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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第138号)

警察署ファイル管理台帳掲載文書非公開決定(要件不備)審査請求事案

(答申日 平成19年6月6日)

第一 審査会の結論

諮問実施機関(大阪府公安委員会)の判断は妥当である。

第二 審査請求の経過

  1. 平成18年10月10日、審査請求人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、「ファイル管理台帳(第1方面区・鶴見警察署、平成17年度分)に係る全部の行政文書」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年10月11日、実施機関は、本件請求に形式上の不備があるとして、条例第7条第6項の規定により、補正を要する事項を次のとおり付して、審査請求人あて補正通知書(以下「本件補正通知書」という。)を送付した。
    (補正を要する事項)
    行政文書公開請求書に記載された行政文書の名称等では、公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項が充分ではありません。
    行政文書の名称等については、ファイル管理台帳を参照しファイル名を記載する、又は、具体的な行政文書が特定できる事項を記載するなど、公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項を具体的に記載して下さい。
  3. 同年10月17日、審査請求人から次の内容で通知書が提出された。
    補正通知書(府民第626号、平成18年10月11日)の補正を要する事項欄に記載されている内容を熟考しましたが、私は、実施機関の求める補正には応じないことを決定いたしました。
  4. 同年10月23日、実施機関は、本件請求に対し、非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、条例第13条第2項の規定により、公開しない理由を次のとおり付して、審査請求人あて通知を行った。
    (公開しない理由)
    平成18年10月10日付けで提出のあった「行政文書公開請求書」は、条例第7条第1項第2号に規定する行政文書を特定するに足りる事項が記載されているとは認められず、同条例に規定された行政文書の公開請求の形式上の要件に該当しないため。
  5. 同年11月30日、審査請求人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第5条の規定により、大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、審査請求を行った。

第三 審査請求の趣旨

公開との裁決を求める。

第四 審査請求人の主張要旨

審査請求人の主張は、概ね次のとおりである。

  1. 大阪府行政手続条例(以下「手続条例」という。)第30条第2項並びに第31条の規定に違反し、本件決定は無効である。
  2. 平成18年10月10日、審査請求人は大阪府警察本部長(以下「実施機関」という)に対して、大阪府情報公開条例第6条の規定に基づき「ファイル管理台帳(第1方面区・鶴見警察署、平成17年度分)に係る全部の行政文書」の公開請求を行い、実施機関は公開請求書を受理した。
    その後、実施機関は上記「ファイル管理台帳」に始まる請求内容の不備を指摘し、審査請求人に本件補正通知書を送付した。
    しかしながら、補正については熟思熟考の上、当該審査請求人は補正に応じない旨の記した内容証明郵便を実施機関に送付し、のちに実施機関から審査請求人へ非公開決定が通知された。
  3. 以上の経緯から審査請求人は以下のとおり提言する。
    そもそも、実施機関のいう「特定するに足りる事項」の解釈は行政解釈であり、法的拘束力はない。
    したがって、実施機関は手続条例第1条第2項を挙げ、他の条例に特別に定める場合はその定めるところにより処分・指導を行うと主張するが、条例には上記の行政解釈は規定されていないし、それを根拠に非公開決定という不利益処分を課すことは公権力の濫用に当たる。
    実施機関の結論では、本件決定が条例に基づく処分であると記述しているが非公開条項のどこに該当するかが明記されていない。
    非公開決定という不利益処分を課すにはどの条項に該当するとの記述が必要との観点から、審査請求人は実施機関の結論は手続条例ならびに条例そして大阪府情報公開条例解釈運用基準(平成17年4月改正版・大阪府)を混同し、曲解していると考えるものである。
    今回の争点の一つに「特定するに足りる事項」の解釈が問題となるが、たとえば横浜市では具体的な対象文書を記載しなくとも、およその内容を記載すれば足りるとしている。
    また、「情報公開法の解説と国会論議(畠基晃著、(株)青林書院40ページ)」には「具体的に記載される必要はなく、手がかりとなる内容であればよいのである」との記述がある。
    米国情報自由法にも「特定するに足りる事項」に当たる条文に「合理的な記述」と有り、解釈として、行政職員が対象文書の合理的な範囲を特定できる程度のものでよいと解されている。
    実施機関は特定の警察署のファイル管理台帳に係るすべての行政文書の公開を求めることと請求内容を具体的に認識しており、特定に足りないとの実施機関の主張は厳密に解し過ぎる。
  4. したがって、審査請求人は本件決定は手続条例上は条例の前文に規定する「知る権利」の侵害にあたり、問題とする「特定するに足りる事項」の解釈にも行政解釈(大阪府情報公開条例解釈運用基準)に拘泥するあまり、原則公開の条例の前文の規定に反したと考える。

