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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審第78号)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成14年6月11日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座の選考基準(基準、規定、マニュアル、採点基準を含む)」(以下「本件請求文書」という。)の公開請求をした。
  2. 実施機関は、平成14年6月24日、条例第13条第2項の規定により不存在による非公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、本件請求文書を管理していない理由を次の3のとおり付して異議申立人に通知した。
  3. 本件請求文書を管理していない理由
    公開請求に係る行政文書については、作成または取得していないため、管理していない。
  4. 異議申立人は、平成14年6月28日、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対して異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件処分の取消しと本件請求文書に対応する行政文書の公開(できれば公表)を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

  1. 異議の理由は、次のとおりである。
    • (1)平成14年シルバーアドバイザー養成講座の受講申込者数は、募集人員160人に対して377人であったとのことであるが、選考基準が存在しなければ、受講者を決定する選考作業が物理的に不可能と判断される。
    • (2)選考基準の決定は、平成14年4月1日付け財団法人大阪府地域福祉推進財団との「大阪府老人大学講座及びシルバーアドバイザー養成講座運営委託契約書」第11条による協議事項と判断されるので、この協議決定の内容は大阪府も所持しているものと推定される。
    • (3)選考基準を大阪府が作成又は所持していないとしても、財団法人大阪府地域福祉推進財団は大阪府知事の認可法人であり、大阪府知事は民法第67条の規定により指導監督の権限があり、当法人が作成又は取得した文書について文書公開の請求を受けた場合は、これらの文書の提出を求めて公開すべきものである。
  2. 公費で実施される事業で、募集人員に対して参加申込者が多くなり、選考が必要となった場合は、抽選を原則とし、どうしても選考が必要な場合は、公表された公平な選考基準と選考方法に基づいて行わなければならないものである。
    平成14年度シルバーアドバイザー養成講座の受講案内によると、「定員を超える申込者があった場合は、小論文及び面接審査により受講者を決定します。」と、選考方法は明記されているが、選考基準は明記されていない。
    また、申込資格(受講資格)は、
    • 大阪府内に居住する、平成14年4月1日時点で満60歳以上の方
      (昭和17年4月1日以前に生まれた方)
    • 学習意欲があり、ボランティア活動を実践する意志のある方
    • 開講期間の1年を通じて、週1回月曜日(午前10時~午後3時)の受講可能な方
    となっている。
    したがって、受講者の選考は、申込資格(受講資格)の範囲に限定される。
    しかし、選考基準がなければ、選考を担当する人達の私意で選考が行われることとなり不合理となるから、当然、何らかの選考基準が決められているはずであり、選考にもれた受講申込者に「選考にもれた。」通知をする場合は、「なぜ選考にもれたのか。」本人が理解できるように、選考基準を明記しなければならないものと思われる。
    平成14年シルバーアドバイザー養成講座は、大阪府が実施すべき事業を財団法人大阪府地域福祉推進財団に施設(土地建物)を無償で貸与し、運営資金をも提供して委託した事業であるから、大阪府が「この事業に参加できる者の選考がどのような選考基準で行われているか。」を把握することは、当然のことであり、民法67条の規定に関して「監督している法人の全ての業務にわたって必ず権限行使しなければならない趣旨ではない。」と弁明しているのは筋違いである。委託を受けた財団法人大阪府地域福祉推進財団は、大阪府知事の認可法人であり、登記や寄付行為の確認はできていないが、法人を設立するための資金は、全額もしくは大部分が大阪府から提供され、役員や職員も常勤者の多くが大阪府から出向(又は派遣)させた人であったり、大阪府職員を退職した人を優先採用して、運営されているものと推定される。
    また、大阪府は、財団法人大阪府地域福祉推進財団に対して、民法67条の規定による指導監督の権限を行使する権利と義務を有している。
    これらを総合すると、名称が何であるにせよ、大阪府は「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座の受講者選考基準」を所持していると判断される。
    もし、実施機関(担当部所)が、この事業に参加する人(受講者)が、どのような方法と基準(選考基準)で選考されているかを把握できていなかったとしても、異議申立人の申し入れ(情報公開請求)があった後に、担当部署が法人の業務の実施状況を確認することは、さほど手間のかかることではないはずであり、これをなすことが指導監督の権限の具体的行使であり、早期に問題を解決し、行政効率を高めようとすれば、当然になすべきことと判断される。
  3. 「平成14年シルバーアドバイザー養成講座受講者の決定に当たって、選考方法は一般に公表されているが、選考基準(採点基準)は受講申込者に対しても公表されていないので、どのような選考基準(採点基準)で採点が行われて順位が決定されたのかを、異議申立人を含む受講申込者全員に明らかにしてもらいたい。」というのが異議申立人の本旨であり、行政文書の存在、不存在を争うのが本旨ではない。
  4. 実施機関の提出した弁明書では、選考方法のみが強調されているが、選考基準については何ら触れられていない。
    別途、選考委員に対して選考基準について質問したところ、選考委員から、「選考委員の申し合わせによる採点基準により採点した。」旨の回答を得た。複数の委員が合議すれば、その人たちの私意で選考を行ってもいいことにはならない。
  5. 情報公開請求の後の経過は次のとおりである。
    • (1)平成14年8月5日に大阪府老人総合センター所長から面談要請を受けたので、大阪府老人総合センターに出向いて面談したが、選考方法のみ(公平に選考が行われた。)が強調され、選考基準(採点基準)に関する説明は無く、シルバーアドバイザー養成講座受講者選考要領(受講申込者には公開されていないもの)の交付を受けたが、これも選考方法は示されても、選考基準は示されていなかった。
    • (2)「シルバーアドバイザー養成講座受講者選考要領」に示されていた選考委員等に対して、平成14年8月12日付けの文書で、選考基準の有無を質問したところ、選考委員諸氏から、「選考は選考委員の申し合わせによる選考基準(採点基準)により採点した。」と回答を受けた。
    • (3)財団法人地域福祉推進財団理事長に対して平成14年9月2日付けで、平成14年度シルバーアドバイザー養成講座の「選考委員の申し合わせによる選考基準(採点基準)」の公開を求める情報公開請求を行ったところ、平成14年9月20日付け「不存在による非公開決定通知書」と平成14年9月20日付け「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座の選考委員の申し合わせによる選考基準(採点基準)等について」(説明文)の送付があった。
    • (4)「選考委員の申し合わせによる選考基準(採点基準)」は、「a 本養成講座の趣旨や題名に沿った内容で記述されているか。b 記述内容にボランティア活動に対する意欲等が伺えるか。を重点として選考委員が点をつける。」とあり、まったく具体性のない選考基準であり、選考委員の私意により、「不公平極まる選考」が行われたことが明白になった。
    • (5)異議申立人が平成14年度シルバーアドバイザー養成講座の受講申込に当たって提出した小論文及び面接担当者に対する説明は、選考委員の申し合わせによる選考基準にも十分合致しており、「点数が低かった。」とする選考結果は、「なぜ点数が低かったのか。」異議申立人には理解できず、また、受講申込者の誰にも理解できないものであり、選考委員の私意による「不公平極まる選考。」が行われたことを証明したものであり、速やかに、情報公開請求とは別途実施機関に提出している審査請求(原処分の取消と受講参加を求めるもの)に対する裁決を行い、原処分の取消しと受講参加を求めるものである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 シルバーアドバイザー養成講座運営業務について

