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更新日:2010年9月6日

ページID:20854

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大阪府に寄せられた宅地建物取引に関する相談事例 No.9(公開終了)

  • 【契約1】
    契約当事者の関係図【契約1】
  • 【契約2】
    当事者の関係図【契約2】

経過

買主Aは、宅建業者Xの媒介で、Bを売主とする土地付建物の購入を検討しており、物件の内覧の際にBと顔を合わせていた。その後、売買契約を締結することになったが、契約当日(H20年5月27日)に見せられた売買契約書では、売主はBではなく、見ず知らずのCと記載されていた(契約(2))。媒介業者Xに理由を尋ねると、「CはBの親戚で、Bの税金対策のため売買契約書上だけCが売主となっている。」との説明を受けた。契約締結の翌日、AとBが偶然道端で会い(二者の住所地が近いため)、挨拶を交わした際に、実はBが、媒介業者Xから「Aとは条件が合わず、取引が成立しなかった。」との説明を受け、その後媒介業者XからCを紹介されて、昨日(H20年5月27日)、Cと売買契約(契約(1))を締結していたことが判明した。このためAは、売主について媒介業者Xから事実と異なる説明を受けた等として、府に苦情を申し立てた。

判明した違反事実

府がXから事情を聴いたところ、以下のとおり違反事実が確認された。

  1. 重要事項説明書に次の不備がある。業法第35条第1項違反
    • (1)契約の解除に関する事項(同項第8号)
      • 売買契約書に規定されている、引渡前の滅失等による契約の解除について記載していない。
    • (2)損害賠償額の予定又は違約金に関する事項(同項第9号)
      • 損害賠償額の予定又は違約金について、売買契約書で規定されている内容と異なる記載をした。
  2. 売買契約書(いわゆる「37条書面」)に記載不備がある。業法第37条第1項違反
    • 手付解除について、実際には当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄し、売主はその倍額を償還して契約を解除することができる旨を重要事項説明書に記載しており、そのことについて売主と買主との間で合意があったにもかかわらず、そのことを記載していない。(同項第7号)
  3. Cが無免許であると知りながら、Cを契約当事者とする契約(1)、(2)の売買契約の媒介をした。
    また、Xは、契約(1)、(2)以外にもCを契約当事者とする売買契約の媒介を行っていたことが判明した(契約(3))。業法第65条第2項第5号該当
    • 【契約3】
      当事者の関係図【契約3】

    なお、府がXから契約(1)と(2)の関係について事情を聴いたところ、「CがB所有の物件を購入したいという話は以前からあり、Aが購入したいという話と平行して進めていた。Bに対しては、C以外にAという購入希望者がいるということを伝えていた。CはAより先に額を示して、購入意思を明確にしていたので、Cとの取引がまとまり、Bの都合により5月27日に売買契約を締結することになった。その後、AとCの売買契約の話が出てきて取引がまとまった。契約締結が同じ日になったのは偶然である。」と述べた。

違反が発生した事情(又は理由)

1及び2について

Xは、ミスを認めた。

3について

Xは、「Cは契約(1)の取引当初から転売を想定していた。Cが宅建業者でないことは知っていたが、Cは転売を専門に行っているわけではないため、Cの転売は宅地建物取引業に当たらないと認識して媒介した。なお、2年ほど前から年1から2回、Cの転売の媒介をしている。」と述べた。
また、契約(2)の売買契約書上、売主(C)と登記簿上の所有者(B)が異なっていることが確認されたため、このことについて買主(A)に説明したのかどうか、府がXに尋ねたところ、Xは、「BとCが売買契約を結んでいるので、所有者でないCが売主になるとAに説明した。」と述べた。

処分等

府は、次のとおり違反事実等を認定し、Xを業務停止処分(14日間)とした。

業法第35条第1項、第37条第1項違反、第65条第2項第5号該当

なお、Cについては、無免許で宅地建物取引業を営んだ疑いにより、府から警察に情報提供した。

本事例のポイント

1 重要事項説明書について

売買契約書で規定する契約の解除に関する事項は、すべて重要事項説明書に記載する必要があります。

  • 契約の解除の内容としては、手付解除、違約解除、ローン解除、引渡前の滅失等による解除、特約で定められている解除条項等がありますが、重要事項説明書への記載漏れがよく見受けられます。記載漏れがないかを確認してください。

2 売買契約書(いわゆる「37条書面」)について

契約解除について、事実と異なる記載をすることは、契約書の不備となります。

  • 契約の解除に関する定めは37条書面に記載すべき事項であり、これについて誤った記載がされた場合は業法第37条に違反することになります。また、契約書は当該契約の内容を表示する文書であり、将来、取引について紛争が生じたときは契約書の約定に基づいて処理されることになりますので、契約書に記載ミスがあるとトラブルの元です。十分に確認をして、正しい内容を記載するようにしてください。なお、重要事項説明書と契約書の内容が異なる場合、重要事項説明書または契約書、いずれかの記載不備が問われることとなります。

3 無免許の者が契約当事者となる複数の売買契約を媒介したことについて

宅地建物取引業の免許を有していない者が、転売等により利益を得る目的で反復継続して売買契約を締結する行為は、業法が禁じる無免許営業に当たるおそれがあり、そのような取引の媒介を行った媒介業者は行政処分を受ける可能性があります。

  • 宅地建物取引業の免許(以下「宅建免許」といいます。)を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない、とされています(業法第12条第1項)。そして、「宅地建物取引業」とは、宅地建物の売買、交換及び売買・交換・貸借の代理・媒介をする行為で「業として行う」もの、とされています(業法第2条第2号)。ここでいう「業として行う」とは、宅地建物取引を社会通念上事業の遂行とみなすことができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は、(1)取引の対象者、(2)取引の目的、(3)取引対象物件の取得経緯、(4)取引の態様、(5)取引の反復継続性、を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする、とされています。【(1)から(5)の詳細は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(外部サイトへリンク)をご参照ください。】

    本件について問題となるのは、まず、売買契約(1)から(3)については「(5)取引の反復継続性」です。Cが2回以上にわたり売買の取引を行ったことは、反復継続的に取引を行ったものとして、事業性が高いと判断されます。次に、契約(1)及び(2)について問題となるのは、「(2)取引の目的」及び「(3)取引対象物件の取得経緯」です。Cが同一物件を購入する契約(契約(1))と売却する契約(契約(2))を同じ日に締結していること、また、結果的にCは転売により利益を得ていることから、Cは当該物件を転売するために取得し、利益を目的として一連の取引を行ったことがうかがわれますので、事業性が高いと判断されます。

    宅建免許を有していない者が、宅地建物取引業に当たる可能性の高い行為をしようとしている場合には、業者として、業法違反に当たるおそれがあることを指摘した上で、宅建免許を取得するか、そのような取引は行わないよう助言すべきです。少なくとも、そのような取引に関与することは厳に慎むべきです。もし、そのような取引を業者が媒介した場合、業に関し不正不当行為を行ったものとして、行政処分を受ける可能性があります。

    なお、Xは「Cは転売を専門に行っているわけではないため、Cの転売は宅地建物取引業に当たらないと認識していた」と述べていますが、Cが転売を専門に行っているか否かにかかわらず、上記のとおりCの行為は業法に抵触します。媒介業者Xは、業者として業法の認識が甘いといわざるを得ません。

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