ここから本文です。
第2回大阪府教育振興基本計画審議会 議事概要
日時
平成24年11月21日(水曜日) 9時25分から11時50分
場所
大阪キャッスルホテル 鳳凰
出席委員
梶田会長、森田会長職務代理、小田委員、神谷委員
議事概要(1.開会/2.審議/3.閉会)
1.開会
(事務局)
- 4名の委員の出席があり、会議が有効に成立していることを報告。
2.審議
(1)10の基本方針ごとの基本的方向等について
- (会長)
本日は、「中間まとめ」を最終的なものにまとめていくにあたり、今後取組みを進めるべき項目として整理されている10項目について、前回のヒアリングでいただいたご意見も念頭に置きながら、これから進める取組みの基本的方向や、それに関連する指標について、率直なご意見をいただきたい。
資料説明
- 事務局より、配付資料について説明。
- (会長)
確認になるが、資料の1ページをご覧いただきたい。
府の教育振興基本計画のイメージということだが、本日議論いただく「基本的方向」については、今回の計画は皆さんご承知のように、10年ぐらいの見通しを持ちながら5年程度をかけてこういう方向にもっていこうという、年度を超えた大きな方向性づけになるので、かなり抽象的になるのはやむを得ない。
もう1つの「関連する指標」というのは、各年度ごとに基本方針に基づいて年度計画、予算の裏付けのある具体的な事業プロジェクトになるが、これは今日すぐにできるものではなく、各年度ごとに考えていっていただくものだが、具体的なメルクマールとなる指標については、事実として置いておかないと話が浮いてくるので、必要だということ。今回示されているもの以外で「例えばこういう指標はないか」あるいは「こういう指標は出さない方がいい」、「各年度で柔軟に考えていくべき」等々のご意見をいただければと思う。
それでは、10項目あるが、全部一緒にというわけにいかないので、4つに分けてご意見をいただきたい。
【1.小中学校の教育力の充実】【3.障がいのある子どもの自立支援】【4.豊かな人間性のはぐくみ】【5.健やかな体のはぐくみ】
- (会長)
まず、項目の1,3,4,5について、みなさんのご意見をいただきたい。 - (委員)
項目1が教育力の充実ということで、学力に関する内容が入っており、項目5が健やかな体ということで体力ということがある。両方とも非常に重要な課題ということだが、5の健やかな体のはぐくみに関する指標については、二極化が顕著になっているということを基にして、2つ目の指標で5段階の総合評価で下位2ランクのDとEの割合に注目して、減らしていこうということになっていると思う。同じようなことが1についても配慮されてもいいのではないか。平均点・無答率に着目しているが、平均点に加えて、分散、どの程度広がりを持った学力構造があるのかということと、なかなか難しいとは思うが、経年変化を比較できるような指標の開発を。今ある指標で測っていくということで基本的には良いとは思うが、将来、5年先10年先には、欧米のように、経年比較できるような指標の開発も必要になると思う。
国レベルでもそういうプロジェクトが進んでいるとのことだが、大阪府でも、ものさしを作っていく。先生方も努力されるわけだから、努力が大雑把に捉えられるよりは、詳しく捉えられる方が良いと思うので、比較可能なものさしを作る。そして、分散を視野に入れた指標の開発を、今あるのであればいいが、ないのであれば目指すようなことが、この基本方針にあってもいいのではないかと思う。つまり現状では、府民に経年比較できる満足できるような指標が十分に開発されているわけではないという前提でデータを読んでもわらないと、ミスリーディングもありうると思う。
それから、今のようにものさしをできるだけ正確に作るということと、ものさしで測って、効果が上がったという市町村だとか課題のある学校が、努力された部分を共有していくことも重要。それぞれの課題をそれぞれの学校で一から作っていくということも大事だが、うまくいったという報告をしてもらって、それをみんなで学べる場というか、そういうものも学力や体力に関してはあってもいいと思う。そのために指標を作るというところもある。うまいアイディアがあればそれをいただいてしまえばよいのだから、それを基本方針の中に入れたらいいのかどうかはわからないが、共有できるようなことを方針の中にどこかに入らないかなという気がした。 - (会長)
大事なことなので、私の方からも。
項目1の基本的方向の1つ目「課題のある学校への重点的な支援を行い、子どもの力をしっかり伸ばす」という部分、これは大事だと思うが、その分散ということで、30年ほど前になるが、「落ちこぼれ、落ちこぼしを出さない教育」ということを大阪や兵庫あたりで現場の方々と一緒に取り組んだ。平均値も大事だが、分散で下の方に二極分化で、学力のつかない子どもが学校にいるのはまずいということで、高校1年生で実施しているPISAの国際比較調査で、以前は例えばIEAの国際調査でも、日本の子どもの学力は下の方も上もあまりおらず、大体まとまっていた。ところが、このところ、韓国やシンガポール、マレーシア等の近隣の国と比べても、下の方の学力の子どもたちが非常に増えている。あるいは欧米に比べても増えてしまっている。つまり「落ちこぼれ、落ちこぼし」といわれているような子どもたちが出てきてしまっている。だから平均点の問題だけでなく、そういう問題もあるということで、ぜひその辺も何か表現できないかなと。たとえば、基本的方向の「子どもたちの力をしっかりと伸ばす」あたりに、「一定以上の学力をどの子にもという方向に向かっての努力」という言葉を使うことは必要ではないかという気がする。これが分散の話。
それから経年比較。府がやっている学習調査でどういう設計をしているかはわからないが、国の全国学力・学習状況調査はそこがネック。もちろん、ある程度、同じような問題を作っているということは言えるが、きちっとしたものが今までなかったので、来年4月に悉皆で行う全国学力・学習状況調査は、今までやこれからのものを経年で比較できるような再度の調査をやることが、専門家会議で先日承認された。このことは、やはり、頭に置いておかなければならない。目分量で、大体前と同じくらいの問題が出ていて、その中で何%だから、まぁ大体いいか、では済まない。方法論的に、こういう意味で前の年の何点は今年の何点ぐらいにあたり、来年はもしやるとすれば、その問題構成からいうと、こういう形で比較ができるとそういうことも必要だと思う。
これは色々なやり方が可能なので、計画に書く必要はないが、指標の見方や、府の学力調査等、指標をこれから作る場合はお考えいただいたら良いかと思う。 - (委員)
項目1の課題のある学校、課題のある学級というところに対して、支援教育の立場から巡回相談等で行く中で感じていることも含めてお話させていただきたい。
まず1つは、授業改善が喫緊の課題であり、学力向上にもつながる大きなメインの課題になっているという点であるが、実はその前に、学級経営のことをもう少し強調していただきたいと思っている。授業規律というか、学習環境づくり、つまり、落ち着いた学級、安心できる学級づくりの観点が重要ということである。この学級経営のあり方の課題であり、わかる授業をする事前の準備段階というところに、重要な課題があると思っている。