本件請求文書は、平成14年度シルバーアドバイザー養成講座(以下「養成講座」という。)の選考基準に関するものであるため、まず、養成講座運営業務について説明する。

(1)養成講座の概要について

養成講座運営業務については、平成14年4月1日付け「大阪府老人大学講座及びシルバーアドバイザー養成講座運営業務委託契約書」(以下「委託契約書」という。)に基づいて実施機関が財団法人大阪府地域福祉推進財団(以下「財団」という。)に委託している。委託契約書においては、第1条第3項で「講座運営業務には、受講者の募集及び決定、修了者の決定及びシルバーアドバイザーの認定にかかる事務を含むものとする。また、業務の取扱いについては、『シルバーアドバイザー養成講座実施要綱』(以下「要綱」という。)の定めるところによるものとする。」としている。

そして、要綱では、養成講座の目的として「高齢者が長年にわたって培ってきた貴重な知識、経験や技術を地域の中で活かしながら地域福祉活動を推進する人材を養成する。」(第1条)とし、大阪府立老人総合センターで平成14年5月から平成15年3月までの間、週1回開催する(第2条、第3条)ことと定めている。また、対象者、講座内容及び定員は以下のとおりである。(第4条、第5条)

対象者

大阪府内に居住する満60歳以上の者(平成14年4月1日現在)で、学習意欲があり、地域福祉活動を実践する意思のある者とする。ただし、以下の者を除く。

  • a 過去に本講座を修了した者。
  • b 当該年度に大阪府老人大学講座を受講する者。
  • c 講座修了後に、ボランティア活動情報として市町村の福祉関係機関あてに修了者情報を提供することに承諾できない者。
講座内容及び定員

