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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第148号)

特定協同組合関係文書部分公開決定第三者異議申立事案

(答申日 平成19年10月26日)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成19年3月22日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「A事業協同組合に係る中小企業等協同組合決算関係書類提出書(平成18年度提出分)」の行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)が行われた。
  2. 同年3月26日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書に異議申立人であるA事業協同組合(以下「異議申立人」という。)に関する情報が記録されていることから、条例第17条第1項の規定に基づき意見書提出の機会を付与するため、異議申立人に対して、第三者意見書提出機会通知書を送付した。
  3. 同年4月3日、異議申立人は、実施機関に対し、次のとおり、本件行政文書の公開に反対する旨の意見書を提出した。
    • (1)公開に反対する部分
      公開請求の対象となった行政文書の全ての文書
    • (2)公開に反対する理由
      • ア 組合の事業活動に支障をきたすため
      • イ 個人情報の保護のため
  4. 同年4月12日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書として(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、その旨を請求者に通知するとともに、条例第17条第3項の規定により、公開決定をした理由を(3)のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)行政文書の名称
      A事業協同組合に係る中小企業等協同組合決算関係書類提出書(平成18年4月14日収受)
    • (2)公開しないことと決定した部分
      • 団体の代表者の印影
      • 《3》事業の状況7.プラスチック再生加工物の共同販売事業における取引先企業名
      • 個人の印影
    • (3)公開決定をした理由
      本件行政文書(公開部分)に記録されている情報については、当該団体及びその事業の性質等を考慮すると、当該団体の競争上の地位、その他正当な利益を害するとは認められず、条例第8条第1項第1号に該当しない。
      また、当該団体の理事の氏名等の情報は、当該団体の社会的責任及び公益性の点から、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であるとは認められないため、条例第9条第1号には該当しない。
      そのほか、条例第8条第1項各号又は第9条各号(非公開情報)に該当しないため。
  5. 同年4月23日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
    なお、本件決定のうち本件異議申立ての対象となった部分については、同日、異議申立人が、行政不服審査法第48条において準用する同法第34条第2項に基づき、執行の停止の申立てを行い、同年4月25日、実施機関が執行の停止を決定して、その旨を異議申立人及び請求者に通知している。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定を取り消し、次の部分(以下「本件係争部分」という。)を非公開とすることを求める。

  • 代表理事以外の役員の氏名
  • 中小企業等協同組合決算関係書類提出書

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 異議申立書における主張

本件行政文書の公開は、異議申立人の事業活動に支障をきたし、組合役員等の個人情報を保護できないおそれがあるため。

2 反論書における主張

(1)事業協同組合の事業内容について
  • ア 実施機関の主張によれば、事業協同組合は、税率の優遇や行政の監督下に置かれている等の事情が存するところから、公益性の高い性格を有するものであるとし、事業協同組合があたかも公益法人と法的に同一であるとの前提で議論を展開している。
  • イ 確かに、事業協同組合は、一定の公益的な機能を担う場合はある。しかしながら、事業協同組合は、公益法人ではない。事業協同組合は、通常、営利法人としての側面が強い。
    また、公益性といっても、事業協同組合は、営利事業に関して共同化がなされているに過ぎないことから、副次的に公益的機能を担うものから、組織から業務まで概ね営利法人とかわらず、公益性が著しく稀薄または全く欠如したものまで様々ある。
    このような営利法人と公益法人の中間あるいはその一方に類似した団体の存在を法(中間法人法)が承認したうえで、事業協同組合は、中間法人法の特別法である中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号。以下「法」という。)によって規律される団体なのである。
    そして、事業協同組合は、中小の営利事業者を構成員(組合員)とするものである。組合員の事業を支援・援助するためのものならほとんどすべての分野の事業が実施でき、組合の設立も4人以上集まれば可能である。
    中小の営利事業者にとって、非常に設立しやすい組合として広く普及しているものである。
    このような団体に対して、国が税率の軽減等の保護助成をしているのは、あくまで中小の営利事業者の経済的地位の向上を図るためのものであり、他方、国の一定の監督下に置いているのは、国の保護助成の濫用を回避するためである。
    特に、中小の再資源卸売業は、いわゆる廃棄物をリサイクルする薄利事業である反面、設備に多大な資金がかかる業種である。
    技術的要素が比較的少ないので、競争が激化する可能性を秘めていることから、業者が共同して受注事業等を展開して、ようやく利益を確保できる業種であることから、共同事業化されているに過ぎない。共同事業と言っても、現実には、共同的に営利目的を増進実現するに過ぎず、その事業業務の公益性は著しく稀薄である。
    要するに、異議申立人のような中小の再資源卸売業を組合員とする事業協同組合は、営利法人と概ね変わらず、公益性が極めて稀薄なものである。
  • ウ 実施機関の主張は、異議申立人を公益法人と全く同じ前提で議論を展開しており、前提事実に誤認がある。
(2)本件係争部分が条例第8条又は第9条に該当することについて
ア 公開原則について

