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淀川水系河川整備計画(案)についての大阪府知事意見
淀川水系河川整備計画(案)についての意見
河川の整備は、防災はもとより、まちづくりや環境など住民生活に大きな影響を与えるものであるので、地域の自治に責任を持つ地方公共団体が共通の課題として取り組むことが重要であることから、上中流域に位置する各府県と協議し、合意した内容や地元市町長からの意見もふまえ意見を申し述べる。
1.大阪府の基本的な考え方
人口・資産が高度に集積している大阪平野は高い堤防で守られており、一度堤防が決壊すれば、壊滅的な被害を生じる可能性を有していることから、現況の安全度を堅持することが必要と考えている。
また、河川は住民生活に欠かせない水の供給源であるとともに、都市域における貴重なオープンスペースともなっている。このため、今後ともこれらの機能を維持しつつ、環境の改善に取り組むことが、住民の豊かな生活享受のために必要である。
更に、淀川水系河川整備計画(案)に示されている事業は、今後膨大な事業費が必要であり、現下の地方財政を大きく圧迫することが予想されるところである。
これらの状況を鑑み、以下の三点を特に配慮されたい。
- 本案に示される河川の整備により大阪府域の治水安全度を低下させない。
- 環境改善のため淀川水系の流水の正常な機能維持及び水質保全に取り組む。
- 今後の整備計画実施にあたって大阪府財政に過度な負担をかけない。
2.治水
淀川本川では、下流側から集中的に河川整備を実施しており、大阪府域では現況で計画規模(概ね200年に一度)の洪水が発生した場合であっても、計画高水位以下で洪水を流下させることが可能となっている。
しかしながら、中上流域は、下流域に比べ治水安全度が低いことから、本案に示されているとおり、下流域の治水安全度に考慮しつつ中上流域の改修に着手し、整備を進めていくことは、妥当と考える。
従って、堤防強化とともに、下流部の流下能力の向上策としての橋梁の改築や洪水調節施設の整備等の優先順位を地域の合意をふまえ明確にしたうえで取り組む必要がある。
また、猪名川流域では、国や関係府県等が連携して河川整備をはじめとした総合的な治水対策に取り組んできたが、現状の治水安全度は依然として低い状況にあり、地域の合意をふまえ優先順位を明確にしたうえで、今後とも整備を進めていく必要がある
- (1)堤防強化
引き続き堤防強化に取り組むとともに、「壊れにくい堤防」、「粘り強い堤防」は治水安全確保の観点から今後とも技術的にも追求すること。 - (2)淀川下流部の橋梁改築
淀川大堰下流には、洪水の流下を阻害している橋梁が複数存在している。事業中の阪神電鉄西大阪線(阪神電鉄なんば線)橋梁の改築事業継続については妥当と考えるが、さらなる治水安全度の向上のために、伝法大橋(R43)、淀川大橋(R2)、阪急電鉄神戸線橋梁の改築についても具体化を図ること。 - (3)高規格堤防
高規格堤防は、治水上有効ではあるが、効果発現に時間がかかること、事業費が膨大であることなどから、今後の事業の進め方について十分協議すること。 - (4)大戸川ダム
大戸川ダムは、一定の治水効果があることは認める。
しかしながら、京都府の技術検討会における評価においても、「大戸川ダムは、中・上流の改修の進捗とその影響を検証しながら、その実施についてさらに検討を行う必要がある」とされており、施策の優先順位を考慮すると、河川整備計画に位置付ける必要はない。
また、大戸川ダム予定地の生活再建に関わる事業や地域としての振興策等については、事業主体である国が引き続きその責務を果たすべきであり、それを強く求めるとともに、その場合において、住民の犠牲も踏まえ、滋賀県、京都府と助け合って事業における責任を果たしていく用意があることを明言する。 - (5)天ヶ瀬ダム再開発
天ヶ瀬ダム再開発は琵琶湖の後期放流のために有用であり、天ヶ瀬ダム再開発については基本的に合意する。 - (6)川上ダム
川上ダムは中小洪水でも木津川、淀川まで全川にわたる水位低減効果を期待できるため、その建設について、環境への配慮を行いつつ早急に整備を図ることに基本的に合意する。ただし、更なるコスト縮減と、負担の平準化を図ること。 - (7)余野川ダム