例えば、スタートのところのテンションが高いままの授業になっているところがあった。そこで、ちょっと目を閉じて、まず15秒おしゃべりせずに静かにしよう、ということをやってもらった。最初は、小学校1年生では5秒ともたないが、3カ月後に行ったら20秒もつようになっている。それ以上の時間することはないと思うが、20秒目を閉じて、はい、目を開けて授業を始めますというところからスタートすると、落ち着いて授業を始められる。単純なことだが、これがあるのとないので、とても変わってくる。わかる授業の前に、もっと学級経営や学習環境を整えていくための大事な視点だと思う。3番目の互いに高めあう人間関係づくりになるのかもしれないが、これからベースを作っていく上で大事なことではないか。
そのことが関連して、違いを認め合うとか否定的に捉えない、失敗を認め合うという安心できるクラスづくり、居場所というのも教育力の全体の向上につながる。クラス運営、学級経営というところを強調する視点もこの1のところであると良いのではないかと思う。 - (会長)
これは全体に関わる問題。障がいということだけではなく。今、普通学級でできるだけ障がいのある子どもも一緒に活動しようという方向でやっているので、今おっしゃったような、どうやって気持ちを落ち着かせるか。昔の教師はノウハウでそういうのがあった。どうしても障がいのある子どもたちが声を発したりすることもあるが、そういう子どもを落ち着かせるだけではなく、他の子で気持ちをかき乱される子が出てきて、という場合に、どういうふうに落ち着かせるか。これは教師力のところでも考える必要があると思うが、多様な子どものあり方に応じて、子どもたちが気持ちを落ち着け、学習の方に気持ちを持っていく力を教師がつけていく、そういうことも必要。学級経営力、多様な子どもへの対応力。
余談だが、学校の先生になる人は、小さい時からすべてうまくいっている人が多く、自分で自分の気持ちがままならない子どもに共感しにくい部分があるという話が最近よく出るので、子どもだけでなく、先生自身が色んなタイプの人間のあり方を受け入れるというところもあるといいなと思う。 - (委員)
冒頭に会長がおっしゃったように、基本的方向なので、ある程度抽象論的なたたずまいというのはその通りだと思う。要はこの基本方向のところで、ある程度、具体論、目標を作るときに入りやすいような言葉があるのが一番いいのだと思うが、大阪の小中学校を中心としたポイントは、学力の問題と体力の問題と、しつけ・マナー・道徳の問題、この辺りで元気のある中学生を作ろうというところが一番の課題だと思っている。
これまで随分取り組んでいるので、中間まとめ等を読めば、既にやっていることがわかるのだが、基本的方向のところに、今回特に重点的に追加をするというか、新たに取り組むところがわかるような言葉があれば、ポイントが分かっていいのかなという気がした。
学力・体力いろいろあるが、体力のところで心と体という言葉がよく出てくるが、体力も心がなければ伴わないと思うので、辛抱強さとか我慢とか、そういったことがあるので、心という言葉が体力の向上のところにあってもいいのかなと思った。
それから、グローバル化というものが課題となってくるわけだが、高校生の場合は、色々やり方があると思うが、小中学生、特に小学生の場合は、海外は無理としても、国内のグローバル化に対応できるような施設というか学校というかそういうところでの代替行為というのも具体論の中では出てくるかと思うが、すでに小規模的にはやっていると聞いているが、大々的にそういうものにも取り組んでいったらいいのではないかと思う。 - (委員)
項目3について。前回のヒアリングでもインクルーシブな教育というお話があった。全体としてのインクルーシブ、つまり、小学校に入学するのか、支援学校に入学するのかという、枠組みやハードのような状態の中でのインクルーシブもあるし、各学校、また各学級の中でのインクルーシブ、そういう考え方と両面から見ていかなければ、一方的な見方になってしまうと、インクルーシブの本来のあり方とは違ってくると思う。
その中で、キーワードの1つとしては、まず、発達障がいということに関しては、小・中・高・支援学校、共通して課題になっているところかと思う。そういう意味では従来の知的障がいや様々な障がいとは少し違って、通常の学級に在籍している場合が多いという点では、少し工夫した研究システムを作り、現場に生かしていきながら検証していくというのは大事になってくると思う。発達障がいのある生徒と共に学んでいくというための方法というのは、知的障がいのある子とはまた違った方法があると思うので、そういうところは大事だと思う。
それから、関連する指標の中で、通常の学級における「個別の教育支援計画」の作成率というのがあるが、非常に難しいところだと思っている。特別支援学校または支援学級に在籍している子どもたちは、「個別の教育支援計画」を前提に、それをガイドラインとして「個別の指導計画」を立てているという点では、「個別の教育支援計画」の作成というのが基本になってくるが、「個別の教育支援計画」の性格というのは、関係機関との連携と長期的なプランということになるので、通常の学級から課題が上がってきた子どもたちは、まず、関係機関との連携ありきではないので、そういった意味では「個別の教育支援計画」を先行して作るというよりも「個別の指導計画」という学校の中での計画を先に作るという形になり、必要に応じて「個別の教育支援計画」を作っていくという、逆の方法になると思う。そうなっていくと、この指標が100%になるというのはなかなか現実的には難しいだろうと思う。もし100%になっている都道府県があるならば、それは「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の統合型、一体型のものを作っているならば100%になると思う。したがって、この指標については、そのあたりの整理が必要ではないか。
あとは以前からお話させていただいているように、就労というところは総力をあげて支援をしていかないといけないところで、就労率ということに関しては、全体の中でサポートしていくことが必要になると思う。
次に、項目4について。これも以前に話をしたことにつながるが、いじめ、不登校、生徒指導というところでいうと、不登校や生徒指導というところに、直接的にかはわからないが、発達障がいが非常に多く関係していると、様々なケースを見て思っている。例えば、口頭で説明しても全く覚えていない生徒がいる。視覚的に流れを書いて説明してあげると、こうだったのかとわかるが、口頭だけで説明をしていると一応返事はするが、全く入っていない。そういった意味では、生徒指導のあり方もその子の特性に応じた指導、支援を行っていかないと、なかなか入っていかないという側面があることをつくづく実感している。そういった意味でも、支援教育との連動も可能であれば付け加えてほしいと思う。
最後に項目5について。標題には「体」とあるが、これは物理的な「体」というところもあるが、心も含めてひらがなで「からだ」と書く場合も多いと思う。ただ、「体力」には肉体的な面と精神的な面があると思うが、どちらかというと身体的な面が強調されていると思うので、精神的なところの体力、つまり「心」というところであり、ストレスとどのように付き合っていくのか、いわゆるストレスマネジメントの視点に関わるような「心」の体力という側面がどこかにあれば良いと思う。 - (会長)