第五 諮問実施機関の主張要旨

諮問実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 実施機関の意見等

(1)意見の趣旨

「実施機関の決定は妥当である。」との裁決を求める。

(2)実施機関の意見
ア 実施機関における行政文書の管理について

実施機関における行政文書の管理については、大阪府警察行政文書管理規則(平成13年大阪府公安委員会規則第9号。以下「規則」という。)において、事務能率の向上に役立つよう、常に正確かつ迅速に取り扱い、適正に管理することとされており、具体的には、大阪府警察行政文書管理規程(平成13年本部訓令第23号。以下「規程」という。)により、必要な事項を定めている。

また、行政文書の保存について、規則第10条第1項では、「行政文書は、原則としてファイルにまとめて取り扱うものとする。」とし、同条第2項において「前項の規定により作成したファイル及び行政文書の管理を適切に行うため、これらの名称その他必要な事項を記載した帳簿を作成するものとする。」と定められている。これに基づき、規程第34条第2項において、「当該年に作成することが予定されるファイルの名称を一覧に表示したファイル基準表、前年に作成したすべてのファイルの名称を一覧に表示したファイル管理台帳を作成しなければならない。」旨、規定している。

実施機関においては、これらを根拠に行政文書をファイルにより保管・管理することとされており、これらのファイルを適正に管理するための予定表がファイル基準表であり、作成したファイルの名称を一覧表にしたのがファイル管理台帳である。

なお、実施機関においては、公開請求の利便を考慮した措置として条例第37条第2項の規定により、ファイル管理台帳等を行政文書の検索用資料として、警察本部情報公開コーナーにおいて、一般の閲覧に供しているところである。

イ 本件決定の妥当性について
  • (ア)行政文書の公開請求
    条例は第6条において、何人も、実施機関に対して、行政文書の公開を請求することができると定めている。また、第7条において、行政文書の公開請求は、同条第1項各号に掲げる事項を記載した書面を実施機関に提出することにより行わなければならないと規定しており、具体的には、
    • a 氏名及び住所又は居所(法人その他の団体にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
    • b 行政文書の名称その他の公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項
    • c 前2号に掲げるもののほか、実施機関の規則で定める事項
    を記載しなければならないと定めている。
  • (イ)行政文書を特定するに足りる事項
    条例第7条第1項第2号では、行政文書公開請求書に、「行政文書の名称その他公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」を記載しなければならないと定めており、「行政文書を特定するに足りる事項」とは、請求に係る情報が記録された行政文書やファイルの名称だけでなく、事務事業の具体的な名称、年度、期間など実施機関において合理的に行政文書が特定できる事項を含むと解されている。
  • (ウ)行政文書を特定するに足りる事項が記載されているとは認められない理由
    本件請求は、鶴見警察署のファイル管理台帳にかかる行政文書のすべての公開を求めるものである。
    実施機関において同署のファイル管理台帳に記載されたファイル数を確認したところ、1,524冊のファイルが認められた。具体的には、同署に設置されている総務課、会計課、生活安全課、地域課、刑事課、交通課及び警備課が行う多種多様にわたる事務事業において発生する行政文書が、これらのファイルに保管管理されている。
    以上の状況などから、本件請求が条例第7条第1項第2号において定められている「行政文書を特定するに足りる事項」が記載されているか否かを検討したところ、本件請求は、ファイル管理台帳に記載のファイルすべて、すなわち、同署における事務事業を遂行するにあたって発生する行政文書のすべてについて請求の範囲が広がっており、事務事業の具体的な名称など、実施機関において合理的に行政文書が特定できる事項が記載されているとは認められないことから、条例に規定された行政文書の公開請求の形式上の要件に該当しないと判断したものである。
(3)審査請求人の主張に対する反論

審査請求人は、「手続条例第30条第2項並びに第31条の規定に違反し、本件決定は無効である。」旨主張するので以下のとおり検討する。

  • ア 手続条例は、大阪府の条例等に基づく処分及び届出並びに府の機関が行う行政指導に関する手続に関し、共通する事項を定めたものであり、これによって行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が府民にとって明らかであることをいう。)の向上を図り、もって府民の権利利益の保護に資することを目的としている。
  • イ 審査請求人の主張にある手続条例第30条第2項は、「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」とし、手続条例第31条では、申請に関連する行政指導として、「申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。」とそれぞれ定められている。
  • ウ 本件決定は、本件請求に対し、条例に規定する手続により公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項を具体的に記載するよう補正を求めたが、審査請求人から補正に応じない旨の回答があったため、当初の請求内容に基づき、条例で定められた適正な手続により行われたものであることから、審査請求人の主張する理由は失当である。
(4)実施機関の結論