基礎課程(全受講者共通)と、それぞれ定員が40名である下記の専門コース(受講申込時に選択)を実施する。

  • 国際交流活動コース
  • 世代間交流活動コース
  • 福祉ボランティアコース
  • 地域活動コーディネーターコース

また、講座の終了後は、年間受講回数の概ね8割以上の出席数で修了を認定し、修了証書を授与するとともに、大阪府内に在住して一定の地域福祉活動をボランティアとして実践し、また引き続き実践する意思のある者をシルバーアドバイザーとして認定し、認定証書及び認定章を付与することとしている。(第7条、第8条)

(2)財団について

養成講座運営業務の委託先である財団は、府民各界各層の参画のもと、高齢者や障害者等の生きがいづくりや社会参加の促進を図るとともに、要援護者のニーズの増大、多様化に適切に対応し府民のサービス選択の幅を拡大することにより、府民が生涯を通じて健康でかつ生きがいをもって暮らせる明るく活力のある福祉社会を実現することを目的に、大阪府をはじめ、市町村、関係機関・団体、そして府民が一体となって新しい福祉社会を実現するため、行政と民間のコーディネーター「公民の福祉の総合基地」として、平成元年12月26日に実施機関の認可を受けて、設立された財団法人であり、実施機関とは独立した別の人格を有する団体である。

なお、財団においては「財団法人大阪府地域福祉推進財団情報公開規程」を定め、平成13年4月1日から、財団が管理する文書についての情報公開制度を実施している。

(3)受講者の決定方法について

上記(1)で述べたとおり、委託契約書において、養成講座運営業務には受講者の募集及び決定に係る事務を含むこととされていることから、受講者の募集及び決定に係る事務は財団において行っている。

財団が作成し一般に配付している「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座受講案内」(以下、「受講案内」という。)には、受講者の決定と通知について次の内容が記載されている。

受講者の決定と結果通知

専攻コース別に定員数までを受講者とします。各コースで定員を超える申込者があった場合は、小論文及び面接審査により決定します。結果については、受付時に提出いただいた返信用封筒で、4月下旬頃に申込の方全員に通知します。

このうち、小論文については、受講案内の「提出書類」の項目の中に「小論文(専用原稿用紙使用)申込書添付の専用原稿用紙に、課題(テーマ)について900字以内で文章にまとめてください。」と記載があり、面接審査については受験案内の「受付期間・場所(持参のみ)」の項目の中に「大阪府立老人総合センター(3階)シルバーアドバイザー養成講座係で面接の上、受け付けします。」と記載がある。

そして、平成14年度の申込において、全てのコースで定員を超える申込者があったため、平成14年4月18日に「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座受講者選考委員会」(以下、「選考委員会」という。)が開催され、選考委員会において、各コース毎に小論文及び面接審査の高得点順に並べた申込者名簿等の資料をもとに受講者が決定された。なお、選考委員会は、事務局を財団に置き、財団職員3名及び実施機関の職員1名から構成されている。

また、養成講座の選考結果については、「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座受講者選考会の結果について(報告)」(平成14年4月19日付け大地老第7号)(以下「選考委員会結果報告」という。)により、財団理事兼老人総合センター所長から大阪府健康福祉部高齢介護室長あてに報告されている。

2 本件請求文書に対応する行政文書が存在しないことについて

条例第2条第1項は、「行政文書とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド(略)並びに電磁的記録(略)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているものをいう。(略)」と規定している。そこで、以下では、「公開請求に対応する行政文書は、作成または取得していないため、管理していない。」ことを、順次説明する。

(1)厚生労働省から本件請求文書に対応する行政文書を取得していないことについて

養成講座運営事務は、厚生労働省の助成対象事務であるが、厚生労働省老健局長から各都道府県知事等あての「介護予防・生活支援事業の実施について」(平成13年5月25日付け老初第213号)等、養成講座に係るこれまでの厚生労働省からの通知において、養成講座の受講者選考基準に関する記述は存在しないものであり、実施機関は本件請求文書に対応する行政文書を取得していない。

(2)実施機関が本件請求文書に対応する行政文書を作成していないことについて

養成講座は、昭和63年度以降毎年度実施している事業であるが、昭和63年度から平成11年度までの間は、財団の自主事業として実施してきており、その運営及び受講者の決定等についても財団で行っていたものである。平成12年度には、国庫補助制度の変更に伴い、事業形態をそれまでの補助事業から、実施機関の委託事業に変更しているが、運営業務の内容等に実質的な変更はなく、受講者の選考及び決定についても、従前と同様、財団で実施するものとし、実施機関では、本件請求文書に対応するような受講者選考基準を定めることなく現在に至っている。これは、受講者の選考及び決定事務を含め、養成講座の実施に当たっては、講座運営に係る実績とノウハウが必要不可欠であるところ、財団が高齢者のいきがいづくりや社会活動の振興を図ることを目的に設置された団体であり、これまで本事業を自主事業として円滑に実施してきたことから、特段、実施機関として、本件請求文書に対応するような受講者選考基準を設けるまでもなく財団の実績とノウハウを活用することが適当であったためである。