今の話と関係するが、項目4の豊かな人間性というところに、後で検討していただくということで、豊かで「強靭な」人間性という言葉を入れてほしい。「粘り強くチャレンジする」ということを基本的方向で入れていただいている。先ほどご指摘の項目5の健やかな体のはぐくみのところでもいいけれど、強い心、このことがなかなかイメージが出てこないので、豊かで「強靭な」人間性。こういう世の中になってきて、豊かなだけでなく、タフで筋が通っていなければならないというところがあるのではないか。事務局で検討してほしい。
もう1つ。キャリア教育が上がっていて、これはとても良いが、どうしてもキャリア教育というのは、世の中に出てうまくやっていくというところに頭が行きがち。例えばアメリカのキャリア教育は元々そうだったが、ある時期からキャリアというのは本当は人生なんだという言い方が出てきて、いわば、現役で社会でやっている期間、そのための準備の教育だけでなく、死ぬまでの生涯に渡っての人生を考えさせる、そういうキャリア教育でなければならないということが言われるようになってきた。日本でも、まだまだ、文科省が出している報告書などでは、世の中に出てというところが中心となっているが、それだけでないようにしたい。2008年1月に出した新しい学習指導要領のための中教審答申では、「生きる力」というのは世の中に出てうまくやっていく力の基礎であると同時に、自分の人生をやっていく上での基礎になる力という2通りの書き方で書き分けている。
そういうことで、たとえば基本的方向の中に文言で「『良き市民、良き社会人として生きていく基礎的能力の育成』と『自分自身の人生の各ステージを充実した形で生きていくための力の育成』の双方を図っていく」というようなそういうことが必要ではないか。
高齢化社会が進んで、世の中に市民、社会人として濃密に組み込まれている時期もあれば、そういうわけでもない、その後の10年20年というのもあるし、今、現役でやっている場合も世の中での良き市民、良き社会人というだけでは、私の人生というものがないと、はっきり言って潰れてしまう。私の人生、私というものがあって、その上に良き市民、良き社会人というものがないと。現役世代、あるいは現役が終わった後の世代という両方のステージに関係するものだという議論を中教審でも随分やった。ぜひ、そういう表現も入れておいていただくとありがたい。
そうすると、読書の仕方や体験の仕方が変わってくる。世の中に出ていくということでは職場体験も大事だが、高齢者のための福祉施設でお手伝いするという体験、これは自分の行く道なので、そういう体験も大事になってくる。読書についても、同世の中に出ていくかということについての読書も大事だが、世の中に関係なく、自分が生まれてきてよかったと思える人生を送るためにはという読書も必要に入ってくる。今言ったような2つの視点があるのとないのでは、体験とか読書の中身が変わってくるというようなことで、言葉の添え方を工夫していただきたい。 - (委員)
項目4の基本的方向の2つ目に「歴史や文化・伝統に関する教育や、民主主義をはじめとした社会のしくみついての教育を推進する」ということで2つの種類の教育がここに並列されているが、民主主義をはじめとした社会のしくみと、伝統とか文化とは、独立させてもいいのではないか。
イギリスではシチズンシップという科目が中等教育で必修になったということが、非常に大きなグローバリゼーションの中で起きている。大阪でも人権教育をはじめ、様々なそれに関する教育がこれまで行われてきたわけなので、それに関連付けて「民主主義や人権をはじめとした教育」を推進するような形で、ひとつ強調してもいいのではないか。
市民性の教育というと道徳的に生きていきましょうというところが強調されたりもするが、もう1つの意味は、社会に参加して積極的に変えていきましょうという市民性もあると思うので、今ある社会を受け入れるということと同時に、実はこの社会は変えることのできる社会なのだということも、同時にしくみとして独立させるような形で強調してもいいかと思う。阿部謹也氏は「世間」と言っているが、私たちは世間に適応するのではなくて、社会を作っていく担い手なのだということを強調するとしたら、マルをこの下に1つつけて、独立させてもいいのかなというのが私の考え。
感想になるが、特別支援教育の話を伺っていてなるほどなと思った。初めに小・中学校の学力とか体力の分散、二極化という話をさせていただいたが、特別なニーズを持った子どもたちへの支援ということになると、障がいがあることからも、もちろん特別なニーズが出てくる。しかしそればかりでなく、つまり特に障がいがあるというわけでなくとも体力に関することや学力に関することで、実は特別なニーズを持った子どもたちがいるわけで、そういうくくりで特別支援教育が構想できると思う。ここで、この意味も含めて、特別なニーズを持つ子どもたちへの支援という教育文化へより強く踏み出すような振興計画ということを強調されてもいいのかなと思った。 - (会長)
私も項目4の基本的方向の「歴史や文化・伝統に関する教育」と「民主主義」は、離して1項目増やした方がいいのかなと思いながら、今のお話を聞いていた。その中に、実は障がいの話も、民主主義や「違いを違いとして認め合う共生主義、共生社会」というような言葉を、共生社会という言葉はいろいろなところで使われすぎているので難しい面もあるかもしれないが、検討の要素としてほしい。私は障がいも個性だという言い方は好き。ノーマルなものがあって障がいがあるのではなく、一人ひとりの個性だ、だからお互いその個性を認め合うべきだと乙武さんが盛んにおっしゃっているが、あれは大事な視点だと思う。
それから、大阪の場合は、朝鮮半島から以前に来られた人、あるいはニューカマーの人と、民族文化の多様なものをもっと認めてもいいのではないか。随分、大阪ではやっているが、文化の多様性、多文化共生ということもあり、民主主義や共生の問題や、説明の中に障がいの話が出てきたり、多文化の問題が出てきたりというのもいいのかなと思う。大阪のこれまでの流れや取組みからいってもそういうものがあった方がいいので、独立した項目の方がいいと思う。
これは、今後の事業展開もあると思うので、後で検討してほしい。
【2.公私の切磋琢磨による高校の教育力の向上】【10.私立学校の振興】
- (会長)
公私の切磋琢磨と私立学校の振興について、ここは裏表一緒に考えないといけないというか、私はこういう2つを、10項目のうちに私立の学校について設けてもらったのは大阪府の非常に大事な打ち出し方だと思っている。都道府県はどこも教育振興基本計画を作っているけれども、あまり私立学校に触れていない県もある。これは私から言うと困ったものだなあという感じがしている。公立もあれば学校法人、これも今公法人という位置付けになっているが、こういう教育委員会が設置する学校と別の形で管理し公的にも指導している私立と言われている学校、私は私立という言葉は嫌いで学校法人立と言った方がいいと思うが、そういうものと両方にらまないとうまくいかないと思っている。これが、原案でも非常にきちっと位置づけられているという印象を持っている。 - (委員)
