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更新日:2009年11月5日

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大阪府に寄せられた宅地建物取引に関する相談事例 No.5

売買契約締結
契約当事者の関係図

経過

買主Aは、宅建業者Xの媒介で、宅建業者Zを売主、宅建業者Yを販売代理とする建築条件付土地売買契約(売買価格1,220万円)及び売主業者Zを請負者とする建築工事請負契約(請負工事代金1,260万円)を締結した。Aは契約時に土地売買契約の手付金(20万円)と建築工事請負契約の手付金(10万円)の合計30万円を支払った。その後4月29日に返済計画の不安等からAがXに解約を申し出たところ、Xから違約金を請求されたとしてAは府に苦情を申し立てた。

判明した違反事実

府がX、Y及びZに事情を聴いたところ、以下のとおり違反事実が確認された。

  1. 重要事項説明書に次の記載不備がある。業法第35条第1項違反
    • (1)飲用水の供給のための施設の整備の状況(同項第4号)
      • 代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的の項目で、買主が水道負担金を支払うことが必要である旨記載しているにもかかわらず、飲用水の供給のための施設の整備の特別の負担に関する事項について負担の内容を記載していない。
    • (2)代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的(同項第7号)
      • 固定資産税等精算金について、「日割精算」と記載しただけで、具体的な額を記載していない。
    • (3)契約の解除に関する事項(同項第8号)
      • 売買契約書で規定している危険負担に関する契約の解除について記載していない。
    • (4)金銭の貸借のあっせんの内容(同項第12号)
      • 金融機関名を「公的金融機関」と記載しただけで、具体的に記載していない。
      • 利率並びに保証料の額を記載していない。
    • (5)瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要(同項第13号)
      • 保険を行う機関の名称、保険期間及び保険の対象となる宅地の瑕疵の範囲について記載していない。
    • (6)売主業者Zの宅地建物取引士の記名押印がない。
  2. 売買契約書(いわゆる37条書面)に、売主業者Zの取引主任者の記名押印がない。業法第37条第3項違反
  3. 取引の公正を害する行為
    • (1)重要事項説明書において、請負手付金や請負代金も含めた売買代金を記載してAに説明した。これは、土地売買契約と建築工事請負契約が別個の契約であるにもかかわらず、土地付建物の売買契約であるとAに誤認させるものである。
    • (2)重要事項説明書に建物の請負代金を含めた「売買代金」に基づき算定した、法定限度額を超える媒介手数料を記載してAに説明した。

違反が発生した事情(又は理由)

1について

X、Y及びZは、認識不足又は確認不足による重要事項説明書の記載不備を認めた。Zは記載不備について、重要事項説明書に事前に目を通していたが、販売代理業者Yに任せていて確認不足だったと弁明した。また、Zは、宅地建物取引士の記名押印のない重要事項説明書を交付したことについてミスを認めた。

2について

Zは、売買契約書に宅地建物取引士の記名押印がないことについてミスを認めた。

3(1)について

X、Y及びZは、業法の認識不足によるミスを認めた。

3(2)について

Xは、認識不足により結果的に法定限度額を超える媒介手数料を算定したことについて認めた。また、Y及びZは重要事項説明書の記載内容の確認不足によるミスを認めた。
なお、Aからの解約申出に対し違約金を請求したことについて、X、Y及びZは、Aの希望する間取りに基づいて建築確認を受け、建築工事の着工の準備を進めていたことにより契約の履行の着手に至っていると判断した、と述べた。

処分等

府は、次のとおり違反事実等を認定し、X、Y及びZを文書勧告とした。

  • (X,Y及びZ)業法第35条第1項違反、取引の公正を害する行為(土地売買契約と建築工事請負契約が別個の契約であるにもかかわらず、土地付建物の売買契約であると買主に誤認させるような売買代金等を重要事項説明書に記載して説明したこと、及び、建物の請負代金を含めた「売買代金」に基づき算定した媒介手数料を重要事項説明書に記載して説明したこと)
  • (Zのみ)業法第37条第3項違反

