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平成24年12月19日(水曜日) 知事と教育委員の意見交換 議事概要
教育振興基本計画について、知事と教育委員で意見交換を行いました。
日時
平成24年12月19日(水曜日) 午後1時から午後2時
場所
大阪府庁本館3階 特別会議室(大)
出席者
松井知事
隂山教育委員長、中尾教育委員、立川教育委員、木村教育委員、
中西教育長、新井政策企画部長、福田府民文化部長
議事概要
<中西教育長>
前回は8月24日にさせていただき本日は2回目ということになるが、教育振興基本計画の素案について、知事と教育委員との意見交換をよろしくお願いしたい。
[松井知事]
この振興計画には、非常に期待している。この方向に沿って取組みを進め、現場が本当に変われば大阪の教育は変わると思う。
特に、本来、教育委員会では公立の議論をするのが役割だが、この計画は「公私トータルでの計画」となっている。地方自治体でこういう計画をまとめ上げたのは、他にないのではないか。
あとはこれを具体的に実践する現場、これが一番重要だと思っているので、引き続き教育委員会の皆さんで、この目的・趣旨に沿った現場づくりをよろしくお願いしたい。
<隂山委員長>
知事には、財政上色々な手だてを講じてきていただいており、私たちもそれに応えるべく今後も頑張っていきたいと思っている。
今回、振興基本計画の作成については、教育委員会だけでなく、まさしく「公私」のこともあるので、知事部局の方とも随分いろいろな打ち合わせもさせていただいた。その点でも、教育委員会だけでなくまさに大阪の総力を挙げた計画の骨子が出来上がってきているのではないか。総花的なように見えて、内容を突っ込んで議論しているので、かなり実のあるものになってきたかなと思っている。
特に今一番感じているのは中学校教育。高校への接続ということもあるし、絶対評価も含めて中学校教育というものをこの1,2年は重視をしていきたいと思っている。例えば、非行問題等を見ても、小学校では大したことはなく、高校も比較的落ち着いている。実は中学校でさまざまな問題が集中的に起きてきており、中学校問題というのが大阪の教育の一番の課題になってくるかなと思っているので、事務局とも調整を取りながら、できる限り早くいい形に結果が出るぐらいのところまで持っていきたいと考えている。
中学校給食も始めていただいた。あとは高校の中退率や就職の件、進学する子は最終的に大学の方にお任せする形になるが、特に、高校生の大阪での就職についても府立高校の大きな課題になるので、ここもしっかりやっていきたいと思っており、重要度をきちんと見定め、プライオリティーをしっかり持って取り組んでいきたい。
[松井知事]
中学生の非行でいうと、小学校から中学校に入ると大人びるというか、少し自分の存在感をアピールしすぎてしまうことがある。
<隂山委員長>
中学校でなぜこういう問題が起きてくるのかという構造をデータ面からも明らかにしようという事で、事務局の方でもかなりいろいろとまとめていただき、一つわかってきたのは、やはり中1が勝負だということ。これは小中の連携がポイントということも見定めて、中学校はしっかりとやるけれども、小学校の方でも頑張っていただいて、よりいい形で中学校につないでいくことが重要。
それから、大阪府内では、北も南もほぼ同じような問題が同じように存在していることが見えてきたし、学習と問題行動の関係のようなものも、ある程度見定めてこれたので、かなり具体的な手が打てるのではないかなと思う。
<中尾委員>
私は、長らく企業におり、その後、公立の高校と私立の中・高の校長をさせていただいたが、つけの先送りというか、企業から言わせると大学の教育がなっとらん、大学は高校、高校は中学、中学は小学校、ということになっている。いま大事なことは、このつけの先送りをさせないことで、特にこの連結部分のところをしっかりやっていかないといけないと思っている。幼稚園などの幼児教育と小学校との連結、小学校と中学校、中学校と高校、それから社会との連結と、このあたりがこれから非常に大事になってくるのではないか。
今回、計画ができて実際に実行していくときに、いろんな部署が連携して取り組んでいかなければいけないと思っている。