項目2(1)の基本的方向で一番初めに、セーフティネットの観点から述べていただいていて、大変同感する観点だなと思っている。
仕事でドイツのことを考えることが多いのだが、ドイツは伝統的には3分岐型の学校制度というのがあって、学力テストやPISAのテストで良くなかったということもありながら、あとたくさんの移民の方がいらっしゃるということもあり、教育のチャンスを平等に振り分けなければならないということが叫ばれる中で、いろんな州で3分岐を2分岐にしようかとか、1つに合わせた方がいいのではないかという試みを行っている。しかし、伝統的に3分岐で来たのでいつまでもそれを堅守しているような州もあるけれども、その中にあっても、一旦入口に入ったら最後までそこで行くんだということより、一回入った後に、やっぱりこっちじゃなかった方が良かったなという時に、移動できるような仕組みを作っていきましょうという形で、今までは3分岐をものすごく固く運用していたところでも、これを少し柔軟に運用して、1年経った時点で課題があれば他の学校にも行けますよということもし始めた州もあると聞いている。
ということで、もちろん様々な個性のある特色のある学校ができて、その情報も十分に共有して、どの学校に行こうか、どれが一番いいのかと真剣に考えていくということが基本にはなるけれども、それでもどこかであれっということが起きてしまうかもしれず、そういった時に他の学校に移ると。それが単位制なのかあるいは違う形なのか、いろいろあると思うが、この移りやすさをどこかで確保しておくのもセーフティネットの1つなのではないかと。そこのところで公私が何か連携できたら非常に豊かなことになるのかなという気がしている。それがどういう形になるのかというのは少し分からないが。 - (会長)
今の問題は私も大事だと思って、基本的方向の1番目の所にそういうニュアンスが入らないかと思いながら聞いていた。例えば公私合わせてという後に、「多様な教育課程をもつ高等学校への就学・転学機会を」というような。
実際には大阪の場合は、なかなか学校に行けなくなった公立学校・私立学校の生徒が、夏休みの後にかなり多い人数が通信制に移っていく、それで立ち直っていく場合があると。現場の工夫で進んでいる面もあるが、もう少し日の目を当てて支援していくような何かあってもいいかなという気がする。今おっしゃったように、入ってからやっぱり合わないということもあるので、もちろん入る前に多様なものを準備して選択肢を多くするという、この趣旨がまず出ていてこれも大事だけれど、入ってからのこともということで、柔軟性をというか。 - (委員)
まず1つは、活力あふれる高校づくりということになるかと思うが、府立高校における授業改善という観点での研修に行かせていただいているが、各教科を踏まえた指導改善、授業の工夫というのが根幹になっており、様々なキャリア教育や就労を考える上でもそこが大事かなと思っている。なので、各教科の枠組みを超えた授業研究というものをどのようにしていくかというのは非常に重要なことで、そういった意味での授業評価・授業改善の観点というのが、それぞれの教科の会議の中だけでなく、全体の中でできるような、それらが様々なことに関わってくると思う。そう考えると、大きな課題の1つとして、評価ということがある。従来の評価にどのような工夫ができるのか、評価の多様化をどのように考えるかによって生徒への対応の仕方が全部変わってくると思う。これは学校のあり方に関わる非常に難しいことになると思うが、評価によってそれこそ留年・退学につながっていくということが現状としてあり、そういった評価のあり方を府立も私立も連動して考えていく必要があるかなと思っている。
もう1つ、これはこのまとめの中に入るかどうかとは別として、小中も関係するかもしれないが、高校で色々と対応が早くなってきていることの1つに、ケース会議が機能化している学校はずいぶん対応が早くなってきている。そしてケース会議を開くと生徒が変わるというのを見てきている。つまり、ケース会議をすることによって周りの共通理解が図られて、その段階で対応ができている。そのことによって生徒が変わっていくという側面を見ていると、ケース会議を丁寧にしていくというのは具体的すぎて書くことではないと思うが、そういったことも重要な取組みと思っている。
それから、項目10の関連する指標の中に「障がいのある幼児を受け入れ、特別支援教育を実施している私立幼稚園数」とあるが、逆に言うと特別支援教育を実施していない学校があるということか。法律上は全ての学校でとなっていると思うので、「実施している」となると逆に実施してない学校があるのかということになるので、書き方の問題だと思うが、ここは私学の幼稚園の中で大事な視点だという思いから指摘させていただく。 - (事務局)
特別支援教育の補助金を出しており、その実績のある園の数を書かせていただいている。ご指摘の点を踏まえて表現を変えさせていただきたい。 - (会長)
特別支援教育は全部でやらないといけないし、工夫もしながらやっていると思う。この表現だとやっていない園があるような読み取りをされると困るので、表現の工夫をよろしく。
項目2の(1)の現状と課題の中で「公私がその持てる強みや特色を生かして、それぞれの教育力向上に努めるとともに、共同での取組みや・・・」というのがあるが、ここで書いているからいいのかもしれないが、基本的方向に、公私を問わないそれぞれの学校の得意な取組み、あるいは優れた取組みを、公私を問わず全部の高校の共有財産にしていくような、これはまさに公私共同の取組みというわけなので、公私の設置者を問わず、全体としての教育力を向上させるような情報交換、あるいは共同事業とか、そういうものを謳っておいた方がいいかなという気がする。県によっては研修であろうと催しであろうと、公立と私立が全く世界を異にしてセパレートしてされているところもあれば、例えば公立がやっている研修会でも私学に案内を出してオブザーバーで来てもいいよとやっているところもある。また、県内の高校のフェスティバルと称して、公立私立を問わないで、それぞれの売りを大きなホールで展示して、あるいは公立も私立も含めて生徒が次々にいろんな演技をするとか、そんなことをやっている県もある。大阪は昔からお上が弱かった土地柄なので、あまりお上の学校と民間の学校ということを言わないで、できるだけやれるところは一緒に、あそこはこういう面白いことがありますよ、ここはこういう面白いことがありますよということを、府民の皆さんにアピールするような方向付けを、読み取れないわけではないけれど、もう少し積極的に打ち出して、基本的方向の表現にそういうことを工夫していただく、あるいは1項目加えるということもあっていいのかなと。これが公私の切磋琢磨ということにも、本当の意味の切磋琢磨にもつながるのかなという気がする。 - (委員)
項目2(2)の関連する指標の中で「学校教育自己診断における生徒の学校生活満足度」とあるが、これは、公立の場合もアンケートか何かされているのか。 - (事務局)
各学校に対して学校教育自己診断を実施するように言っており、現状では各学校で実施年度等がばらついているが、このたび府立学校条例ができたので、今年度からは各校毎年やるということでシステム化したので、それを指標にさせていただきたいと思っている。 - (委員)