条例は、「行政公開の原則」を定めている(条例第1条)。

しかしながら、条例は、その公開の原則だけを杓子定規に適用して、あらゆる情報を公開すべしとしていないことは勿論である。

そもそも、公開の原則を定めたのは、府民の府政への参加を一層推進すること、府政の公正な運営を確保すること、府民の生活の保護及び利便の増進を図ることを目的とし、これらの目的の達成は、ひいては、府民の府政への信頼を深め、府民の福祉の増進に寄与するためである。

これらを一言で言えば、公開する公益上の必要があるからである。

よって、行政公開の原則を適用するにあたっても、公開する公益上の必要性があるかどうかという観点を失念することは許されないというべきである。

イ 条例第8条第1項第1号該当性について

上記のとおり、条例は行政公開の原則を定めているが、条例は、第8条第1項第1号所定の事由が存するときは、情報を公開しないことができるとしている。

実施機関も認めるように、条例第8条第1項第1号所定の情報を公開しないことができるとした趣旨の一つに営業の自由の保障がある。

そして、条例第8条第1項第1号は、行政公開の原則のもとで、営業の自由の保障を侵害してはならないとしているのであるが、ここでは、当該事業者の営業の自由をどの程度重視するかが問題とならざるを得ない。

確かに、公開原則は府民の知る権利の拡充に資するものであるが、憲法第21条(又は同法第13条)から直接要請されているものでなく、個人の知る権利を実質化するものとして、その外延として導かれる原則であるに過ぎない。

他方、事業協同組合の営業の自由は憲法第22条によってまさに直接保護されるべきものである。

そして、上記のとおり、事業協同組合には、営利法人としての側面が強く、その営業の自由は強度に保護されるべき要請がある。

よって、事業協同組合の情報につき、条例第8条第1項第1号の「公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる」かどうかを判断するにあたっては、当該法人の営業の自由の確保につき慎重に配慮する必要がある。

  • (ア)代表理事以外の役員の氏名について
    実施機関によれば、役員は組合運営における実質的な経営者であり、その氏名の公表が生産技術又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等にあたるとはいえず、当該組合の競争上の地位を害するとは認められないとする。
    しかしながら、閲覧等の請求に係る情報が「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められる情報に該当するかどうかは、当該情報の内容だけでなく、当該事業者の性格、事業活動における当該情報の位置づけ等にも十分留意しつつ、慎重に判断する必要があるとされている(条例解釈運用基準)。
    この点、資源再生業は、薄利事業であることから、業者間の競業牽制、特に業者間の力関係の均衡があり、さらに、一般住民にとって廃棄物としか扱われない物品を対象とすることから、地域住民との関係維持等微妙な力の均衡のもとで成立している。
    異議申立人の役員であるものは、通常、自ら組合員である法人の役員または個人事業主を兼任しており、広く異議申立人の役員を開示することは、当該組合員の競業他社との関係等において、上記均衡に亀裂をもたらす蓋然性が高い。
    そして、異議申立人は、あくまで個別の中小の事業者の共同体であり、その構成員の取引関係の存続経営の安定等経営上の利益は、そのまま異議申立人の経営上の利益に直結する関係にある。
    要するに、異議申立人には、その役員が誰であるかの秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、当該組合員を構成員とする異議申立人自身の公正な競争が侵害される蓋然性が高い。
    実施機関は、当該事業者の性格を十分慎重に検討したうえで、事業活動の当該情報の位置づけを完全に無視している。
    そもそも、事業協同組合の代表理事については、登記簿により公開が予定されているものであるが、その他の役員については、登記することが求められていないが、これは公開する公益上の必要が全く認められないからである。
    以上のとおり、実施機関の主張には、条例第8条第1項第1号の解釈、適用に誤りがある。
  • (イ)決算報告書について
    実施機関は、
    • a 事業協同組合の決算報告書は、法第40条の規定により組合事務所に備え置かなければならず、組合員及び組合の債権者は、何時でも、理事に対しこれらの書類の閲覧又は謄写を求めるとされている。
    • b 財産目録等の財務諸表に記載されている各勘定科目の金額から、当該組合の経営規模はどの程度であるか、収入と支出とのバランスがとれているかなど、当該組合のおおよその経営内容の分析や把握は可能であったとしても、主要簿や補助簿その他多くの会計帳簿などの細目的資料の提出や組合の経理担当者からのヒアリングを受けない限り、「競争上の地位を害すると認められるもの」というまでの経営上の秘密やノウハウに属するような情報まで得られない。
    等を理由に、決算報告書を開示しても、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは言えないとする。
    しかしながら、上記aについては、法第40条は、組合員や組合債権者等組合と法的利害関係を有している者の私的経済的利益保護のために組合自身に公開を義務づけている規定であり、協同組合と法的利害関係を有しない一般市民に公開を義務づけている規定ではない。これに反して、条例に基づく情報公開制度は、法第40条とその趣旨、目的を異にしていることが明らかである。法に上記規定があることから、条例に基づく実施機関による公文書の公開事務の運用上、公益性を有する事業者の収益事業に関する決算報告書を公開する公益上の必要性がある等とは認められない。むしろ、収益事業を営む以上、競業他社の存在を無視できないところ、収益事業の規模、形態を競業他社にも開示させることにつながりかねず、競争上の地位を害する蓋然性が極めて高い。
    また、上記bについては、当該組合のおよその経営内容の分析や把握は可能であることを認めながら、その他の経理担当者からのヒアリング等の捕捉手段を得ない限り経営上の秘密に属する情報は得られないとする。
    しかしながら、「財産目録」は異議申立人の資産の内容を示す文書、「貸借対照表」は、異議申立人の資産・負債正味財産の状態を示す文書、「損益計算書」は異議申立人の一事業年度の損益を示す文書、「剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面」は、異議申立人の利益または損失の処理を示す文書、「監査意見書」は、異議申立人の監事が会計監査の結果に意見を付して理事に提出する文書である。
    これらの文書の性質上、これらの文書に記載した情報を開示するときは、異議申立人が、その行う営業活動のうち、いかなる営業活動に重点を置いているか、あるいは財産の状況、信用能力、収入支出の実態などを開示することに他ならず、営利性を強く有する事業協同組合にとっては、競業他社または取引先等との関係で、経営方針、ノウハウとして、その秘匿を死守しなければならない情報である。
    また、主要簿や補助簿その他多くの会計帳簿などの細目的資料の提出や組合の経理担当者からのヒアリングを受けなくとも、税務関係、業界情報等に精通した者にとっては、決算報告書を解読すれば、当該事業者の財産状況、信用状況の全貌を概ね把握しうることは公知の事実である。
    以上のとおり、異議申立人には、決算報告書の秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、異議申立人自身の公正な競争が侵害される具体的な危険性がある。
    以上のとおり、実施機関の主張には、条例第8条第1項第1号の解釈、適用に誤りがある。
  • (ウ)以上のとおり、実施機関の主張は、異議申立人の事業内容、特にその特殊性、事業活動における当該情報の位置づけを十分に検討することなく、かつ、条例の趣旨を踏まえた解釈をしていない誤りがある。
ウ 条例第9条第1号該当性について

