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更新日:2010年9月6日

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大阪府に寄せられた宅地建物取引に関する相談事例 No.7

売買契約締結
関係図

経過

買主Aは、宅建業者Yの媒介で、宅建業者Xを売主とする土地付建物(売買価格6,400万円)を収益目的で購入した。しかし、重要事項説明書に添付された資料に最寄り駅からの所要時間が「徒歩12分」と記載されているが、実際には徒歩20分程度かかることが判った。また、当該物件にはシロアリの被害があることが判ったが、そのような説明は受けていないとして、Aは府に苦情を申し立てた。

判明した違反事実

府がX及びYに事情を聴いたところ、以下のとおり違反事実が確認された。

  1. 重要事項説明書に次の不備がある。業法第35条第1項違反
    • (1)代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的(同項第7号)
      • 固定資産税等精算金の具体的な額を記載していない。
    • (2)契約の解除に関する事項(同項第8号)
      • 売買契約書に規定されている、引渡し前の滅失、契約違反及び融資利用の特約による解除について記載していない。
    • (3)売主業者の宅地建物取引士の記名押印がない。(Xのみ)
  2. 売買契約書(いわゆる「37条書面」)に次の不備がある。
    • (1)手付解除について、実際には売主及び買主は相手方が契約の履行に着手するまでは契約を解除することができるにもかかわらず、手付解除の期限を設定した。(なお、重要事項説明書では、手付解除の期限についての記載はない。)業法第37条第1項違反
    • (2)売主業者の宅地建物取引士の記名押印がない。業法第37条第3項違反(Xのみ)
  3. 売買契約書に規定された瑕疵担保責任に係る特約について、瑕疵担保責任の範囲については建物本体の雨漏り及び給排水の不良と限定する旨、及び瑕疵担保責任の期間については本物件引渡後3ヶ月間とする旨規定している。業法第40条第1項違反
  4. 重要事項説明書の添付書類において、交通等の利便について、最寄りの駅から徒歩12分と記載されているが、実際には徒歩20分程度の所要時間がある。取引の公正を害する行為

違反が発生した事情(又は理由)

1及び2について

X及びYは、重要事項説明書と売買契約書の記載不備について、ミスを認めた。また、Xは、重要事項説明書と売買契約書に宅地建物取引士の記名押印がないことについて、ミスを認めた。

3について

Xは、「仲介業者が作成した契約書の内容を追認した。」と述べ、ミスを認めた。

4について

Xは、最寄駅からの所要時間について、「既存の資料で確認したと思う。」と述べた。
Yは、「売主業者が賃借人募集用に作成した物件資料を重要事項説明書に添付したが、この物件資料に誤りがあった。」と述べ、ミスを認めた。また、「重要事項説明書の時点で、買主はこの誤りをすでに知っており、それでも賃借人の部屋付けをすることは可能であると説明し、納得して契約してもらった。」と述べた。
なお、その後、AとXは、Xがシロアリ被害の工事代金を含めた解決金をAに支払うことで合意した。

処分等

府は、次のとおり違反事実等を認定し、X及びYを文書勧告とした。

  • (X及びY)業法第35条第1項、第37条第1項違反及び取引の公正を害する行為(交通等の利便について事実と異なる説明をしたこと)
  • (Xのみ)業法第37条第3項及び第40条第1項違反
  • (Yのみ)取引の公正を害する行為(第40条第1項に違反する取引の媒介業務を行ったこと)

