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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第72号)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成13年10月5日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「大阪府行財政計画(素案)策定において、府教育委員会と財政課との協議の経緯の分かる文書一式(定時制高校の改革の件)学校給食のみなおし」(以下「本件請求文書」という。)の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年10月12日、実施機関は、本件請求に対応する文書として次の(1)及び(2)の文書(以下「本件公開文書」という。)を特定の上、その全部を公開するとの公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、異議申立人に通知した。
    (本件公開文書)
    • (1)大阪府行財政計画(素案)未定稿のうち、<「量の拡大から質の向上へ」「地域とともに」教育改革の推進>(14年度に着手するもの)の部分
    • (2)大阪府行財政計画(素案)―具体的取組編―未定稿のうち、「定時制高校の改革」の項目の部分
  3. 同年11月21日、異議申立人は、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件処分の完全履行を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

  1. (1)異議申立人の「大阪府行財政計画(素案)策定において、府教育委員会と財政課との協議の経緯の分かる文書一式(定時制高校の改革の件)学校給食のみなおし」との公開請求に対し大阪府は、「大阪府行財政計画(素案)未定稿のうち、<「量の拡大から質の向上へ」「地域とともに」教育改革の推進>(14年度に着手するもの)の部分」及び「同項目の具体的取組編の部分」を公開した。
    • (2)公開された文書は、冊子の原稿であり、異議申立人が求めた経緯が分かる文書には当たらない。
    • (3)そもそも大阪府の知事部局と府教育委員会は、それぞれ独立した別個の組織であり、施策等の策定に際しては、両者間で甲から乙に対し、また乙から甲に対する行政文書のやりとりがあるはずである。また、それぞれの組織内で施策についての意思決定がなされているはずである。そして、部局内での意思決定及び他部局への意思決定の通知は、その都度文書化されているはずである。そうすることが、文書管理規則にも定められている。
    • (4)以上の観点からすると、公開文書以外にも何らかの文書が存在するはずである。
    • (5)よって、異議申立人の請求にかかる文書の早急なる公開を求める。
  2. 太田知事は、公開条例の改訂趣旨を理解していない。
    • (1)1984年に制定・公布された大阪府公文書等公開条例(以下「旧条例」という。)は、その後の時代変化への対応と条例運用で表出した課題解消を図るため、1999年に改正され2000年6月に現行の大阪府情報公開条例(以下「新条例」という。)として施行された。
    • (2)新条例には、旧条例の内容に加え新たに以下の内容が加えられた。
      • ア 新条例前文には、従来の「知る権利」の保障に加えて、「府が保有する情報は、本来府民のものであり、・・・府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている」と、大阪府の「説明責任」という新たな概念を明記した。
      • イ 前文に記されている「府の諸活動」の中には、当然、意思形成過程が含まれると解される。
    • (3)第1条では、「この条例は、行政文書の公開を求める・・・府民の府政への参加をより一層推進し、府政の公正な運営を確保し、・・・、もって府民の府政への信頼を深め」ることを、目的とする旨明記されている。
      • ア 府民が府政に参加する形態は、府民の代理人である議員を選ぶ投票権がまず取り上げられる。さらに、その議員が職責を十分に果たしているかを日々ウォッチングし、また行政の諸施策に対する民意を反映するなど、必要に応じて知事や議会に対して要請や陳情を行うことも、府政への参加である。
      • イ 行政が議会に提案してきた諸施策について、それが妥当で合理的なものであるかを直接府民が検証し、その結果から府民の意思を、議会を通じて行政に反映することも、府民が府政へ参加することである。
    • (4)施策の提案根拠の合理性を府民が検証するためには、行政当局が保有している情報を府民が知ることは不可欠である。情報公開条例で「知る権利」の保障が制定された所以がここにある。すなわち、当局提案案件の意思形成過程を知ることにより、その案件の合理性や妥当性が確認できる。他方当局は、その案件の合理性や妥当性について府民に理解を求めるためには、意思形成過程も含めた積極的情報提供をすすめる責務がある。
      そのために、情報公開制度が整備されたのである。
  3. 情報公開条例は、なぜ改定されたのか。
    • (1)「説明責任」について
      • ア 本来、行政当局は、公開条例に明記されている、いないにかかわらず、諸活動の合理性を府民に説明する根源的責務を負っている。すなわち、条例に明記される以前に「説明責任」が達成されていなければならない。
      • イ しかし、新条例であえて「説明責任」に関する記述が加えられた事実は、旧条例時代には、当局が「説明責任」を果たしていなかったという判断が下されたからに他ならない。
    • (2)公開対象文書の拡大について
      • ア 新条例の公開対象文書の範囲は、旧条例の決裁・供覧文書から、「行政文書」へと範囲を拡大している。そして、「行政文書」とは、「実施機関の職員が職務上作成し、・・・職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているものをいう。ただし、・・・」と、第2条で定義している。
      • イ 弁明書の「計画(案)策定の経過」の部分を読むと、素案策定に至るまでに、府庁内の各方面で検討・協議が行われてきたことが述べられている。にもかかわらず、経過を示すそれらの文書が公開されていないという状況をみると、新条例下での公開対象文書の実態は、ただ単に旧条例の文言を書き換えただけに過ぎない運用がなされていると断ぜざるを得ない。
      • ウ ところで、行政文書の範囲については、条例の解釈運用基準や文書管理規則等にかかれているが、意思形成過程における行政文書の範囲は、旧条例における決裁文書と同レベルの基準となっている。
      • エ 行政官が施策成案を作成するために、企画・立案の過程で収集した文書、関係者との調整結果を記した記録文書等々、すなわち、職員が作成し、施策が完成するまでの企画調整段階での文書も、たとえそれがメモの体裁をとっていようとも、同僚や上司等と検討するために用いた文書であれば、行政文書と解される。太田知事は、これらの行政文書を秘匿し公開していない可能性が大きい。
