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東川水系河川整備計画
第1章 河川整備計画の目標に関する事項
第1節 流域及び河川の概要
東川水系は、大阪府最南端の大阪府泉南郡岬町に位置し、流域面積の3%が下流低地部の市街地及び耕作地、残る97%が山地となっており、大阪府内の河川の中でも極めて自然環境に恵まれた二級水系である。その源は、東川が東畑地区,西川が西畑地区より発しており、各々の川は北方向に流下して河口より約300m上流の地点で合流し、東川として大阪湾に注いでいる。東川水系の流域面積は14.73km2、総流路延長は約9.5km(うち二級河川指定区間流路延長約4.3km)である。
(地形・地質)
流域が位置する岬町は、山地あるいは丘陵地が海岸にせまる地形で、町域の80%を山林が占めている。
流域の地質は、大部分が和泉層群の砂岩泥岩の互層からなり、未固結堆積物が河川沿いや北部低地に見られる。
(気候)
東川流域を含む大阪湾周辺地域は、瀬戸内海型気候区に属し、降水量は四季を通じて少なく、気温は温暖で夏期の海陸風が顕著である。
(自然環境)
東川水系の自然環境は良好に保たれており、多くの動植物の生息・生育空間となっている。流域の大部分を占める山林は、クロマツ植林、モチツツジ-アカマツ群集及び自然林で構成されている。水質は良好で、アユの遡上が確認されるなど多数の魚類の生息が確認されている。また、カワセミの生息が確認されており、魚食性鳥類にとっても良好な生態系が保たれている。さらに、ゲンジボタルなどが多数生息し、岬町では「ホタルの里」として、ゲンジボタルの幼虫のエサであるカワニナの放流など住民に親しまれる環境づくりが行われている。
(歴史・文化)
流域の歴史は古く、平安時代852年に創建したと伝えられ国指定重要文化財を保有する興善寺、ならびに産土神社がある。
(土地利用)
東川の下流低地部は市街化区域に指定されており、市街地は、古くから形成されてきた集落地と、新たに開発された住宅地及び多奈川発電所や工場などによって構成されている。
(交通)
交通網としては、流域の北端を主要地方道岬加太港線が東西に貫き、東川沿いに府道木ノ本岬線が通っている。
(人口・産業)
流域が属する岬町の人口は約2万人(平成12年4月)であり、わずかながら減少傾向となっている。
流域内の主な産業は、農業と漁業が中心である。近傍には発電所や工場等もあり、その従業者も多い。
(河川状況等)
河川現状としては、下流部は市街地を流下する築堤された区間で、特に河口部は高潮対策のためのコンクリート擁壁の防潮堤となっている。中流部は、狭い山あいに作られた田畑が両岸に見られる掘込河道となって流下しており、上流部になると、山が河川の両岸に迫ってくる谷あいの地形が続く状況となっている。
護岸形式は、河口から東川・西川合流点付近まではブロック積とコンクリート擁壁で整備されており、その他の区間はほとんどがコンクリート擁壁、ブロック積、石積となっているものの、一部自然護岸の箇所も残っている。
河川横断形は、1割から5分勾配の単断面の形状となっている。
川幅は、東川では河口から西川合流点までは50から30m程度、西川合流点から石砂坪橋までは20から15m程度、それより上流部は15から5m程度である。西川は20から5m程度である。流域上流部は、一部山付となっている箇所もあり、両河川ともに山あいから河口まで、短い流路延長で流下していることが東川水系の河川の特徴の一つとなっている。
現況河床勾配は東川が1/140から1/90程度、西川が1/145から1/60程度で急勾配となっている。
河床材料は、両河川とも砂や砂利であり、上流部には一部露岩している箇所も見られる。