これから少子高齢化で子どもがかなり減っていくという指標が出ており、先日のヒアリングでも私学の方から経営が非常に厳しいというお話もあったけれども、そのあたりで適正な高校の設置というのか、学校配置というか、項目2(2)の基本的方向に「将来の生徒数等を勘案した効果的かつ効率的な学校配置」とあるが、ここのところは公立の高校と私学との兼ね合いというニュアンスが入っているのか。 - (会長)
これはおそらく次回に専門委員会でやっておられる府立高校のまとめが出てくると思うけれども、基本的には府立高校は教育委員会が握っているから整理統合できるが、私立の方は個別の独立した法人がやっているので、整理統合しようとしてもなかなかというところがある。ただし、国の方では学校法人の合併を進めたり、あるいは最近もあったように、あまりにも経営が行き詰まっている、それでも経営にしがみついておられては子どものためにならないので、解散命令という伝家の宝まで抜いたりという、そういうところもある。ご承知のように、高校までは府の責任になる。大学を持っていると国の責任なので、実際には例えば小中高がダメで経営がまずくなっている場合であっても国がいろいろと指導というか、かなり方向付けを各学校法人に対してやることもある。高校までの法人の場合には、府がこれから考えていかざるを得ないということで、私学・大学課がいろいろ考えておられるので現実には大丈夫ですけれども、方向付けとしてこれ以上のことは書けないかなという感じがする。 - (委員)
項目2(3)の基本的方向に「私立高校の耐震化に向けた取組みが促進されるように努める」とあるが、私立高校に予算をつけるということにはなかなかならないと思う。ここには支援数も書いていないが。耐震や補修をやれば莫大な予算がいるので、私学は経営が難しいという話があった中で、私立高校の耐震化率は24年度で65%。この数字を見ると私立高校はかなり生徒が減ると思う。古い校舎のところは新しいところとかなり差があるので、ますますしんどい。このあたりを公私でどうするのかと思ったので質問した。 - (事務局)
私立学校の耐震化については、まず国の方で耐震化のための補助金がある。ただ、これについては補助率が公立に比べて低かったり、改築の場合は対象にならないといった課題があり、これまでも補助制度の充実を国に要望している。同時に、私立学校の耐震化については設置者である学校法人が対応するというのが基本。東日本大震災を踏まえて国の方も予算枠や対象を広げてきており、この制度も十分活用して、耐震化を進めていっていただきたいということを指導している。また、あわせて府の財政が厳しい中で難しい状況にあるものの、府においても何らかの支援ができないかということで、来年度の予算要求をしているという状況。 - (会長)
私立の学校は、すごい施設設備ができて新しくなっているところと、必ずしもそうでないところとの差が大きいというのがある。公立は教育委員会がある意味で全部を同じようににらんでおられるので、例えば約130の府立高校はそれほどひどくはないけれども、私立の方は、例えば生徒用のトイレも全てシャワレットというそういう素晴らしいところもあれば、耐震性も含めて老朽化が進んでいるところもある。これは今お話があったように基本的には学校の責任だけれども、実際には私学・大学課でいろんなご指導をいただいていると聞いている。その辺がもう少し丁寧に書ける部分があれば書いていただいてもいいかもしれない。
私立学校の経営が大変だと言うと府や国は見捨てているように見えるけれど、実は今はかなりお金も出ており、例えば東日本大震災で被害を受けた私立の学校、私は仙台の幼小中高を設置している学校の理事長を10年やっており、阪神・淡路の時はなかなか私立で被害を受けた部分の支援が、時間もかかったし何段階もかかって必ずしも十分ではなかったが、今回は非常に早い段階で国から震災で被害を受けた建物、体育館の天井が落ちたり1億3000万円ほど被害が出たが、しかし96%までは国が見てくれた。96%はすごく大きい。実際には、私立の学校は国や府のかなり大きな財政的支援があって動いているという部分があるので、逆に言うと枠組みを変えられたら私学の経営はボロボロになってしまうということもあるので、今お話があったようにやれるところは工夫していただく。事業計画には各年度でいろいろ出していただくと。
全体的に言うと私学も経営が二極分化しているので、その辺りをどう考えていくかという問題。普通の事業と違って、私学を含めて教育事業には子どもがおり、途中で変なことになったら子どもの教育にとんでもないことになるので、ここは非常に慎重に慎重に考えていかないといけない。まさにセーフティネットの張り方の問題があるだろうと思う。
【6.教員の資質向上】【7.学校の組織力向上と開かれた学校運営】
- (会長)
項目6と7について、皆さんで何かお気づきになられた点があればご意見をお願いする。 - (委員)
教員の資質向上は非常に重要で、大阪の教育の本丸の一つだと思う。
指標に関しては色々難しい点があり、実際に資質が向上したことを直接測る物差しを作るのは難しい。学校の先生はある種、専門家なので、先生方に自主的に自分たちの専門性を伸ばす活動を大切にしてもらうことが必要。社会の変化に対応する資質を持ってもらうということも必要だが、同時に、先生方は子どもを目の前にしているので、子どもの現状から、何が必要かという下から立ち上がってくるようなカリキュラムも非常に重要なのではないかと思う。先生方が子供と向き合いながら作っていく自主的研修に対する指標や基本方針があるといいのではないかという気がした。 - (委員)
教員の資質向上は本当に永遠の課題かもしれない。例えば、資質という時に「専門性」という言葉が出てくるが、それでは「専門性とは何か」といった時に、それは、校種によっても経験年数によっても違ってくる。初任者から5年目の人の専門性は何か、また5年目から10年目の人の専門性、それ以上の先生の専門性というのは、経験によって異なってくると思う。もちろん、役割によっても違ってくる。専門性とは何かという点について自己チェックというか確認できるようにすることが必要ではないか。専門性には、大きな意味での共通項はあるが、個々の専門性というのはずいぶん異なっていると思う。授業力という専門性もあれば、保護者との対応に専門性がある人、IT機器を使える専門性など様々。専門性という部分での資質がもう少し見えるようになればいいと思う。
また、専門性という時に、個人の専門性と学校としての専門性、資質というものがあると思うが、資質の一つとしての組織力というか、チームアプローチできる資質というものが視点として重要になってくると思う。専門性を分担しながら、チームとして力になるというのも資質として重要で、そのあたりのチームアプローチの視点はどこかに記載されているとは思うが、そこを強調しておくことが必要かと思う。
最後に、色々な資質を高める時の適材適所というものがあると思うが、これは、教育課程やカリキュラムとの関連が非常に大きいと思う。教育課程やカリキュラムも同時に考えていかなければ、専門性や資質が発揮できない、あるいは、点検したら全然その資質が発揮できていない状況があるということも考えられるので、資質と専門性と学校全体の教育課程の関連も考えていかなければならないのではないかと思う。 - (委員)