    • (3)行政文書の管理について
      • ア 第3条では、「行政文書の公開を求める権利が十分に保障されるように、・・・行政文書の適切な保存と迅速な検索に資するための行政文書の管理体制の整備を図らなければならない。」と実施機関の責務を明記している。
      • イ 今回の弁明書では、新条例第3条や文書管理規則に明らかに違反しているにもかかわらず、行政文書の管理体制の不備についての釈明がいっさい見られない。
  4. 太田知事は、文書管理規則を無視している。
    • (1)大阪府の文書管理規則では、「意思決定された事項については文書化すること」を義務付けている。
      • ア 「意思決定」をいかに解するかが、常に議論となるところであるが、異議申立人が、15年前に提訴し6年前に最高裁で完全勝訴した「安威川ダム関連文書の部分公開取り消し」判決において、「行政は、意思決定を積み重ねて施策を形成したり遂行しているのであるから、最終段階での決定だけが意思形成ではない。」と判断し、「意思形成過程各段階での意思決定について公開を検討すべきである」とした「意思形成過程の情報公開基準」を示した。
      • イ 太田知事が、上記「意思形成過程の情報公開基準」を尊重し、文書管理規則を遵守しているなら、公開された文書以外に、もっと沢山の行政文書が存在していてしかるべきである。
      • ウ ゆえに、太田知事は、法令に違反して公開すべき行政文書を秘匿していると言わざるを得ない。また、真に存在しないというのであれば、新条例や文書管理規則などの法令に反していると断ぜざるを得ない。
  5. 太田知事は、「説明責任」の周知徹底を図っているのか?
    • (1)釈迦に説法と思うが、「説明責任」(アカウンタビリティ)について述べてみたい。
      • ア アカウンタビリティとは、会計学上の概念であり、委託者と受託者との権利義務関係を表現したものである。
      • イ 行政が肥大多様化する中で、公害など行政権力による市民権利が侵害される事態が多発する状況が起こってきた。このため、市民権利擁護の理論として、会計学上のアカウンタビリティの概念を、市民と行政との関係に導入することになった。
      • ウ 市民は税金を払って、個人では負担できない公共的な仕事を政府に委託する。委託を受けた政府(国・地方公共団体)は、結果だけでなく、その過程についても詳しい報告を納税者=市民にしなければならない。これが、市民と行政との間でのアカウンタビリティである。
      • エ 今回の「公開処分」について検討すると、担当原課である財政課は、情報公開条例の本旨、文書管理規則、最高裁判決を十分に理解しておらず、本件公開請求に対してその責務である「説明責任」をまったく果たしていないことは明らかである。これは、太田知事が監督すべき行政官への「説明責任」に関する啓発を十分に行ってこなかった結果である。
  6. 太田知事は、「経緯」をどう解釈しているのか?
    • (1)岩波国語辞典では、「経緯:物事のいきさつ。細かい事情。」と記載している。
      • ア 異議申立人は、「協議の経緯の分かる文書一式」を公開請求したにもかかわらず、太田知事は「未定稿」のみを公開した。
      • イ 「協議の経緯」とは、誰が当事者で、事の発端が如何であり、いかなるいきさつで結論に至ったのかという道筋を説明する事であろう。今回太田知事が公開した文書は、最終結論の文書のみである。
      • ウ この文書が、いつどこで誰により起案され、いつどこで誰により意思決定されたかさえ、示されていない。これでもって、「経緯の分かる文書一式」を公開したというのでは、太田知事の言語能力を疑わざるを得ない。
    • (2)次に、弁明書において太田知事は、「公開した未定稿が、経緯の分かる文書一式である」ことについての立証を一切しないで、今回の処分について「何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。」と結論付けている。
      • ア 太田知事は、「計画(案)策定の経過」を、弁明書で縷々記述している。この経過において「行政文書」が一切存在しなかったのであろうか。「総務部と教育委員会事務局との協議・調整の過程において取りまとめられ、現に管理されている文書は、本件公開文書以外には存在しない。」との弁明ではあるが、本来は、「文書不存在」による「非公開処分」とすべきではなかったのか。「公開処分」としておきながら、「存在しない」という釈明は、常識的に判断すれば、奇異といわざるを得ない。
      • イ また逆に、「管理」されていない文書は如何?と問いただしてみたくもなる。
    • (3)異議申立書にも書いたが「知事部局」と「行政委員会である教育委員会」との間で、文書のやり取りが一切行われていないという不可思議な出来事について、合理性のある明確な弁明がなされていない。
      • ア 弁明書で太田知事は、「言うまでもなく、教育委員会等は、独立した行政委員会である。」と正しい認識を示されている。「事務にかかる調整については、行政委員会事務局を通じて行っているところである。」とも記している。
      • イ 実務実態がいかなるものであろうとも、知事部局と行政委員会事務局とは独立したまったく別の組織であり、両組織間での協議や調整に関する「行政文書」をどちらも作成せず、意思決定の文書のやり取りもなされていない事は、通常の組織論からみてありえないのではないか。この点での、文書管理規則第14条に関する合理的釈明がなされていない。
      • ウ なるほど、行財政計画(素案)の作成については、短期間に膨大な作業を要したであろうことは、十分に察せられる。しかし、そのことと行政文書を作らない、残さないこととは別次元のことである。教育委員会という外部機関との調整・協議に関しての文書が一切存在しないという事は、目先の作業にかまけてその職責を十分果たしていなかった事に他ならない。
      • エ 施策の企画・立案・協議等の場では、自由闊達な議論が必要であろう。であるからこそ、ことの道筋を事後にしっかりと検証可能なものとするために、経緯の分かる関係文書を残しておくべきである。そうすることが、府民に対する「説明責任」を果たすことになる。
    • (4)行財政計画(素案)における「夜間定時制高校の完全給食見直し」について、「いつ・どこで・誰が・いかなる経緯で意思決定したのか」を教育委員会や財政課に問いただしても、どの関係者もまったく説明できず、結局不明であった。
      • ア 「このデーターは○○で作ったはずだ。」「この文章は、私は書いていない。」関係者に問いただしても、知ってか知らずか、ただ首をかしげるばかりで、要領を得なかった。新条例に明記されている「説明責任」を誰一人果たしていないのである。
      • イ 昨年7月24日に開催された大阪府情報公開推進会議における意見交換の場で「文書不存在決定について」「文書保存について」、本件事案を予想したような議論がなされている。太田知事が、推進会議での指摘を謙虚に受け止め、新条例を啓発するため、直ちに全庁的な活動に取り組んでいれば、本件事案は発生していなかったかもしれない。
      • ウ 裏返せば、太田知事が公文書公開条例の改正趣旨の徹底を怠ってきた結果、当該部局が旧態依然の公開(非公開)姿勢にもとづく処分を行うに至ったものと推慮できる。