上記のとおり、条例は行政公開の原則を定めているが、条例は、第9条第1号所定の事由が存するときは、情報を公開してはならないとしている。

実施機関も認めるように、条例第9条第1号所定の情報を公開してはならないとした趣旨は、個人のプライバシーを保護する点にある。

個人のプライバシー情報の保護の根拠については、争いあるも、憲法第13条によるとする見解が多数である。

ただ、そのプライバシー情報についても、そこに何を含めるか争いのあるところであるが、個人の尊厳を確保するという憲法第13条の趣旨からすれば、個人の人格の核に該当するような情報、いわゆるプライバシー固有情報については、個人の自律存在に直接関係することから、制約を伴わない強度の保護が要請され、その周辺を形成する情報、いわゆるプライバシー外延情報については、悪用され、または集積利用されるときには、個人の自律存在に影響し、取り返しのつかない損害が発生するおそれがあることから、強度の保護が要請されるとされている。

そして、最近の社会の動向として、個人のプライバシーは、個人情報保護法制定の経緯から明らかなとおり、いわゆるプライバシー固有情報だけでなく、憲法第13条の趣旨を考慮して、当該個人の生活情報等プライバシー外延情報についても可及的に保護される必要がある。

そこで、条例は、個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成等のプライバシー固有情報だけでなく、個人の学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関するプライバシー外延情報についても、広く原則的に公開を禁止している。

もっとも、条例は、「当該情報が一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」を公開禁止にするとして、一定の絞りをかけている。

しかしながら、上記のとおり、情報の内容により、憲法的保障の程度が異なることを踏まえて、プライバシーの範囲を可及的に拡大しようとする社会の動向に応じて条例が個人のプライバシー保護の観点からあらゆる情報のうち一定の事項だけを列挙した趣旨を考慮して、個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成等のプライバシー固有情報は、反証のない限り、一般に他人に知られたくないと望まれることが正当であると認めるべきであり、個人の学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等は、いわゆる人格の核、あるいはプライバシー固有情報とは言えなくとも、その周辺を形成し、その人の自律的存在を推認させる重要な情報として、当該情報は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると推定すべきである。

