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佐野川水系河川整備基本方針
1.河川の総合的な保全と利用に関する基本方針
(1)流域の現状
1.流域の概要
佐野川水系は、泉南郡熊取町久保付近に源を発する大井出川と同熊取町和田付近に源を発する和田川が合流して流下する住吉川と、和泉山脈に連なる雨山(標高312m)付近に源を発する雨山川が、それぞれ熊取町内を北西方向に流れ、JR阪和線下流の泉佐野市と熊取町との市町界付近で合流して佐野川となり、泉佐野市の市街地を北西方向に流下して大阪湾に注ぐ流域面積10.53km2、流路延長約16.1km(うち二級河川指定区間流路延長約5.7km)の二級水系です。
その流域は、人口約9万5千人(平成9年調査)の泉佐野市と約4万1千人(平成9年調査)の熊取町に属し、流域面積の約53%を市街地が占め、田畑が約24%、山林が約20%、流域内に点在するため池などが約3%となっています。なお、住吉川、雨山川合流付近は、檀波羅山風致地区、新家山風致地区に指定されています。
流域の地形は、住吉川、雨山川が流れる熊取町域の南部が和泉山脈に連なる丘陵地となっており、近畿自動車道松原那智勝浦線(阪和自動車道)より佐野川合流点にかけてはなだらかな丘陵地で、河川沿いに形成された段丘に続いて平地となり、大阪湾へと続いています。標高は、丘陵地が概ね300m~100m、平地は概ね80~5mとなっており、佐野川が流れる泉佐野市域では、概ね20~5mの全体的にほぼ平坦な地形となっています。
佐野川流域を含む大阪湾周辺地域は、瀬戸内海型気候区に属し、温暖で雨量も少なく、年平均雨量1,265mm(日根野観測所、昭和53年~平成9年、20年間内7年間欠測除)、年平均気温17℃(熊取町消防本部、平成5年~9年、5年間)となっています。
2.自然環境
佐野川流域内の動物は、雨山から奥山雨山自然公園にかけての地域でイタチ、テン、タヌキなどのほ乳類が確認されています。鳥類は、オシドリ、アカハジロ、コアジサシ、ブッポウソウが流域中上流部付近で確認されています。昆虫類では、雨山川でヘイケボタル、住吉川支川の和田川でゲンジボタルが確認されています。また、魚類では、ギンブナ、ウナギなどの生息が佐野川下流の深みのある淵で確認されています。
一方、植生については、流域上流部の標高の高い丘陵地北部にスギ、ヒノキ-サワラ植林、南部にクロマツ植林、全体にモチツツジ-アカマツ群集が分布し、河道内の州にはヨシ、シバなどが多く見られます。また、川沿いの所々にイチョウ、サクラ、クスノキ、マツなどの樹木が生育しています。
3.交通
流域内の道路交通網としては、国道26号、国道170号、近畿自動車道松原那智勝浦線のように都市間を連絡する広域幹線道路や、市域内の生活圏を相互に結ぶ府道泉佐野熊取線などの地域幹線道路が縦横に走っています。また、鉄道としては、南海本線及びJR阪和線が河川を横過しています。
4.歴史・文化
佐野川流域内には、縄文時代から古墳時代にわたる遺跡をはじめ、熊野街道、奈加美神社、重要文化財降井家書院、重要文化財中家住宅、重要文化財来迎寺などの歴史・文化財があります。
5.産業
流域内の産業としては、農業と繊維産業、特に綿スフ織物やタオル生産が盛んなことで知られますが、近年、アジア諸国からの市場参入により競争力が低下し、工場数や従業者数、製造出荷額などは減少しています。
6.河川特性
川幅は、佐野川が30~15m程度、住吉川と雨山川が20~5m程度です。また、一部区間を除いて各河川とも著しく蛇行しており、佐野川水系の特徴の一つとなっています。
河川形態は、佐野川橋下流右岸及び昭平橋下流左岸では築堤河道となっていますが、それ以外の区間及び両支川では掘込河道となっています。
護岸形状は、佐野川昭平橋下流ではブロック積とコンクリート擁壁で整備されており、昭平橋上流及び住吉川、雨山川ではブロック積または石積となっています。
河川横断形は、河川沿いの市街化が進んでいることからほぼ全区間において5分勾配の単断面形状です。
現況河床勾配は、佐野川1/770~1/220程度、住吉川1/420~1/110程度、雨山川1/610~1/80程度です。