最初の時に各論としてお話ししてしまったが、私は、小学校の先生は大変であり、大切だと思っていて、「しつけは家庭」という話はあるものの、幼稚園、小学校の先生の役割は大きいと考えている。小学校の先生をたくさん…と言っても予算的なこともあり大変だとは思うが、特に小学校低学年を持てるような先生を増やしてほしいなという気持ちから、項目6の現状と課題のグラフにある教諭の年齢構成のえぐれている部分を、企業で言うところの中途採用で採用すればいいのではないか。教員は資格の問題もあるが、企業にも資格を持った人がたくさんいるので、そういう方を募集してもらうといいのではないか。小学校の先生がかなり悲痛な声をあげておられると聞いているので、校長先生は外部からも募集しているのだから、先生についてもそのような取組みをしていただけると、少しでも助けになるのではないかと思う。元気のいい、頑張った先生を評価するという取組みもあるのだから、頑張れる先生を迎え入れるというニュアンスの事をどこかに書けるといいのではないか。 - (会長)
今、いろいろとお話が出たが、私も同じようなことを考えていて、基本的方向に文言を付け加えた方がいいのではないかと思っているものがある。
1つは、公立学校の研修システムの合理化、重点化を一層推進するという事。ある意味、研修機会はたくさんあるのだが、もうすこしシステマティックに進められないかという声が無きにしもあらずで、府の教育センターでも市の教育センターでも研修プログラムが多くなりすぎて、先生が気の毒な状況もある。私は京都市の教育センターの外部評価委員長をしているが、毎年、くどく言わせてもらっているのがプログラムが多すぎるという事。もう少しプログラムを精選、重点化できないか。あるいは、公的機関は、こういう必要があってこういうターゲットがある、つまり、こういう先生方にこういう内容のプログラムを提供すると、きちっと示せるものを提供すべきであって、誰が受けてもいいよという研修をたくさん提供しても、結局は内容が薄くなってしまうのではないかという事を、毎年話している。先生方からしても研修機会が多く見えるが、効果はどうかというところがある。熱心な先生はたくさんの研修に出ているが、効果は出ているのか?という状況がある。研修の仕組みそのものを少し考えてみてもいいのではないか。
もう1つは、先生方が自主的に勉強する雰囲気を醸成するにはどうすればいいかという事。
先生方は忙しい忙しいと言うけれど、中小企業に勤める人はもっと忙しく、夜中まで帰ってこれないような人も多い。先生が忙しくて勉強もできないというと、恵まれた大企業やお役人ばかりではない親たちは、この世知辛い世の中でみんな大変な思いをして働いているのに、先生ばかり忙しいから勉強もできないなんて言われては困るということになる。したがって、どうやって自主研修に取組むムードを醸成するかということが問題。いい自主研修をしていい成果を上げた人を表彰するということがあってもいいかもしれない。
自主研修を行う上で重要なことは、研修の材料がたくさんあるという事。90年代初めから、大阪府内では一番初めに箕面市の教育センターがカリキュラムセンターという形で、実際の指導案や教材をたくさん集めてきて、それをシステマティックに提供した。その次にもっとシステマティックに行ったのが大阪市で、さらにもっとシステマティックにやった大阪府だというのが私の認識。指導案や教材などは、各地の優れた実践例がある。自分だけで勉強していてもなかなか身につかないし、文科省の文書などを読むだけは頭でっかちになるだけ。具体的に何をやっているのかという事を具体的な素材としてすぐに先生方が使えるというのが大事なことであり、そのために大阪市の教育センターなどでは各学校とセンターが双方向で情報をやり取りできる仕組みをかなり早い時期に作った。大阪府も多分やっておられるだろうと思う。そういうことの推進が必要。頑張る学校、頑張る先生に具体的な実践資料がもっと豊富に、しかも迅速に届くような、あるいは現場の試みが皆さんの物になるように、どこかに情報を集めるという事などについても、どこかに記載していただけるといいのではないかとお話しをうかがいながら思った。 - (委員)
先程の特別なニーズを持った子どもへの支援と同じように、先生方も行かれた場所々々によって特別なニーズがあると思う。そのニーズに対して支援があるということがとても大切で、それは同僚かもしれないし、今おっしゃっていた資料かもしれないし、自分のやる気かもしれないが、それを支援するということが大切。子どもが授業の評価をしたり、教員が互いに見合って授業にこういう課題があるよねという点が明らかになったとしても、その課題を解決するための支援がなければ、ただただ、その先生を追い込んでいくことになる。あなたの板書は汚いですよという程度であれば自分で頑張れば何とかなるかもしれないが、もうちょっと知的な授業を作りたいというような高度なニーズを持った時に、一人で考えているだけではうまくいかない。それが支援されるような学校運営であってほしいし、教員研修であってほしいと思う。
私も学生に授業を評価されているし、今やそういう時代になった。その結果、その人の能力をはるかに超えるような要求をされるような場合もあるのだが、本来それは、改善可能な要求でなければあまり意味がないと思うのだが、適切な支援があれば何とかなる人もかなりいると思う。そこは、先ほどの特別支援の文化というものを先生にまで広げるというか、そういうことが資質向上を考える上では非常に重要だと思う。ただ、先生方が自覚を持って取組んでいくことが基本になるとは思うが。
ドイツのヘッセン州では、たくさんの研修プログラムが用意されている。教会がプログラムを用意する場合もあるし、民間企業が用意する場合もあるし、もちろん教育委員会も用意するし、大学も用意するのだが、それがいい方法なのかどうかはわからないが、自分が定期的に色々な所の研修を受けてポイントを集めていき、私はこれだけ研修を受けましたという事で申請をし、研修の認定を受ける。なぜそういう事をするかというと、全ての先生に同じ研修をするのではなく、それぞれの先生がニーズを持っているんだという考え方が基本にあるのではないかと思う。できれば、それぞれの先生が抱えた課題、解決したいと思っている課題を解決できるような支援ができる仕組みを考えられるといいのではないか。そういった点が整備されていないために、力を出し切れていない先生も沢山いるのではないかという気がしている。また、転勤したら全く違うニーズがあって、今まで自信を持っていた先生がそこではうまくいかないということもある。行く先々でニーズは変わるし、同僚が助けてくれる場合もあると思うが、そうではない場合もあるかもしれない。教員の資質向上はどういう形で行われるべきかということは、私も非常に興味のあるところだが、そういう点に研究的な視点を持ったアプローチも必要ではないかと思う。