[松井知事]
そのためには、市町村の教育委員会にもこの計画を理解してもらって、府教委と一体となって一緒にやってもらわないといけない。これが現場を作っていくということ。
<木村委員>
小学校5・6年生の高学年あたりから思春期が芽生えてきて、中1・2ぐらいから反抗期に入ると。それが小学校5・6年生の途中あたりから出始めていて、ちょっと前倒しになって低年齢化しているように思う。
先日、小中一貫校に視察に行ったが、非常に理にかなっている仕組みになっており、6・3制を見直すような、4・3・2制や、小学校4年間・中学校5年間というような新しいスタイルとか、そういうことを模索していくのも面白いかなと思う。
中学校の先生方が、できる限り反抗期になる手前のところで子どもたちと接するような形になれば、信頼関係ができた状態で反抗期に突入することになり、その方が抑えやすいというメリットもあるのかなと。私も塾現場で小学生から見ているお子さんと中学生から来たお子さんでは、やはり接し方が違う点があると思う。そういった意味で、個人的には小中一貫校がもっともっと普及していけばと思っているけれども、予算もあることなのでなかなか難しいだろうが。
[松井知事]
小・中学校については、やはり市町村教育委員会がやってもらわないと。
<中西教育長>
知事もご存じのとおり、箕面市に施設一体型の小中一貫校があるが、施設一体型はまだ少ない。しかし、連携型というのは非常に進んできており、中学校1校と小学校2校がタイアップして様々な取組みを行っているところはある。
<立川委員>
中学校の荒れという部分は、今後給食が導入されることで、若干緩和されるかなという期待を持っている。子どもの貧困とか経済的格差を少しでもサポートできるものになるのではないかと思う。
私は、自立・自律するとは、納税者を育てることと思っており、高校に関しては就労との接続という点に関しては非常に大事になってきていて、商工労働部の事業でも大変お世話になっているという現状がある。納税者を育てるという意味では、定時制高校も含めて、府立高校が最後の砦になっていく。
そこで、進路保障という点で、就学のセーフティネットという観点はあるけれども、就労のセーフティネットが少し薄いのではないかと以前から言っている。そのあたりも手厚くやっていきたいと思っている。
それから、PDCAサイクルが定着して、きっちり進んで行っていると思うけれども、実態把握というR(リサーチ)も非常に大事だと思っており、子どもたちはまともに社会情勢の影響を受けるので、子ども・社会・学校の実態把握は常にやっていかなければならないと常に思っている。
[松井知事]
就労に関しては基礎教育が重要。まさに語学力、試験用の英語でなく理解できて話せるという基礎の部分と、読解力。本を読むとかそういうところ。就労していく限りはコスト意識もきちんと持っていかないといけないので、基本的な算数・数学。そこを小・中、高にかけて、基礎の部分をどれだけ身に着けてくれるかということ。
<隂山委員長>
工科高校等は実社会に出るための直接的な役割を担っているが、基礎学力が足らないと、高校中退というような問題も出てくる。やはり小から中のところの基礎固めが少しうまくいってない。
ただ、ここは中学校がやってないということだけではなく、今の日本全体の学校教育システムの中に色々と問題点があると思っていて、国における学校制度や教職員の資格制度、前に申し上げた有意な人が学校現場に入ってこれるような、国全体のグランドデザインが必要かなと。例えば幼児教育についても、地方だけでは煮詰まってしまう。保育所、幼稚園、一般の家庭、それぞれ違うところでおられて小学校で一緒になるという小1プロブレムの問題もあり、ここのところを教育委員会だけで話し合っても、かゆいところに届かないというか、資料すらなかなか手に入りにくいというようなことがある。
[松井知事]
1年前、当時は民主党政権だったが、教育に関するセミナーに安倍晋三さんと一緒に出て、「大阪でやっていることいいね、あれやりたいんだよね。」と言ってくれていたので、今度、絶対やってもらえると思う。どんどん物を申していきましょう。
<隂山委員長>