なお、財団と実施機関の間で、受講者選考基準に関する協議・照会・相談等もなかったことから、これらに係る文書も作成していない。

(3)財団から本件請求文書に対応する行政文書を取得していないことについて

上記1(3)で述べたとおり、財団において行った養成講座参加者の選考及び決定事務に関しては、概ね、「ア 財団が受講申込者に小論文の提出を求め面接を実施したこと」、「イ 財団が選考委員会を開催したこと」及び「ウ 選考結果を財団から実施機関に提出したこと」の各段階を踏んでいる。そこで、これらにおいて、実施機関が本件請求文書に対応する行政文書を財団から取得していないことについて説明する。

ア 財団が受講申込者に小論文の提出を求め面接を実施したこと

財団は、養成講座受講の申込に当たって、受講申込者から小論文を提出させるとともに、面接審査を実施しているが、この事務は、先に述べたとおり、財団が実施する事務であり、財団と実施機関の間で、特段、受講者選考基準に関する協議・照会・相談等もなかったことから、実施機関が財団から本件請求文書に対応する行政文書を取得したことはない。

イ 財団が選考委員会を開催したこと

財団は、上記アで述べた小論文及び面接の評価結果得点を合計して受講申込者個人別の得点を算出し、各コース毎に高得点順に並べた受講申込者名簿を作成した。そして、平成14年4月18日に大阪府立老人総合センター内で開催された選考委員会において、当該受講申込者名簿、受講申込受付状況及び受講者選考要領などの資料を配付した上で選考を行い、受講者を決定したものである。

この選考委員会の委員の中には実施機関の職員が含まれており、選考委員会において配付された資料のうち、受講申込者名簿は財団が当日回収し、それ以外の資料は当該職員が持ち帰り保管している。実施機関の職員が持ち帰り保管している資料のうち受講者選考要領については、選考委員会の委員役職名とともに選考方法等が記載されているが、本件処分に先立って本件請求者に当該文書の記載内容を説明して確認したところ、当該文書は請求内容に合致しないとのことであったので、本件請求文書に対応する行政文書として特定を行わなかったものである。

なお、選考委員会で配付された他の文書をみても、養成講座受講者選考基準が記載された文書は存在しないことから、本件請求文書に対応する行政文書は取得していない。

ウ 選考結果を財団から実施機関あてに提出したこと

財団は、平成14年4月19日付けで選考委員会結果報告を実施機関あてに提出しているが、同文書は、各コース毎に40名の受講者及び5名の補欠者を決定したことを内容とするかがみ文に、受講者名簿及び受講申込受付状況が添付されているものであり、この中には本件請求文書に対応する行政文書は含まれていない。

(4)異議申立人の主張について

異議申立人は、「選考基準の決定は、委託契約書第11条による協議事項と判断されるので、この協議決定の内容は大阪府も所持しているものと推定される。また、選考基準を実施機関が作成又は所持していないとしても、財団は実施機関の認可法人であり、実施機関は民法67条の規定により指導監督の権限があり、当法人が作成又は取得した文書について文書公開の請求を受けた場合は、これらの文書の提出を求めて公開すべきものである。」と主張している。

委託契約書第11条では、「この契約に定めのない事項又はこの契約に関して疑義が生じたときは甲乙協議の上、これを定めるものとする。」としているが、先に述べたとおり、実施機関においては本件請求に対応するような受講者選考基準は定めておらず、財団と実施機関の間で受講者選考基準に関する協議等も行っていないものである。

また、民法第67条においては、「法人ノ業務ハ主務官庁ノ監督ニ属ス」(第1項)、「主務官庁ハ法人ニ対シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」(第2項)、「主務官庁ハ何時ニテモ職権ヲ以テ法人ノ業務及ヒ財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得」(第3項)としているが、これらは、監督している法人の全ての業務にわたって必ず権限を行使しなければならない趣旨ではないことは明らかである。

これまで、養成講座運営業務が特段の支障もなく実施されている現状において、これらの権限を行使して文書の提出を求めなければならないものではなく、現に財団に対して養成講座の受講者選考基準を提出させていない。

これらのことから、実施機関は本件請求文書に対応する行政文書を取得していない。

3 結論

以上のとおり、公開請求に係る行政文書については作成または取得していないため、管理していない。したがって、本件処分は条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

また、条例においては、不存在による非公開決定に対する不服申立てについても、実施機関は、原則として当審査会に諮問しなければならないこととしている。こうした諮問が行われた場合も、当審査会は、条例第23条に規定する調査権限を適切に行使して調査審議を行い、公正かつ簡易・迅速な救済の実現に努めることとなる。