河床材料は、各河川とも主に砂、砂利などであり、蛇行部の湾曲部内側には砂州が形成され、ヨシ、シバなどの植生がみられます。また、大小数々の瀬と淵が多く形成されています。
沿川地域は、住吉川・雨山川合流点付近の風致地区や雨山川平見橋下流の一部を除いて市街地が形成されています。ただし、河川沿いには、住吉神社のクスノキのほか庭木が河川に張り出している箇所もあり、市街化された周辺地域のなかで緑の景観を成しています。
7.治水事業の沿革
佐野川水系の洪水被害発生状況としては、昭和27年7月集中豪雨以降、幾度かの洪水による被害が発生しており、近年においては昭和57年8月台風10号による豪雨や平成元年9月台風22号による豪雨でも被害が発生しました。
治水事業の沿革は、昭和27年7月洪水を契機に災害復旧事業に着手したのをはじめとして、昭和55年に下瓦屋町地点における計画高水流量を200m3/sとし、築堤や護岸整備を行っています。未改修の区間は、佐野川においては国道26号から中庄橋間、住吉川においては向田橋から上流、雨山川においてはJR阪和線から上流となっています。
また、下流部の昭平橋から河口までの区間においては、昭和25年のジェーン台風を契機として高潮対策事業を実施し、現在は伊勢湾台風級の超大型台風の通過による高潮にも対応できる防潮堤が完成しています。
8.水質
佐野川の水質汚濁に係る環境基準は、散歩、散策などにおいて不快感を生じない限度であるE類型に指定されています。環境基準点である昭平橋地点では、平成8年度以降改善傾向にあり、平成10年度のBOD(生物化学的酸素要求量)75%値が8.2mg/lで、環境基準(E類型10mg/l)を満足しています。
支川の住吉川及び雨山川では、環境基準の類型指定は行われていませんが、平成10年度のBOD年平均値は住吉川向田橋地点15mg/l、雨山川の佐野川合流直前地点で18mg/lであり、昭和60年度以降は概ね横這いの傾向にあります。
9.河川利用
佐野川水系の各河川においては、河川空間の利用については特筆すべき利用はされていません。水利用については、農業用水として耕地へのかんがいに一部利用されています。
(2)流域の将来像
泉佐野市及び熊取町の総合計画などでは、佐野川水系の上流域は緑などの自然を活かした街づくり、中下流域は良好な都市地域としての街づくりを行うものとされています。
(3)河川の総合的な保全と利用に関する基本方針
河川の総合的な保全と利用に関する基本方針としては、河川改修の実施状況、水害発生の状況、流域の市街化の進展及び河川環境の保全を考慮し、流域全体の保水機能の維持を含めた治水対策を進め、治水安全度の向上を図ります。
また、流域の社会・経済情勢の発展に即応するよう大阪府新総合計画、第3次泉佐野市総合計画、熊取町新総合計画などを考慮し、地元市町との協力のもと計画的なまちづくりとの連携を図るとともに、河川利用の現状、既存の水利施設などの機能の維持に十分配慮して、水源から河口までを含めて調整を行い、河川の総合的な保全と利用を図ります。
1.洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項
洪水による災害の発生の防止又は軽減に関しては、既に本水系の流域及び氾濫区域の都市化が進んでいることから、治水計画は、将来的には概ね100年に1度程度発生する規模の大雨(1時間あたり79.3ミリ)が降った場合に発生する洪水を安全に流下させるものとします。ただし、整備にあたっては段階的に進めるものとします。
高潮による災害発生の防止又は軽減に関しては、伊勢湾台風級の超大型台風の通過による高潮にも対応できる防潮堤が完成しており、今後もその機能の維持に努めていきます。
さらに、計画規模を上回る洪水や高潮及び整備途上における施設能力以上の洪水などによる被害の軽減を図るために、地元市町、地域住民などの協力のもと流域全体の保水機能が維持できるよう努めます。また、地元市町とともに降雨時における雨量、水位などの情報提供、ハザードマップの作成を行うなどして住民の安全な避難行動や地域防災活動を支援します。
2.河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項並びに河川環境の整備と保全に関する事項
