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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第141号)
府営住宅における動物飼育等関係文書公開決定(文書特定)及び不存在決定異議申立事案
(答申日 平成19年7月18日)
第一 審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 平成18年8月8日、異議申立人は、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「A府営住宅における、犬猫問題及び無断使用の畑問題に関する改善状況のわかる資料全て」についての行政文書公開請求(以下「本件請求1」という。)を行った。
- 同年8月22日、実施機関は、本件請求1に対応する行政文書として、「大阪府営住宅住まいのしおりのうち、23ページから24ページの部分及び27ページから28ページの部分」並びに「ふれあいだより2005vol.31のうち4ページの部分」(以下「本件公開文書1」という。)を特定の上、全部を公開するとの決定(以下「本件公開決定1」という。)」を行い、異議申立人に通知した。
- 同年8月29日、異議申立人は、実施機関に対し、条例第6条の規定により、「(1)大阪府営住宅住まいのしおりのうち、24及び28ページに記載の『府営住宅の敷地』及び『動物飼育について』の掲載の意思決定文書、ふれあいだより2005vol.31のうち4ページに記載の『府営住宅の敷地について』の掲載の意思決定文書」、「(2)府営住宅における動物飼育にかかる府要領及び同要領内容を掲載したふれあいだより」についての行政文書公開請求(以下「本件請求2」という。)を行った。
- 同年9月5日、異議申立人は、実施機関に対し、条例第6条の規定により、「(1)犬猫・畑問題で大阪府が行った事に関する資料全て。但し、パンフレットは除く。(2)犬猫・畑問題で違反者に対して行った実行内容に関する資料全て。上記全て、但し、平成12年度以後のA住宅に関するもの」についての行政文書公開請求(以下「本件請求3」という。)を行った。
- 同年9月12日、実施機関は、本件請求2に対応する行政文書として、「大阪府営住宅住まいのしおりのうち、24及び28ページに記載の『府営住宅の敷地』及び『動物の飼育について』の掲載の意思決定文書」、「ふれあいだより2005vol.31のうち4ページに記載の『府営住宅の敷地について』の掲載の意思決定文書」、「府営住宅内における動物飼育に関する取扱い要領」並びに「ふれあいだより2005vol.29のうち9ページの部分」(以下「本件公開文書2」という。)を特定の上、全部を公開するとの決定(以下「本件公開決定2」という。)を行い、異議申立人に通知した。
- 同年9月19日、実施機関は、本件請求3のうち(1)の部分に対応する行政文書として、「府営住宅内における動物飼育に関する取扱い要領の制定及び同要領の送付について(平成17年6月13日付住管第1339号)」(以下「本件公開文書3」という。)を特定の上、全部を公開するとの決定(以下「本件公開決定3」という。)」を行い、異議申立人に通知するとともに、本件請求3のうち(2)の部分については、不存在による非公開決定(以下「本件不存在決定」という。)を行い、「公開請求のあった文書については、作成または取得していないため管理していない」との理由を付して異議申立人に通知した。
- 異議申立人は、平成18年10月11日、本件公開決定1~3及び本件不存在決定(以下「本件各決定」という。)を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。
第三 異議申立ての趣旨
公開された文書以外に存在すると思われる文書の公開を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。
1 異議申立書における主張
平成17年12月頃、府担当者のところに伺い、請求・要請した事柄に関する資料の提出・開示が行われておらず、また、非開示の決定(文書による)及び口頭による説明もなされていない。
また、平成12年度以後に府を再三再四訪れ・相談をしていた際、その都度担当者より「お役所仕事ですから相談があった事柄・事実に関する事については必ず記録に残しています。」といわれていたが、今回、そういっていた記録の開示が一切なされていない。
また、平成15年頃、府担当者といわれる者(2名)が「現場視察」をした際、「今後の事も含めて議論し検討します。」との回答でその場での具体的な回答を避けていた。以後、持ち帰っての議論・検討を本当になされていたのなら、その関係書類が存在するはずであるが、その関係書類が開示されていない。
2 反論書における主張
(1)委託について