以上のとおり、本件決定は条例の規定に基づき行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

2 諮問実施機関のまとめ

本件決定は、本件請求が、条例第7条第1項第2号に規定する「行政文書を特定するに足りる事項」が記載されているとは認められず、形式上の要件に該当しないことから行われたものであり、手続条例の規定違反は認められないと考えるところである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件請求に係る行政文書公開請求書の「行政文書の名称等公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」の記載が十分でなく、条例第7条第1項第2号の要件を満たさないとして、条例第7条第6項に基づき、期間を定めて補正を求めたが、審査請求人がこれに応じなかったため、本件決定を行ったと主張しているので、以下検討する。

(1)条例第7条第1項第2号及び同条第6項について

行政文書の公開請求は、請求権の行使であり、請求内容を明確にして手続を進める必要がある。このため、条例は、第7条第1項において、公開請求は、氏名等の請求者の特定に係る事項(第1号)及び「行政文書の名称等公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」(第2号)等を記載した行政文書公開請求書を実施機関に提出して行わなければならない旨定めている。

「行政文書の名称等公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」が記載事項とされているのは、行政文書公開制度において、実施機関が、公開決定等の対象とすべき行政文書を具体的に特定できるようにするためであり、請求に係る情報が記録された行政文書やファイルの名称のほか、事務事業の具体的な名称、年度、期間など実施機関において合理的に行政文書が特定できる事項がこれに該当すると解される。

また、条例は、第7条第6項において、公開請求書に形式上の不備があると認めるときは、請求者に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができるとするとともに、この場合において、実施機関は、請求者に対し、当該補正に必要な情報を提供するよう努めなければならないこととしている。

(2)本件決定の妥当性について

本件請求に係る公開請求書に記載された「行政文書の名称等公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」は、「ファイル管理台帳(第1方面区・鶴見警察署、平成17年度分)に係る全部の行政文書」である。その意味するところは、文言だけでは必ずしも判然とはしないが、受付時の状況に関する実施機関の説明等を総合すると、「鶴見警察署の平成17年度の行政文書ファイル管理台帳に掲載されている全部の行政文書」と解される。

実施機関における行政文書ファイル管理台帳は、大阪府警察行政文書管理規則第10条及び大阪府警察行政文書管理規程第34条第2項の規定に基づいて毎年作成される帳簿であり、当該年に作成したすべてのファイルの名称等を一覧に表示したものである。したがって、本件請求に係る行政文書としては、鶴見警察署に設置されている総務課、会計課、生活安全課、地域課、刑事課、交通課及び警備課の多種多様にわたる事務事業について、当該警察署において平成17年に作成又は取得したすべての行政文書が該当することになるが、このような記載は、実施機関が公開決定等の対象となるべき行政文書を事務事業の具体的な名称、年度、期間などによって、合理的に特定するに足りる情報とは言いがたく、本件請求に係る公開請求書における「行政文書の名称等公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項」の記載は、十分でないと認められる。

また、本件請求に係る公開請求書の不備は、補正が可能であることから、実施機関は、平成18年10月11日付けで審査請求人に送付した本件補正通知書により、平成18年10月24日までの期間を定め、ファイル管理台帳を参照しファイル名を記載する、又は、具体的な行政文書が特定できる事項を記載するなど、公開請求に係る行政文書を特定するに足りる事項を具体的に記載するよう補正を求めている。また、補正の参考となる情報として、当該年の行政文書ファイル管理簿を審査請求人に提供していることも認められる。これに対し、審査請求人から、平成18年10月16日付け文書にて、補正に応じない旨を通知してきたため、実施機関が本件決定を行ったものであるから、本件決定は、手続的にも適正であったと認められる。

以上のことから、本件請求に対し、条例第7条第1項第2号の要件を具備していないとして、非公開の決定を行った実施機関の判断は妥当であると認められる。

3 審査請求人のその他の主張について

審査請求人は、実施機関が、審査請求人に対して、本件請求の補正を求めたことに関連して、本件決定は、手続条例第30条第2項(行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。)及び第31条(申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。)の規定に違反し、無効であると主張するものと解される。

しかしながら、今回、実施機関が補正を求めたのは、条例第7条第6項の規定に基づく措置であって、当該規定に照らしてその手続が適正であったことは、上述したとおりであり、また、審査請求人が補正に応じなかったからと言って、公開請求の手続きにおいて不利益な取扱いを行ったり、審査請求人が補正に応じない旨通知した後に補正の求めを継続した事実は認められないから、この点についての審査請求人の主張はいずれも採用することができない。

4 結論

以上のとおりであるから、本件審査請求には理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

岡村周一、福井逸治、松田聰子、岩本洋子

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