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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第140号)

社会福祉法人保育所調書部分公開決定異議申立事案

(答申日 平成19年6月20日)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成18年8月18日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「平成17年度A園、B園、C園の資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表、財産目録及び最新の、A園、B園の保育所調書全て」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年9月14日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、別表の「対象行政文書」欄に掲げる文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、別表の「公開しないことと決定した部分」欄に掲げる部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して異議申立人に通知した。
    (公開しない理由)
    • 条例第8条第1項第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)には、法人の取引金融機関名、支店名、口座番号、取引先名が記録されており、これらを公にすることにより、取引上の安全を害するなど当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものである。
    • 条例第9条第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)には、法人従業員の印影、施設職員の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医師を除く。)、性別、年齢、給与等が記録されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものである。
  3. 同年11月1日、異議申立人は、本件決定を不服として、実施機関に対し、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

A園及びB園の平成18年度保育所調書(以下「本件調書」という。)のうち、「施設職員の給与」、「非常勤職員の賃金等」及び「職員の動向」の各欄における個人の氏名(以下「本件係争部分」という。)を非公開とする決定を取り消し、開示を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね次のとおりである。

1 条例第9条第1号に関する主張

(1)異議申立書における主張

本件調書は認可保育所についての文書であり、現在職員名はその施設内において掲示されており、個人のプライバシー問題とは言いがたく、通常内密にするような情報では無いため、非公開の根拠・正当性に欠ける。

また、園では不審者対策等が行われているが、不審者対策と、子育て支援の役割を担う公的施設である認可保育所が地域住民の出入りの制限を行う事とは全く問題が異なり、特別理由のない限り希望する市民等を施設内に入ることを拒否する様なことはありえず、園内掲示物については、原則不特定多数の者に知らせ、知られる様になっている。こういった状態を踏まえると、条例第9条第1号に規定する「一般的に他人に知られたくないと望むことの正当性」に欠け、認可保育園の職員氏名の非公開は無意味な決定となっている。

次に、認可保育所は公・私ともに保育所利用者は応能負担で保育料を市町村へ支払い、公立・私立問わずそのいずれも、運営費等として園に支出がされている。よって、認可保育所職員は公私問わず税金で所得を得ているが、当然ながら、公立保育所では、その職員名は公開の対象とされているのに対し、同じ様に税金で収入を得ている、私立保育園職員名のみが非公開とされる根拠は全く無いものである。

さらに、私立保育園は公立保育所と異なり、運営に必要な財源を寄付金等から得ていることもあるが、添付資料17年度の資金収支内訳表を見る限りその金額は年額にしてわずかに2万円程度であり、運営費等収入と比較をしても、その事を理由に、情報について公・私の格差をつけることへは、社会的な理解を得られるものでは決してない。

もう一つ、非公開が正当性に欠ける根拠として、本件法人保育園の一つ、B園は、公立保育所・廃止民営化によって、運営を移管された園であり、通常の認可園とは全く異なった経緯のある園である。

土地・建物は市より無償貸与・譲渡がされており、また、民営化にともない約二千万円程をかけて増築工事も行われる等、他園と違い市民負担の非常に大きい園であることの考慮も必要である。

市は民営化にあたり「保育水準は下げない・保育内容は継続する」と議会でも発言をし、公立保育所廃止を条件に条件付で可決されているのである。よって、この保育園には、継続した検証が必要である。

検証には、市民側からも、検証を行うことができなければ公正・公平な検証とは言えない。私は、当時の当該保護者としてや、税金が多く使われているこの民営化を市民の一人としても、検証を続けることが、今後の民営化を更なる市民の為への民営化へとつなげることができると感じている。

職員名公開の必要性については、民営化時は一定経験年数も配慮した職員の雇用がされたが、その雇用状況を把握するには、職員名の公開がなければ不可能である。保育の質の善し悪しについて、職員の経験年数等のバランスをとることが最も重要視されており、公立保育所は平均勤続年数が約18年といわれているものの、民間保育園においては、制度的な問題も含めて平均勤続年数は7年といわれていて、保護者として当時、市とは「保育内容は維持・継続」すると約束がされていることもあり、職員の配置バランスは重要視しているものの一つである。

ところが、実際には民営化3年にしてすでに当時の引継ぎを行った保育士らは、半数となっており、この事実の検証を行う為や、この事を、市民も市側さらに議会も知る必要性を痛感している。私達市民にはこういった事の為に、公文書での公開が必要不可欠であり、公立保育所では公開されている情報が上述にある様に、民間保育園では非公開となるのは、理解・納得がいかず、妥当性を見出すことは不可能である。

