印刷

更新日:2009年8月5日

ページID:27997

ここから本文です。

大阪府情報公開審査会答申(大公審第74号)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成13年9月25日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「新聞報道された「公立小中学校<問題教員>408人」との府教委調査に関する資料のすべて。その基礎となる資料を含む。(ただし、府教委より情報提供された「大阪府公立小・中学校(大阪市を除く)における指導力不足等教員の実態について」(以下「本件情報提供文書1」という。)及び「小・中学校における指導力不足等教員の実態把握」(以下「本件情報提供文書2」という。)は除く。)」(以下「本件請求文書」という。)について、行政文書公開請求書の担当室・課(所)等の欄に「大阪府教育委員会教職員室教職員人事課(小中学校人事グループ)」と記載した公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 実施機関は、平成13年10月9日、条例第13条第2項の規定により不存在による非公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、本件請求文書を管理していない理由を次の3のとおり付して異議申立人に通知した。
  3. 本件請求文書を管理していない理由
    公開請求に係る行政文書は、作成又は取得していないため、管理していない。
  4. 異議申立人は、平成13年10月17日、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件非公開決定処分の取り消し、及び当該情報の全部公開。(その基礎となる資料を含む)ただし、個人の住所、電話番号、生年月日、個人を識別するための番号・記号、暗証番号、生育歴、学歴、及び本人の了解を得ていない個人(私人・公務執行中以外の公務員)の氏名を除く。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

  1. いかにも大層に「本件情報提供文書1」と実施機関は言っているが、A4版のペラ1枚で、指導力不足等教員の総数とどこにでもありそうな事例の列挙でしかなかったし、「本件情報提供文書2」は異議申立人が執拗に実施機関に要求して、「上司と相談」の上に出た類型の説明注記のない不完全な文書であった。異議申立人の方から「類型の説明」を求めたところ、教職員の資質向上に関する検討委員会の「中間報告」中の「指導力不足等教員の範囲」のコピーがファックスで届いたという体たらくであった。
    こんなもので、「408人の指導力等不足等教員がいた。」と言えるのであろうか。この調査では複合的な事例はないのであろうか。ダブルカウントはないのであろうか。もしダブルカウントがあるなら、実施機関の「正確な調査」では、ほんとうは何人の指導力不足等教員がいたことになるのであろうか。その根拠になる基礎データー(メモ)を「廃棄」したとの弁明であるが、これは違法行為に当たるので、そのような廃棄行為が実施機関によってなされたとは信じることはできない。
  2. このような文書廃棄の行政行為は、行政職員の職務専念義務違反であり、条例の目的に反する。また、「大阪府教育委員会行政文書管理規則」(以下「規則」という。)で、「事務は、原則として文書(図面、写真及びスライド等並びに電磁的記録(情報公開条例第2条第1項に規定する電磁的記録をいう。)を含む。)により処理しなければならない。」(第3条)とされており、また、「意思決定に当たっては文書を作成して行うこと並びに事務及び事業の実績について文書を作成することを原則とする。」(第14条)となっている。この行政文書の廃棄についても廃棄規定(第30条)に従わなければならない。本件行政文書(実施機関の言う「メモ」も含む)は規則の範囲内で存在する行政文書であり、したがって、「メモ」であることを理由に行政文書を取得していないとしたり、あるいは廃棄したとする実施機関の主張はいずれも規則違反になる。
  3. 批判1
    規則第3条及び第14条では、行政事務は原則として文書によるべきことを規定する。そして、行政職員は規則に従って事務を行う義務を負うのであるから、行政上の実態調査もまた文書による照会と文書による回答という形式で行われなければならない。例外的に軽微な事案については文書を作成しないことも認められるが(第14条第2項)、本件は、弁明書によれば軽微な事案には当らないから、原則に従い文書により行われるべき事務にあたる。
    とすれば、実施機関が市町村に照会した文書の控え、及び回答文書が存在しなければならず、弁明書のとおり聞き取り調査によったとすれば、かかる行為は規則に違反する。
    よって、聞き取り調査によったから文書が存在しないとする実施機関の主張は失当である。
  4. 批判2
    仮に、実施機関の弁明のとおり指導力不足等教員の実態調査が規則に違反して、聞き取り調査によって行われたとしても、それによって作成されたメモは実施機関の職員が職務上作成し、組織的に用いるものとして管理すべきものであるから、規則第3条第1項にいう行政文書にあたり、規則により保管管理すべきものである。
    それゆえ、当該メモは保管管理されている文書であり、実施機関主張のとおり当該メモを廃棄したとすれば規則に違反する違法がある。
    よって、当該メモは廃棄したので存在しないとする実施機関の主張は失当である。
  5. 批判3
    条例により住民の知る権利が保障され、その権利が文書管理に依存する以上、規則に違反した文書廃棄及び不作成は住民の知る権利を侵害する違法な行為及び文書作成義務があるにもかかわらず作成しなかった不作為と言うべきである。
    また、公務員はその職務上内部規則を遵守する義務があり、その違反は地方公務員法「職務に専念する義務」(第35条)に違反し、違法となる。さらに、住民の信頼を裏切るから信義則「権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス」(民法第1条第2項)にも違反する。
  6. 以上の観点から、本件処分は違法であり、その取消しを求めるものである。よって、実施機関の「指導力不足等教員調査」に関わるすべての文書の公開を求めるものである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 本件行政文書が不存在であることについて