  7. 太田知事は、「情報隠し」で民意誘導を企てた?
    • (1)今回の情報公開請求の発端となった大阪府行財政計画(素案)で、太田知事が行った「情報隠し」について述べておきたい。
      • ア 大阪府の財政は、いうまでもなく未曾有の危機に陥っており、緊急に支出を抑える必要に駆られている事情は理解できる。しかし、今回の行財政計画(素案)および(案)については、「より弱いものに暴力が向かう日本の負の側面」「弱者切り捨て」を露出させているという点で、いささか異議ありといわざるを得ない。
      • イ とりわけ、「夜間定時制高校の完全給食」は、財政改革プログラムによる昨年度の事務事業評価において「継続」事業になっていた点から、その見直しについては理解できない。
      • ウ 昨年の事務事業評価で、給食を実施する必要性について、「高等学校の設置者は府であり、設置者の義務として行う事業である。」と位置付け、「夜間に学ぶという教育環境を考慮した学校給食の円滑な実施を図るためには必要である。」との総合判断を下して、継続事業と意思決定したのである。
      • エ 然るに今回の行財政計画(素案)での完全給食廃止方針では、昨年の事務事業評価の判断には一切言及しておらず、不合理な根拠にもとづく朝令暮改に等しい決定といわざるを得ない。
      • オ 太田知事が示した廃止論拠は、「最初に削減ありき」としか言いようのないもので、合理的説明がなされていない。多くの困難を抱えながら学業に取り組んでいる当該生徒にとって完全給食の廃止は、青天の霹靂・理不尽な仕打ちとしかいいようがない。このことは、行財政計画の給食問題に寄せられたパブリックコメントから十分伺い知ることができる。まさに、「より弱いものに暴力が向かう日本の負の側面」を太田知事は具現化している。
    • (2)太田知事は、完全給食見直しの根拠として夜間定時制高校の志願倍率の減少を取り上げている。
      • ア 太田知事は、志願倍率が減少している根拠として昭和40年と平成13年の志願倍率とを、示している。昭和40年代と現在では、高校進学率や社会構造・経済事情が大きく変動している。このようなバックグラウンドを無視した比較は、いったい何の意味があるというのであろうか。合理的整合性が何一つ見られない。この点について教育委員会に釈明を求めたが、誰も説明できなかった。
      • イ 過去3年間の定時制志願倍率を見ると、不景気という社会情勢の変化を反映して漸増しており、不合格者さえ出している。教育委員会は、なぜこの実態を無視したのであろうか?
      • ウ このことから太田知事は、数字が大きく減っていることを印象付けることにより、強引に完全給食廃止の民意を誘導する目的で、実態として意味のないデーターを掲げたとしか考えられない。
    • (3)太田知事は、計画(素案)で「減少している勤労青少年比率」というデータ-を示しているが、ここでも夜間定時制生徒の定職者割合を、不当に小さく表示している。
      • ア 素案に掲載されたデータ-の出典を教育委員会に問い合わせ、原資料にあたってみたところ、太田知事が示したデーターは、数字の改ざんはされていないが、データ-のごく一部の数字しか使っていないことが判明した。すべての事実を示すデータ-は使っていないことが明らかとなった。
      • イ データ-は、夜間定時制生徒の生活実態を調べたものであるが、1年生と3年・4年生の資料が存在していた。就労に関する調査項目も、定職だけでなくパート・アルバイト等の就労形態や不就労の項目もあった。
      • ウ ところが、計画(素案)では、パート・アルバイトを除いて定職者のみの割合を、バブル期の平成元年とバブル崩壊後の平成12年との就労割合を、しかも1年生だけのデータ-を示していた。
      • エ 太田知事は、定職生徒の割合が減少したというが、定職生徒の割合が減少した要因の一つに、雇用情勢が変わってしまったことに他ならない。夜間定時制生徒の生活実態は昭和40年とほとんどかわりがない。
      • オ 太田知事は、なぜバブル期の平成元年とバブル崩壊下の雇用状況とを比較したのであろうか。なぜ、全体の30~40%を占めるパートやアルバイトの数字を表示させなかったのであろうか。なぜ数字が一番小さくなる一年生のみを示したのであろうか。
      • カ これは、夜間定時制生徒の大部分が仕事をしていないという印象を誘導するためのフェア-でないデータ-の示し方である。そして、この点についても、やはり誰も説明できる人がいなかった。
    • (4)定職についている生徒やパート・アルバイトにつく生徒の割合は、学年が上がるにつれて大きくなっているのに、あえて一番小さい1年生の数字しか使っていないのはなぜか。
      • ア 定職につきたくても仕事がない、障害があるから雇用されない、そして定職についたら学校に来れなくなる。こんな生徒の事情を全く無視して、また彼らに就労を保障すべき立場の行政責任を放置して、「仕事をしていない」という理由で生徒=納税者の教育を受ける権利を切り捨てる。やっとの思いでありつけたアルバイトは定職ではないと決め付けて、公的補助を打ち切ろうとする。
      • イ 夜間定時制生徒にとって完全給食の必要性が消滅したわけではない。公的補助の目的である「夜間定時制生徒の健康保持」が、実現されるようになったわけでもない。しかし、完全給食を廃止しようとしている。
      • ウ 計画(素案)と計画(案)とを比較すれば明らかなように、重大な情報隠しをして民意の誘導を行おうとした太田知事の姿勢は、情報公開の精神・「説明責任」を蹂躙する犯罪的行為と言わざるを得ない。
  8. 情報公開請求その後
    • ア 大阪府行財政計画(素案)は、9月17日に計画(案)にまとめられ、議会で検討された。
    • イ 夜間定時制高校の完全給食廃止案は、パブリックコメントに寄せられた多くの反対意見や議会での各会派からの懸念により、補食給食とする方針から従来の自校調理ではない完全給食の方策を模索する方向で進んでいる。つまり、現在の給食レベルの質を落とさない何らかの方策が検討されている。
    • ウ ところが、具体的代替策が煮詰まっていないにもかかわらず、異議申立人が勤務する夜間定時制高校を含む4校が、早々に廃止対象校と指名された。ところが、学校長は、教育委員会からの緘口令により一切説明できないと発言するだけで、なぜ本校が指定されたのか、今後どうなるのか、についての事情説明を一切拒否している。
    • エ なぜ、異議申立人が勤務する学校が早々に廃止対象校とされたのか。これまでのパブリックコメントや反対決議など廃止撤回の取り組みに対する意趣返しなのだろうか。そうでないという明確な説明を望んでいるのだが、教育委員会は一切応じていない。
  9. おわりに
    今回、異議申立人が行った行政文書公開請求に対する太田知事の対応は誤っており、直ちに正当で誠意ある対応を行う旨の答申を期待している。あわせて、大阪府並びに大阪府教育委員会が、当然の権利行使を行った異議申立人に対する意趣返しをするために、その権力を乱用したという誤解を生じさせるような行動をとらない旨の答申を、お願いしたい。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 大阪府行財政計画(案)について