東川水系の水質汚濁に係る環境基準は、アユなどの魚類が住める非常に清浄なA類型に全域指定されている。東川は、一軒屋橋に環境基準点があり、生活環境項目のうち河川の代表的な汚濁指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)75%値は、経年的にも良好な値で推移しており、平成10年度の河川水質測定結果においても、1.2mg/lと環境基準を達成している。西川は、恒屋橋に環境基準点があり、BOD75%値は平成10年度測定結果0.9mg/lで、東川と同様、環境基準を達成している。
第2節 河川整備の現状と課題
1.治水の現状と課題
東川流域では、過去において集中豪雨等により大きな水害を経験しているが、その被害記録をまとめたものは少なく、現存している主な記録は下記の2回の水害である。
- (昭和27年7月水害)
昭和27年7月10日の朝から11日にかけて、泉南地方を襲った集中豪雨による大規模な水害が発生し、西川の一本松橋付近の堤防が約50mほど決壊、家屋が押し流され水田にも甚大な被害を及ぼした。 - (平成元年水害)
平成元年9月2日から3日にかけ、台風22号による豪雨により、東川の中流・下流域で浸水被害等の水害が発生した。枌谷川合流点及び犬飼集落付近の護岸の崩壊、水田の浸水、また多奈川地区においては床上浸水2戸、床下浸水19戸の被害となった。
東川水系では昭和27年7月水害を契機に堤防及び護岸の復旧工事が始まり、以後、災害が発生する度に改修が行われて現在の護岸形状となった。
現況河川の整備状況は、東川では、河口から上流約800mまでの区間は、概ね100年に一度の確率で発生する大雨(1時間当たり79.3ミリ)が降った場合に発生する洪水に対処できる規模で整備が完成しており、さらにそれより上流から枌谷川合流点付近までは1時間当たり50ミリの大雨が降った場合に発生する洪水に対処できる規模で改修済、もしくは現況断面で流下能力がある河道となっている。
また、西川では、全区間1時間当たり50ミリ(50mm/hr)の大雨が降った場合に発生する洪水に対処できる河道となっている。
なお,河口部においては、伊勢湾台風級の超大型台風の通過による高潮にも対応できる防潮堤が完成している。
しかしながら、東川の枌谷川合流点付近から犬飼谷水路合流点付近の区間については50mm/hr降雨で発生する洪水に対して流下能力不足となっており、この区間の治水対策が急がれている。
2.河川利用および河川環境の現状と課題
河川水の利用としては、農業用水として耕地へのかんがいに一部利用されている。
岬町の古くからのまちの中心である多奈川地区を流れる東川の存在は、まちに落ち着きと潤いを与えているが、市街地内では川沿いに家屋等が多く建ち並んでいることから、身近に水と親しめる憩いの場がほとんどないのが現状である。今後の長期的な目標として、沿川に水と親しめる空間を確保していくことが必要である。
また、東川水系では、アユ等の多くの魚類が確認されているとともに、上流部ではゲンジボタルなどが多数生息している。このため、東川水系の動植物の生息・生育環境などの河川環境を今後とも保全していく必要がある。
第3節 流域の将来像
下流域の市街地は都市的機能を集約的に配置する区域、中流域は都市的機能と緑地的土地利用が調和した住宅地と農用地が豊かな緑の中に点在する区域、上流域は基本的に山林を保全し一部林間レクリエーション利用できる区域として、岬町の総合計画などで予定されている。
第4節 河川整備計画の目標
1.洪水、高潮等による被害の発生の防止又は軽減に関する目標
東川水系では、将来的には概ね100年に一度発生する大雨(1時間当たり79.3ミリ)が降った場合に発生する洪水を安全に流下させるものとしているが、当面の目標として、1時間当たり50ミリの大雨が降った場合に発生する洪水を防御するものとし、整備対象区間(枌谷川合流点付近から犬飼谷水路合流点付近)においては、整備目標流量は、図-1に示すように55m3/sとする。
図-1 整備目標流量の流量配分図