  • (ア)代表理事以外の役員の氏名について
    実施機関は、
    • a 本件情報は、法人の機関における地位を表示するものであり、他から知り得ないという理由のみをもって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とは認められない。
    • b 他の法令に基づく法人の役員については、公益法人については、理事全員の住所及び氏名が、また、営利法人である株式会社については代表取締役の住所氏名、取締役及び監査役の氏名がそれぞれ登記事項として定められている。
    • c 事業協同組合の公益性が高い。
    • d 事業協同組合の役員は、対外的にも責任を負う職責がある。したがって、本件情報は、公益法人の役員と同様もともと公示的な性格を持つものである。
    として、本件情報は、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」と認められないとする。
    しかしながら、上記aについては、異議申立人が本件情報の開示を拒否している状況において、本件情報が法人の機関における地位を表示するものであり、他から知り得ないという理由をもって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当」であるとは考えられないという思考は、憲法第13条の趣旨を全く理解していない議論であると言わざるを得ない。
    上記bについても、前述のとおり、異議申立人は、そもそも、法的には公益法人でも、営利法人でもない。
    実施機関は、営利法人については、役員が登記事項として開示されていることから、異議申立人も同じように開示すべきとの議論を展開しているが、これは、まさに実施機関が異議申立人の事業内容、その性格等を正確に分析しないばかりか、理論的に破綻していることを雄弁に物語る暴論である。
    実施機関は、ある種の情報については、異議申立人と公益法人とは同じであるかのような議論を展開して開示が妥当であると主張し、別の種類の情報では、営利法人と同じように考えるべきと主張している。ご都合主義的な態度というべきである。
    また、上記cについても、税率の優遇や行政の監督化がなぜなされているのかの論証を欠き、これらの事情から直ちに公益性を導くことができないことは前述のとおりであるし、また、再資源卸売業の共同体である事業協同組合は、営利事業に軸を置いた共同化であって、公益性が希薄で、営利性が強いことも前述のとおりである。
    さらに、上記dについても、実施機関は、法において、理事等が任務を怠ったときに、組合に対して損害賠償責任を負担し、あるいは、理事等が任務懈怠につき悪意・重過失があったときに、第三者に対しても損害賠償責任を負担する旨規定することも開示の根拠としている。
    しかしながら、法により組合やその債権者等の私的経済的利益保護のために組合または理事等に一定の責任を義務づけているのは、この組合が営利法人としての側面が強いため、債権者等の保護規定を置いているのである。これに対して、条例に基づく情報公開制度と法とは、その趣旨、目的を全く異にしているものであって、法に上記規定があることから、公開する公益上の必要性がある等とは認められない。
    もっとも、実施機関は、単に法に上記規定があるから直ちに開示すべきとしているのではなく、理事等が経営者であり、その責任が内外においても重大な関心になるから、公益法人の役員と同様もともと公示的な性格をもつと認定している。
    しかしながら、公益法人または営利法人については、各利害関係者の利害調整を踏まえて、各関係諸法により役員等の開示が義務づけられているが、事業協同組合の役員等は開示することを義務づけていない。
    にもかかわらず、条例の解釈によって、法律によって開示が義務づけられていない事業協同組合の役員につき、公益法人と同様もともと公示的な性格を持つという理由でもって、開示を認めることになれば、結局、法律の下位規範である条例が、法律を侵害若しくは改廃し、または法創設機能を有することになる。
    実施機関の議論は、完全に国法秩序を破壊または無視する議論である。
    以上のとおり、実施機関の主張には、憲法第13条、条例第9条第1号の解釈、適用に誤りがある。
(3)結論

以上のとおり、実施機関の主張は、事実認定に誤認があるばかりか、憲法及び条例の解釈にも誤りがある。

本件係争部分は、全て非公開とすべきである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 事業協同組合について

事業協同組合は、法に基づく協同組合の中で最も代表的かつ一般的な組合の形態であり、組合員である中小企業者が行う事業に関して、共同購買や共同受注・市場開拓等のいわゆる共同経済事業や組合員のための福利厚生事業などの共同事業を行うことにより、中小企業者の経営の合理化、企業体質の強化や対外信用力の増大等を図るものである。

事業協同組合の機関としては、組合の基本的事項を決定する最高意思決定機関としての「総会」と、具体的な業務の執行を決定する「理事会」がある。

また、組合の役員として「理事」と「監事」があり、いずれも総会で選任される。そして、理事の中から代表理事(多くの組合では理事長と呼称)が理事会で選任されるが、それ以外に、副理事長・専務理事・常務理事の職をおく組合も少なくない。

事業協同組合は、法人税率が公益法人並みに軽減されるなどの税制上の優遇措置とともに、業界団体としての側面から行政の各種補助金の交付、公的施設の運営委託や公共工事などの受け皿となることも多く、民間法人のなかでは公益性の高い性格を有する法人である。

法は、事業協同組合の公益性に着目し、その設立にあたっては業を所管する行政庁(異議申立人については実施機関)の認可が必要とし、設立後においても定款変更認可や決算関係書類提出・役員変更届などの諸手続きを通じて行政の監督下においた。

決算関係書類については、法第105条の2において、「組合は、毎事業年度、通常総会の終了の日から二週間以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金の処分又は損失の処理の方法を記載した書面を行政庁に提出しなければならない。」とされ、また、同法施行規則第12条において、届出の際に提出書に添付しなければならない書類として、次の書類が定められている。

  • 事業報告書
  • 財産目録
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面
  • 通常総会または通常総代会の議事録またはその謄本

また、法第40条に規定されている監事の監査がなされているかどうかを確認するため、「監査意見書」の写しを「中小企業等共同組合決算関係書類提出書」に添付するよう求めている。

2 本件係争部分について

本件行政文書のうち、異議申立ての対象となる部分は、以下のとおりである。

(1)代表理事以外の役員の氏名について

本件行政文書には、「代表理事以外の役員の氏名」が記載されている。

実施機関は、本件行政文書に記載されている「代表理事以外の役員の氏名」は、非公開事由にあたらないとし、公開すると決定した。しかし、異議申立人は、「代表理事以外の役員の氏名」について公開しないことを求めている。

(2)決算報告書について

「決算報告書」は、通常「財産目録」、「貸借対照表」、「損益計算書」、「剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面」及び「監査意見書」を指す。