(1)都道府県教育委員会と市町村教育委員会の役割について

異議申立人が公開を求めているのは、公立小・中学校における指導力不足等教員に関し実施機関が行った調査に関する文書であるため、まず、公立小・中学校教職員に対して都道府県教育委員会及び市町村教育委員会が果たすべき役割について、それぞれ説明する。

ア 都道府県教育委員会の役割について

地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)第37条第1項は、「市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定する職員(以下「府費負担教職員」という。)の任命権は、都道府県委員会に属する。」と規定し、また、同法第38条第1項は、「都道府県委員会は、市町村委員会の内申をまって、府費負担教職員の任免その他の進退を行うものとする。」と規定している。

すなわち、都道府県教育委員会は任命権者として、法令等の規定に基づき府費負担教職員の採用・昇任・降任・転任・休職・免職・懲戒などの人事権を行使するのであるが、任命権の行使に際しては、学校の管理者であり、府費負担教職員の服務監督者である市町村委員会の意見を反映させるため、その内申を待つことが求められるのである。

一方、地教行法第43条第4項は、「都道府県委員会は、府費負担教職員の任免その他の進退を適切に行うため、市町村委員会の行う府費負担教職員の服務の監督」の実施について、技術的な基準を設けることができることを規定し、市町村教育委員会が行う府費負担教職員の服務の監督について、都道府県教育委員会の適切な関与を求めているのである。

さらに、同法第48条第1項には、「都道府県委員会は市町村に対し、・・・市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる」旨が規定されている。

イ 市町村教育委員会の役割について

地教行法第43条第1項は、「市町村委員会は、府費負担教職員の服務を監督する。」と規定し、同条第2項は、「府費負担教職員は、その職務を遂行するに当って、法令、当該市町村の条例及び規則並びに当該市町村委員会の定める教育委員会規則及び規程(前条又は次項の規定によって都道府県が制定する条例を含む。)に従い、かつ、市町村委員会その他職務上の上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」ことを定めている。

すなわち、府費負担教職員は市町村の公務員であり、市町村の教育の事業の遂行に奉仕する義務を負うものであり、市町村教育委員会及び校長等の職務上の命令に忠実に従うことが求められているのである。また、市町村教育委員会は、法令等の規定に基づき府費負担教職員の職務の遂行を監督することとされているのである。

(2)指導力不足等教員について

今日、子どもを取り巻く環境が著しく変化する中で、小・中学校においては、いじめや不登校、特に小学校ではいわゆる「学級崩壊」と呼ばれ、授業が成り立たない現象が低学年にまで及ぶといった新たな教育課題が発生するなど、緊急に解決すべき様々な問題に直面しており、教育関係者はもとより社会全体が一体となってその解決に取り組むことが求められている。このような中、子どもの心身の発達や人格形成に大きな影響を及ぼす教職員の資質向上に、府民の強い関心と期待が寄せられている。

