印刷

更新日:2009年7月1日

ページID:22188

ここから本文です。

佐野川水系河川整備計画

第1章 河川整備計画の目標に関する事項

第1節 流域及び河川の概要

佐野川水系は、泉南郡熊取町久保付近に源を発する大井出川と同熊取町和田付近に源を発する和田川が合流して流下する住吉川と、和泉山脈に連なる雨山(標高312m)に源を発する雨山川が、それぞれ熊取町内を北西方向に流れ、JR阪和線下流の泉佐野市と熊取町との市町界付近で合流して佐野川となり、泉佐野市の市街地を北西方向に流下して大阪湾に注ぐ流域面積10.53Km2、総流路延長約16.1Km(うち二級河川指定区間流路延長約5.7Km)の二級水系である。

(地形・地質)

流域内の地形は、住吉川、雨山川が流れる熊取町域の南部が和泉山脈に連なる丘陵地となっており、近畿自動車道松原那智勝浦線(阪和自動車道)より佐野川合流点にかけてはなだらかな丘陵地で、河川沿いに形成された段丘に続いて平地となり、大阪湾へと続いている。標高は、上流部の丘陵地が概ね300mから100m、平地部では80から20mとなっており、佐野川が流れる泉佐野市域では20から5mの全体的にほぼ平坦な地形となっている。
流域の地質は、水系上流域の山地部が流紋岩質火砕岩・泥岩・砂岩からなる泉南層群、これに続いて住吉川上流域では両雲母花崗岩、花崗閃緑岩等からなる領家複合岩類、住吉川中流域及び雨山川の流域では粘土・砂・礫からなる大阪層群及び相当層が分布しており、さらに、住吉川下流域及び佐野川では粘土・砂・礫からなる段丘堆積物となっており、河口部に向かって粘土・砂・礫からなる沖積層が続いている。

(気候)

佐野川流域を含む大阪湾周辺地域は瀬戸内海型気候区に属し、温暖で雨量も少なく、年平均降雨量1,265mm(日根野観測所;昭和53年~平成9年、20年間のうち、7年間欠測除く)、年平均気温17 ℃(熊取町消防本部;平成5年~9年、5年間)となっている。

(自然環境)

流域内の動物は、哺乳類では上流部でイタチ、テン、タヌキなど、鳥類では中・上流部でアカハジロ、コアジサシ、ブッポウソウ、オシドリなど、昆虫類では住吉川支川の和田川でゲンジボタル、雨山川でヘイケボタルなどの生息が確認されている。魚類としては、ギンブナ、ウナギなどが佐野川下流の深みのある淵で確認されている。
流域内の植生は、流域上流部の標高の高い丘陵地北部にスギ、ヒノキ-サワラ植林、南部にクロマツ植林、全体にモチツツジ-アカマツ群集が分布している。また、北部の丘陵地一帯にミカンの果樹園地域がみられる。河道内では、洲にヨシ、シバなどが多く見られ、また、川沿いの所々にはイチョウ、サクラ、クスノキ、マツなどの樹木が生育しているが、貴重種はみられない。

(歴史・文化)

流域内には、縄文時代から古墳時代にわたる数多くの遺跡を始め、国指定の重要文化財である降井家書院、中家住宅、来迎寺本殿のほか、大阪府指定の有形文化財である奈加美神社本殿などの文化財施設があり、古道として名高い熊野街道が通過している。

(土地利用)

流域内の土地利用は、流域面積の約53%を市街地が占め、田畑が約24%、丘陵地が約20%、その他流域内に点在するため池などが約3%となっている。流域面積の約60%が市街化区域に設定されているが、住吉川と雨山川の合流点付近は壇波羅山風致地区、新家山風致地区に指定されている。

(交通)

流域内には、広域幹線道路である国道26号、国道170号、近畿自動車道松原那智勝浦線、地域幹線道路である府道泉佐野熊取線などの道路が縦横に走っているほか、南海本線やJR阪和線が河川を横過している。

(人口・産業)

流域は人口約9万8千人(平成12年4月)の泉佐野市と約4万3千人(平成12年4月)の熊取町に属し、人口は両市町ともに微増ながらも毎年、増加傾向である。
流域内の主産業は、農業と繊維産業、特に綿スフ織物やタオル生産であるが、近年、アジア諸国からの市場参入により競争力が低下し、工場数や従業者数、製造出荷額など減少傾向にある。

(河川状況等)

