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泉州のため池
久米田池(岸和田市)
ため池について
ため池とは、降水量が少なく、流域の大きな河川に恵まれない地域などで、農業用水を確保するために水を貯え取水ができるよう、人工的に造成された池のことです。
歴史
今から2,000年以上前、日本に中国から米作りの技術が伝わりました。稲の栽培にはたくさんの水が必要なため、雨のたくさん降る地域や川に近い地域でしか栽培できませんでした。
そこで、作られたものが「ため池」です。ため池は、水を貯えて必要な時にその水を使うことができ、稲の栽培を全国へ広めました。
現在もため池は利用されており、農業以外にも大きな役割を果たしています。
仕組み
整備されたため池は「200年に一度降る」と言われる大雨にも耐えることができるほど頑丈にできています。
大雨が降ったときに大量の水が貯まると、ため池の堤防に作られた「余水吐」という施設を通って適度に水が流れるため、ため池の水が溢れるのを防ぐことができます。
ため池の水は、池の底から抜かれて田畑に送られています。ため池から田畑に水を送る管を「樋」といいます。
役割
雨が一度にたくさん降った時に、いったんため池に水を貯え、下流地域に大量の水が流れ込まないようにし、洪水や土砂流出等の災害を防ぐ役割があります。
また、ため池の水は時間をかけて地面の下に染み込み、地下水や川の水の量を安定させる機能をもっています。
さらに、ため池は夏期は周辺の気温を下げ、冬期は周囲の気温を上げるといった気象緩和効果があります。
生物
ため池にはホザキノフサモやヨシ等の水草が生え、水中にはゾウリムシやミジンコ等の小さいプランクトン、それらを食べるメダカやモツゴ等の小魚がいます。
小魚を食べるカエルやヤゴ、さらにはサギ類やカイツブリ等の水鳥が利用し、多くの生物が生きるのに欠かせない環境です。
泉州ため池群は、日本固有種を含め、希少な野生動植物が生息・生育し、種の多様性が高い地域として、大阪府の「生物多様性ホットスポット」Bランクに選定されています。
利用
ため池は農業用水として田畑に水を供給するだけでなく、防火用水や上水道の水源としても利用されています。
そして、ため池やその周辺地域の歴史や文化、環境の保全について学んだり、実際に活動を体験できる場所でもあります。
さらに泉州ではカワチブナ(ヘラブナ)の養魚池として利用されているため池も数多く存在します。
魅力
ため池は市民が水辺に親しむ空間であり、周辺から景観を眺めたり、散歩、ランニング、野鳥観察など、思い思いの楽しみ方をすることができます。また、祭りや行事が催される場所でもあります。
周辺地域でコミュニティが形成され、市民がため池周辺の清掃活動や植栽の管理、イベントを主催することで、コミュニティ内外での交流の場にもなります。
課題
多くのため池は、古くに作られたため、老朽化が進んでおり暴風や大雨等でため池の決壊や破損につながる恐れがあります。
また、ため池の所有者や管理者が不明確かつ複雑となっていることや、ため池の管理組織の弱体化により日常の維持管理に支障をきたすことも懸念されています。
さらに、ため池に不法投棄されたごみや油が、ため池の環境や景観の破壊につながっています。
そのうえ、海や川とは異なり、ため池の水は循環しづらいため、水が汚れてしまい、さらには、農業用水としての役割も果たすことができなくなり、地域住民に被害が出てしまいます。
取り組み
老朽化が進んだため池の改修を順次進めており、さらに日頃から地域住民と共にため池の点検や管理を行っています。
主なため池には、雨量や水位を24時間監視できる「ため池防災テレメータシステム」を取り入れて災害から地域住民の生活を守っています。
令和元年には、所有者、管理者を明らかにし、ため池の適正な管理と保全が行われる体制を整えるために「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が定められました。
また、ため池ハザードマップを作成して、災害状況によっての被害区域や避難の方法を簡易に示し、地域の防災意識の向上を目指しています。
そして、地域の人々と学校が連携して清掃活動を定期的に行っているため池もあります。