委託とは、法律行為又は事務を他の機関又は他の者に委託することであり、他の機関又は他の者(受託者)がその業務を行うことをいう。本件の場合、府が委託者であり、大阪府住宅供給公社(以下「公社」という。)が受託者で、府営住宅の管理等の業務を委託されている。また、行政契約の場合、法律上の根拠を必要とし(公営住宅法第47条・48条、大阪府営住宅条例)、行政主体間の事務委託は、民法上の委託とは意味を異にし、事務処理の権限が法に定める範囲において、全て受託者に移る。
しかし、委託された事業を行うのは受託者である公社(受託者)ではあるが、あくまで事業の実施主体は府(委託者)である。
(2)公社について
ア 公社の概要について
府が財団法人大阪府住宅管理センター(以下「旧住宅管理センター」という。)に委託・管理していた府営住宅の管理を、旧住宅管理センターと公社との統合に伴い、平成17年4月以降、公社に管理を委託している。また、平成18年4月1日からは、知事権限の一部を除いて、公社理事長名義により管理を行っている。
イ 委託の内容について
平成17年4月までは旧住宅管理センターが、それ以降は公社が府営住宅の管理を受託、管理しているが、以下の点に相違点がある。
- (ア)旧住宅管理センターと公社は、基本的に別組織である事。
- (イ)統合により府営住宅の管理を委託されているが、統合以前と以後でその権限・内容につき共通部分もあるが新たに付加された部分もあり、別のものといえる事。
以上の事柄から、府からの委託は旧住宅管理センターと公社の統合により一旦解消され、同様の内容も含むが“新たな”業務委託を受けたものと判断する。
ウ 公開に該当する“法人文書”の作成過程について
- (ア)まず、それぞれの住宅の担当者が窓口・電話等にて応対した内容を必要に応じて控える。
- (イ)応対内容が担当者において“処理出来ないような案件”であった場合は、担当課長に報告の上、対応記録を作成し、組織としての検討に付していく。
以上の過程を経た場合に“対応記録”が作成され、それが公開の対象となる「法人文書」として保存される。
(3)府との経過
- ア 当初旧住宅管理センターに出向き犬猫・畑問題について、その改善につき請願をしたものの、当初より“当センターの業務は「家賃等の管理(集金業務)等」であり、それ以外の業務(犬猫・畑問題)に関しては管轄外である”との発言があり、その結果として府との直接交渉となった。
- イ 以後6年間にも渡って、旧住宅管理センターの対応を是正する事なく全て府が対応し、今に至っている。
- ウ 旧住宅管理センター時代に作成された文書に関しては、廃棄処分すべき時期にある書類では無いにも係わらず、旧住宅管理センターが全て処分している。
- エ 公社に移行するまで一切の交渉は府とであり、旧住宅管理センター側は拒否していた。
以上の事柄から、旧住宅管理センターは民法第644条(受任者の注意義務)を怠り、府は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負っていた旧住宅管理センターに対し、是正・改善を求めるべきであったにも係わらず、それを怠り、また自らその処理を担当する事により“業務の引き受け”がなされたものと判断する。
(4)結論
- ア 上記(1)~(3)に記した事柄により、府(委託者)は実施主体としての責任を有し、旧住宅管理センター(受託者)の業務につき委託者としての監督責任がある。また、旧住宅管理センター(受託者)に不備な点(犬猫・畑問題の拒否等)があった場合の対応として業務委託解除ではなく、自らがその問題を処理する事を選択している。この事から府自らが解決・対応して貰えるとの期待を抱くものであり、また、旧住宅管理センターの対応(犬猫・畑問題の拒否)から他にとるべき方法も見つからなかった。この事から府は“引き受け”を行った“旧住宅管理センター業務”に関して真摯に対応すべきであり、その業務である対応記録の作成・組織としての検討等を“処理出来ないような案件(犬猫・畑問題等)”の場合、行う必要があった。それがなされていない事につき、条例第3条(実施機関等の責務)に反する行為である。
- イ 旧住宅管理センター管理の文書が処分されている事柄について
公社より「“情報開示の場”において旧住宅管理センター管理の法人文書が廃棄を規定されていない文書であるにも係わらず、廃棄処分されて不存在です。」との回答を得ている。この事は条例第3条(実施機関等の責務)に反する行為である。
この場合、旧住宅管理センター管理の文書が行政管理の文書といえるかが問題となるが、(2)のイに記した事柄から連続した委託の継続ではなく、一時解消し別権限を付加した上で新たに委託されたものといえ、旧住宅管理センターが公社との統合で消滅している以上、その管理権限・責任が一時的に府に移り、公社が再び業務委託を受けるまでの間続くものと解する(民法第654条)。よって府の文書といえる。 - ウ 上記ア、イ共に条例の第3条(実施機関等の責務)の条例解釈とその運用、行政・法人文書の適切な保存・迅速な検索のための管理体制の整備を図らなければならないとの文言に反する行為である。