本事例のポイント

1 重要事項説明書について

  • (1)代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的として、固定資産税等精算金の額を記載する必要があります。
    • 「実費」「日割精算」といった記載では不十分です。額が確定していない場合は、例えば「概算」等として目安となる具体的な額を記載してください。また、その他の媒介手数料や所有権移転登記費用など買主が負担すべき費用についても重要事項説明書等の書面に記載して説明するようにしてください。
  • (2)売買契約書で規定する契約の解除に関する事項は、すべて重要事項説明書に記載する必要があります。
    • 契約の解除の内容としては、手付解除、違約解除、ローン解除、引渡前の滅失等による解除、特約で定められている解除条項等がありますが、重要事項説明書への記載漏れがよく見受けられます。記載漏れがないかを確認してください。
  • (3)取引に媒介、売主、販売代理として関わったすべての業者の宅地建物取引士が記名押印する必要があります。
    • 媒介業者の宅地建物取引士が記名押印しているからといって、売主業者の宅地建物取引士の記名押印が不要というわけではありません。

2 売買契約書(いわゆる「37条書面」)について

  • (1)契約解除の条件について、事実と異なる記載をすることは、契約書の不備となります。
    • 契約書に事実と異なる記載をすることは、契約書の不備となるとともに、トラブルの元です。十分に確認をして、記載するようにしてください。なお、重要事項説明書と契約書の内容が異なる場合、重要事項説明書または契約書、いずれかの記載不備が問われることとなります。
  • (2)取引に媒介、売主、販売代理として関わったすべての業者が宅地建物取引士に記名押印させる必要があります。
    • 媒介業者の宅地建物取引士が記名押印しているからといって、売主業者の宅地建物取引士の記名押印が不要というわけではありません。

3 瑕疵担保責任に係る特約の制限について

業者が自ら売主となる売買契約において、瑕疵担保責任を負う期間を「物件引渡しの日から2年以上」とする特約を除き、民法の規定より買主に不利となる特約をすることはできません。

  • このような特約をした場合、その特約は無効となり、民法の規定が適用されることとなります。また、瑕疵担保責任を負う期間だけでなく、瑕疵担保責任を負う範囲を狭めることも、民法の規定より買主に不利となる特約となり、無効となります。たとえば、シロアリの被害については瑕疵担保責任を負わない等の特約を設けることは、瑕疵担保責任を負う範囲を狭める特約となります。

    なお、このような業法に違反する特約をした場合、売主業者が違反を問われるだけでなく、その媒介をした業者も指導監督の対象となります。

4 交通の利便に関し事実と異なる説明をしたことについて

売主業者及び仲介業者は、重要事項説明書に添付する資料の内容に誤りがないか、十分に確認する必要があります。

  • 売主業者及び仲介業者は、物件調査について一定の責任を負う立場にありますが、本件の最寄り駅からの所要時間については、本物件が収益物件であることを考慮すれば、重要な事項となり得るものであり、特に十分な調査をして説明するのが望ましいでしょう。

    本件のように、既存資料の内容について十分に確認をしないまま重要事項説明書に添付し、結果として誤った説明をした場合、売主業者及び仲介業者は、虚偽の説明の責任を問われることになります。既存資料や他社が作成した資料を重要事項説明書の添付資料として用いる場合は、内容に誤りがないか十分に確認をしてください。

参考

契約の判断に影響を及ぼす重要な事項について

  • 調査・説明義務の対象となる「重要な事項」とは、業法第35条で規定されている事項に限りません。交通の利便のほか、建物の形質、物件の現在または将来の利用の制限、環境、売買代金の額等で、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項については、業法第47条に基づく重要な事項に該当する場合があります。買主の判断に重要な影響を及ぼすか否かについては、個々の取引において、買主の取引目的などを勘案して判断されるべきものです。業法第35条で規定されている事項は必要最小限の説明事項ですので、それ以外の事項であっても、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項については、売主業者、仲介業者、及び販売代理業者は、十分に調査し、その結果を買主に説明する必要があります。

    業法第47条に基づく重要な事項であるにもかかわらず、それらの事項について故意に事実を告げず、または事実と異なることを告げた場合は、業法第47条違反が問われるとともに、民事上の責任も問われかねません。トラブルを回避するためにも、これら重要な事項について、事前に十分な調査をしたうえで、口頭だけでなく重要事項説明書等の書面をもって買主に説明するようにしましょう。

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