整備途上段階における施設能力以上の洪水や整備計画目標流量を上回るような洪水の発生に対しては、岬町、地域住民などと密接な連絡や協力を保ち、岬町とともに降雨時における雨量、水位などの情報提供、ハザードマップの作成を行うなどして住民の安全な避難行動や地域防災活動を支援し、被害の軽減に努める。
2.河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標及び河川環境の整備と保全に関する目標
流水の正常な機能の維持に関しては、今後、取水等の水利用実態の把握を行い、適正かつ効率的な水利用が図られるように努めるとともに、河川の水質や景観及び動植物の生息・生育環境に十分配慮して、確保すべき流量を設定し、流域住民及び河川利用者等の協力のもと、流域の持つ保水機能の保全などにより、その流量の確保に努める。
さらに、良好な河川環境の維持に努めるとともに,周辺の豊かな自然環境に配慮した水辺空間の整備と保全に努める。
特に,整備対象区間にはゲンジボタルなどが多数生息していることから,ホタル類の生息に配慮した河川整備を行う。
3.河川整備計画の整備対象区間
本計画の整備の対象とする河川及び区間は、東川水系東川の1時間当たり50ミリの大雨が降った場合に発生する洪水に対処できていない枌谷川合流点付近から犬飼谷水路合流点付近の区間とする。
整備対象区間を図-2に示す。
図-2 整備対象区間(東川:枌谷川合流点付近から犬飼谷水路合流点付近)
4.河川整備計画の対象期間
本計画は、「東川水系河川整備基本方針」に即した河川整備の当面の目標であり、その対象期間は概ね10年とする。
5.本計画の運用
本計画は大阪府における現時点での当面の河川整備水準の目標達成に配慮し、かつ流域の社会状況、自然状況、河道状況に基づき策定されたものであり、策定後にこれらの状況の変化や新たな知見・技術の進歩等の変化によっては、適宜、河川整備計画の見直しを行うものである。
第2章 河川の整備の実施に関する事項
第1節 河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される河川管理施設の機能の概要
河川整備は、整備対象区間において整備目標流量55m3/sを安全に流下させることを目的に、現況河道の拡幅と掘削等を行うものとし、実施にあたっては、瀬や淵をはじめ河川環境の整備と保全に努める。
- (1)整備対象区間は、枌谷川合流点付近から犬飼谷水路合流点付近とし、現況河道の拡幅、掘削等を実施する。
- (2)護岸法勾配は、周辺自然環境との連続性を考慮して、図-3に示すように標準的には左岸を2割勾配、右岸を5分勾配とし、護岸材料は生物の生育環境や景観に配慮したタイプとする。ただし、ゲンジボタルなどの生息が確認されている区間においては現況の護岸を保存する工夫を行い、河川に沿って道路が設置されている区間においては護岸をそのまま活かした河川整備を実施する。
図-3 河川整備の標準横断図
第2節 河川の維持の目的、種類及び施行の場所
河川の維持の目的、種類及び施行の場所としては、堤防、護岸等の河川管理施設の機能を十分に発揮させることを目的として、機能の低下防止や所定の流下能力を確保するため、必要に応じて河川管理施設等の補修、点検などを行うとともに、必要な箇所については、局所的に堆積した土砂の除去等の河川の維持を行うものとする。
さらに、河川の形状の変化に対しても十分注意を払うとともに、河川水辺の国勢調査等のモニタリングを行い、瀬や淵をはじめとする河川環境の維持に努める。
第3章 その他河川整備を総合的に行うための必要な事項
その他河川整備を総合的に行うための必要な事項としては、岬町とともに降雨時における雨量や水位などの情報提供、避難経路や避難地等を示したハザードマップの作成を行うなどして住民の安全な避難行動や地域防災活動を支援する。
さらに、将来へ河川環境の良好な姿を引き継いでいくため、河川に関するあらゆる情報提供等によって、地域と緊密な関係を保つとともに、河川愛護思想の普及に努める。
東川整備計画(案)付図
東川整備対象区間
東川平面図
東川主要地点横断図