政文書の特定について

請求事項3は、「別紙様式5の1を茨木土木事務所が使用している法的根拠」である。茨木土木事務所が水道引込管の道路占用許可申請を受ける際の様式として別紙様式第5の1を使用している法的根拠が記録されている行政文書の公開を求めているものと認められる。

これに対して、実施機関は、請求事項3に係る対象行政文書として、本件公開文書1及び本件公開文書3を特定している。その理由について、本件公開文書1は、直接、別紙様式第5の1を使用することを取り決めた行政文書として、本件公開文書3は、茨木土木事務所長がその管理する道路の道路占用についての許可権限(変更許可権限を含む。)を有することの法的根拠として、それぞれ特定したものであるとしており、これらは、茨木土木事務所が、別紙様式第5の1を使用していることに関し、法的根拠としている行政文書を幅広く特定したものであって、請求事項3の内容を逸脱したものとは言えない。

また、異議申立人は、「府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則では、道路占用許可権限が委任されているが、勝手に規則様式を様式5の1の書式に変えるまでのことは委任されていない。あるのであれば、府知事がこの書式を変えて使用してよいとの決裁書を開示すべきである。ないのであれば、不存在とすべきである。」と主張しているが、2(2)で述べたところからすると、茨木土木事務所が別紙様式第5の1を使用することとした根拠は、府土木事務所長等の職にある吏員に権限を委任する規則第1条第4号及び各水道部との間の覚書以外には存しないし、現に茨木土木事務所が法的根拠としている行政文書が存在する以上、不存在による非公開決定を行うことは、妥当でない。

以上のことから、請求事項3に係る対象行政文書の特定は妥当であると認められる。

以上のことから、本件決定において、実施機関が、本件請求に対応する行政文書として、本件公開文書を特定したことは、妥当であると認められる。

なお、本件においては、茨木土木事務所が、水道引込管に係る道路占用許可申請の様式として別紙様式第5の1を使用することとしていることの法的根拠や手続の当否について、実施機関と異議申立人の間に見解の相違があると推測されるが、条例に基づく行政文書の公開は、実施機関が保有する行政文書をありのままに公開するものである。当審査会は、このような観点から、本件決定における対象行政文書の特定が妥当であると判断したものであり、茨木土木事務所が、別紙様式第5の1を使用することとしていることの法的根拠や手続の当否を判断したものではないことを念のため付け加える。

5 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

岡村周一、福井逸治、松田聰子、岩本洋子

別紙(ワード:52KB)

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