府内の公立学校においては、多くの教職員が意欲的に教育課題に取り組んでいるが、その一方で、学校を取り巻く問題の複雑さ・困難さに対応できず、子どもたちの教育への責任が果たせていない教職員も存在する。

実施機関では、平成12年6月28日に学識経験者、学校関係者等で構成する「教職員の資質向上に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置し、指導力不足等の範囲や態様、その対応等について検討を重ね、平成13年3月29日、指導力不足等教員の資質向上方策を「教職員の資質向上に関する検討委員会 中間報告」(以下「中間報告」という。)として取りまとめ、公表したところである。

なお、中間報告では「指導力不足等教員の範囲」を、学習指導、生徒指導、学級経営等において指導力を発揮できず、子どもたちの教育への責任が果たせていない者(保護者、地域、同僚との良好な関係が築けないことなどから、教育活動に支障をきたしている者を含む。)とし、具体的に次のように区分している。

ア 指導力に関し支援を要する教員
  • (ア)結果が明確に表れてはいないが、その取組む姿勢は評価できる者
  • (イ)環境の変化等による一時的な指導力不足とみられ、学校内の協力により回復可能と考えられる者
イ 指導力不足教員

専門性・社会性に欠けるなど教員としての指導力が不足している者

ウ 適格性を欠く教員

勤務態度・服務上の著しい問題があるなど教員としての資質に欠ける者

エ 疾病等により指導力が発揮できない教員

疾病等(特に精神的な疾患)が原因と考えられるが、受診・治療をしないまま、指導力が発揮できない状態の者や休職を繰り返し、復職後も指導力が発揮できない状態の者

(3)公立小・中学校の指導力不足等教員の実態把握について

中間報告において、「対応策の具体化については、平成13年度に府教育委員会の直轄校から実施し、検証しつつ、できるだけ早い時期に市町村で取り組むよう、市町村教育委員会に働きかけ、その取り組みを支援していく必要がある」とされ、また、平成13年1月開催の「平成11年度一般・特別会計決算特別委員会」では、「府教育委員会は府立学校だけでなく、市町村立小・中学校における指導力不足等教員の実態をも早急に把握すべき」との指摘がなされたところである。

また、前述のとおり実施機関は、「市町村委員会の内申をまって、府費負担教職員の任免その他の進退を行う」(地教行法第38条第1項)ものとされていることや、「市町村に対し、・・・市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる」(同法第48条第1項)とされていることからも、指導力不足等教員の府全体としての傾向や現状の把握等に努める必要があったのである。

以上の観点から、実施機関としては、府内公立小・中学校における指導力不足等教員の概要の把握を平成13年夏を目途に行うこととしたものである。

(4)実態把握の方法について

実施機関においては、公立小・中学校の府費負担教職員に対し服務監督権を有する各市町村教育委員会の人事担当者から、指導力不足等教員の人数規模、その態様について、日ごろから有している情報の範囲で聞き取り調査を行った。

この聞き取り調査の目的は、府内の公立小・中学校(大阪市を除く)全体としての指導力不足等教員の人数規模とその主な態様を把握することであり、個人の特定や市町村教育委員会ごとの人数の把握を行うことではなかった。

具体的には、各市町村教育委員会の人事担当者から聞き取った内容を、検討委員会でとりまとめた中間報告に示された「指導力に関し支援を要する教員」、「指導力不足教員」、「適格性を欠く教員」、「疾病等により指導力が発揮できない教員」の区分に当てはめ、各区分ごとに数を積み上げ、併せて主な事例を実施機関の担当者がメモする方法で行った。

なお、当該調査の目的が上記のように個人の特定や市町村ごとの人数把握を行うものではなかったため、当該メモは、市町村ごとの区別なく府内(大阪市を除く)全体で1枚の用紙に記入する形式であった。また、聞き取り調査は複数の職員で行ったが、作成したメモは書記役の担当者が作成した1枚のみであり、メモの内容を担当者間で確認しながら聞き取り調査を進めたものである。