ぜひ言っていってもらいたい。安倍さんは教育再生会議でご一緒させていただいたが、非常に現実主義者。理念は理念として持ちながら、問題点を着実にフォーカスして理解されて政策化される方。教育再生会議は途中で立ち消えのような形に見えたが、今、実際に教育委員会にいるとあそこで議論されたことは結構役に立っている。今後、安倍さんが総理になられたら、法制度面など含めていい方向に行くのではないかと思って期待している。ただ、激しい方向に行くのではなく、国民本位の制度改正になればと思っている。
[松井知事]
この素案が確定したら、文部科学大臣を訪問して「これに合わせて法律変えてもらいたい」というようなことも。
<隂山委員長>
そういう力技ができればいいなと。
とりわけ今困っているのは、教員の養成、採用、研修のシステムが、その時々の思いで作られていること。例えば、教員になるためには大学で老人介護の実習が必要なのだが、これは田中真紀子さんが文部科学省の何かをしておられたときにお父さんのお世話をされた経験から、こういう介護をする経験が学校の先生に必要だということになった。介護の経験をすること自体はいいことだけれども、老人介護をしている事業所が介護をする予定ない人の研修を受け入れないといけないということになったりとか、教師になる時にそこにある種のハードルを感じてしまったりするとかの問題がある。
[松井知事]
そういうものも地方分権で任せてもらえたらいい。大阪の教育現場に行く人はこういう試験を、経験を実践研修してもらうとか。文科省が全国一律にすべてを決める、というものではもうないと思う。分権改革どんどん言っていきましょう。ただ、大阪府の条例では、現場で力不足の人たちは免職もと書き入れているので。向こうから何か言われるかもしれないが。
安倍晋三さんは同じ考え方を教育再生会議の中でも言われていたし、私も一致しているので、理解していただけると思う。
<木村委員>
高校無償化の問題が気になっている。公立の視点から見ても私学の視点から見ても、いつごろ分かるのかなと。府の財政の状況もあるし、国の政権も変わったので何ともいえないとは思うが、方向性として無償化を維持するという方向でお考えか。
<松井知事>
公私の競争条件を同一にするという考え方に変わりはない。
<木村委員>
多少、有料になるということも。
[松井知事]
公立高校で授業料負担があるのに、私学が無償というわけにはいかない。同じ条件で切磋琢磨してもらう。これが基本的な考え方。これだけ経済が厳しいときに次世代を育てているというところなので、そこは税を投入させていただくというのは納税者の理解を得られると思っている。ただ、そのお金が経営者側にいくのではなく、生徒・保護者側にしっかり届くようにしていかなければならない。
<隂山委員長>
国の制度であり、立場上言いにくいだろうけれども、高校無償化になってほしいというのは、知事自身の思いとしてはどうか。
[松井知事]
全て無償というのではなく、所得制限は入れられるべきものだと思っている。
<隂山委員長>
我々としても、この基盤のところがどうなるかというのが心配。個人的な思いになるが、いろいろあった民主党政権、少なくとも教育や子育て世代に非常に多くの投資を行ったということについては良かったなと思っている。安倍晋三さんは教育に事のほか強い思いをお持ちなので、この部分はいい形で引き継いでいっていただけたらと強い願いを持っている。
[松井知事]
「バラマキ4K」と言われたが、高校無償化は良かったと思う。子ども手当はちょっと別。高所得者までキャッシュがいくというのは違うと思う。それが本当に子どものためになるのか、使い方が全然わからない。
それなら、我々はやりたいことがいっぱいあるので、そちら側に予算を回していただき、できる限り現場に任せようということに。学校現場でどうしようもできないものは市町村教委で、そこでもできないことは府教委で、という形で、次の世代を育てるための予算を地方に回してもらいたいと思っている。
<中尾委員>
先日、東大阪のクリエイションコアに視察に行ったが、素晴らしい240位の企業の展示があった。高校生が見学に来るのか聞くと、1校しかないとのことだったので、商工労働部に聞いたところ、そこまで手が回らないとのことだった。私は、ああいうものこそしっかり子どもに見せていくのが大事だと思っている。