(1)策定の趣旨

大阪府行財政計画(案)(以下「計画(案)」という。)は、戦後の右肩上がりの経済成長が終焉を迎え、また、分権型社会に向けた改革をはじめ、戦後50年以上続いた社会経済システムの見直しが求められている中で、当面の府の財政危機を克服するとともに、今後の経済の低成長下においても、府民に対し、必要なサービスを提供しつづけることができるよう、府政の構造改革を図るために策定したものである。

計画(案)においては、10年後に目指す府政の姿を、「すべての府民の人権が尊重され、安全で安心して暮らせる、活力あふれる大阪」とし、そのような大阪に向けてやるべきことはしっかりやるための3つのS(「スリムな組織でコストダウン」「府民参加・府民本位のサービスを提供」「安心・安全の府政」)に挑戦するとともに、直ちに5つの改革を断行することとしている。

この5つの改革とは、警察、学校を除く府職員の今後10年間での3000人削減などを内容とする『全国一、スリムな組織づくり』、企業局事業の収束を中心とする『「負の遺産」の整理』、「大阪都構想」など新たな自治システム等を提唱する『新しい行政システム「大阪モデルづくり」』、府の300施策・1800事業のすべてについて施策評価を実施し府がやるべきことを見極めて思い切った施策再構築をすすめる『すべての施策を評価し、重点化/NPOとの協働』、最後に当面の再建団体転落を回避するための道筋を示した『再建団体転落を回避』である。

本件請求にかかる「定時制高校の改革のうち、学校給食の見直し」については、5つの改革『すべての施策を評価し、重点化/NPOとの協働』のうち、『人が元気-「量の拡大から質の向上へ」「地域とともに」教育改革の推進』の項目において、14年度から着手を予定する施策再構築の項目の一つとして掲げたものである。

(2)計画(案)策定の経過

大阪府においては、未曾有の財政危機に対処するため、平成10年9月に財政再建プログラム(案)を策定した。

財政再建プログラム(案)では、平成11から13年度を緊急対策期間として、準用再建団体転落回避のための集中的取組を行うとともに府政構造改革に向けた取組に着手することとし、さらに平成13年度において、緊急対策期間の取組状況及びその時点での経済情勢を踏まえ、府政全般にわたって改めて点検を行うこととされていた。

そこで、その後の社会経済情勢の変化をも踏まえ、財政再建プログラム(案)の点検を含めた検討を行い、平成13年2月に取りまとめたのが、「『知恵と協働で築く新しい府政』―大阪府行財政計画骨子(案)」(以下「骨子(案)」という。)である。この骨子(案)は、後に計画(案)の下地ともなった府政の構造改革の視点等を盛り込んだものであり、平成13年2月定例府議会にも提示・ご議論を賜ったところである。

その後、平成13年4月1日、知事を本部長として、知事部局各部局長や教育委員会など行政委員会事務局の長等を本部員とする大阪府行財政改革推進本部(以下「推進本部」という。)を設置して、知事のリーダーシップのもと、部局横断的に策定を進めるための体制が整備された。同年4月3日には、第1回推進本部会議を開催し、知事より本部員に対して、現下の府の厳しい情勢を踏まえ、府政全般にわたる抜本的な府行財政改革に着手するため、計画(案)策定にあたっては、すべての組織・施策を一旦「リセット」の視点から見直すという気持ちで取組んでもらいたい旨、指示・要請を行った。

この第1回推進本部会議の後、推進本部の事務局である総務部財政課が中心となって、教育委員会など、行政委員会事務局を含む府各部局等と、計画(案)に記載する内容について協議・調整をすすめ、「大阪府行財政計画(素案)」及び「大阪府行財政計画(素案)-具体的取組編―」の未定稿の形態で逐次取りまとめを行っていった。