先ほど言っていることと逆の話になるかもしれないが、今ように下から立ち上がってくる研修とあわせて、ICTなどの新しいものが入ってきたり、社会がどんどん変わっていくなど、何十年も教員をしていると教員免許を取った時代とは異なった時代の中で教えなければならないということが起こるのだから、そういう場合は必要なものは何かという事を外側から示していくことも大切になると思う。そうした時に、学校の中だけで解決できるならいいのだが、教育センターや大学と強い連携を持ち、外から情報を取ってくる、あるいは外に学びに行くということも大事なポイント。とても難しいがそれらをバランスを持って運用していくことがこれからは重要になると思う。 - (会長)
私も、教員の資質向上には色々なプログラムに参加することが大事だと思っている。教員の免許更新講習の中身をどうするかを議論した場合も、始めは大学だけでしかプログラムを出せなかったが、それを広げて、例えば少年自然の家などでも出しているし、NPOでも認定さえ受ければ更新講習の特定の活動、面白い活動を提供できることになり、全国の免許更新講習の中身は極めて多様な内容になっている。これは非常に大事だなと思っている。これを、今おっしゃったように教員の初任者研修や中堅研修などの研修計画の中に取り入れられないかということは確かに必要になると思う。
もう一つ、今の「追い込まないように」というのは大事なこと。今、色々な現場の先生と話していると、勉強しなければならないど、昔に比べて研修旅費が全然なくなったという話を聞く。校長先生なども、教務主任をいい研修を行っているところに何度か行かせたいと思っても旅費が限られてしまっていて行かせることができないらしい。昔は色々な研修があると学校が費用を持って先生方を参加させたということがあったが、今は全くと言っていいほどそういうことが無くなったと。研修に使用する本代なども、勉強する先生は本当にたくさんの資料を集めて勉強されているが、昔は色々と補助が出たような気がするということも聞く。個人が自主的に勉強する場合にも、そういうお金の面での支援がギリギリに切り詰められてほとんど無くなっているように思うので、具体的には予算要求もいるので事業計画にということになるだろうけれど、方向付けとして、一人一人の先生が自主研修をしていく上での支援を工夫するというようものがあってもいいのではないかという気もする。
余談だが、ゆとり教育が始まる前に、落ちこぼれ落ちこぼしを出さない教育という事で、中学校などでは全国的に取組みがされ、私がかかわっていた岩手、浜松、島根、福岡の4つの附属中学でそれぞれ10年ほどそういう教育を行っていた。その頃は全国から熱心な教員が1,000人以上集まってそういう教育を研究するという取組みが行われていたが、今は旅費の関係があり、結局近場の人がちらっと集まるだけだと聞いている。全国的に支援の仕組みが低下しているように思う。 - (委員)
以前は土曜日の昼から研修や研究会が盛んに行われていたが、週5日制になってから研究会がことごとく成り立たなくなってきている。土曜日の昼からは研究会があるという習慣が変化してきて、自主的な研修会、研究会の機会が本当に熱心な先生が土日の休みに出てきて行うという形でしか行われなくなってきたということもある。平日の昼間はなかなか難しいので、土曜の昼間がなくなったのは大きい。
これは、本学の取組みだが、大阪府教育委員会との連携研修プログラムということで、5年ぐらい前から、特別支援教育コーディネーターの上級研修「アドバンス研修」を実施している。小中学校、高等学校、支援学校から37名参加いただき、年間18回実施しているが、受講者はほとんど休まない。強制的にしているわけではないが、休まない。しかも、毎回宿題がある。年間を通しての研修という位置づけで、それぞれの参加者が集まらなければならないような課題を出したりもしている。場合によっては研修したその日の研修内容が次の回にはDVDの教材として渡されるようなこともあり、内容を精選して行っているという点もあるのだが、休まないというのは非常に大きいと思う。数年後に研修アンケートを取ると、小・中・高・支援学校から35人の参加者が集まるということで、ネットワークができる点が大きいという回答が返ってくる。研修の特典というところで、研修そのものだけでなく、人間関係が広がる、視点が広がる、メールでやりとりすることで様々な情報交換ができるといった点も求めているのかなと思う。研修にプラスして人間関係、ネットワークも資質向上という点等の、研修内容やシステムの工夫も重要なのではないかと思っている。 - (会長)
今のお話を聞いて、研修にはいろいろなチャンスがあるので、公立学校であれば教育委員会が認めた大学などの講演に出ればポイントが 1点付く、講演で発表すればポイントが5点付くなど、年間で何点になればこういったご褒美があるというようなポイント制を研修に導入するということがあってもいいのではないかと思った。 - (委員)
もう10年ほど前の話になるが、関西のある運動部の各大学幹部学生220から230人を対象に就職に関する話をしてほしいと言われたことがあり、一部教員系の学生もいたが、大学生に対して「人」が好きな人は小中学校の先生になってほしいという話をした。それが一つのきっかけとなり、ある県ではスポーツをする先生が採用された。そうすると保護者がそれに注目し、地域ごとにそのスポーツに熱心に取り組むようになり、先生自身も、教えることだけでなくスポーツも色々勉強するし、スポーツの取組みを通じ、県を超えて様々な勉強もできたという事例があった。それが直接子どもの指導力につながったかどうかはわからないが、本人の色々な勉強には間違いなくなっていると聞いており、教員は教員でそのスポーツで全国大会などに出ており、そういったところで全国の先生とも交流を深めているようなことがある。
人が好きな人は企業でも勤められるし、先生にもなれると思う。私は、成績のいい人ばかりが学校の先生に向いているとは思っていない。
もう1つ、私も10年ほど前と去年にデュアルシステムに関連してヘッセン州に行った。生徒が地元の中小企業に仕事半分、勉強半分で行くわけだが、大阪の企業ではなかなか生徒を迎え入れることができないということも聞いてはいるが、デュアルシステムで生徒が学びに行った時に、それを迎える企業をたくさん作っておくと高校生の就職などで有利というか、人材が地元に残ることになる。また、行った先の企業で、マナーなど学校や親からは学べない様々なことを学ぶこともできる。中小企業の社長さんなどには熱い思いのある方がたくさんおられるので、そういった方の教育を直接受けられるという点で効果が上がっているという話をドイツでも聞いた。それは日本でも同じだろうと思う。 - (会長)
私もドイツには親しみを持って注視している。ドイツも日本と同じでPISAがずっと良くなかった。東ドイツと統一されてから、経済的な面でも学力でもどうしても遅れていた。いま、各州が一生懸命取組んでいるが、ご承知のとおり州によって取組みが全然異なっている。しかし、どこも日本と同じように基礎・基本と活用する力を付け、きちっとした教育をもう一度再建しようと取組んでいるので、大阪にとってもヒントになるところがあれば参考にしてもいいのではないかと思う。
1つ余計なことだが、ドイツは教員の給与水準が良くない。そこにまつわって日本ではないような深刻な課題もあり、例えば日本の小学校にあたるところの教員では普通の職種の6割程度しかないところもある。日本の場合は待遇をよくして、優れた人材が一生懸命やるような学校にしていこうというところがある。良くない所は置いておいて、頑張っておられる点を取り入れるといいのではないか。