この方法で、大阪市を除く府内全市町村教育委員会から聞き取り調査を行ったあと、当該メモをもとに今回の実態把握の成果として本件情報提供文書1を作成し、併せて実施機関内の参考資料として本件情報提供文書2を作成した。

2 行政文書の特定及び本件処分の適法性

  • (1)本件請求は、「新聞報道された「公立小中学校<問題教員>408人」との府教委調査に関する資料のすべて。その基礎となる資料を含む。(ただし、府教委より情報提供された本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2は除く。)」であって、実施機関が今回の聞き取り調査で作成した文書は、前述の本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2である。
    本件情報提供文書1については、報道機関からの取材申し入れがあらかじめ予測されていたことや「平成11年度一般・特別会計決算特別委員会」での経緯を踏まえ、大阪府議会への報告を想定し、対外的に説明する際にも活用できるような形式で、大阪府公立小・中学校(大阪市を除く)における指導力不足等教員の総数とその主な事例をまとめたものである。
    本件情報提供文書2については、今回の実態把握の直接の目的ではないが、聞き取り調査において中間報告による「指導力不足等教員の範囲」を用いたことから、実施機関内の説明用として、聞き取り調査における指導力不足等教員の分類別をまとめることにしたものである。
    なお、前述のメモについては、大阪府公立小・中学校(大阪市を除く)における指導力不足等教員の総数とその主な事例を把握し、聞き取り調査終了後に、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2を作成するために、担当者が聞き取り調査の過程において、その都度書き込んだものである。そして、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2が作成され、組織的に管理することとなった時点で、担当者は、メモの内容が本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2に反映されていると判断し、廃棄したものであり、実施機関においては現実に管理していないものである。
  • (2)実施機関が本件請求に係る行政文書を管理していない理由について
    条例第2条第1項の規定によれば、行政文書とは「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」であり、この要件を満たす行政文書は、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2のみである。これらは情報公開の社会潮流、条例の意義等を踏まえ、本件請求に先立ち、あらかじめ異議申立人に対して情報提供を行っており、本件請求においても対象から除かれている。また、前述のとおり、聞き取り調査時のメモについては、実施機関の担当者において廃棄しており、実施機関は現実に管理していないものである。
    さらに、1の(4)で述べたとおり、今回実施機関が行った調査は市町村教育委員会の人事担当者からの聞き取り調査によって行われたものであり、文書等により報告を求めたものではなかったため、本件請求に関し、実施機関の職員が職務上取得した文書は存在しない。

3 結論

以上のとおり、本件処分は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

また、条例においては、不存在による非公開決定に対する不服申立てについても、実施機関は、原則として当審査会に諮問しなければならないこととしている。こうした諮問が行われた場合も、当審査会は、条例第23条に規定する調査権限を適切に行使して調査審議を行い、公正かつ簡易・迅速な救済の実現に努めることとなる。