2 本件請求文書について

(1)シルバーアドバイザー養成講座について

養成講座は、昭和63年度以降毎年度行われている事業であり、平成14年度の養成講座については、委託契約書に基づいて実施機関が財団に委託して実施されているものである。なお、養成講座業務の委託先である財団は、「府民各界各層の参画のもと、高齢者や障害者等の生きがいづくりや社会参加の促進を図るとともに、要援護者のニーズの増大、多様化に適切に対応し府民のサービス選択の幅を拡大することにより、府民が生涯を通じて健康でかつ生きがいをもって暮らせる明るく活力のある福祉社会を実現すること」を目的として平成元年12月26日に設立された財団法人であり、平成13年度末現在で大阪府が基本金の59.2%を出捐している。

当審査会で調査したところ、委託契約書及び要綱において、養成講座について第五の1(1)の記載のとおり定められていることが確認された。

(2)本件請求文書について

当審査会で調査したところ、平成14年度の養成講座の受講者は平成14年4月に決定されるとともに受講申込者に結果が通知されており、これ以外に受講者を選考したことはないことから、本件請求文書は、当該受講者選考における選考基準(基準、規定、マニュアル、採点基準を含む。)であると認められる。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

本件異議申立ては、本件請求文書に対応する行政文書が存在するはずであり、その公開を求めるというものである。そこで、当審査会として本件処分に係る具体的な判断を行うに当たっては、実施機関の説明や提示された資料、異議申立人の主張内容などをもとに、養成講座受講者の選考・決定等の過程について調査し、実施機関が受講者選考に係る基準について記載した文書を作成又は取得したかについて検討した。そして、文書が存在する場合には、当該文書が本件請求の内容に合致する内容のものであるか、また、条例第2条第1項に規定する行政文書に該当するものであるかについて検討することとした。

(1)受講者決定過程と本件請求文書に対応する行政文書について

当審査会において調査したところ、養成講座の受講者が決定されるまでには、概ね次の過程を経ていることが認められた。すなわち、ア「養成講座運営業務に関して実施機関と財団が委託契約を締結したこと」、イ「上記アの委託契約に基づき財団が受講申込者を募集したこと」、ウ「上記イの受講申込に当たって、財団が受講申込者に小論文の提出を求め面接を実施したこと」、エ「財団が養成講座受講者選考委員会を開催したこと」及びオ「財団が実施機関に対して選考結果を報告したこと」である。

ア 養成講座運営業務に関して実施機関と財団が委託契約を締結したことについて

実施機関の説明によると、養成講座は、昭和63年度以降毎年度実施している事業であり、昭和63年度から平成11年度までは、財団の自主事業として、また、平成12年度以降は、国の補助制度の変更に伴い大阪府の委託事業として実施しているというものである。

当審査会で調査したところ、平成14年4月1日付けで「平成14年度大阪府老人大学講座及びシルバーアドバイザー養成講座開催事業委託に係る契約締結及び委託料の支出について(伺い)」が実施機関において起案・決裁され、同日に大阪府と財団の間で委託契約が締結されている。この起案・決裁文書には、表紙に、「契約金額」、「契約期間」、「委託先」、「契約方法」、「契約保証金」、「支出方法」、「支出科目」及び「支出時期」が記載されているとともに、添付書類として「支出負担行為票」、「委託料執行計画」、「財団と随意契約する理由」、「概算払理由書」、「大阪府老人大学講座及びシルバーアドバイザー養成講座運営業務委託契約書(案)」及び当該契約書(案)の添付書類として「委託料内訳書」、「大阪府老人大学講座実施要綱」、「シルバーアドバイザー養成講座実施要綱」が添付されている。これらの文書の中には、「シルバーアドバイザー養成講座実施要綱」において、対象者、定員等に関する記述はあるものの、受講者選考基準に関する記述は存在しないことが認められた。そして、委託契約の締結に関して、これ以外にも受講者選考基準の存在を確認することはできなかった。

イ 委託契約に基づき財団が受講申込者を募集したことについて

実施機関の説明によると、委託業務である養成講座運営業務には受講者の募集及び決定に係る事務を含むことが委託契約書で定められており、受講者の募集及び決定に係る事務は財団において行っているというものである。また、財団は、受講案内を作成し、希望者に配付することにより、講座の案内(目的、開講場所、開催期間・曜日、受講料、講座内容・定員)及び受講申込方法(申込資格(受講資格)、受付期間・場所、提出書類、受講者の決定と結果通知)について周知し、受講申込者の募集を行っているというものである。