よって、実施機関の決定は不当である。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね次のとおりである。
1 大阪府営住宅の概要
公営住宅は、公営住宅法(昭和26年法律第193号。以下「法」という。)に基づく住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸すること等を目的とする住宅であり、入居の資格、家賃の算定方法等、民間の賃貸住宅とは異なった性質を有している。
公営住宅の使用関係は、私法上の賃貸借関係であるが、特則として法が適用される。法の定めのない事項は一般法として民法、借地借家法の適用がある(昭和59年12月13日最高裁判所判決、民集第38巻12号1411頁)。
府は、公営住宅の事業主体として法第47条に基づく条例である大阪府営住宅条例(昭和26年条例第45号。以下「府営住宅条例」という。)によって大阪府営住宅(以下「府営住宅」という。)を設置するとともに、使用関係の内容を定める権能を与えられている。そして、概ね13万8千戸の入居者の氏名や収入状況等の情報を管理している。
2 府営住宅の管理について
(1)概要
府営住宅の管理は、府が旧住宅管理センターに委託し、管理していたが、旧住宅管理センターと公社との統合に伴い、平成17年4月以降は、公社に管理事務を委託している。具体的には、公社の府内5管理センター(中央、千里、枚方、堺、岸和田)で、入居者からの相談、問合せなどの業務を行っている。
平成18年4月1日からは、法第47条及び府営住宅条例第53条に基づく管理代行者として、知事権限の一部を除いて、公社理事長名義により管理を行っている。
(2)府営住宅入居者からの相談・照会について
前述のとおり、入居者からの相談や照会については各管理センターで処理することとなっているが、実施機関に寄せられる相談や照会についても、府営住宅制度の内容に係わるものを除いて、基本的に公社住宅管理部を経由し公社の各管理センターに内容を伝え、各管理センターで一元的に担任している。
なお、入居者による動物の飼育については、迷惑行為に至るおそれが高く、入居者間のトラブルの原因になることから、入居時に配付する「住まいのしおり」に「府営住宅内では、犬、ネコなどの動物を飼育することはできません。動物の臭い・鳴き声・毛の飛散に迷惑されている声が寄せられています。」と記載し、さらに入居者に年4回配付する「ふれあいだより」でも同様の記事を掲載するなどして、自粛を求めている。しかし、人が動物と接することは、生命の尊さを学ぶ大切な機会となるだけでなく、生活に潤いや安らぎが生まれ、ストレスや寂しさを癒す効果があることから、実施機関において、平成17年6月27日付けで「府営住宅内における動物飼育に関する要領」を定めたところである。同要領には、入居世帯の8割以上の同意等一定の要件を満たした団地については、住民の意思を尊重し、動物飼育を認める旨の規定がある。
また、府営住宅敷地内の広場、緑地、通路等は、法第2条第9号同法施行規則第1条及び府営住宅条例第2条第5号に規定する共同施設であり、入居者の共同の福祉のために必要な施設であることから、実施機関としては、前述の「住まいのしおり」に「個人の耕作や花壇などには使用しない」旨を記載し、「ふれあいだより」でも同様の記事を掲載するなどの方法により、入居者に対して適正な管理を啓発している。
3 本件各決定の妥当性について
(1)本件公開決定1の対象文書について
本件請求1に対応する行政文書として本件公開文書1を特定したのは、府には、基本的に訴訟等法的措置にかかるものを除き、上記の2のとおり、特定の団地での入居者からの個別相談・照会にかかる行政文書(条例第2条に定めるものをいう。以下同じ。)は存在せず、他方で、上述に示す一般的な府営住宅全体にかかる動物飼育や空き地使用にかかる啓発を実施したので、これらについての行政文書を特定し、全部公開決定を行ったものである。
(2)本件公開決定2の対象文書について
本件請求2に対応する行政文書として本件公開文書2を特定したのは、府には、基本的に訴訟等法的措置にかかるものを除き、上記の2のとおり、特定の団地での入居者からの個別相談・照会にかかる行政文書は存在しない。他方で、上述に示す一般的な府営住宅全体にかかる動物飼育や空き地使用にかかる啓発を実施したので、これらについての行政文書を特定し、全部公開決定したものである。
(3)本件公開決定3の対象文書について
本件請求3のうち(1)の部分に対応する行政文書として本件公開文書3を特定したのは、府には、基本的に訴訟等法的措置にかかるものを除き、上記の2のとおり、特定の団地での入居者からの個別相談・照会にかかる行政文書は存在しない。他方で、上述に示す一般的な府営住宅全体にかかる動物飼育にかかる取扱いを決定したので、この文書を特定し、全部公開決定したものである。