2 本件請求文書について

  • (1)実施機関が、府内公立小・中学校における指導力不足等教員に関する調査を実施することとなった経緯について
    地教行法第37条第1項において、府費負担教職員の任命権は、都道府県教育委員会に属することが、また、同法第43条第1項において、府費負担教職員の服務監督権は、市町村教育委員会に属することが、それぞれ明記されている。そして、地教行法第38条第1項では、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の内申をまって、府費負担教職員の任免その他の進退を行う旨が、また、同法第48条第1項では、都道府県教育委員会は市町村に対し、市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言又は援助を行うことができる旨が、それぞれ規定されており、都道府県教育委員会と市町村教育委員会は、互いに連携しつつ、府費負担教職員に関する任命権、又は服務監督権を行使するものであると認められる。
    平成12年6月28日、実施機関の下に学識経験者、学校関係者等で構成される検討委員会が設置され、教職員の資質向上方策についての検討が行われている。そして、平成13年3月29日、指導力不足等教員の資質向上方策が中間報告として取りまとめられ、公表されているが、中間報告では、「指導力不足等教員の範囲」が次のように区分されている。
    • ア 指導力に関し支援を要する教員
      • (ア)結果が明確に表れてはいないが、その取組む姿勢は評価できる者
      • (イ)環境の変化等による一時的な指導力不足とみられ、学校内の協力により回復可能と考えられる者
    • イ 指導力不足教員
      専門性・社会性に欠けるなど教員としての指導力が不足している者
    • ウ 適格性を欠く教員
      勤務態度・服務上の著しい問題があるなど教員としての資質に欠ける者
    • エ 疾病等により指導力が発揮できない教員
      疾病等(特に精神的な疾患)が原因と考えられるが、受診・治療をしないまま、指導力が発揮できない状態の者や休職を繰り返し、復職後も指導力が発揮できない状態の者
      また、中間報告においては、「(指導力不足等教員への)対応策の具体化については、平成13年度に府教育委員会の直轄校から実施し、検証しつつ、できるだけ早い時期に市町村で取組むよう、市町村教育委員会に働きかけ、その取組みを支援していく必要がある。」と記載されている。
  • (2)本件調査に係る新聞報道について
    • ア 平成13年8月30日付け産経新聞
      「問題教員1.7%408人」及び「府教委集計150人が早期退職」の見出しがあり、「大阪府内の市町村立小・中学校(大阪市を除く)に本年度在籍する教員の1.7%、408人が、教員としての適格性や指導力を欠くなどの問題教員であることが29日、府教委のまとめで分かった。今年3月末には、150人前後の問題教員が早期退職していたことも判明。(略)一方、平成12年度末には、退職金を割り増しする府の早期退職優遇制度で公立小中学校の教員753人が退職、うち約2割が問題教員とみられるという。(略)」といった内容の記事が掲載されている。
    • イ 平成13年8月30日付け朝日新聞
      「大阪府内公立小中に問題教員408人」及び「府教委まとめ配転など対策急ぐ」の見出しがあり、「大阪府内の公立小、中学校の教員約2万3553人(大阪市を除く)のうち、授業や生活指導を適切にできなかったり、同僚や保護者とトラブルを頻繁に起こしたりする「問題教員」が408人いることが29日、大阪府教委の調査でわかった。(略)府教委が6月、大阪市を除く43市町村教委から聞き取り調査した。(略)「問題教員」の割合は全体の1.7%で、府教委が昨年公表した府立高校などの問題教員の割合(約4%)より低い。(略)」といった内容の記事が掲載されている。
    • ウ 平成13年9月7日付け毎日新聞