実施機関は、この文書のうち団体の代表者の印影、法人の取引先企業名及び個人の印影について非公開としているが、異議申立人は、「決算報告書」の全ての情報について公開しないことを求めている。

3 本件係争部分が条例第8条第1項各号及び第9条各号に該当しないことについて

(1)条例における公開原則について

条例においては、その前文及び第1条にあるように、「府の保有する情報は公開を原則」、「個人のプライバシー情報の最大限の保護」、「府が自ら進んで情報の公開を推進」を制度運営の基本的姿勢としている。

よって、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報を公開しなければならないものである。

本件異議申立てにおいては、異議申立人が本件係争部分を公開しないことを求めているため、本件係争部分が、条例第8条及び第9条に該当しないことを、以下において説明する。

(2)条例第8条第1項第1号に該当しないことについて

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重・保護されなければならないという見地から、社会通念に基づき判断して、競争上の地位を害すると認められる情報、その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第1号の趣旨である。

同号では、

  • a 法人等に関する情報であって、
  • b 公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものは、公開しないことができると規定している。

また、一般に、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理を侵害すると認められるものをいうと解されており、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらわれないものをいうと解されている。

そして、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、当該文書に記録された情報が明らかとなることにより、当該法人等に具体的な不利益が及んだり、社会的評価の低下につながるなどの事実が存在し、それが社会通念に照らして「競争上の地位その他の正当な利益」を害すると認められる程度のものである必要があると解すべきである。

これを本件係争部分についてみると、本件行政文書は全て当該組合の事業内容、役員、財務内容等に関する文書であり、aの要件に該当することは明らかである。

そこで、本件係争部分に記録された情報が、bの要件に該当するか否かを検討した結果は以下のとおりであり、いずれもbの要件に該当しないと判断した。

ア 代表理事以外の役員の氏名について

組合における役員には、理事と監事があるが、理事は理事会を構成して組合の業務執行の意思を決定するとともに、代表理事を選出して業務を執行させ、それを監督する。また、監事は組合の会計に不正や誤りがないかどうかを監査するとともに、必要あるときは組合の業務及び財産の状況を調査することを職務とする。このような理事や監事に誰が就任しているかという情報は、当該組合が経済活動を行う中で、取引を行おうとする第三者がその信用を判断するための重要な要素となるべき情報であって、公にすることにより、社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資することがありこそすれ、公正な競争の原理に反する結果となるとは認められない。

また、役員は組合運営における実質的な経営者であり、その氏名の公表が生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等に当たるとはいえず、当該組合の競争上の地位を害するとは認められない。

さらに、氏名の公表が、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等であるとも認められない。

以上のことから、bの要件に該当しない。

イ 決算報告書について

「決算報告書」は、理事の責任において作成され、監事の意見書とともに総会に付議され、承認される。

「決算報告書」とは、「財産目録」、「貸借対照表」、「損益計算書」、「剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面」を指し、これらの書類は「監査意見書」とともに「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」に添付され、毎年度、事業協同組合の代表者から知事に対し提出されるものである。また、これら決算関係書類は、組合の定款等とともに、法第40条の規定により組合事務所に備え置かなければならず、組合員及び組合の債権者は、何時でも、理事に対しこれら書類の閲覧又は謄写を求めることができるとされている。

異議申立人が異議申立の理由としている「組合の事業活動に支障をきたす」ため非公開とするためには、当該文書に経営上の秘密やノウハウに属するような情報が存在し、それが明らかとなることにより当該組合等に具体的な不利益が及んだり、社会的評価の低下に繋がるのが明白であり「競争上の地位その他正当な利益を害する」ことが必要である。

「決算報告書」の内訳についてみると、「貸借対照表」は、一定の月日における組合の財政状態を明らかにするためのものであり、すべての資産、負債、資本を記載したものである。「損益計算書」は、一事業年度の損益を、その発生源泉別に全ての収益とこれに対応する費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益を加減して当期純利益を表示することにより、組合の経営成績を明らかにするものである。「剰余金の処分または損失の処理の方法を記載した書面」は、当期に利益剰余金がある場合には剰余金処分案を、損失金の場合は損失処理案を作成することになる。「監査意見書」は、理事から提出を受けた決算関係書類を監事が会計監査を行い、その結果について意見を付して理事に提出するものである。これら「決算報告書」に係る様式については中小企業庁が定める中小企業等協同組合経理基準に定める様式に従い作成することが望ましいとされている。

したがって、「決算報告書」の内容は、組合の会計年度末の一時点の資産・負債の状況並びに会計年度内の収入・支出の状況を概括的に示しているものにすぎない。

以上からすれば、貸借対照表等の財務諸表に記載されている各勘定科目の金額から、当該組合の経営規模はどの程度であるか、収入と支出とのバランスがとれているかなど、当該組合のおおよその経営内容の分析や把握は可能であったとしても、主要簿や補助簿その他多くの会計帳簿などの細目的資料の提出や組合の経理担当者からのヒアリングを受けない限り、「競争上の地位を害すると認められるもの」というまでの経営上の秘密やノウハウに属するような情報までは得られない。これは、株式会社等の営利法人や公益法人においても同様である。