また、公私という部分から考えると、公立の場合は私学にできないことをやらないといけない。その中の1つが工科高校。ところがその現状を見ると、設備がものづくりの現場から離れたものなっている。そういったところへの投資も必要だと思うでので、ぜひ予算面も含めて。ものづくりは大阪の特色にしないといけない。
<松井知事>
工科高校の施設改善をすることになっていたはずだが。
<中西教育長>
去年から予算をつけていただいて、25年度予算でもお願いしている。
<木村委員>
子どもたちが、クリエイションコアのような施設や東大阪の優秀な中小企業とふれあうきっかけ作りがまだまだ少ないのかなという印象がある。非常にいい製品があり、それを子どもたちが知ることによって興味を持ち、こんな会社で働きたいなとか、会社側もこんな子が欲しいなというようなマッチングが深まっていけばいいと思う。
[松井知事]
それはまさに工科高校の校長の、現場のマネジメント力。
<中尾委員>
かなり色々な投資をしてもらっている。ただ、私がメーカーで働いていた状況から見ると相当離れている。ものづくりが抜本的に変わっているので、カリキュラムの内容も考え直さないといけない。いろんな取組みが必要。
<木村委員>
11月に新任教育委員研修で文科省に行って勉強させていただいたが、事務局との連携を大事にしてくださいということ、教育委員会の事務局の苦労を理解してくださいということ、あともう1点、一番大事なことは発信であるということ。いい取組みをしようとしていてもなかなかメディアに取り上げてもらえなかったり、真面目にしていても府民の方に伝わりにくかったりというような議論が白熱した。発信のところでもう少し工夫しなければいけないなという危機感を持っている。
<立川委員>
東京都は知事との意見交換を定期的に行っており、今回は基本計画があるからということでこういう場を設定していただが、定期的な意思疎通というか、共通認識が持てるように。
[松井知事]
事務方の教育長とは定期的以上に討論をしている。フルオープンでやるか知事室でやるかの違い。私学も含めてガンガンやりあってきている。教育委員のみなさんはそれぞれの意見を委員会の中でどんどん出していただいたら。私のところにはちゃんと伝わっている。
<隂山委員長>
府内全域を完全に掌握しているわけではないが、我々から見ると全体的には落ち着いてきているかなと思っている。大津の事件があり、粗暴な案件も数的には上がってきているので、正直、大阪でも厳しい事例が挙がってくるかなと思っていたけれども、勿論なくはなかったが心配していたほどではなく、府教育委員会事務局も機敏に対応していただいたりとか、いじめ対応の窓口のリンクを大阪府全体のホームページからリンクしていただいたりとか、いい形で来ているんじゃないかと思っている。知事の方から見てどうか。
[松井知事]
大津の事件のあとで泉州の事件があった。もっと出るかなと思ったけれど、委員の皆さんも頑張っていただいているおかげで、それ以上は出なかった。きちんとやっていただいていると思う。
<隂山委員長>
知事からそう言っていただけると、私たちとしても、今までやってきたことに自信をもってこれからもやっていきたいと思う。
[松井知事]
よく言われるのが教育と経済との因果関係。我々の年代が中学、高校生ぐらいの子どもを持っていると思うが、そういう世代がしっかり職を確保できるということになってくれば、教育に目がいく。そもそも食べること自体が非常に厳しい状況になると、なかなか自分の子どもの教育に目が届いていないということもある。そこで、教育単体でものを考えるのではなく、知事として大阪全体の経済を考えながら、教育にいい影響を与えていけるようなものをどう作っていくか。いろいろと大阪は変わりつつあるという部分で、ちょうど我々の世代ももう少し辛抱して、次の世代に必要な教育の現場をちゃんと作っていこう。また、家庭は家庭でしっかりと子育てしようという感覚を少しずつ持ってもらえているのかなとは感じているところ。
<隂山委員長>
特に中学校の給食導入促進を決めていただき、全ての地域で実施に向けて動いているが、知事の方からも各市町に言っていただいて、できる限り早くできるようにお願いしたい。それができればかなり進むんじゃないかなという感触を持っている。
[松井知事]