      「公立小中校「問題教員」408人」及び「府教委把握分指導力不足が6割」との見出しがあり、「府内の公立小中学校(大阪市立を除く)の教員2万3553人のうち、授業が適切にできなかったり、保護者らとトラブルを起こす「問題教員」が408人(1.7%)いることが、府教委の調査で分かった。府教委は6、7月、大阪市を除く43市町村教委からヒアリングし、小学校で246人、中学校で162人を把握した。(略)府教委は昨年、府立高の問題教員は4%と発表していた。」といった内容の記事が掲載されている。
  • (3)本件請求に先立ち、実施機関は異議申立人に対し、次の本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2を情報提供している。
    • ア 本件情報提供文書1は、「大阪府公立小・中学校(大阪市を除く)における指導力不足等教員の実態について」と題され、大阪府内の公立小・中学校(大阪市を除く)における専門性、社会性等の欠如による、いわゆる指導力不足等教員について、各市町村教育委員会と連携し、実態の把握を行い、とりまとめたものとされている。
      まず、指導力不足等教員(大阪市を除く)の概要が「総数408人(小学校246人、中学校162人)」、「割合1.7%(小学校1.7%、中学校1.8%)」及び「教員現員数(教諭・養護教諭)23,553人(小学校14,588人、中学校8,965人)、調査時点平成13年5月1日」と記載されている。また、主な事例として、「これまで経験したことがない課題の多い学校に異動してきたため、適切な対応ができない。」、「計画的な学習指導ができず、思いつき的な授業や自習時間を増やしたりする。また、学習指導の工夫がなく、教科書の音読のみに終始するなど授業参観で保護者からも不満がでる。」など11事例の記載がされている。さらに、「今後の対応」として、「服務監督を行う、各市町村教育委員会において、今般、府教育委員会が作成した「指導力不足等教員への支援及び指導の手引き」を参考にするなど、府内公立小・中学校における指導力不足等教員に対し、適切な対応が行われるよう、各市町村教育委員会との連携を強化するとともに、指導・支援していく。」及び「基本的な対応:各学校長・各市町村教育委員会(服務監督権に基づく)」との記載がされている。
    • イ 本件情報提供文書2は、「小・中学校における指導力不足等教員の実態把握」と題され、小・中学校における指導力不足等教員の全体数と分類別の人数がそれぞれ表形式で記載されている。まず、「全体数」の表においては、平成13年5月1日現在の教員現員数(小学校14,588人、中学校8,965人、合計23,553人)、指導力不足等教員数(小学校246人、中学校162人、合計408人)」及び「割合(小学校1.7%、中学校1.8%、合計1.7%)」が記載され、また、「分類別」の表においては、A(指導力に関し支援を要する教員)、B(指導力不足教員)、C(適格性を欠く教員)、D(疾病等により指導力が発揮できない教員)の各分類に該当する小・中学校教員の人数及び割合が、小学校(A30人(12%)、B167人(68%)、C7人(3%)、D42人(17%)、合計246人(100%))、中学校(A25人(15%)、B79人(49%)、C7人(4%)、D51人(32%)、合計162人(100%))、合計(A55人(14%)、B246人(60%)、C14人(3%)、D93人(23%)、合計408人(100%))と記載されている。
  • (4)上記及び異議申立人の主張等を総合すると、本件請求文書は、本件情報提供文書1で触れられた実態の把握(以下「本件調査」という。)に関する文書であって、既に異議申立人に対して情報提供されている本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2を除いたものであることが認められる。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