本件請求3のうち(2)の部分に対応する文書が不存在であることについては、2で述べたとおり、入居者からの個別相談については、公社住宅管理部及び公社の各管理センターで行っているものであり、これに該当する行政文書は府には存在しないものである。
4 異議申立人の主張について
- (1)異議申立人は、「平成17年12月頃、府担当者のところに伺い、請求・要請した事柄に関する資料の提出・開示が行われておらず、また非開示の決定(文書による)及び口頭による説明もなされていない」と主張するが、これは、公社堺管理センター職員がA住宅全入居者に配付した平成17年12月15日付けの啓発文書の内容の一つである単車置き場についての内容の確認のため、平成17年12月16日、事前の連絡なしに異議申立人が来庁したときのことを述べているものと思料されるが、これに関する行政文書は作成していない。
また、「非開示の決定(文書による)及び口頭による説明もなされていない為」と主張する点については、平成18年9月20日に開示した際、上記3でも述べた内容同様の趣旨を口頭により重ねて説明している。 - (2)異議申立人は、「また、平成12年以後に府に再三再四訪れ・相談をしていた際、その都度担当者より“お役所仕事ですから相談があった事柄・事実に関する事については必ず記録に残しています”といわれていました。今回、そういった記録の開示が一切なされていない。」と述べている。当時の職員の発言内容は不明であるが、既述のとおり、従来から府営住宅の各団地の入居者からの相談や問合せについては、公社の各管理センターで担任することとなっている。なお、府住宅管理課に直接相談のあった個別案件については、基本的に公社住宅管理部を経由して、公社の各管理センターで対応することになっているので、請求に合致する行政文書は既に公開決定しているもののみである。
- (3)さらに、異議申立人は、「平成15年頃、府担当者といわれる者(2名)が「現場視察」をした際、“今後の事も含めて議論し検討します”との回答でその場での具体的な回答を避けていました。以後、持ち帰っての議論・検討を本当になされていたのなら、その関係書類が存在するはずであるが、その関係書類が開示されていない。」と主張するが、平成15年度の旅費内訳書の記録を確認したところ、本件について府営A住宅へ現地調査を行った記録は存在しなかった。更に、平成14年度についても同様に確認したところ、平成14年7月24日に当時の担当補佐が現地に赴いた記録は存在するものの、その内容にかかる行政文書は存在しない。当時は、府営住宅の各団地の入居者からの相談や問合せについては、旧住宅管理センターの各住宅管理事務所で担任していた。また、直接、府住宅管理課に相談のあった個別案件は、旧住宅管理センターを経由して、各住宅管理事務所で対応していた。
なお、公社に業務が承継された現在においても府営住宅入居者からの相談・照会にかかる仕組みは、基本的に同様である。
5 結論
以上のとおり、本件各決定は条例に基づいて公開決定等しているもので、違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。
2 府営住宅の管理に係る事務の実情について
公営住宅は、公営住宅法(昭和26年法律第193号)に基づき住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸すること等を目的とする住宅である。府は、公営住宅の事業主体として同法第47条に基づく大阪府営住宅条例(昭和26年条例第45号。以下「府営住宅条例」という。)によって約13万8千戸に及ぶ府営住宅を設置している。
府営住宅の管理は、従来、府から旧住宅管理センターに委託して行われていたが、平成17年4月1日に旧住宅管理センターが公社に統合されたため、同日以降は、公社に管理事務が委託されており、平成18年4月1日からは、公社が公営住宅法第47条及び府営住宅条例第53条に基づく管理代行者として、家賃の決定や金銭の請求といった実施機関が行う管理業務を除き、管理を行っている。
また、府営住宅入居者からの相談や照会については、原則として、旧住宅管理センターが設置していた各住宅管理事務所や公社が府内5箇所に設置している管理センター(中央、千里、枚方、堺、岸和田)で応じているところであり、府に対して相談や照会があった場合は、府営住宅制度の内容に係わるものを除き、旧住宅管理センター又は公社を経由して各住宅管理事務所又は各管理センターに内容を伝え、各住宅管理事務所又は各管理センターにおいて処理することとされているところである。
3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由