また、「決算報告書」は、汎用性のある共通ルールに従って作成され、その経営状況を組合内外に客観的に示すためのものであり、法でも組合の債権者に閲覧や謄写を認めているところであるとともに、実施機関への提出義務が課されていることから、その情報は、府民の正当な関心の対象となるべきものでもある。

さらに、「その他正当な利益を害すると認められるもの」というまでの情報までは得られない。

以上のことから、bの要件に該当しない。

(3)条例第9条第1号に該当しないことについて

個人の尊厳の確保、基本的人権の尊重のため、個人のプライバシーは最大限に保護されなければならない。特にプライバシーは、一旦侵害されると、当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに鑑み、条例は、その前文において、「個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護」することを明記し、条例第5条において「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」ことを定めている。そして、条例第9条においては、

  • a 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)
  • b 特定の個人が識別され得るもの
  • c 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの

については、「公開してはならない情報」として定められている。

これを本件係争部分についてみると、「決算報告書」は、専ら法人として事業協同組合に関する情報であり、aの要件に該当しないことは明らかである。

そこで、「代表理事以外の役員の氏名」の情報について検討した結果、以下のとおり、cに該当しないと判断した。

ア 代表理事以外の役員の氏名について

本件情報は、公表することにより、特定の個人が特定の事業協同組合の役員に就任していたという事実が明らかとなる情報であり、a及びbの要件に該当すると認められる。

事業協同組合の法人登記の際の登記事項としては、法第83条第2項第7号の規定により「代表権を有する者の氏名、住所及び資格」となっており、当該組合の代表権を有している者は定款の定めにより理事長のみである。

したがって、理事長を除く役員の氏名等は、組合が積極的に公表しない限りは、一般には知り得ない情報といえる。

しかしながら、本件情報は法人の機関における地位を表示するものであり、他から知り得ないという理由のみをもって「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とは認められない。

一方、他の法令に基づく法人の役員については、公益法人については理事全員の住所及び氏名が、また営利法人である株式会社については代表取締役の住所及び氏名並びに取締役及び監査役の氏名が、それぞれ登記事項として定められている。また、公益法人については、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」において、役員名簿を含む法人の主な資料を法人の事務所と所轄官庁に備え置き、原則として一般の閲覧に供することとしている。

次に事業協同組合の公益性について検討すると、事業協同組合に対する税制上の優遇措置として、法人税率が公益法人と同様に22%となることや、事業税・事業所税・印紙税・登録免許税の減免などがある。また、異議申立人もそうであるように公的施設の運営委託などの受け皿や補助金の交付を含めた各種の助成の対象となることも多く、経営に自主性が確保されるべき民間法人のなかでは、経営の透明性を確保する必要性が特に高いものと考えられる。

ここで、役員の職責について検討すると、事業協同組合の理事で構成する理事会は、組合の業務の執行を決定する権限を有する(法第36条の2)。その理事会が決定した事項を執行するのが、代表理事である。したがって、理事は理事会を通じて組合の業務執行を決定する立場にある。

また、理事の責任に関して、法第38条の2第1項には「理事がその任務を怠ったときは、その理事は、組合に対し連帯して損害賠償の責に任ずる。」とあり、また第2項では「悪意又は重大な過失があったときは、その理事は、第三者に対し連帯して損害賠償の責に任ずる。」とあり、理事の責任が組合に対してだけでなく、第三者にも及ぶとしている。さらに、理事会の議事に参画した理事は、明確に反対した旨が議事録に記載されていない限り、その議事に賛成したものと推定されるのは、営利法人における取締役と同様である(法第38条の2第5項において商法第266条第2項、第3項及び第5項を準用)。

一方、監事は会計監査を通じて理事の業務執行を監督する立場にあるが、監事が組合又は第三者に対して損害賠償責任を負う場合において、理事もその責任を負わなければならないときは、その監事と理事は連帯債務者となる旨が定められている(法第42条において商法第278条を準用)。

以上のように、事業協同組合の理事と監事は組合の実質的な経営者であり、その権限と責任は組合の内外においても重大な関心事となる。

したがって、本件情報は、法の規定により行政庁に対し提出すべき情報であり、また、公益法人の役員と同様もともと公示的な性格を持つものである。

本件情報の開示によって、当事者の個人の尊厳が傷つけられたり、人格的利益が損なわれたりすることは、社会通念上考えられないことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」とは認められないものであり、cの要件に該当しない。

4 結論

以上のとおり、実施機関による本件部分公開決定処分は条例に基づき適正に行われたものであり、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 事業協同組合について

事業協同組合は、中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う者、勤労者その他の者が相互扶助の精神に基き協同して事業を行うため法に基づき設立される法人である(法第1条、第3条及び第4条)。

事業協同組合の設立にあたっては、組合員になろうとする4人以上の者が発起人となり、組合員たる資格を有する者で創立総会の日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して創立総会を開催し、その議決権の3分の2以上で設立を決議した上で、業を所管する行政庁(異議申立人については実施機関)の認可を受けなければならないとされている(法第27条の2第1項)。

また、設立後は、定款変更について、行政庁の認可を受けなければ効力を生じないとされている(法第51条第2項)ほか、役員の氏名又は住所の変更を届け出ること(法第35条の2)、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金の処分又は損失の処理の方法を記載した書面を提出すること(法第105条の2第1項(本件行政文書提出当時の旧法(平成18年法律第75号による改正前の法。以下同じ。)では、第105条の2。))が義務づけられている。