この未定稿は、その後、各部局等との協議や事務局内部での検討を踏まえて数次の朱書き等による修正を加え、「大阪府行財政計画(素案)」(未定稿版)及び「大阪府行財政計画(素案)-具体的取組編―」(未定稿版)(以下「計画(素案)未定稿版」という。)として、同年7月31日開催の推進本部幹事会(各部局主管課長等で構成)及び同年8月3日開催の推進本部会議に提案し、決定を得た上で、同日付けで大阪府行財政計画(素案)(以下「計画(素案)」という。)として公表した。

なお、未定稿での修正過程の文書については、推進本部幹事会提案の計画(素案)未定稿版とした時点で廃棄した。

異議申立人が求める本件請求文書は、この計画(素案)の策定過程における、「定時制高校の改革のうち学校給食の見直し」に関する教育委員会と総務部財政課との協議の経緯の分かる文書である。

平成13年8月3日の計画(素案)公表に伴い、大阪府パブリックコメント手続要綱に基づき、郵便、ファクシミリ、電子メールにより、計画(素案)に対する府民等の意見を募集したところ、募集締切の同年8月31日までの間に2千件を超える意見・提言が寄せられた。

これらの意見、全676項目中24項目について計画(案)に反映させ、平成13年9月19日に開催した本部会議において計画(案)の策定を決定し、同日付で公表したところである。

2 高等学校夜間定時制課程の学校給食の見直しについて

(1)見直しの趣旨

1の(1)に述べたとおり、高等学校夜間定時制課程の学校給食(以下「学校給食」という。)の見直しについては、定時制高校改革の項において、計画(素案)中、14年度から着手するものとして掲げている。

学校給食は、府立高校定時制課程生徒の健康保持と就学支援を図ることを目的として実施してきたものであり、そのうち、パン又は米飯、おかず、牛乳、添加物を内容とするいわゆる「完全給食」の形態を採用している学校は14校、パン、牛乳、添加物を内容とするいわゆる「補食給食」を採用している学校は16校17課程である。

計画(素案)における見直し内容は、この学校給食について、より効率的・効果的な府立学校運営に努めるという観点から、「生徒実態及び社会環境の変化を踏まえ、集中取組期間において、見直しを行う。」ものであり、完全給食の補食給食への移行等について検討することとしたものである。

(2)見直しの検討にあたっての経緯

学校給食の見直しについては、計画(素案)の他の項目と同様に、1の(2)に述べたように、総務部と本事業の所管部局である教育委員会事務局が協議・調整を行う中で、その内容を形成してきた。

具体的には、骨子(案)に記載されている「適正な受益と負担」や「あるべき府民サービスの水準や費用対効果の十分な精査の上に立ったコスト縮減」といった改革の基本的な視点や、平成13年2月府議会における定時制課程に要する経費についての質疑などを踏まえ、「府立高校の定時制課程については、多額の運営経費がかかっている現状を踏まえ、これまで以上に効率的な学校運営に努めるべきであり、その一例として、今後の学校給食について検討していくべきである」旨、総務部より教育委員会に対して、口頭で考え方を示した。

その後、同委員会事務局において、検討された結果、現在の定時制課程について、勤労生徒の比率が大幅に減少していること及び補食給食実施校が半数以上を占めている実態に鑑み、完全給食の補食給食への移行について検討する旨の結論に至ったことから、同委員会事務局の検討結果に基づき、総務部において、まず、計画(素案)「具体的取組編」の未定稿の形態で取りまとめを行い、その策定過程で並行して計画(素案)本編の未定稿としてのとりまとめを行った。これらをあわせて計画(素案)未定稿版とした。

(3)意思決定及び他部局への意思決定通知は、その都度文書化されているはずとの主張について

異議申立人は、異議申立ての理由の中で、「大阪府の知事部局と府教育委員会は、それぞれ独立した別個の組織であり、施策等の策定に際しては、両者間で行政文書のやり取りがあるはずである。また、部局内での意思決定及び他部局への意思決定の通知は、その都度文書化されているはずである。」旨主張している。

しかしながら、計画(案)の策定は、1の(2)で述べたとおり、知事を本部長とする推進本部が策定主体であり、教育委員会の事務局の長として教育長もまた本部員として参画する中で、知事部局、教育委員会が一体となって策定作業を行ったものである。このため、実務作業についても、推進本部事務局である総務部財政課が中心となって、推進本部のメンバーである教育委員会をはじめ知事部局各部局、行政委員会事務局等の担当者との間で、協議・調整をすすめる中で、計画(素案)記載内容を形成してきたものを、最終的に計画(素案)未定稿版としてとりまとめた上で、本部会議に提案し、本部会議において決定したものである。言うまでもなく、教育委員会等は、独立した行政委員会であるが、全庁的観点から共通して執行すべき事務にかかる調整については、通常行政委員会事務局を通じて行っているところである。

なお、大阪府行政文書管理規則第14条では、「意思決定にあたっては文書を作成して行うこと並びに事務及び事業の実績について文書を作成することを原則とする」とされているが、本件においては、総務部財政課と教育委員会事務局との協議・調整に基づく学校給食の見直しについて、知事の了承を得て、推進本部会議に提案する計画(素案)未定稿版として文書化している。したがって、同規則に違反するものという申立人の主張はあたらない。

3 行政文書特定及び本件処分の適法性

条例第2条第1項の規定による行政文書とは、「実施機関の職員が作成し、又は取得した文書等であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」である。

一方、本件請求文書は、「大阪府行財政計画(素案)策定において、府教育委員会と財政課との協議の経緯の分かる文書一式(定時制高校の改革の件)学校給食の見直し」であり、この学校給食の見直しについては、2の(2)で述べた手続により計画(素案)に掲載されたものである。すなわち、本件公開文書は、計画(素案)の学校給食の見直しに係る総務部財政課と教育委員会事務局との協議の過程において、実施機関である総務部財政課の職員が作成し、推進本部会議に提案するものとして取りまとめられた上で、総務部財政課において管理されているものである。この件に関して、総務部?教育委員会事務局との協議・調整の過程において取りまとめられ、現に管理されている文書は、本件公開文書以外には存在しない。