当審査会で調査したところ、受講案内は、財団から実施機関に提出されており、実施機関が管理しているものであるが、この中には、申込資格に関する記述とともに、「受講者の決定と結果通知」として、「専攻コース別に定員数まで受講者とします。各コースで定員を超える申込者があった場合は、小論文及び面接審査により決定します。」との記述があるものの、受講者選考基準に関する記述の存在は認められなかった。そして、受講申込者の募集に関して、これ以外にも受講者選考基準の存在を確認することはできなかった。

ウ 財団が受講申込者に論文の提出を求め面接を実施したことについて

実施機関の説明によると、財団は、受講案内に記載のとおり、受講希望者に対して、申込時に「受講申込書」、「ボランティア活動現況書」、「ボランティア活動に活かしたい、または現在活かしている特技等」、「小論文」、「返信用封筒」及び「住所、氏名、年齢を確認できる公的証明書」を大阪府立老人総合センターに持参の上、提出することを求めるとともに、申込を受け付ける際に財団職員2名による面接審査を行ったというものである。

受講申込者から受講申込・受付時に財団に提出されたこれらの文書には、その性質上、受講者選考基準が含まれていないことは明らかである。また、当審査会で調査したところ、面接審査については、面接の実施、評価ともに財団の職員が行っているものであり、当該文書が実施機関に提出され実施機関において存在していることは確認できなかった。さらに、受講申込者に論文の提出を求め面接を実施したことに関して、これ以外にも受講者選考基準の存在を確認することはできなかった。

エ 財団が養成講座受講者選考委員会を開催したことについて
(ア)実施機関の説明内容について

実施機関の説明によると、財団が選考委員会を開催して受講者を決定したことの経過は次のとおりである。

財団において、受講申込者を受け付けたところ、国際交流活動、世代間交流活動、福祉ボランティア、地域活動コーディネーターの各専攻コースのすべてのコースにおいて、申込者が受講定員である40名を上回ったため、小論文及び面接審査により各専攻コースごとに受講者の選考を行うこととした。

このうち、面接審査については、上記ウに記載したとおり、財団職員2名により実施し、評価も当該面接者がそれぞれ別個に行ったものであり、また、小論文については、財団職員3名と実施機関の職員1名から構成された選考委員会の委員4名がそれぞれ別個に評価を行った。

財団の職員が、実施機関の職員である選考委員を訪れ小論文の評価を依頼した際には、「基準点は100点満点で70点とすること」、「今年度からは論文のテーマを設定しているので、そのテーマに沿った内容になっているかを評価すること」、「養成講座事業の趣旨に適合する内容のものであるかを評価すること」及び「記述内容にボランティア活動に対する意欲等がうかがえるかを評価すること」が口頭で伝えられた。

そして、平成14年4月18日に大阪府立老人総合センター内で開催された選考委員会においては、資料として、「次第」、「受講者名簿」、「受講申込受付状況」及び「養成講座受講者選考要領」(以下「選考要領」という。)が配付され、これを基に受講者が決定された。

これらの資料のうち、受講者名簿は、受講申込者ごとの小論文及び面接審査の評価結果等を、これらの合計得点が高い順に記載したものであり、この中には受講者選考基準に関する記述は存在しないものであった。この文書は、選考委員会での受講者選考資料として使用されたものの、当日、選考委員会終了時に財団が各選考委員から回収したことから、選考委員である実施機関の職員はこれを持ち帰っておらず、実施機関において管理していない。

次に、次第、受講申込受付状況及び選考要領は、選考委員である実施機関職員が持ち帰り、実施機関において管理しているものである。このうち、次第及び受講申込者受付状況は、受講者選考基準に関する記述は存在しないものであり、また、選考要領は、実施機関が本件処分に先立って本件請求者に当該文書の内容を説明して確認したところ、請求内容に合致しないとのことであったので、本件請求文書に対応する行政文書として特定しなかったものである。

(イ)審査会において調査した結果について

(ア)で記載した実施機関の説明に関して、当審査会において調査したところ、実施機関において、受講者名簿が存在することを確認することはできなかったが、次第、受講申込受付状況及び選考要領は実施機関において管理していることが認められ、概ね次に示す内容が記載されている文書であることが認められた。