戦後最大洪水を対象とした場合、余野川ダムを建設する案よりも河川改修のみの案の方が今後必要となる総事業費の比較において経済的であることから、ダムを当面実施しないという本案に基本的に同意する。
また、余野川ダム建設事業は、地元、地権者など関係者の多大な協力のもと進められてきたものであることに鑑み、当面余野川ダム事業が実施されるまでの間、ダム事業と一体のものとして建設を進めてきた「水と緑の健康都市(箕面森町)」の事業に支障を生じさせないための措置を明確にするとともに、関連する地域整備事業の進捗並びに、今後、ダム建設の円滑な着手のためのダム事業用地の維持管理について、その財源措置、執行体制などを含め国が責任をもって対応されることを強く求めるとともに、ダム建設再開の時期についての検討もあわせて行うこと。
更に、利水撤退にともなう負担について、地元市等、関係者の理解を得られるよう十分協議調整されること。 - (8)猪名川銀橋周辺狭窄部
銀橋周辺狭窄部については、平成22年度末完了を目処に国が総合治水対策特定河川事業として進めている川西・池田地区の改修が完了次第、これに応じた部分開削を進めることとしており、その後のさらなる開削については、下流の河川整備の進捗状況に応じて十分調整すること。
3.環境
- (1)淀川大堰などによる水位操作の改善
淀川大堰湛水域の平常時水位をOP+3.0mからOP+2.5mに変更するに当たっては、現在、淀川から取水している施設や大川(旧淀川)への影響が予想されることから、取水施設や大川への影響などを十分協議した上で、施設操作の変更を行うこと。 - (2)河川の水質保全対策
大阪府が管理する一級河川寝屋川の水質については、下水道の整備や河道での水質浄化対策により改善されてきたが、水環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンスII)に掲げた目標達成には至っていない。寝屋川の水質改善効果が見込める淀川から寝屋川への導水を常時行うこと。
また、淀川本川への京都府内下水処理水の流入を分離するとしている流水保全水路については、事業目的、効果、負担の考え方等が不明確であることから事業の見直しを行うこと。 - (3)ダム貯水池等の水質保全対策
ダム貯水池等の水質保全対策については、その効果、工法選定経過を明確にするとともに、関係府県と十分調整したうえで実施すること。 - (4)外来種対策について
外来種対策については、その被害の防止を目的とした特定外来生物法により、厳しく規制がされている。また、同法では、生態系等に係る被害が生じた場合、主務大臣及び国の行政機関の長は、法の規定により防除を行うものとされており、まず法により十分な実効性を上げることが必要と考える。
4.利水
- (1)渇水調整の円滑化
渇水調整にあたっては、これまでの利水者の水源確保努力等が反映されるよう、十分、協議調整をした上で実施すること。 - (2)丹生ダム
丹生ダムについては事業計画や事業費および負担割合も明らかにされていないことから、意見を述べることを留保する。渇水対策の必要性も含め速やかに調査・検討の結果を提示し、関係府県と協議すること。
5.利用
河川敷や水面利用については、現在、地域住民や自治体等が利用していることから、利用者や関係機関の意見も十分聞いて判断すること。
6.その他
- (1)事業費と実施時期
整備計画の実施にあたっては、事業費、整備スケジュールについて十分流域府県民の理解が得られるよう協議調整を図ること。また、利水撤退などの追加費用についても十分協議調整を図ること。 - (2)ダム事業の地域整備に関する新たなルールづくり
ダムのように事業期間が極めて長い事業などについて、その再評価において、地域振興との兼ね合いで判断が難しい状況も発生することから、地域整備との関係を整理して新たなルールを作ること。 - (3)瀬田川洗堰
瀬田川洗堰については、今後も引き続き、下流の安全を前提に操作することを求める。 - (4)新たな協議会の設立
危機管理体制、ハザードマップの作成、ポンプ調整運転等の検討を目的とした「水害に強い地域づくり協議会(仮称)」や「琵琶湖・淀川流域水質管理協議会(仮称)」などの設立については、同様の目的を持つ現行協議会との再編も含め調整を図ること。