したがって条例第2条第1項の規定による行政文書としての要件を満たすものは、本件公開文書のみであり、本件請求に対して行った行政文書の特定は妥当である。

4 結論

以上のとおり、本件処分は、条例に基づき適正に行われたものであり、かつ異議申立人の請求の内容に沿って、実施機関が管理する行政文書を公開したものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

また、条例においては、不存在による非公開決定に対する不服申立てについても、実施機関は、原則として当審査会に諮問しなければならないこととしている。こうした諮問が行われた場合も、当審査会は、条例第23条に規定する調査権限を適切に行使して調査審議を行い、公正かつ簡易・迅速な救済の実現に努めることとなる。

2 本件請求文書について

  • (1)大阪府行財政計画(案)策定の経緯
    大阪府においては、大阪府行財政計画の策定にあたり、平成13年4月1日に大阪府行財政改革推進本部(以下「本部」という。)が設置された。大阪府行財政改革推進本部設置要綱によるとその概要は次のとおりである。本部の所掌事務は、行財政計画の策定並びに行財政改革の総合企画、調整及び推進を行うことである。本部は、本部長、副本部長及び本部員をもって組織されており、本部長は知事、副本部長は副知事及び出納長の職にある者をもって充て、本部員は知事部局の部局長、総務部理事(行財政計画担当)及び行政改革室長等のほか、教育長や監査委員事務局長など行政委員会事務局の長等の職にある者をもって充てることとされている。さらに、本部会議に付すべき議案を検討し、及び調整するため、本部の下に幹事会を置き、幹事会は、総務部理事(行財政計画担当)及び行政改革室長をもって充てられた代表幹事のほか、知事部局や行政委員会などの各部局主管課長などの職にある者をもって充てられた幹事で構成されている。そして、本部の庶務は、総務部財政課(以下「財政課」という。)及び同行政改革室において行うこととされている。
    平成13年4月3日に第1回本部会議が開催され、この会議において、大阪府における行財政改革の取り組み方向等について検討されたほか、大阪府行財政計画(案)(以下「計画(案)」という。)の策定スケジュールの確認が行われた。また、計画(案)は、府の政策形成過程における透明性の向上を図ることを目的として定められた大阪府パブリックコメント手続実施要綱に基づき、その立案の過程において、大阪府行財政計画(素案)(以下「計画(素案)」という。)として一般に公表し、これに対する府民等の意見・提言等を考慮して計画(案)の意思決定が行われることとなった。
    計画(素案)の内容検討・原稿作成等にあたっては、本部の庶務を行う財政課が本部の事務局として協議・調整の中心となってとりまとめる役割を担うこととされており、第1回本部会議終了後、財政課を中心に本部の各本部員が属する知事部局の各部局や行政委員会事務局等との間で計画(素案)の内容検討・原稿作成等が行われた。そして、同年7月31日の幹事会を経て、同年8月3日に開催された第2回本部会議において大阪府行財政計画(素案)未定稿版(以下「計画(素案)未定稿版」という。)が提案されたところ、これを計画(素案)として決定することが了承され、併せて同日、一般に公表されて府民等の意見・提言の募集が行われた。意見・提言の募集は、同年8月3日から8月31日までの間実施され、その間に2,382件の意見・提言が提出された。そして、提出された意見・提言全676項目のうち24項目についての内容を反映させた上、修正された計画(案)が同年9月19日に開催された第3回本部会議において提案・決定され、一般に公表されたものである。
  • (2)計画(素案)及び定時制高校の学校給食見直し部分について
    平成13年8月3日に一般に公表された計画(素案)は、本編及び具体的取組編から構成されており、本編においては、冒頭の「はじめに」と「改革の目指すもの」に続いて、「5つの改革」が示され、その4つ目の「すべての施策を評価し、重点化/NPOとの協働」の中の「主な施策の再構築」の<『量の拡大から質の向上へ』『地域とともに』教育改革の推進>の「14年度に着手するもの」の1項目として、「新たな昼間の定時制課程を設けるなどの、府立高校定時制課程の抜本的改革に着手するとともに、給食の見直しを行います。」との記載がなされている。
    また、具体的取組編においては、本編に記載された内容が具体的に記載されており、定時制高校の改革の項において、「なお、学校給食については、生徒実態及び社会環境の変化を踏まえ、集中取組期間において、見直しを行う。」と記載され、さらに、この項の資料として、定時制課程の志願倍率(昭和40年度と平成13年度を比較したもの)と定職等を有している勤労青少年比率(平成元年度と平成12年度を比較したもの)の表がそれぞれ掲載されている(上記の計画(素案)本編及び具体的取組編において学校給食に関して記載された部分を合わせて以下「本件学校給食記載部分」という。)。
    なお、計画(案)においては、計画(素案)に記載された本件学校給食記載部分の勤労青少年比率の表の内容について修正が加えられている。
  • (3)当審査会において確認したところ、以上のとおりであるから、本件請求文書は、平成13年8月3日に公表された計画(素案)の本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の過程において本部の事務局である財政課と当該事務を所管する教育委員会との間における協議の経緯の分かる文書であると認められる。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

本件異議申立ては、実施機関が本件請求文書に対応する行政文書として本件公開文書を特定の上、その全部を公開する公開決定を行ったものの、異議申立人が、本件請求文書に対応する行政文書として本件公開文書は適当ではなく、また、本件公開文書以外に本件請求文書に対応する行政文書が存在するはずであり、その公開を求めるというものである。そこで、当審査会として本件処分に係る具体的な判断を行うに当たっては、本件請求文書に対応する行政文書が本件公開文書以外に存在するのか否か、そして本件公開文書が本件請求文書に対応する行政文書として適当であるのか否かについて検討する必要がある。このため、当審査会においては、実施機関の説明や提示された資料、異議申立人の主張内容などをもとに、本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の過程について調査し、財政課と教育委員会との間で本件学校給食記載部分に関して協議調整等を行ったことに関する文書が存在するか否かについて検討し、文書が存在する場合には、その文書の行政文書該当性について検討することとした。