また、本件調書の職員氏名の公開が、経験の長短を持って個人の評価対象としてつながるのか否かの問題について、保育の質等の問題は決して個人の経験の長短ではなく、「保育園内全体のバランス」が問題で、たとえば、職員全体が30年勤続のものだから、保育の質が良いとの認識を持った市民など皆無である。また、その保育園内での質への問題は、保育士としての経験年数の長短の他、「B園」での経験年数ももちろん重要であるのだから、個人の保育士としての評価対象になるということはありえない。

こうした問題も含め、一部園においては、園内における保護者への職員紹介の人数と情報公開文書の職員人数と異なっている事もあるなど、氏名が公開されないことで、税金で運営された施設であるのに、国民としてその事実を知る事が不可能となっている。

非公開が、市民らがそれを正当であるのか否かの検証もできず、嘘を免罪することとなってしまっているのでは、問題である。

最後になるが、私を含めた保護者は当時公立保育所廃止・民営化に反対をした。しかし民間といえども認可保育所であり、児童福祉法に沿い運営がされていて「公・私」に何ら差は無い。と繰り返し、繰り返し述べてきたのは、市である。それを今更、「民間保育園だから」を理由にし、情報の透明性について格差をつけられたのでは、約束違反である。無意味な、非公開処分は早急に見直し、できる限り透明な運営をするべきである。

以上により、認可保育所の職員氏名においては、公開をすべきである。

(2)反論書における主張

実施機関は、異議申立人が保育所内にて職員名を掲示していることをもって職員名を公表すべきとしていることについて、異議申立人が主張するような不特定多数のものが知りえる状態ではないため、公開する理由にならないとしている。

この点に関して言えば、実施機関は保育所の実際の状況の把握がきちんとできているのか疑問である。

現在保育士は、国家資格化となり、児童福祉法第18条の4、「保育士とは、第18条の18第1項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」また、保育士が国家資格化された理由として、保育士資格が詐称され、その社会的信用が損なわれている実態に対処する必要があることや、地域の子育ての中核を担う専門職として保育士の重要性が高まっていることなどに対応するためとされており、以上の様に保育所内子どもに限らず、保育士の役割は地域で子育てをするその保護者も含めた指導を行なうことが求められている。このことから、保育所には利用者以外の地域住民が日常的に出入りしているのが、実態である。この実態からすれば、保育所内に職員名を掲示した時点で、その個人らは不特定多数の者に自らの氏名を公開されていることを示し、それを了承していると理解される。

こういったことから、保育士の重要性が高まってきていることなどに対応するためとされており、きちんと氏名を公開する必要性が求められてきたのは当然の社会的な流れである。

さらに、大阪府情報公開条例解釈運用基準では、「『正当と認められるもの』かどうかが客観的に明白である場合を除き、当該個人から意見を聴取するなどにより、慎重に取り扱い、客観的判断に努めることとする。」とされており、公開することができる情報の例(6)では「サービスの内容、性格から氏名等を明らかにして職務に従事する者の当該職務に関する情報」とされており、本件は明らかに上記例にあたり、公開することができる情報である。

2 社会福祉法人保育士と公立保育所保育士の違い

社会福祉法人保育士と公立保育所保育士は、確かに、法人職員か市町村職員かの違いはあるものの、その違いは、雇用先名の問題だけであって、いずれも、国家資格であるもの、給与を税金で得ているもの、社会福祉として従事し公共性があるものであり、一般的な民間企業の職員とはその性質が全くことなっているため、双方を区別される理由に妥当性を見出すことができない。

保育士については、あくまでも市民からみれば「公・私」と見るよりも、「同じ税金で働くもの」といった視点でしか、社会福祉法人園と公立園の保育士をみることができない。

また、税金で報酬を得る者として、審議会委員等では、民間人がその委員となることで報酬を得ることが多いが、それら委員の氏名は、民間人であり、保育士らと違い短期的なものであるのにも関わらず、公開されることから見ると、公務員で有るか否かという基準よりも、その職務の役割や、公的資金の有無といった基準が社会通念的なものであるといえる。