  • a 次第
    とき、ところ、出席者、次第が記載された文書であり、この中には受講者選考基準に関する記述は認められなかった。
  • b 受講申込受付状況
    各選考コース毎に、受講申込受付人数、倍率、平均年齢等を記載した一覧表であり、この中には受講者選考基準に関する記述は認められなかった。
  • c 選考要領
    実施機関は、「本件処分に先立って本件請求者に選考要領の内容を説明して確認したところ、請求内容に合致しないとのことであったので、本件請求文書に対応する行政文書として特定しなかった。」旨主張しているところであり、異議申立人が当審査会に対して提出した文書においても、「財団から、シルバーアドバイザー養成講座受講者選考要領の交付を受けたが、選考方法は示されても選考基準は示されていなかった。」旨、記載されていることからも、選考要領は本件請求文書に対応する行政文書に該当しないことは明らかである。
    なお、当該文書には、「選考委員」及び「選考方法」の表題のもとに、それぞれ概ね次の事項が記載されている。「選考委員」としては、「選考は、あらかじめ規定されている選考委員(4名)による選考委員会を開催し、選考委員による合議によること。」、「事務局は、財団の老人総合センターに置くこと。」等が記載されているとともに、選考委員4名の具体的な所属・役職名が記載されている。また、「選考方法」としては、「受講申込時の提出書類『ボランティア活動現況書』、『ボランティアに活かしたい特技等』を参考に、『小論文』の記述内容を『ボランティア活動実践の資質・意欲』の観点から、1選考委員100点満点(基準点を70点とする)で、4人の選考委員で評価を行うので合計400点満点とする。また、受付時の『面接内容』を評価軸で判断し、面接者1人50点満点(基準点を30点満点とする)で、2人の面接者で評価を行うので合計100点満点とする。」、「審査を点数制(小論文400点満点、面接100点満点、合計500点満点)で行う。」、「選考は、専攻コースごとに、個々の受講申込者について選考委員及び面接者が評価したそれぞれの点数を加算し、高い得点を得たものから順に定員数及び補欠者5名までをピックア抃プすることにより決定することとする。」等が記載されている。
    そして、選考委員会の開催に関して、これらの文書以外にも受講者選考基準の存在を確認することはできなかった。
オ 財団が実施機関に対して選考結果を報告したことについて

実施機関の説明によると、財団は、平成14年4月19日付けで選考委員会の結果報告を実施機関あてに提出し、実施機関は当該文書を取得し、管理しているというものである。

当審査会で調査したところ、実施機関において、財団理事兼老人総合センター所長名で大阪府健康福祉部高齢介護室長あてに提出された、平成14年4月19日付け「平成14年度シルバーアドバイザー養成講座受講者選考会の結果について(報告)」が管理されていることが確認されたが、当該文書は、養成講座受講者が選考委員会で決定されたことを報告するかがみ文に、資料として、各専攻コースごとの受講者(補欠者を含む)名簿及び受講申込受付状況が添付されているのみであり、受講者の選考基準に関する記述は存在しないことが認められた。そして、財団からの選考結果の報告に関して、これ以外にも受講者選考基準の存在を確認することはできなかった。

さらに、上記ア~オの他にも、本件請求文書に対応する行政文書の存在を確認することはできなかった。

(2)本件処分に対する審査会の判断について

ア 実施機関における作成の有無について

上記(1)において述べたとおり、実施機関は、受講者選考事務を含めて、養成講座運営業務を財団に委託しており、実際にも、受講希望者の募集、面接の実施及びその評価、小論文審査の依頼及びその取りまとめ、選考委員会の開催、受講者決定などの一連の事務を財団において行っていることが認められる。

これらの事務を行っている財団に対して、実施機関が、自ら受講者選考基準を作成し指示を与えたか否かについて、実施機関は、「養成講座は、昭和63年度から平成11年度までの間は、財団の自主事業として実施してきており、その運営及び受講者の決定等についても財団で行ってきたものである。平成12年度には、国庫補助制度の変更に伴い、事業形態をそれまでの補助事業から、実施機関の委託事業に変更しているが、運営業務の内容等に実質的な変更はなく、受講者の選考及び決定についても、従前と同様、財団で実施するものとし、実施機関では、本件請求文書に対応するような選考基準を定めることなく現在に至っている。」と主張しており、また、「受講者の選考及び決定事務を含め、養成講座の実施に当たっては、講座運営に係る実績とノウハウが必要不可欠であるところ、財団が高齢者のいきがいづくりや社会活動の振興を図ることを目的に設置された団体であり、これまで本事業を自主事業として円滑に実施してきたことから、特段、実施機関として、本件請求文書に対応するような受講者選考基準を設けるまでもなく財団の実績とノウハウを活用することが適当であったためである。」とも主張している。これらの主張には、特段不自然・不合理な点は認められず、上記(1)で述べたとおり、当審査会で調査した結果においても本件請求文書に対応する行政文書の存在は認められなかったものである。

イ 財団からの取得の有無について

財団は、上記(1)において述べたとおり、受講者選考事務を行うために選考要領を定めており、具体的な受講者の決定は当該選考要領に基づき、財団において行っていることが認められる。そこで、以下では、実施機関が財団から受講者選考基準を取得し、管理しているか否かについて検討する。