本件異議申立ては、本件調査に関する資料が、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2以外にも存在するはずであり、その公開を求めるというものである。そこで、当審査会として本件処分に係る具体的な判断を行うに当たっては、本件請求文書に対応する行政文書が存在するのか否かについて検討する必要がある。このため、当審査会においては、実施機関の説明や提示された資料、異議申立人の主張内容などをもとに、本件調査の実施や結果のとりまとめ等の過程について調査し、実施機関が本件調査に関し文書を作成し、又は取得したかについて検討し、文書が存在する場合には、その文書の行政文書該当性について検討することとした。

  • (1)行政文書に該当する要件について
    行政文書に該当する要件は、次のとおりである。
    • ア 条例において公開請求の対象となる行政文書は、条例第2条第1項により、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド並びに電磁的記録」であって、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」である(条例第2条第1項但し書きに該当するものを除く。)。
    • イ 「実施機関」とは、独立して事務を管理執行する権限を有する機関をいい、地方自治法上の執行機関等を個別に条例に規定している。実施機関は、条例に基づく事務について、自らの判断と責任において、誠実に管理し、執行する義務を負うものであって、現在、条例に規定している実施機関は、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会、水道企業管理者及び警察本部長である。
    • ウ 「実施機関の職員」とは、実施機関の指揮監督権限に服する全ての職員をいう。
    • エ 「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。
    • オ 「組織的に用いる」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。
    • カ 「実施機関が管理しているもの」とは、実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関が利用、保存している状態のものを意味する。
  • (2)本件請求文書に対応する行政文書について
    平成13年3月29日に公表された中間報告において「対応策の具体化については、平成13年度に府教育委員会の直轄校から実施し、検証しつつ、できるだけ早い時期に市町村で取組むよう、市町村教育委員会に働きかけ、その取組みを支援していく必要がある。」とされてから、上記2(2)で述べたように本件調査に関する新聞報道がなされるまでには、実施機関の説明によると、概ね次の過程を経ているとのことである。すなわち、ア「実施機関において、本件調査の実施、その実施時期及び実施方法が検討されたこと」、イ「実施機関と市町村教育委員会との間で、本件調査に係る日程調整が行われたこと」、ウ「実施機関が、本件調査を実施したこと」、エ「実施機関において、本件調査の結果がとりまとめられたこと」及びオ「報道機関からの取材に対し、実施機関の担当者が応答したこと」である。
    • ア 実施機関において、本件調査の実施、その実施時期及び実施方法が検討されたことについて
      実施機関の説明によると、中間報告の趣旨等を踏まえ、本件調査の実施時期、方法等の検討を平成13年4月に行ったが、その検討に際して文書等は作成しなかったというものである。
      当審査会において調査したが、実施機関において、本件調査の実施、その実施時期及び実施方法等の検討に関連する文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
    • イ 実施機関と市町村教育委員会との間で、本件調査に係る日程調整が行われたことについて
      実施機関の説明によると、本件調査については、府内7つの教育振興センターの職員を通じ、電話連絡により、口頭で本件調査に係るヒアリング日時を連絡したというものである。
      当審査会において調査したが、実施機関と市町村教育委員会との間で、本件調査に関する日程調整・連絡等を行ったことに関連する文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
    • ウ 実施機関が、本件調査を実施したことについて
      実施機関の説明によると、本件調査は、実施機関の職員が市町村教育委員会の人事担当者に対して対面の聞き取りにより行ったものであり、実施機関の担当者は、本件調査において市町村教育委員会の人事担当者から公立小・中学校における指導力不足等教員の態様及び顕著な事例を聞き取り、書記役の担当者が、その都度、聞き取った内容を上記2(1)で述べた4つの区分に当てはめて、あらかじめ用意していた、4つの区分を設けた表を記載した用紙に、4つの区分ごとの数を積み上げ、併せて主な事例をメモする方法で行ったものである。また、本件調査の目的は、府内の公立小・中学校(大阪市を除く。)全体としての指導力不足等教員の人数規模とその主な態様を把握することであり、個人の特定や市町村教育委員会ごとの人数の把握を行うことではなかったことから、聞き取った内容を記録するに当たっては、市町村を区別することなく記録していったものである。そして、実施機関は本件調査の内容について文書照会を行ったり、文書による回答を受けたりしていないというものである。
      当審査会において調査したところ、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2以外には本件調査を実施した内容に関連する文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。また、実施機関から本件調査に関する照会が文書で行われたこと及び市町村教育委員会からの回答が文書で行われたことを示す文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
    • エ 実施機関において、本件調査の結果がとりまとめられたことについて
      実施機関の説明によると、本件調査の終了後、実施機関の担当者は、本件調査の内容を記録した用紙をもとに本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2を作成し、これらに本件調査の内容が反映されていることを確認した上で、当該用紙は不要と判断し、担当者の判断で廃棄したというものである。