佐野川水系は、一部の区間を除いて各河川とも著しく蛇行しているのが特徴の一つであり、川幅は佐野川が30から15m、住吉川と雨山川が20から5m程度である。
河川形態は、佐野川橋下流右岸及び昭平橋下流左岸では築堤河道となっているが、それ以外の区間及び両支川は掘込河道である。
護岸形状は、佐野川昭平橋下流ではブロック積とコンクリート擁壁で整備されており、それ以外の区間では支川も含めてブロック積または石積となっている。
河川横断形は、河川沿いの市街化が進んでいることからほぼ全区間にわたって5分勾配の単断面形状であり、ブロック積または石積となっている。
現況河道の河床勾配は、佐野川では1/770から1/220程度、住吉川では1/420から1/110程度、雨山川では1/610から1/80程度である。
河床材料は、各河川とも主に砂、砂利等であり、蛇行部の湾曲部内側には砂洲が形成され、ヨシ、シバなどの植生がみられる。また、大小数々の瀬と淵が多く形成されている。
一方、佐野川の水質汚濁に係る環境基準は、散歩、散策等において不快感を生じない限度であるE類型に指定されている。環境基準点である昭平橋地点での水質は、平成8年度以降改善傾向がみられ、平成10年度のBOD(生物化学的酸素要求量)75%値は8.2mg/lであり、環境基準(E類型10mg/l)を達成している。
支川の住吉川及び雨山川では、環境基準の類型指定は行われていない。平成10年度のBOD年平均値は、住吉川向田橋地点で15mg/l、雨山川の佐野川合流直前地点で18mg/lであり、近年は概ね横這いの傾向である。

第2節 河川整備の現状と課題

1.治水の現状と課題

佐野川水系では、昭和27年7月集中豪雨、昭和36年9月第二室戸台風、さらに昭和39年9月台風20号によって甚大な被害を受け、近年においても昭和57年8月(台風10号)、平成元年8月(台風17号)及び同年9月(台風22号)と相次いで浸水被害が発生した。
佐野川水系において最大の浸水被害であった昭和27年7月集中豪雨による降雨量は、近傍の上之郷観測所で日雨量373.3mm/日、時間雨量54.6mm/hrを記録した。同洪水による浸水被害は、泉佐野市及び熊取町で全壊家屋66棟、床上浸水498戸、床下浸水3,610戸(泉佐野市域のみの数値)に及び、その他公共土木施設等に多大な被害をもたらした。
この昭和27年7月集中豪雨を契機として、災害復旧事業に着手したのが佐野川の改修事業の始めである。昭和47年には下瓦屋町地点における計画高水流量を200m3/sと定め、住吉川、雨山川の合流点から河口までの区間について、築堤、護岸等を施工するとともに、支川の住吉川、雨山川について築堤、掘削等を施工した。また、河口部については高潮堤防の築造に着手した。
その後、佐野川では、昭和54年度に局部改良事業として南海下流落差工から佐野川橋下流(延長L=260m)まで、支川住吉川では、昭和54年度に小規模河川改修事業として佐野川合流点から万福橋(延長L=1,100m)まで、支川雨山川では、昭和55年度に局部改良事業として滑橋から竜谷橋上流(延長L=230m)の区間で改修事業が実施された。
また、下流部の昭平橋から河口までの区間は、高潮対策事業によって伊勢湾台風級の超大型台風の通過による高潮にも対応できる防潮堤が完成している。現状における河川の整備状況は、佐野川では、高潮区間である河口から昭平橋までの区間が概ね100年に一度発生する大雨(1時間当たり79.3ミリ)が降った場合に発生する洪水に対処できる規模で完成しており、昭平橋から国道26号及び中庄橋上流の区間では1時間当たり50ミリ(50mm/hr)の大雨が降った場合に発生する洪水に対処できる規模で改修済、もしくは現況断面で流下能力がある河道である。支川の住吉川では佐野川合流点から向田橋の区間、雨山川では佐野川合流点~JR阪和線下流の区間が前述で述べた50mm/hr降雨により発生する洪水に対処できる規模で改修済である。
しかしながら、上記以外の区間においては、50mm/hr降雨により発生する洪水に対して流下能力不足となっており治水対策が急がれている。

2.河川利用及び河川環境の現状と課題

河川水の利用としては、農業用水として耕地へのかんがいに一部利用されている。
佐野川水系におけるこれまでの河川改修は、主としてコンクリートブロック護岸が施工されており画一的な河川景観を呈している。また河川沿いには特筆すべき名勝地や眺望の良い景観地点は見られず、河川の空間利用もあまりなされていない。
このようなことから、佐野川水系では河川が都市部の貴重な「オープンスペース」や「自然空間」として役割を果たせるよう親水性や景観に配慮した整備が求められている。

第3節 流域の将来像

佐野川水系内の泉佐野市や熊取町の総合計画などでは、佐野川流域の上流部は緑などの自然を生かした街づくり、中・下流部は良好な都市地域としての街づくりを行うものとされている。