事業協同組合は、基本的には、事業者である組合員の共通の利益を追求する中間法人としての性格を有し、組合自体は営利を目的とするものではなく、法人税率が公益法人と同等程度に軽減されているほか、中小企業振興施策や公共事業の担い手となることが多いなど一定の公益性が認められている法人である。異議申立人についても、特定の地方公共団体の区域における一般廃棄物からの資源の回収と再資源化という公共性の高い事業を独占的に担っていることが認められる。

3 本件行政文書について

本件行政文書は、旧法第105条の2に基づき、異議申立人から実施機関に提出された「中小企業等協同組合決算関係書類提出書」であり、事業報告書、決算報告書及び総会議事録で構成されており、その内容は次のとおりである。

(1)中小企業等協同組合決算関係書類提出書

異議申立人の住所、名称、電話番号及び組合を代表する理事の氏名及び代表者の印影が記載された文書で、異議申立人から大阪府知事あてに提出されたものである。代表者の印影は非公開とされている。

(2)事業報告書

事業報告書は、平成17年2月1日から平成18年1月31日までの間の本件事業協同組合の活動状況等を報告するものであり、「《1》概況」、「《2》庶務事項」及び「《3》事業の状況」の項目にわかれている。「《1》概況」中の第5回通常総会の「役員選挙について」の議案中に理事名と監事名が記載されており、「《3》事業の状況」には、異議申立人の取引先の事業所名が記載されている。異議申立人の取引先の事業所名は非公開とされている。

(3)決算報告書

平成17年2月1日から平成18年1月31日までの間の決算報告書であり、貸借対照表、損益計算書、販売費・一般管理費、原価報告書、利益処分の各文書と、監査意見書が添付されている。決算報告書中の代表者の印影と、監査意見書中の監事の印影が非公開とされている。

(4)総会議事録

総会議事録については、平成18年4月12日に開催された第6回通常総会における平成17年度の事業報告、会計報告、会計監査報告、平成18年度の事業計画(案)、予算(案)の承認等の議題についての議事経過と結果をまとめた記録であり、議長理事及び出席理事の印影が非公開とされている。

なお、異議申立人は、上記(1)から(4)の非公開部分を除く部分(本件係争部分)の非公開を求めている。

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

異議申立人は、本件係争部分の公開は、「異議申立人の事業活動に支障をきたし、組合役員等の個人情報を保護できないおそれがある」などとして、本件係争部分に記録された情報が条例第8条第1項第1号及び条例第9条第1号に該当すると主張している。

本件係争部分のうち、異議申立人は、代表理事以外の役員の氏名及び決算報告書の非公開について主張しているところであるが、異議申立書においては、中小企業等協同組合決算関係書類提出書全体の非公開も求めていると考えられることから、まず、代表理事以外の役員の氏名、決算報告書について検討した後、これらを除く部分についても検討する。

(1)条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • ア 法人・・・その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は、公開しないことができる旨定めている。

また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

(2)本件係争部分の条例第8条第1項第1号該当性について

本件係争部分に記録されている情報は、法に基づき法人として設立された事業協同組合である異議申立人の情報であることから、(1)アの要件に該当することは明らかである。

次に、本件係争部分に記録されている情報が(1)イの要件に該当するかどうか個別に検討する。

ア 代表理事以外の役員の氏名

事業協同組合には、役員として、3人以上の理事及び1人以上の監事を置くこととされている(法第35条第1項及び第2項)。事業協同組合における理事及び監事は、株式会社等における取締役及び監査役に相当する重要な役職であり、理事は組合の業務を執行するとともに、理事会を構成して組合の業務執行に係る意思決定を行い、監事は組合の財産の状況及び理事の業務執行の状況を監査することを職務とする。

このような理事や監事に誰が就任しているかという情報は、当該事業協同組合が経済活動を行う中で、取引を行おうとする第三者がその信用を判断するための重要な要素となるべき情報であって、公にすることにより、社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資することがありこそすれ、公正な競争の原理に反する結果となるとは認められない。

また、このような情報は、技術上又は営業上のノウハウや金融上、経営上の秘密等にあたらないことは明らかであり、公にすることにより、当該事業協同組合に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報であるとも認められない。

ところで、この点に関し、異議申立人は、「異議申立人の役員であるものは、通常、自ら組合員である法人の役員または個人事業主を兼任しており、広く異議申立人の役員を開示することは、当該組合員の競業他社との関係等において、上記均衡に亀裂をもたらす蓋然性が高い。」とし、「異議申立人には、その役員が誰であるかの秘匿につき、重要な経営上の利益を有しているのであって、それを公開することは、当該組合員を構成員とする異議申立人自身の公正な競争が侵害される蓋然性が高い。」と主張する。

しかしながら、事業協同組合が、法人として経済活動を行う主体である以上、役員が誰であるかという情報は、上述のとおり、公にされることによってこそ社会一般の取引の安全や公正な競争秩序の維持に資するものであり、事業協同組合と同様に構成員の利益の追求を目的とする中間法人について、役員の氏名が登記事項とされていることからしても、異議申立人の主張を採用することはできない。