  • (1)行政文書に該当する要件について
    行政文書に該当する要件は、次のとおりである。
    • ア 条例において公開請求の対象となる行政文書は、条例第2条第1項により、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド並びに電磁的記録」であって、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」である(条例第2条第1項但し書きに該当するものを除く。)。
    • イ 「実施機関」とは、独立して事務を管理執行する権限を有する機関をいい、地方自治法上の執行機関等を個別に条例に規定している。実施機関は、条例に基づく事務について、自らの判断と責任において、誠実に管理し、執行する義務を負うものであって、現在、条例に規定している実施機関は、知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会、水道企業管理者及び警察本部長である。
    • ウ 「実施機関の職員」とは、実施機関の指揮監督権限に属するすべての職員をいう。
    • エ 「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。
    • オ 「組織的に用いる」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。
    • カ 「実施機関が管理しているもの」とは、実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関が利用、保存している状態のものを意味する。
  • (2)本件請求文書に対応する行政文書について
    ​​​​​​​​​​​​​​当審査会において調査したところ、平成13年4月3日の第1回本部会議において計画(案)策定の方針とスケジュールが了承された後、同年8月3日の第2回本部会議において本件学校給食記載部分が計画(素案)に記載されると決定されるまでには、概ね次の過程を経ていることが認められた。すなわち、ア「定時制高校における学校給食について検討していくべき旨の考え方について、本部の事務局である財政課から、当該事務を所管する教育委員会に対して示されたこと」、イ「上記アの考え方が財政課から示されたことをうけて、教育委員会において定時制高校における学校給食について検討していく旨の意思決定が行われたこと」、ウ「上記イの教育委員会の意思決定が財政課に伝えられたこと」及びエ「上記ウをうけて、計画(素案)における本件学校給食記載部分の原稿が検討・作成され、本部会議に提案されたこと」である。
    • ア 学校給食について検討していくべき旨の考え方が財政課から教育委員会に対して示されたことについて
      実施機関及び教育委員会の説明によると、平成13年4月3日に開催された第1回本部会議終了後、本部の事務局である財政課の職員から教育委員会事務局の職員に対し、「府立高校の定時制課程については、多額の運営経費がかかっている現状を踏まえ、これまで以上に効率的な学校運営に努めるべきであり、その一例として、今後の学校給食について検討していくべきである」とする旨の考え方を口頭で示し、定時制高校の学校給食の見直しについて計画(素案)に記載することを求めたというものである。
      財政課から教育委員会に対して上記の考え方が示されたことについて、当審査会において調査したが、これに関連する文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
    • イ 定時制高校の学校給食の見直しを検討することについての教育委員会における意思決定について
      実施機関及び教育委員会の説明によると、財政課から教育委員会に対して学校給食の見直しについて検討すべき旨の考え方が示されたことをうけて、教育委員会内部においてこの考え方について検討され、学校給食の見直しについて検討する旨の意思決定が行われたというものである。
      当審査会において調査したところ、定時制高校の学校給食の見直しを検討することについての教育委員会における意思決定を行った文書として「高等学校夜間定時制課程の学校給食の見直しについて」と題する文書が教育委員会において管理されており、この文書においては、「総務部の考え方」として財政課から教育委員会に口頭で伝えられたとされる上記の内容が記載され、さらに、「上記に対する考え方」として、「勤労生徒の比率が大幅に減少していること及び補食給食実施校が半数以上を占めている実態に鑑み、完全給食の補足給食への移行について検討する。」との教育委員会の考え方が記載されていることが確認された。なお、この文書は、異議申立人の教育委員会に対する本件請求文書と同内容の行政文書公開請求に対して行政文書として特定の上、公開決定がなされ、既に公開されていることについても確認された。
    • ウ 学校給食の見直しを検討することについて教育委員会の意思決定がなされたことが財政課に伝えられたことについて
      実施機関及び教育委員会の説明によると、教育委員会において上記意思決定がなされたということについては、教育委員会事務局の職員から財政課の職員に対して口頭で伝えられたというものである。
      教育委員会における上記意思決定が財政課に伝えられたことについて当審査会において調査したが、これに関連する文書が実施機関に存在することについて確認することはできなかった。
    • エ 計画(素案)の本件学校給食記載部分の原稿の検討・作成について
      実施機関の説明によると、学校給食の見直しを検討することについての教育委員会の意思決定が財政課に伝えられた後、財政課の職員が計画(素案)に記載する本件学校給食記載部分の原稿を作成したというものである。また定時制課程の志願倍率や定職等を有している勤労青少年比率の表については、一般に公表・販売されている「表とグラフで読む府立高校<府立高校白書>(平成12年3月教育委員会発行)」(以下「府立高校白書」という。)に記載されている数字をもとに、財政課の職員が教育委員会事務局の職員に直近年度の数字を電話で確認して修正した上で作成したというものであり、原稿の検討・作成過程において財政課の職員が改めて教育委員会から資料等を取得した事実もないというものである。また、上記イの教育委員会における意思決定の時点において、財政課と教育委員会との間に考え方の相違はなかったため、本件学校給食記載部分の内容については、財政課において当初作成されたものが修正されることなく、本件学校給食記載部分以外の原稿とあわせて計画(素案)未定稿版としてとりまとめたというものである。
      当審査会において調査したところ、まず、財政課の職員が本件学校給食記載部分の原稿を作成した際の根拠となる数字が府立高校白書に掲載されていることが確認された。また、本件学校給食記載部分以外の部分を含めた計画(素案)については、平成13年8月3日開催の第2回本部会議に提案する計画(素案)の事務局案として、実施機関において決裁手続を経て意思決定されていることが確認された。そして、これが計画(素案)未定稿版として、同年7月31日の幹事会を経て第2回本部会議に提案され、修正なく了承された後、同日付けで計画(素案)が一般に公表されたことが確認された。