本事例のポイント

1 重要事項説明書について

  • (1)水道や下水道等の施設の整備にあたり、買主が負担金等を支払う必要がある場合、その負担に関する内容を記載する必要があります。
    • 施設の整備予定がある場合には、整備予定時期及び負担金等を記載してください。なお、負担金等の額が明確でない場合は、「未定」である旨を説明してください。
  • (2)代金以外に授受される金銭の額及び授受の目的として、手付金だけでなく、固定資産税等精算金も記載する必要があります。
    • 「実費」「日割精算」といった記載では不十分です。額が確定していない場合は、例えば「概算」等として目安となる額を記載してください。
      また、その他媒介手数料や所有権移転登記費用など買主が負担すべき費用についても重要事項説明書等の書面に記載して説明するようにしてください。
  • (3)契約の解除に関する事項について、契約書に定めがある内容については重要事項説明書に記載する必要があります。
    • 手付解除、違約解除、ローン解除、引渡し前の滅失等による解除、特約で定められている解除条項等、売買契約書で規定されている解除や解約に関する事項は重要事項説明書に記載漏れがないようにしてください。
  • (4)金銭の貸借のあっせんの内容として、融資額、金融機関名、金利、返済方法等あっせんの内容や融資の条件を記載する必要があります。
    • 本事例のように金融機関について「公的金融機関」という記載は適切ではありません。「当社指定金融機関」といった記載がよく見られますが、これも不十分な記載です。あっせんを予定している具体的な金融機関名を記載してください。あっせんを予定している金融機関が複数ある場合には、それらをすべて記載してください。
  • (5)瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要として、措置を講ずる場合は講ずる旨及び保証保険契約の内容を具体的に記載する必要があります。
    • 当該措置を講じない場合は、講じない旨を記載してください。当該措置を講じる場合は、講じる旨及び措置の概要(保険機関の名称、保険期間、保険金額、保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲等)を記載してください。
      また、平成21年10月1日より特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律が施行され、新築住宅を販売する際に、保険への加入または保証金の供託による資力確保措置が売主業者に義務付けられました。この資力確保措置の内容は重要事項説明書に記載して買主に説明する必要があります。
  • (6)取引に媒介、売主、販売代理として関わったすべての業者の宅地建物取引士の記名押印が必要です。
    • 媒介業者の宅地建物取引士が記名押印しているからといって、売主業者の宅地建物取引士の記名押印が不要というわけではありません。
      (1)代金以外に授受される金銭の額及び目的として、固定資産税等の清算金についても重要事項説明書に記載する必要があります。

2 売買契約書(いわゆる「37条書面」)について

取引に媒介、売主、販売代理として関わったすべての業者の宅地建物取引士に記名押印させる必要があります。

  • 媒介業者の宅地建物取引士が記名押印しているからといって、売主業者の宅地建物取引士の記名押印が不要というわけではありません。

3 取引の公正を害する行為について

  • (1)「土地付建物」の契約なのか、「建築条件付土地」の契約なのか、消費者を誤認させることのないように重要事項説明書の作成・交付にあたっては注意する必要があります。
    • 建築条件付土地の重要事項説明書であるにもかかわらず、建物を含めた内容になっているものがよく見られます。建築条件付土地の場合、建物については請負契約を結ぶことになりますので、重要事項説明の対象はあくまで土地のみです。買主が、土地付建物を契約したと誤認するおそれもありますので、建築条件付土地の重要事項説明書において土地と建物の内容を混在させないように注意してください。
      なお、本事例では建築条件付土地売買契約と建物の請負契約が同じ日に締結されていますが、土地売買契約書には建物の請負契約を締結すべき期限が規定されている一方、請負契約が成立しなかった場合の契約解除について規定されていませんでした。このように、建物のプランを十分に練らないまま買主と建物の請負契約を締結することや、建物の請負契約が締結されなかった場合の白紙解除条項のない土地売買契約を締結することは、消費者保護に欠ける取引と言わざるを得ません。このような取引は解約トラブルの元にもなりますので、建物の請負契約を締結するまでに十分な期間を設定し、請負契約が成立しなかった場合の土地売買契約の白紙解除条項を重要事項説明書及び建築条件付土地売買契約書に記載するようにしてください。
  • (2)建築条件付土地売買契約の媒介手数料は、土地の売買代金に基づき算定する必要があります。
    • 建築条件付土地の売買契約であるにもかかわらず、建物の請負代金を含めた「売買代金」に基づき算定した法定上限額を「媒介手数料」とすることは、結果的に媒介手数料の法定上限額オーバーとして業法違反が問われることになります。

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