第4節 河川整備計画の目標

1. 洪水,高潮等による被害の発生の防止又は軽減に関する目標

佐野川水系では、将来的には概ね100年に一度発生する大雨(1時間当たり79.3ミリ)が降った場合に発生する洪水を安全に流下させるものとしているが、当面の目標として、1時間当たり50ミリの大雨が降った場合に発生する洪水を防御するものとし、整備対象区間(国道26号上流から中庄橋下流)においては、整備目標流量は、図-1に示すように130m3/sとする。
整備目標流量の流量配分図
図-1 整備目標流量の流量配分図

整備途上段階における施設能力以上の洪水や整備目標流量を上回るような洪水の発生に対しては、地元市町、地域住民などと密接な連絡や協力を保ち、地元市町とともに降雨時における雨量、水位などの情報提供、ハザードマップの作成を行うなどして住民の安全な避難行動や地域防災活動を支援し、被害の軽減に努める。

2.河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標及び河川環境の整備と保全に関する目標

流水の正常な機能の維持に関しては、今後、取水等の水利用実態の把握を行い、適正かつ効率的な水利用が図られるように努めるとともに、河川の水質や景観及び動植物の生息・生育環境に十分配慮して、確保すべき流量を設定し、流域住民及び河川利用者等の協力のもと、流域の持つ保水機能の保全などにより、その流量の確保に努める。
さらに、河川が都市部の貴重な「オープンスペース」や「自然空間」として役割を果たせるよう親水性や景観に配慮し、関係機関や地域住民等との協力のもと、人々に親しまれる川となるよう緑豊かで潤いのある水辺空間の整備に努める。

3.河川整備計画の整備対象区間

本計画の整備の対象とする河川及び区間は、佐野川水系佐野川の1時間当たり50ミリの大雨が降った場合に発生する洪水に対処できていない国道26号上流から中庄橋下流の区間とする。
整備対象区間を図-2に示す。
整備対象区間
図-2 整備対象区間(佐野川:国道26号上流から中庄橋下流)

4.河川整備計画の対象期間

本計画は、「佐野川水系河川整備基本方針」に即した河川整備の当面の目標であり、その対象期間は概ね10年とする。

5.本計画の適用

本計画は大阪府における現時点での当面の河川整備水準の目標達成に配慮し、かつ流域の社会状況、自然状況、河道状況に基づき策定されたものであり、策定後にこれらの状況の変化や新たな知見・技術の進歩等の変化によっては、適宜、河川整備計画の見直しを行うものである。

第2章 河川の整備の実施に関する事項

第1節 河川工事の目的,種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により設置される河川管理施設の機能の概要

河川整備は、整備対象区間において整備目標流量130m3/sを安全に流下させることを目的に、現況河道の拡幅と掘削等を行うものとし、実施にあたっては、瀬や淵をはじめ河川環境の整備と保全に努める。

  • (1)整備対象区間は、国道26号上流から中庄橋下流とし、現況河道の拡幅,掘削等のほか、現況河道が著しく屈曲している区間は捷水路(ショートカット)を施工する。
    • 現況河道の拡幅、掘削区間 約 480m
    • 捷水路(ショートカット)区間 約 100m
      (他 現河川環境整備区間 約 220m)
  • (2)護岸法勾配は、整備対象区間の沿川が民家密集地であることから、図-3に示すように5分勾配を標準とし、護岸材料は生物の生育環境や景観に配慮したタイプとする。また、背後地に余裕のある区間については、花壇や緑地などのコミュニティースペースの整備や、現況植生の復旧をを行う。
  • (3)整備対象区間においては、山出橋架替及び橋梁新設を実施する。

河川整備の標準横断図
図-3 河川整備の標準横断図

第2節 河川の維持の目的,種類及び施行の場所

河川の維持の目的,種類及び施行の場所としては、堤防、護岸等の河川管理施設の機能を十分に発揮させることを目的として、機能の低下防止や所定の流下能力を確保するため、必要に応じて河川管理施設等の補修,点検などを行うとともに、必要な箇所については、局所的に堆積した土砂の除去等の河川の維持を行うものとする。
さらに、河川の形状の変化に対しても十分注意を払うとともに、河川水辺の国勢調査等のモニタリングを行い、瀬や淵をはじめとする河川環境の維持に努める。

第3章 その他河川整備を総合的に行うための必要な事項

その他河川整備を総合的に行うための必要な事項としては、地元市町とともに降雨時における雨量や水位などの情報提供、避難経路や避難地等を示したハザードマップの作成を行うなどして住民の安全な避難行動や地域防災活動を支援する。
さらに、将来へ河川環境の良好な姿を引き継いでいくため、河川に関するあらゆる情報提供等によって、地域と緊密な関係を保つとともに、河川愛護思想の普及に努める。

佐野川整備計画(案)付図
整備対象区間平面図1
整備対象区間平面図2
整備対象区間主要地点横断図

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?