今までの弁当を否定しているわけではない。そうではなくて、しっかりと栄養をとってもらうという話。これは大阪全体にきちっと広がるようにやりたいと思っている。
<中尾委員>
学校は企業と比べると危機管理体制が弱い。ポイントとなるのはやはり校長、管理職。これからの教育をよくしていこうと思うと、トップである校長をいかに育てていくかということが大事になる。年齢構成を見ると真ん中の方は少なくなっていて、次の校長は飛んで若い人にやってもらうことになるので、ミドルマネジメント層の育成というのを真剣に考えていかないといけない。
<立川委員>
そういう意味では、授業を教える教員とマネジメントに特化した専門職を分けて育てていくというのも視野に入れていく必要があると思う。
[松井知事]
校長はマネジメント。前回の意見交換会でも言ったことだが、専門分野の人はどんどん講師などで外から入っていただき、自分の持っている知識・知恵をしっかり伝えてもらう。まさに工科高校などでぜひやれればいい。ハイテクだけではなくローテクの部分。取組みが進めば、大阪のものづくり技術を継承できる人材ができるのではと思っている。70歳を過ぎても現役ですごい人はいる。ところがそれは体に染みついたものなので教えられないというのがある。それで、次の人がいないというのが現実。
<立川委員>
そういう職人さんとか伝統技術に早く触れるのが大事。
<中尾委員>
工科高校も2つに分けないといけない。大学をめざしていくような学校と、それから技術者・技能を持った人を育てるというような。技能者を育てるというのは大事で、そのところがなくなると日本のものづくりは抜けてしまう。
<立川委員>
高校全入と言われているけれど、95%が入学しても残りの5%は中卒になっている。じゃあ中卒求人があるかというと皆無に等しい。職人を育てるという意味では中卒求人も必要なのかなと。企業もいつの間にか中卒求人を出さなくなったり、高卒求人を採っていたけれどもいつの間にか大学生が来るようになり、高卒求人も出さなくなったという企業が増えてきている。大阪では熱い思いをお持ちの経営者の中小企業がたくさんあるので、中卒求人も視野に入れていただいた方がいいのかなと最近すごく思っている。
[松井知事]
そこは企業が判断して募集している。もちろん雇用の場を確保してくださいというのは言えるが、行政として、中卒を定期的に採用してもらいたいというのはなかなか難しい。やはり企業独自に判断するもの。
<立川委員>
定時制でも昼間に働いているという生徒も非常に少なくなってきていて、アルバイトすらも通らないという時代になってきている。そういう意味では中卒求人は極端にしても、在学中に就労していくという方向性をつけてやらないと、高卒時点で22,3歳になっている定時制生徒もたくさんいるので、そういう意味でのセーフティネットの強化もしていただければと。
[松井知事]
計画にあるように、まずは自立するための意識をしっかり義務教育の間に持ってもらうこと。それがあれば、自立するために必要な教育を受けるのか、先ほどあった技能の方へ行った方がいいのかどうか、どちらが自分が自立できるのに一番ふさわしいかを、本人が考えるべきものであると思う。
<隂山委員長>
校長公募の件について、報告がてら感想を申し上げる。結果として民間から来られた方が4名で、少ないのではないかという意見もあると聞いているけれども、実際に選抜した側としては、教頭先生から上がってくる人がいいかというとそうとも言えず、いい校長先生をたくさん用意するというのはなかなか難しいなというのが率直な印象。社会の仕組みの話になってしまうが、校長公募を受けたい人は、塾というか、大学の養成課程というか、MBAみたいなものでもいいが、そうしたものがない状態で学校現場に来られるのはまだハードルが高いなと感じた。一方で、かつて校長をやっておられた方の再任用は判断に迷った。今回はより良い人に校長になっていただくというのを基本方針にやったので入れたが。やはり長い目で見た場合には、教育界からもマネジメントできる教職員を育てていかないといけないと思う。
[松井知事]
おっしゃる通り。新大学構想会議の中でもそのあたりは検討を。
<福田部長>
新大学構想会議で、まだ現時点で具体的に出せないけれどもそのあたりについても検討中。
[松井知事]