本件各請求の内容を総合すると、異議申立人は、「A府営住宅における犬猫問題及び無断使用の畑問題に関する改善状況のわかる資料全て」、「犬猫・畑問題で府が行ったことに関する資料全て」及び「犬猫・畑問題で違反者に対して府が行った実行内容に関する資料全て(平成12年度以後のA住宅に関するもの)」の公開を求めているが、実施機関が本件各請求に対応するものとして公開した行政文書は、府営住宅入居者向けパンフレット「大阪府営住宅住まいのしおり」及び入居者向け広報紙「ふれあいだより」の該当部分並びにこれらの発行に係る決裁文書、並びに「府営住宅内における動物飼育に関する取扱い要領」及びその制定等に関する決裁文書のみである。
これに対して、異議申立人は、本件異議申立てにおいて、これらの文書以外にも本件各請求に対応する行政文書があるとして、その公開を求めているものである。
そこで、審査会において、これらの文書以外に本件各請求に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明を聴取したところ、概ね次のとおりである。
- (1)府営住宅の管理は、平成16年度以前は、旧住宅管理センターに、平成17年度以降は、公社にそれぞれ委託して行っており、入居者からの相談や照会については、旧住宅管理センターでは各住宅管理事務所、公社では各管理センターで一元的に処理されている。府に対して、入居者から苦情や相談があった場合も、府営住宅制度の内容に係わるものを除き、旧住宅管理センター又は公社の住宅管理部を経由して旧住宅管理センターの各住宅管理事務所又は公社の各管理センターに内容が伝えられ、各住宅管理事務所又は各管理センターにおいて処理されている。
府営住宅の敷地内での畑や動物飼育の問題に関しても、入居者からの個別の相談は、原則として旧住宅管理センター又は公社が対応しており、実施機関においては、府営住宅に共通の制度内容にかかわる相談や、一般的な啓発などを担当しているのみであって、個別の相談や対応に関する文書を組織として管理することはない。 - (2)平成17年12月頃、府担当者のところに行き、請求・要請した事柄に関する資料の提出・開示が行われていない旨の異議申立人の主張については、平成17年12月16日に異議申立人が府に来庁し実施機関の職員が対応した事実は、関係職員の個人メモにより確認できるものの、公社堺管理センターの職員がA住宅の全入居者に配付した平成17年12月15日付けの啓発文書の内容の確認のため来庁したものと考えられ、実施機関では、これに関する記録は作成していない。
また、異議申立人が、平成12年度以後に府を再三再四訪れ、相談をしていた際、その都度担当者より「お役所仕事ですから相談があった事柄・事実に関する事については必ず記録に残しています。」といわれていたが、今回、そういっていた記録の開示が一切なされていないと主張していることについては、各団地の入居者からの個別の相談や照会は、実施機関では処理しておらず、旧住宅管理センターの各住宅管理事務所や公社の各管理センターで処理されているから、仮に府に相談があったとしても、旧住宅管理センター又は公社に引き継がれ、実施機関において、当該相談に関する文書を組織として管理することはないものであり、現に管理していない。
さらに、異議申立人が、平成15年頃、府担当者といわれる者(2名)が「現場視察」をした際に持ち帰って議論・検討をした関係書類が存在するはずであるが開示されていない旨主張していることについては、平成15年に実施機関の職員がA住宅に出張した記録はなく、その前年の平成14年7月24日に実施機関の職員が出張した事実が確認されるものの、その後の処理は、当時、各団地の入居者からの相談を担当していた旧住宅管理センターを通じて担当の住宅管理事務所に引き継がれたものと考えられ、実施機関においては、関係書類を管理していない。
これらの説明は、2で述べた実施機関における府営住宅の管理に係る事務の実情を考慮すると、特段不自然な点はなく、他に、本件各請求に対応する行政文書の存在を確認することもできなかった。
また、異議申立人は、実施機関における犬猫・畑問題に対する対応や関係文書の管理のあり方に関して種々主張しているが、いずれも、本件各請求に対応する行政文書が本件公開文書1~3以外に存在するかどうかの事実についての判断を左右するものではない。
以上のことから、本件各請求に対応する行政文書は、本件公開文書1~3以外にはないと認められ、実施機関が、本件公開決定1、2及び3において、本件公開文書1、2及び3のみをそれぞれ対象行政文書として特定したこと及び本件不存在決定において、公開請求に対応する行政文書が存在しない旨の決定を行ったことは、妥当であると認められる。
4 結論
以上により、実施機関が行った本件各決定は妥当であると認められるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議を行った委員の氏名
岡村周一、曽和俊文、小松茂久、鈴木秀美