異議申立人は、本件請求文書に対応する行政文書について、「通った人と通らなかった人との違いというのはどういうところにあるのか、基準を見ればわかる。」、「三百何名分の文章を冷静に同じ視点で見ていくというようなことは不可能である。少なくとも、こういうことが書いてあれば何点加える、こういうことが書いてなければ何点引くという、そういう基準を決めてやらないと正確な採点はできない。」旨の説明をしている。しかしながら、平成14年度の受講者申込でテーマとして課された小論文題名は「こんな地域社会であってほしい(これからやってみたいボランティア活動)」であり、あらかじめ決まった正解が想定されるようなテーマではなく、一定の内容を必ず記述することが求められるものでもないことから、論文ごとにさまざまな内容があることが推定されるものであり、実施機関の説明にあるように、「基準点は100点満点で70点とすること」、「今年度からは論文のテーマを設定しているので、そのテーマに沿った内容になっているかを評価すること」、「養成講座事業の趣旨に適合する内容のものであるかを評価すること」及び「記述内容にボランティア活動に対する意欲等がうかがえるかを評価すること」程度の抽象的な口頭の申し合わせに基づき、選考委員である実施機関職員が評価を行ったとしても特段不自然・不合理な点は認められない。そして、実施機関の説明によれば、財団は、評価の公正を期すために、小論文の記入者が判別できないように小論文用紙を処理した上で、4人の選考委員が個別に評価したものである。

これらの事情を総合すると、選考委員である実施機関職員が小論文の評価に直接携わっていたということを考慮しても、実施機関の職員が本件請求に対応する行政文書を取得していないことには、特段不自然・不合理な点は認められず、上記(1)で述べたとおり、当審査会で調査した結果においても本件請求文書に対応する行政文書の存在は認められなかったものである。

また、面接については、先に述べたとおり、財団職員が実施し評価も行っているものである。選考委員である実施機関職員も、選考委員会において、評価結果の点数を一覧表の形に整理した受講者名簿に基づき選考を行っているのみであり、個々の評価に携わっているものではないことから、実施機関の職員が当該基準を取得していないことに特段不自然・不合理な点は認められず、上記(1)で述べたとおり、当審査会で調査した結果においても本件請求文書に対応する行政文書の存在は認められなかったものである。

(3)異議申立人の主張について

ア 「選考委員申し合わせによる選考基準(採点基準)」の有無について

異議申立人は、「養成講座受講者選考要領に示されていた選考委員等に対して、選考基準の有無を質問したところ、選考委員申し合わせによる選考基準(採点基準)により採点した。」との回答を得た旨、主張している。

実施機関の説明によれば、本件異議申立てがあった後に、異議申立人から、選考委員である実施機関職員等に対して、文書による質問書の送付があったことから、当該職員は、採点方法等について「選考委員の申し合わせによる採点基準により採点した。」との回答を文書で行ったというものである。また、この回答内容にある「選考委員の申し合わせによる採点基準」の意味するところは、先に記載したとおり、財団の職員が実施機関の職員である選考委員を訪ねて小論文の審査の依頼を行った際に、当該職員に対し口頭で伝えた内容、すなわち、「基準点を70点とすること」、「今年度は、小論文のテーマを設定しているので、そのテーマに沿ったものになっているかを審査すること」、「養成講座の事業の趣旨に適合するものであるかを審査すること」及び「記述内容にボランティア活動に対する意欲等がうかがえるかを評価すること」であり、実施機関は、この内容を記した文書を取得していないというものである。

当審査会で調査したところ、「選考委員の申し合わせによる選考基準(採点基準)」を文書化したものの存在は確認することはできず、これについて特段不自然、不合理な点は認められないことは先に述べたとおりである。

イ 委託契約書、法令に規定する実施機関の権限について

異議申立人は、「選考基準の決定は、委託契約書第11条による協議事項と判断されるので、この協議決定の内容は大阪府も所持しているものと推定される。」、また、「選考基準を実施機関が作成又は所持していないとしても、財団は実施機関の認可法人であり、実施機関は民法67条の規定により指導監督の権限があり、当法人が作成又は取得した文書について文書公開の請求を受けた場合は、これらの文書の提出を求めて公開すべきものである。」と主張している。

しかしながら、条例第6条の規定は、実施機関の管理する行政文書の公開を実施機関に対して請求する権利を認めるものであり、実施機関が財団に対して一般的な監督権限等を有するとしても、その権限を行使して財団から文書を取り寄せて公開決定等を行う義務はない。

4 結論

以上のとおり、本件請求文書に対応する行政文書の存在を確認することはできず、また、これについて実施機関に特段不自然・不合理である点も認められないのであるから、実施機関が行った不存在による非公開決定は妥当である。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり答申する。

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