【8.安全で安心な学びの場づくり】【9.地域の教育コミュニティづくりと家庭教育への支援】
- (会長)
安全・安心からでなく、家庭教育や教育コミュニティからでも。具体的な課題はおそらくこちらの方が多いかもしれないので。 - (委員)
学校・家庭・地域を巻き込んだ教育というか、社会を含めた地域コミュニティに関して、以前にも申し上げたかもしれないが、65から70歳ぐらいまでの方でまだまだ元気な人がいっぱいいらっしゃって、既に登校時の安全などに取り組んでおられるけれども、もっと精神面やしつけの問題、スポーツなどの色々なところで活用できる人がいっぱいいるわけで、このあたりの層を取り込めるような文言が入らないか。
それから、保護者についてもう少し踏み込めないかという感じがする。 - (委員)
家庭教育の支援ということで考えると、保護者との連携とあわせて保護者をどう支えていくかという保護者支援の観点が非常に重要なことだと考えている。むしろ、保護者というだけでなく、家族への支援ということも考えなければ、子どもへの支援ということに繋がっていかないという現状もあると思う。
地域についてだが、地域にそういう力が元々あるということが前提ではないような気がしている。最近は地域もだいぶ変わってきており、小学校の遠足のバスが停まっているだけでクレームがくるとか、以前は理解してくれていたことが全然違っているということも聞いている。そういった意味で、地域もどのように巻き込んでいくかということを考えていかなければ、地域の今の力を活用するというだけではいけないと最近色んなところで感じている。
指標の中で、「教育課程の編成に関し、小学校と連携している幼稚園の割合」が57.1%もあるということに興味を持った。非常に素晴らしいことで、これが本当に具体的にできていくと、幼小連携というところが有機的になる。というのも、小学校の先生は幼稚園教育要領というものを見たことがない、もしくは関心がないことが多く、保育所の保育指針もほとんど見たことがない。実は、私も今の立場になってから訪問する中で見ることになったのだが、以前は全く見たことがなかった。小学校の学習指導要領と幼稚園の教育要領はずいぶん違う。保育指針ともまた随分違うのだが、このような教育課程について、双方が理解していくことで本当の意味の接続・連携が有機的になっていくと思っており、こういったことが進めていけば実質的に活かしていけるようになると思う。 - (委員)
何かの資料で、大阪の先生方は日本一家庭訪問をする率が多いとあった。伝統的に家庭を支えて子どもたちも支えてという、下支えをして育てるということに非常に熱心に取り組まれてきており、これからも続けていっていただきたい。本当に大変なご苦労をされていると思う。それも踏まえて福祉施策とどう連携するかということも大切だし、以前から言われているとおり、本当にはたらきかけたい層の親になかなか支援が及びにくいということで、ジレンマを抱えているとうかがっている。
そのためにも、外の人にどんどん入ってきてもらうというか、学校の中に地域の人材を活用できるような仕組みが必要なのではないか。お役に立ちたいという方はたくさんいる。以前アメリカに行ったときに面白いなと思ったのは、ボランティアの方に来てもらうのも一苦労ということで、ボランティアを組織するボランティアの方がいるということ。校長先生はその方と話をすると、ボランティアを集めてくれて色々やってくれる。このような学校とボランティアをつなぐコーディネーターみたいな仕組みがあると結構うまくいくのではないかと思っている。そのあたりの工夫も含め、多くの人に入ってきてもらって、色んな方面から子どもたちの成長を支えていくということを、今後とも大阪の特徴として進められていけばいいなと思う。 - (会長)
今おっしゃっていただいたようなことを、基本的方向の中で記載できないか。「持続的な活動」ではなく、具体的に「学校等の教育活動」を支えるための地域人材を、「育成」ではなく「招き入れる」ということにするなど、今の資料では少し上から目線かなと思うので、言い方を少し工夫しないと。地域人材を学校で役に立つように育成していくと考えてはいけない。
あと、ボランティアのコーディネーターはネットワークづくりに入ると思うが、この部分は、今のお話を踏まえて、事務局に少し表現の工夫をしてもらった方がいいと思う。
学校の活動を色々な方に入っていただいて支えてもらうということと、そこまでいかなくても、最近では、参観日でなくても親や家族などが学校の教育活動を自由に見に行けるということを、東京のいくつかの区がやっている。保護者や地域の人が、より一層学校の教育活動の実際の姿を見る機会を増やすようなことを推進するのは大事で、このようなことも表現を工夫して。この下地があって初めて色々な学校活動に広範な人たちが参加してくれるようになると思う。
それから、これは事務局でも検討していただかないといけないが、コミュニティスクール的な手法をどうするか。学校の管理運営にアドバイザーとして、地域の人や保護者、大事なのは子どもを学校に行かせてない人も含めて。京都市がほとんどの学校でコミュニティスクールをやったが、初めは色々あったけれども今は教育委員会でルール作りをしてうまくいっていると聞いている。こういう方向を目指すかどうか、大阪府内でも地域によって雰囲気は違うと思っているが、大きな方向性としてはやらないといけないかなと思っている。2000年12月に出した教育改革国民会議の「教育を変える17の提案」の中でも大きくクローズアップされていること。親や地域の人が見られるようにするということと、学校の活動に親や地域の人がお手伝いに入ってくださるというのもあり、その上で学校のあり方について親たちも意見を言うようなもの、ただし、決定権はあくまでも学校にあるということにしないと混乱するので、京都市は入念にルール作りをしているが、このあたりのことをもう一度表現を考えていただいて。 - (委員)
全般的なことで。資料の文言が、努める・進める・図る・行う・支援する・育成するなどとあるが、今後10年を見通しながら毎年PDCAを回すということであれば、そのあたりのニュアンスがもう少し入ってもいいのかなと。「とりあえず、やります」という受け止め方をされはしないかと気になった。 - (会長)
PDCAは全部にかかわるものなので、もう少し工夫してもいいのかも。
3.閉会
- (会長)
本日の資料については、もう一度委員の皆さんに持ち帰って見ていただいて、お気づきの点があれば、来週の26日(月曜日)までに事務局あてお知らせいただければと。
今までの議論を踏まえて今日の資料を作っていただいていたけれども、見直せば見直すほど新しい期待というか、新しいイメージが出てくるもので、話がふくらんだ部分もある。事務局にはまとめてもらうのに大変な面があるかもしれないが、最終局面ということで、今日出てきた新しい話についてもご検討いただいて、次回は素案のたたき台ということでよろしくお願いしたい。 - (事務局)
次回の審議会は、あらためてご連絡させていただくが、12月の中旬を目途に開催し、本日のご議論や先日のヒアリング等を踏まえた振興計画の素案(たたき台)をお示しさせていただき、ご審議いただく予定。