本件調書にて、保育士氏名等の提出が求められる根拠理由は、児童福祉法で定める保育所最低基準の中の、保育士配置基準にある。

保育所には、当然最低基準を根拠にした運営費として税金が降りており、最低基準を遵守されているのかの監査が必要であるからである。

異議申立人が今回公開請求にいたったのは、本件の保育園は、車で10分程度のところに同法人が運営する保育園があり、最低基準で定められた職員が双方の園を掛け持ちで保育する姿が見られたことがあった為である。

現行であれば、例えば、最低基準内でA園○歳児担当とA園に掲示した保育士が、B園でも、B園○歳児担当と掲示されていても、保護者らには全くその事実は知られることがなく保育を行うことも可能である。

こうしたことから、法律から見ても、当然市民には「最低基準が遵守されているのか否かは大変重要であり」、市民らに職員名を公開し、その基準が守られているのか否かを市民が知ることは、当然の「知る権利」であることは間違いない。市民(利用者)として、園で掲示された内容と保育調書に記入された内容に間違いがないのかどうかの事実を知ることは当然の権利である。

実施機関は、異議申立人が「民間(社会福祉法人)であることを理由に情報の透明性に公私格差を設けるのは約束違反である」とした主張に関して、いずれもまるで実施機関は一切無関係であるかのような主張を行っている。

しかし、その主張には異議申立人は非常に不快で、不満である。

そもそも、認可保育園は、公私に区別することなく、児童福祉法の下で運営が行われ、その指導監督権はいずれも都道府県の管轄である。また、保育所保育指針として、保育内容についても遵守が定められている。

実施機関は、当然児童福祉法及び保育所保育指針に沿った運営が行われているのか否かの監査を行っているのである。

児童福祉法の「最低基準の向上」には、「最低基準を理由にその基準を上回って運営されている部分を引き下げてはならず、常に向上に努めなければならない」といった旨の項があり、保育所保育指針は「保育の一貫性の重要性」や「保育計画は中長期的視野で」という旨の内容となっている。

本来、指導監督権を持つ実施機関は、当然、これらを守らせるよう指導する立場である。しかし、こと保育所民営化に至っては、子どもや保護者らは継続した保育を受けていることを前提とし、それをもって民営化を承認しておきながら、制度的には、「新規園扱い」として、継続性の検証などは全く行っておらず、「職員の雇用契約がない」「不知」「本件係争と結びつかない」などと非常に無責任極まりのない、まさに縦割り行政を露呈させた主張を堂々と行っている。府民からすれば、実施機関こそが、法律やその他を真に受け止め、自らの役割を認識し、本当に子どもの事を考えた府政を行うのであれば、民営化園に関しては他の保育園とはことなった制度を整え、認可、監査を行うことは当然である。

3 まとめ

現在、多くの公立保育所が廃止され、社会福祉法人立が急増している。

従来の保育所運営が行政の直営中心で行われていた時代とはことなってきている現実を、きちんと見定めるべきである。

今後は、社会福祉法人立の保育所が中心となった運営がされるなかで、国家資格である保育士の氏名や、多くの国民の税金が社会福祉法人へと流れる仕組みになってきていることに注視し、条例の運営は慣例・慣行にしばられることなく、時代に即したものになるよう努める義務があると私は確信している。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 社会福祉法人から所轄庁への提出書類について

社会福祉法第59条第1項では、「社会福祉法人は、毎会計年度終了後3月以内に事業の概要その他の厚生労働省令で定める事項を所轄庁に届けなければならない。」とされ、本府法人指導課では、これに基づく届出事項について独自に「法人調書」として定め、その添付資料として貸借対照表等の決算書類を毎会計年度終了後3か月以内の6月末までに府に届けさせることとしている。

また、社会福祉法第70条1項では、「都道府県は、この目的を達成するため、社会福祉事業を経営する者に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員をして、施設、帳簿、書類等を検査し、その他事業経営の状況を調査させることができる。」とされ、上記同様に「保育所調書」として定め「法人調書」等と同時に提出させている。

法人指導課では、これらを基礎情報として把握し、所管業務である「社会福祉法人等の指導及び監査に関する業務」を実施している。

2 本件決定の適法性について

(1)条例第9条第1号について

個人の尊厳の確保、基本的人権の尊重のため、個人のプライバシーは最大限に保護されなければならない。

特に個人のプライバシーは、一旦侵害されると、当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに鑑み、条例の前文では、「個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護」することと明記され、また、条例第5条において、「実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」ことを定めている。