      当審査会で調査したところ、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2が、実施機関の担当者によって作成され、本件公開請求に先立って異議申立人に対し情報提供されたことが確認されたが、実施機関の担当者が、本件調査においてその内容を記録したとされる用紙及びその他本件調査の内容を記録した文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
    • オ 報道機関からの取材に対し、実施機関の担当者が応答したことについて
      実施機関の説明によると、実施機関の担当者は報道機関からの取材の申し入れがあらかじめ予測されていたことなどから、対外的に説明する際に活用できるような形式で、本件調査の内容をとりまとめることとし、本件情報提供文書1を作成したものである。また、本件調査において中間報告による「指導力不足等教員の範囲」を用いたことから、実施機関内の説明用として、本件調査における指導力不足等教員の分類別をまとめることとし、本件情報提供文書2を作成したものである。そして、実施機関の担当者は、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2をもとに、報道機関の記者から取材に応答したのであり、これら以外に報道機関からの取材のために実施機関が用いた文書は存在しないというものである。
      当審査会で調査したところ、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2以外に、報道機関からの取材に際して実施機関の担当者が用いた文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
  • (3)以上のとおり、本件調査に関する文書が実施機関に存在することについて、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2以外には確認することはできなかったところである。
    なお、中間報告においては、実施機関は、市町村教育委員会における指導力不足等教員への対応策の取り組みの働きかけと支援が求められているが、個人の特定や市町村教育委員会ごとの人数の把握まで求められているわけではなく、指導力不足等教員の府全体としての傾向や現状の把握等に努めることが求められていることが認められる。また、市町村教育委員会からの情報の収集を円滑で速やかに行うためにも、個人や市町村教育委員会を特定しない形で本件調査及び集計作業を行った事情も窺い得るものである。そして、本件調査の結果については、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2においてまとめられており、これは、上記の本件調査の趣旨からすると、調査結果として、特段不自然・不合理なものといえるものでもない。
    こうしたことからすると、本件調査に関する文書について、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2以外に存在しないことについては、特段不自然・不合理な点は認められない。
  • (4)異議申立人の主張について
    異議申立人は、本件調査が聞き取り調査によって行われたことは、規則第3条及び第14条の規定にそれぞれ反すること、すなわち、行政職員は規則に従って事務を行う義務を負うのであるから、行政上の実態調査もまた文書による照会と文書による回答という形式で行われなければならず、例外的に軽微な事案については文書を作成しないことも認められるが、本件は軽微な事案には当たらず、原則に従い文書により行われるべき事務に当たり、実施機関が市町村に照会した文書の控え及び回答文書が存在しなければならず、聞き取り調査によったとすれば、かかる行為は規則に違反するのであり、聞き取り調査によったから文書が存在しないとする実施機関の主張は失当であると主張する。また、異議申立人は、本件調査時において実施機関の職員が記録したメモは実施機関の職員が職務上作成し、組織的に用いるものとして管理すべきものであるから行政文書にあたり、規則により保管管理すべきものであり、当該メモを廃棄したとすれば規則に違反すると主張するので、これらの点について検討する。
    規則第3条第1項は「事務は、原則として文書により処理しなければならない」ことを、同第14条第1項は「意思決定に当たっては文書を作成して行うこと並びに事務及び事業の実績について文書を作成することを原則とする」ことを、また、同条第2項は「意思決定と同時に文書を作成することが困難な場合及び処理に係る事案が軽微なものである場合は、文書の作成を要しないものとする。ただし、意思決定と同時に文書を作成することが困難な場合にあっては、事後に文書を作成しなければならない」ことを、それぞれ定めている。
    しかしながら、規則は、実施機関が行う事務の全ての過程において文書の作成を義務付けている趣旨でないことは明らかであり、実施機関においては、担当者が聞き取り調査の結果をとりまとめた本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2を作成して管理しており、また、上記で述べたとおり、本件調査の趣旨等からすると、本件調査の過程において本件請求文書に対応する行政文書が実施機関において作成されていないことについて、規則の趣旨に照らして特段不自然・不合理な点は認められない。
    また、個人が作成したメモであっても、実施機関の組織において利用、保存されるものとして管理されるに至った場合には行政文書に該当するものであるが、本件調査において担当者が作成した文書が実施機関の組織において利用、保存されていたと認めるに足る特段の事由は存在しない。そして、本件調査において担当者が作成した文書は、その内容が本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2に転写・清書されているのであるから、少なくとも、本件情報提供文書1及び本件情報提供文書2が作成されて内容の確認等がなされた後においては、業務上必要であって実施機関が管理しなければならない文書であるといえるものではなく、実施機関が主張するように、実施機関が管理するには至らずに廃棄されたとしても、規則の趣旨に照らして特段不自然・不合理な点は認められない。
    以上のとおりであるから、規則の趣旨に照らしても、本件請求文書に対応する行政文書が存在しないことについて、特段不自然・不合理な点は認められない。

4 結論

以上のとおり、本件請求文書に対応する行政文書の存在を確認することはできず、また、これについて実施機関に特段不自然・不合理である点も認められないのであるから、実施機関が行った不存在による非公開決定は妥当である。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり答申する。

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?