新大学構想会議の中でもいろんなアイデア出してもらっている。国の動きを待っていられないので、府大と市大の統合に向けた中で、まさにおっしゃっているような話をこの会議でもやってくれている。
<隂山委員長>
今の日本の教育学というのは、戦後になってから戦前の反省が行き過ぎて、学校現場と教育学が乖離してしまっている。教育学はアカデミズムの学問になっている。ということで文部科学省では現場の先生を大学の講師に招くという教職大学院構想というものが動いてけれども、これはこれで数少ない優秀な現場の教師を引き抜くことになる。だから、やはりこれは全体的な教員養成と学校現場とをトータルで見ていかないと、今あるものを回しているだけでは無理かなということを思っている。
[松井知事]
一方では現場で子どもたちに授業しながら、もう一方ではマネジメントできる次の世代の教師・校長を育てるということ両方やって行けるようになっていったら一番いい。
<木村委員>
教育委員会の活動自体が外からどのように映っているかとか、このあたりは良くなってきたとか、まだまだこの辺ちょっと遅いなとか、客観的に感じられる点を教えていただければ。
[松井知事]
今回の計画の策定において、皆さんと議論できて私は満足している。あとはこれを本当に現場でやってもらうというところは教育委員の皆さんの仕事になってくるので、できる形づくりをぜひお願いしたい。
<中西教育長>
私学の方で他に何かあれば。
<福田部長>
今回の計画では1項目作っていただき、他府県にない形で私学の位置づけをしっかりしていただいた。大阪の場合は公私一体でないと教育が前に進まないので、計画に基づいてより一層連携を深めていきたい。
<中西教育長>
我々としても、教育委員会と府民文化部の事務局レベルでの連携をこれまで以上に強めていきたいと思っている。
<隂山委員長>
いじめの対応マニュアルを作成したが、警察の真摯な協力があっていい形に仕上がったと思っている。学校現場では、子どもたちを警察に引き渡すというと罪人を送るみたいに捉えられがちだが、警察が教育的な視点・心で対応してくれたのがありがたいと思っており、これを学校現場の方にきちんと伝えて、学校の教師だけで全うしようとするのではなく、社会全体で子どもたちを育てるんだという視点で、いい形で警察と連携していくように促していきたいと思っている。
[松井知事]
犯罪まで及んでいる場合もあり、いじめというひとくくりにできないのが問題。ただ、それで自分を責めて命を落とすということはしないでほしい。その時期は必ず過ぎるので。
<隂山委員長>
おっしゃるように子どもたちの成長過程で起きてくるいじめと、明らかに人を蹂躙する学校内犯罪みたいなものがあり、対応マニュアルにも刑法の条項を入れて区別・判断ができるようにした。ただ、学校内犯罪というきつい言葉を使うと現場がびっくりしてしまうのでいじめという言葉に一括りにしているけれども、我々は明確な基準を持って対応しようと思っている。
[松井知事]
大切なのは、早期発見、早期是正。
<中西教育長>
ほぼ予定の時間になったが、最後に知事から。
[松井知事]
10年の計画ということで、小学校にいる子どもたちが高校を卒業するくらいになる。その子どもたちが様々な結果を出してくれるというか、その子どもたち自身が大阪で教育を受けて良かったな、自分も十分人生やっていけるなと、そう思えるような現場にしたいと思っている。
<隂山委員長>
私からも一言。私の任期のうちに、先ほど申し上げたような中学の問題、小中接続、中高接続を含めてきちんと形にしたいと思っている。ついては、いつもお願いすることになるが、財政的支援あってこそ成り立っていくものであり、今まで支援していただいたものについてはかなりいい形になってきていると思っているので、今後とも財政的支援、人的支援含めてご支援いただけるよう、よろしくお願いしたい。
[松井知事]
委員長のネットワークで、43市町村の教育長をつないでいけるようなことができればいいと思う。
<中西教育長>
ありがとうございました。
本日の案については、知事と教育委員との協議が整ったと理解させていただいて、年内に素案を固め、1か月間パブリックコメントを実施させていただく。その上で2月議会に臨むということで。それから、別途、事業計画も作成する予定。
[松井知事]
よろしくお願いします。どうもありがとうございました。