      以上のことから、第2回本部会議に提案された計画(素案)の事務局案の本件学校給食記載部分が本件公開文書であると認められるが、本件公開文書は、財政課の職員が本件学校給食記載部分の原稿を作成し、その後財政課と教育委員会との間での原稿内容の確認等を経て、他の部分の原稿と合わせて計画(素案)未定稿版とされたものであるから、本件学校給食記載部分に関して財政課と教育委員会との協議の経緯の分かる文書であるといえるものである。そして、これは実施機関が管理している行政文書に該当することは明らかであるから、本件公開文書は、本件請求文書に対応する行政文書であると認められる。
      ​​​​​​​しかしながら、本件公開文書以外には、計画(素案)の本件学校給食記載部分の原稿の検討・作成の過程における財政課と教育委員会との協議に関連する文書の存在を確認することはできなかった。
  • (3)以上のとおり、平成13年4月3日の第1回本部会議において計画(案)策定の方針とスケジュールが了承された後、同年8月3日の第2回本部会議において本件学校給食記載部分が計画(素案)に記載することが決定されるまでの過程について当審査会において調査したところ、本件公開文書以外に本件請求文書に対応する行政文書の存在を確認することはできなかったところである。
    さらに、計画(素案)における本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の過程について次のことが認められる。
    計画(素案)は、先に述べたとおり、府の政策形成過程における透明性の向上を図ることを目的として実施されているパブリックコメント手続の一環として府民等に公表し、これについて提出された府民等の意見・提言等を考慮して計画(案)として意思決定を行うことを前提として策定されたものであって、計画(素案)における本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の過程は、大阪府として最終的な意思決定を行う過程にあたるものではない。そして、現に計画(案)として意思決定を行う過程において、前述のとおり、計画(素案)に対する府民等の意見を踏まえて、本件学校給食記載部分の勤労青少年比率の表の記載内容をはじめ計画(案)において複数箇所が修正されているものであり、大阪府として計画(案)全体の策定過程における透明性の確保について配慮されていることが認められる。
    また、計画(素案)に本件学校給食記載部分を記載することを決定するまでの過程においては、実施機関及び教育委員会においてそれぞれ先に確認した文書を作成して意思決定がされていることが認められるものであり、その上で、知事及び教育長などが出席した第2回本部会議において大阪府として最終的に意思決定されているものである。
    さらに、計画(案)の策定を所掌する本部は、知事を本部長として、知事部局各部局長や教育委員会など行政委員会の事務局の長等を本部員とする組織であり、本部における計画(素案)の本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の途上において、本部の事務局である財政課と本部員である教育長が属する教育委員会との間で文書によらない協議・調整等が行われたとしても、それだけをもって、特段不自然・不合理といえるものでもない。
    そして、本件学校給食記載部分については、財政課と教育委員会との間で内容について早期に見解の一致をみて変更部分がなかった等の理由により本件公開文書以外に本件請求文書に対応する行政文書が存在しないことも理解し得るところである。
    以上のことを総合すると、本件公開文書以外に、本件請求文書に対応する行政文書の存在について確認することができず、また、計画(素案)における本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の過程において存在しないことについて特段不自然・不合理な点も認められない。
  • (4)異議申立人の主張について
    なお、異議申立人は、知事部局と教育委員会はそれぞれ独立した別個の組織であり、施策等の策定に際しては、相互に行政文書のやりとりがあるはずである、また、それぞれの組織内で意思決定がなされているはずであり、大阪府行政文書管理規則(以下「規則」という。)では「意思決定された事項については文書化すること」を義務付けており、それぞれの部局内での意思決定や他部局への意思決定の通知は、その都度文書化されているはずであること、そして、最終段階での決定だけが意思形成ではないのだから、意思形成過程各段階での意思決定について公開すべきであり、他に多くの行政文書が存在するはずであると主張する。そこで、これらの点について検討する。
    規則第14条は、第1項において、意思決定に当たっては文書を作成して行うこと並びに事務及び事業の実績について文書を作成することを原則とすることを規定し、第2項において、第1項の規定にかかわらず、意思決定と同時に文書を作成することが困難な場合及び処理に係る事案が軽微であるものである場合は、文書の作成を要しないものとするが、意思決定と同時に文書を作成することが困難な場合にあっては、事後に文書を作成しなければならない旨を規定している。
    本条の趣旨は、異議申立人の主張するとおり、事務・事業等の最終段階の意思決定の場合に限って文書の作成を要するとするものでないと考えられるが、他方、異なる執行機関相互の協議・調整等に関する全てについて文書の作成を要するとしているものでもない。特に計画(案)の策定を所掌する本部は、上記(3)で述べたとおり、知事を本部長として、知事部局各部局長や教育委員会など行政委員会事務局の長等を本部員とする組織であり、本部における計画(素案)の本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の途上において、本部の事務局である財政課と本部員である教育長が属する教育委員会との間で文書によらない協議・調整等が行われたとしても、それだけをもって規則の趣旨に照らして特段不自然・不合理といえるものではない。また、計画(素案)自体が大阪府における計画(案)策定の意思形成の一つの段階であって、それについては知事、教育長等が出席した第2回本部会議において意思決定され、その結果が公表されて府民の意見等も踏まえて修正された上で計画(案)が策定されており、計画(素案)における本件学校給食記載部分の内容検討・原稿作成等の過程において、特段不自然・不合理である点が認められるものではない。

4 結論

以上のとおり、本件請求文書に対応する行政文書は、本件公開文書以外に確認することはできず、また、これについて実施機関に特段不自然・不合理である点も認められないのであるから、本件請求文書に対応する行政文書について実施機関が管理しているものは本件公開文書のみであると認められる。そして、実施機関は本件公開文書の全部を公開する決定を行ったのであるから、本件処分は妥当である。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり答申する。

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