そして、条例第9条第1号においては、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもの(以下「個人識別情報」という。)のうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」については、「公開してはならない情報」として、公開を禁止するという基本原則が明確に定められている。

(2)条例第9条第1号に該当することについて

異議申立人が公開を求めているのは、A園及びB園の保育所調書のうち施設職員の給与に記載された「職員の氏名」である。

この情報は、特定の個人が直接識別できる情報である。

また、当該保育園では、職員の氏名を保護者や園児等の関係者以外には、一般に公開していないことから、通常公にすることを前提としていない個人が識別できる情報であり、個人識別情報のうち一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるため、条例第9条第1号に該当するものである。

(3)異議申立ての理由に関することについて

異議申立人は、保育所内において職員の氏名を掲示していることをもって、本件係争部分の職員名を公表すべき理由としているが、保育所内における職員名の掲示は、保育所を利用する児童及び保護者等の特定された者の便宜の為や信頼関係を築くために実施されているものである。

現在、保育所では、近年の不審者による事件等を踏まえ、就学前の児童が入所している保育所の特性に鑑み、安全性確保のための門扉の施錠や警報機器の整備など不審者対策が実施されており、異議申立人が主張するような不特定多数の者が保育所内に掲示された内容を容易に知り得る状態ではない。

前述のように保育所自らが園児や保護者等の関係者向けに掲示し知らせていることと、実施機関が個人のプライバシーに関する情報を公にすることを条例上禁止し、公にしないこととは全く意味合いの異なるものである。

また、民間保育所の職員を公立の場合と同様に扱うべきことについては、保育の実施主体である市町村と民間保育所の職員との間に雇用契約は存在せず、これらの職員が公務員としての身分を有することもないため、同様に扱う根拠は無いものである。

次に異議申立人は、B園については、公立保育所が廃止され民営化された園であり、土地建物が市からの無償貸与・譲渡されたことなど市民負担の大きい施設であることなどから、民営化後も継続した検証が必要であるとしているが、このことが本件係争部分の氏名を公表することには、結びつかない。

次に異議申立人は、市の「保育内容は維持・継続する」との約束や保育の質の確保上重要となる保育士の経験年数、構成バランスを検証するため、及び保育士の経験の長短が評価の対象とならないことから、当該園の職員氏名の公表が必要としているが、条例の大原則であるプライバシーの保護を打ち破ってまで、公表すべきとの理由にならない。

次に異議申立人の一部の園における保護者への職員紹介の人数に関しては、不知である。

次に異議申立人は、「民間保育園であることを理由に情報の透明性に公私の格差を設けるのは、約束違反である。」と主張しているが、上記(1)、(2)で述べたとおり、当該園の職員氏名を非公開としたのは、条例の規定に則って行った妥当な措置である。

3 結論

以上のとおり、本件決定は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法又は不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件調書について

本件調書は、実施機関が、社会福祉法第70条第1項に基づき、社会福祉法人に提出を求めた平成18年度のA園及びB園に係る保育所調書であり、本件係争部分が含まれる各欄の内容等は、次のとおりである。

  • (1)「施設職員の給与」の欄には、A園及びB園のそれぞれの施設の職員について、職員ごとに表形式でその職種、氏名、性別、年齢、資格の有無及び資格名、採用年月日、本俸、諸手当、総支給額の情報が記録されている。本件決定においては、職種、施設長の氏名、資格の有無及び資格名、施設長以外の採用年月日が公開とされ、その余の部分は非公開とされている。
  • (2)「非常勤職員の賃金等」の欄には、A園及びB園のそれぞれの施設の職員について、職員ごとに表形式でその所属、職種、氏名、性別、年齢、資格の有無及び資格名、雇用期間、賃金単価、雇用契約書の有無、勤務曜日、勤務時間の情報が記録されている。本件決定においては、所属、職種、嘱託医、嘱託歯科医の氏名、資格の有無及び資格名、雇用期間、雇用契約書の有無、勤務曜日、勤務時間が公開とされ、その余の部分は非公開とされている。
  • (3)「職員の動向(非常勤職員を除く)」の欄には、A園及びB園のそれぞれの施設の職員について、職員ごとに表形式でその所属、職種、氏名、性別、年齢、採用・退職等年月日、異動内容の情報が記録されている。本件決定においては、所属、職種、採用・退職等年月日、異動内容が公開とされ、その余の部分は非公開とされている。