河川水の利用に関しては、今後とも適正な水利用が図られるよう努めます。
また、河川水質や河川景観及び動植物の生息・生育環境に十分配慮し、地域住民及び河川利用者の協力のもと現状の流況(流水の状況や流量など)の維持に努めます。
さらに、流域が持つ歴史・文化・景観や流域の多様な自然環境に配慮し、水と緑のネットワークの構築を図ります。また、流域上流部では周辺の自然環境に配慮した川づくり、中下流部では河川が都市部の貴重な「オープンスペース」や「自然空間」として役 割を果たせるよう親水性や景観に配慮した川づくりを行うなど、各地域の特徴を活かした、人々が川と触れ親しむことのできる緑豊かで潤いのある水辺空間の整備を行います。
また、瀬、淵の保全などにより動植物の多様な生息・生育環境の整備と保全を図っていくとともに、河川沿いにある樹木の保護など地域住民の協力のもと河川環境の保全に努めるものとします。
3.河川の維持管理に関する事項
河川の維持管理に関しては、災害発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全の観点から、河川の有する多面的機能を十分に発揮させるよう適切に行うものとします。さらに、日頃から川に親しんでもらうため河川に関する情報を流域の住民に提供するとともに、河川愛護思想の普及に努めていきます。
2.河川の整備の基本となるべき事項
(1)基本高水並びにその河道及び洪水調節施設への配分に関する事項
基本高水は、100年に1度程度発生する規模の降雨(1時間あたり79.3ミリ)で発生する洪水を対象とし、そのピーク流量を基準地点「昭平橋」において200m3/sとし、この全量を河道に配分します。
河川名 | 基準地点名 | 基本高水の ピーク流量 |
洪水調節施設に による調節流量 |
河道への 配分流量 |
---|---|---|---|---|
佐野川 | 昭平橋 (河川区域下流端から0.5km) |
200 | ― | 200 |
(2)主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は、住吉川の野添橋地点において100m3/s、雨山川の滑橋地点において90m3/sとし、その下流で両支川及び佐野川本川への直接の流入量をあわせ、佐野川昭平橋地点において200m3/sとします。
図-1 主要な地点における計画高水流量配分図(単位:m3/s)
(3)主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
主要な地点の概ねの計画高水位及び計画横断形に係る概ねの川幅は、次表の通りです。
また、河川工事の実施にあたっては、河道の横断形は現況の形状を尊重したうえで必要に応じて拡幅などを行い、適正な河川環境の保全に配慮したものとします。
河川名 | 地点名 | 河川区域下流端 からの距離 |
計画高水位 | 川幅 (m) |
備考 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(O.P.+m) | (T.P.+m) | 堤防高 (O.P.+m) |
背後地盤高 (O.P.+m) |
|||||
左岸 | 右岸 | |||||||
佐野川 | 昭平橋 | 0.5km | 4.97 | 3.67 | 28 | - | 6.1 | 6.1 |
住吉川 | 野添橋 | 合流点から0.35km | 20.20 | 18.90 | 14 | - | 21.6 | 23.7 |
雨山川 | 滑 橋 | 合流点から 0.3km |
19.37 | 18.07 | 13 | - | 21.1 | 21.2 |
計画高潮位:O.P.+4.60m
(※) O.P.:大阪湾基準標
T.P.:東京湾中等潮位
(4)主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
佐野川水系の既得水利としては、農業用水としての慣行水利があります。
流水の正常な機能を維持するため必要な流量は、流況や取水実態、動植物の生息・生育環境の状況等から総合的判断の上、今後、決定するものとします。
佐野川水系流域図