また、異議申立人は、「事業協同組合の代表理事については、登記簿により公開が予定されているものであるが、その他の役員については、登記することが求められていない」とし、「法律によって開示が義務づけられていない事業協同組合の役員につき、公益法人と同様もともと公示的な性格を持つという理由でもって、開示を認めることになれば、結局、法律の下位規範である条例が、法律を侵害若しくは改廃し、または法創設機能を有することになる。」と主張している。

しかしながら、法は、登記簿という形式で公示すべき情報を規定しているに過ぎないものであり、登記事項とされていない情報について、条例に基づいて公開することを禁止したものではないと解されるから、異議申立人のこの主張もまた、採用することができない。

以上のことからすると、本項の情報は、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められず、(1)イの要件に該当しない。

イ 決算報告書の公開決定部分について

決算報告書は、その文書の性質上、公にすることにより、異議申立人の全般的な財務状況を把握することが可能な情報である。本件決算報告書に記録されている数値からは、様々な財務指標を算出することが可能であり、異議申立人の経営規模、資産構成、収支バランス等が把握できることが認められる。

しかしながら、本件決定においては、事業報告書に記録されている異議申立人の取引先の名称は非公開とされており、本件決算報告書のうち本件係争部分に含まれる部分には、他に異議申立人の共同事業や取引行為に関する具体的な情報は記録されていない。審査会において、本件決算報告書を見分したところによっても、異議申立人の営業上、技術上のノウハウや取引上、経営上の秘密が具体的に明らかとなるような情報は含まれていないことが認められた。

さらに、事業協同組合の決算報告書については、当該事業協同組合の組合員のみならず、債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、当該事業協同組合自らが、これを閲覧又は謄写させなければならないとされている(法第40条第12項(本件行政文書提出当時の旧法では、第40条第3項。))。

また、事業協同組合は、2で述べたとおり、中間法人としての性格を有し、組合自体は営利を目的とするものではなく、税制上の優遇措置がとられているほか、中小企業振興施策や公共事業の担い手となることが多いなど一定の公益性が認められている法人である。異議申立人についても、公共性の高い事業の独占的な担い手となっていることが認められ、その全般的な財務状況に関する情報は、府民の正当な関心の対象となるべきものである。

ところで、異議申立人は、「法第40条は、組合と法的利害関係を有しない一般市民に公開を義務付けていないとし、本項の情報を公開すべきではない」と主張している。

しかしながら、法第40条第12項の規定は、債権者等の利益の保護のため、法人が自ら行わなければならない決算報告書の開示について定めたものであり、実施機関において提出を受けた決算報告書を条例に基づいて公開することを禁じるものではないと解されるから、この点についての異議申立人の主張は採用することができない。

以上のことを総合して判断すると、本項の情報は、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められず、(1)イの要件には該当しない。

ウ 中小企業等協同組合決算関係書類提出書及びその添付書類に係る公開決定部分(ア及びイを除く。)について

中小企業等協同組合決算関係書類提出書中の事業報告書は、平成17年2月1日から平成18年1月31日までの間の本件事業協同組合の活動状況等を報告するもので、総会議事録については、通常総会における事業報告等の各議題についての議事経過と結果をまとめた記録であり、その内容は定型的で、上記イで述べた事業協同組合の性格や公益性等から判断すると、公にすることにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められず、(1)イの要件には該当しない。

以上のとおりであるから、本件係争部分に記録されている情報は、いずれも、条例第8条

第1項第1号に該当しない。

(3)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

(4)本件係争部分の条例第9条第1号該当性について

本件係争部分のうち、中小企業等協同組合決算関係書類提出書については、役員の氏名等の

情報を除き、専ら法人たる事業協同組合である異議申立人に関する情報であり、(3)アの要件に該当しないことは明らかである。そこで、代表理事以外の役員の氏名について、(3)アないしウの要件に該当するか否かを検討する。

代表理事以外の役員の氏名については、公にすることにより、特定の個人が特定の事業協同組合の役員に就任していたという事実が明らかとなる情報であり、(3)ア及びイの要件に該当すると認められる。

事業協同組合の役員は、営利法人である会社法上の株式会社や民法上の公益法人である財団法人や社団法人、中間法人法に基づく中間法人など、他の法令に基づく法人の役員の氏名が登記事項となっているのとは異なり、代表理事を除いては、法により、その氏名の登記が義務づけられておらず、一般に誰もが閲覧できる情報とはなっていない。

しかしながら、事業協同組合の役員である理事及び監事は、その権限や責任において、株式会社の取締役及び監査役、民法に基づく財団法人・社団法人及び中間法人の理事及び監事と同等の役職であるうえ、その組合員は、本来、当該事業を営む個人あるいは、法人の代表者であることからしても、当該事業協同組合の役員であることを秘匿すべき正当な理由があるとは認められない。

以上のことからすると、代表理事以外の役員の氏名については、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められないものであり、(3)ウの要件に該当しない。

以上のとおり、本件係争部分に記録されている情報は、条例第9条第1号に該当しない。

5 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

岡村周一、福井逸治、松田聰子、岩本洋子

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