本件係争部分は、これらの欄に記録されている個人の氏名であり、具体的には、A園及びB園の主任保育士、保育士、保育補助員、調理師、調理補助員、看護師の氏名である。

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限に配慮しなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」とは、一般的に社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

(2)条例第9条第1項該当性について

本件係争部分に記録された情報は、A園及びB園の主任保育士、保育士、保育補助員、調理師、調理補助員、看護師である個人の氏名であり、既に公開されている情報と照らし合わせることにより、特定の個人が、特定の保育園に勤務していること及び当該保育園での職種が明らかとなる情報である。また、保育士については、特定個人が有する資格が明らかとなる情報でもある。以上のことから、本件係争部分に記録された情報は、個人の職業等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものと認められ、(1)のア及びイの各要件に該当する。

また、個人の職業や勤務先の情報については、一般的に社会通念上、他人に知られることを望まないものであることから、(1)のウの要件にも該当する。

以上のことから、本件係争部分に記録された情報は、条例第9条第1号に基づき、公開してはならない情報であると認められる。

なお、異議申立人は、「施設職員の給与」、「非常勤職員の賃金等」及び「職員の動向(非常勤職員を除く)」の各欄に記載されている個人の氏名が保育所の施設内で掲示されていること、職員の給与の財源は税金から充てられていること、同法人保育園の一つであるB園は、公立保育所廃止民営化により、運営を移管された園であり、通常の認可園とは全く異なった経緯のある園であることから、公立保育所と同様に私立保育園職員の氏名も公開すべきであると主張している。

審査会としても、保育所に関する情報が、入所児童の保護者等の関係者に対し可能な限り開示されることが望ましいことを否定するものではないが、一般に、保育所職員の名簿は、保護者等の関係者以外の者が容易に入手し得るものではなく、また、保育所は、保護者以外の者が自由に出入りできる施設ではないことから、施設内で掲示されていることをもって、当該情報が何人に対しても公開されるべきであるということはできない。さらに、本件調書に係る保育所の職員が、公務員ではないことからすると、当該保育所が補助金を受けているからと言って、公務員の氏名と同様に扱うことはできず、上記の異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。

また、異議申立人は、大阪府情報公開条例解釈運用基準において、公開することができる情報の例として、「サービスの内容、性格から氏名等を明らかにして職務に従事する者の当該職務に関する情報」が掲げられていることを指摘し、本件係争部分に記録されている情報は明らかにこの例にあたり、公開することができる情報である旨主張している。しかしながら、当該例は、解釈運用基準において、「居宅介護支援に係る介護支援専門員及び訪問介護員」が具体例として掲げられていることからもわかるように、事業所外の個人の住宅を訪問して単独で対人サービスを行うという点に着目してその職・氏名を公開する旨の基準を示したものと解されるところ、保育所の保育士等は、保育所という事業所の中で組織的に対人サービスを行うものであり、事情を異にするから、この点についての異議申立人の主張もまた採用することができない。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

岡村周一、福井逸治、松田聰子、岩本洋子

別表

対象行政文書

公開しないことと決定した部分

施設名

行政文書の名称

A園

平成17年度資金収支計算書

  • 個人の印影

平成17年度事業活動収支計算書

  • 個人の印影

平成17年度貸借対照表

  • 法人の取引金融機関名
  • 個人の印影

平成17年度財産目録

  • 取引金融機関名、支店名及び口座番号
  • 法人の取引先名・個人の印影

平成18年度保育所調書

  • 個人の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医師を除く。)、性別、年齢、本俸、賃金、施設長の採用年月日
  • 法人の取引先名

B園

平成17年度資金収支計算書

  • 個人の印影

平成17年度事業活動収支計算書

  • 個人の印影

平成17年度貸借対照表

  • 法人の取引金融機関名
  • 個人の印影

平成17年度財産目録

  • 法人の取引金融機関名、支店名及び口座番号
  • 法人の取引先名・個人の印影
  • 仮受け金に係る個人の氏名

平成18年度保育所調書

  • 個人の氏名(施設長、嘱託医、嘱託歯科医師を除く。)、性別、年齢、本俸、賃金、施設長の採用年月日
  • 法人の取引先名

C園

平成17年度資金収支計算書

  • 個人の印影

平成17年度事業活動収支計算書

  • 個人の印影

平成17年度貸借対照表

  • 法人の取引金融機関名・個人の印影

平成17年度財産目録

  • 法人の取引金融機関名、口座番号
  • 未払金、預かり金、仮受け金計上の相手先名

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