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第3回大阪府教育振興基本計画検討委員会 議事概要
日時
平成24年8月22日(水曜日)午前9時30分から午後0時10分
場所
ホテルプリムローズ大阪 羽衣
出席委員
梶田会長、森田会長職務代理、小田委員、神谷委員、山本(絹)委員、山本(晋)委員、横井委員
議事概要(1.開会/2.審議/3.閉会)
1.開会
(事務局)
7名の委員全員の出席があり、会議は有効に成立。
2.審議
(1)目標実現に向けて取り組む項目について
- (事務局)
資料1から資料3について、説明。 - (会長)
これまでの委員の皆さんのご意見や、これまで「大阪の教育力」向上プランに基づいて取り組んでこられた中で出てきた課題なども入れていただきながら、また、資料2の基本的な目標も確認しつつ、非常に多岐にわたる具体的な打つ手のたたき台をまとめていただいた。
今日は皆さんに率直に、ここはもっとやった方がいいのではないか、あるいは、違う角度から取り組んだ方がいいのではないか、など自由にご発言いただきたい。
今回も全体を4つに区切ってご意見をおうかがいしていきたい。
【1.小中学校の教育力の充実】【3.障がいのある子どもの自立支援】【4.豊かな人間性のはぐくみ】【5.健やかな体のはぐくみ】
- (会長)
広い意味では、全部、小中学校の教育力の充実。障がいのある子どもの問題も、あるいは豊かな人間性の問題も、健やかな体の問題も、もちろん最初に挙がっている学力も。学校というのはまず学力を考えないといけないところ。洋の東西、時代の古今を問わず学力をつけないといけないというのが社会のリソースで、日本の伝統的な学校の在り方は、豊かな心、健やかな体とあわせて、知・徳・体と言ってきている。同時に、どういう子どもにもきちっと保障しなければならない。 - (委員)
コメントと言うか質問と言うか、資料の全国学力テストの正答率の全国平均との比較のグラフ、国語・算数ほとんどの項目で全国平均を下回っているという指摘があるが、もしかしたら対象としている母集団が同じではないのではないか。つまり、「大阪の教育をめぐる状況データ集」にもあるけれども、たとえば世帯収入では、300万円未満のいわゆる低所得層の割合が大阪では37.2%、全国では33.2%、東京は28.3%、かなり開きがあり、さらに大阪の場合は生活保護の状況が全国平均をかなり上回っている。もちろん学業と家庭の所得水準と関係あるかどうか分からないけれども、日本全体と比べて大阪の場合はより多様なお子さんがいるので、そういうことを加味しないと、どうしても公平にしていることにはならないという気がした。 - (会長)
この経済力と子どもの学力の問題は、大きな問題。全国学力・学習状況調査の結果が8月に発表されて、たしかに大阪の子どもはちょっと上がっている。ただ、上がっているけどまだまだ。順位を論じるのはやめようとなっているのだが、マスコミが報じたのでは大阪は一番下の方で、秋田なんかが一番上。経済力との差はかなり詳細に分析しているけれども、秋田が大阪に比べて平均収入がいいかと言うと、必ずしもそうではない。また、東京や神奈川そういうところが経済力は上だけれども、それで学力が高いかというと、大阪よりは高いけれどもそれほどでもない。ただ、全体的なトレンドとして、経済力と学力は、たとえば県の中でははっきり出てくる。それが、全国でやりますとそれ以上に地域の差があるという問題があって、大阪と沖縄と高知がどうしても学力の平均点が一番下になっている。それでは、どうするかということになる。ここで、もう少しだけ私たちが考えないといけないのは、経済的になかなか大変なご家庭の子どもさんが集まっている学校というのがあるが、これらの学校は平均値で言うと非常に低くなる。ところが、一部で非常に学力が高いところがある。これをエフェクティブスクールという言い方をアメリカでもしていて、これは大阪でもあると思う、いろいろと大阪の地域性で学校として頑張っておられるところが。こういうことを申し上げたのは、経済力のことだけを表に出すと、運命論みたいになって家庭の経済力を上げない限り学力はどうにもならんとなる。けれども、必ずしもそうではなくて、学校の努力で上がると。これは専門家会議でもいろんなところに委嘱して、どういう要因でということをケーススタディしてもらっている。なので、おっしゃる通りの全体のトレンドはあるのだけれども、大阪の学校が頑張っていただいたら、まだまだ可能性としては大きなものがあるぞ、というこの前提で打つ手を考えたいと思っている。
今年は、ちょっとここには出ていないが、理科を初めて入れたのだが、理科も大阪の子どもはちょっとまずいなあと。なぜこういうこと言うかと言うと、大阪は昭和30年代の学テではトップレベル。大阪の教育の底力はすごくある。ところがなんで、近年、こうなったかなということがあって、秋田も岩手も青森も昔は非常に低かった。それが今は秋田、岩手、青森も上のほうに行っているけども、経済的には非常に問題抱えている。だから、大阪の小中学校の教育力もやりようによっては上がるのではないかなと、そういうことで打つ手を考えなければならないのではないか。 - (委員)
そういう意味では、成功しているような学校のケーススタディは大変有効かもしれない。 - (会長)
大阪の学校ごとのデータが来ている。こういうデータは下手すればまずい副作用もあるけれども、これをチェックしてもらって、条件が悪いにも関わらずいい効果をあげているところが教育委員会としては分かるはず。そのケーススタディをしていただくのは、今おっしゃっていただいたとおりで大事だなと思う。 - (委員)
1.のところで感想と意見を。一つは、現状と課題のところに自己肯定感という言葉があるが、これは非常に重要なことだと思う。社会の急激な変化や価値観の多様化というところからすると、生涯にわたって学び続けるということが大事になってくる。このときに、小中学校の時期の学びの肯定感というのが非常に影響しているなというのが実感である。つまり、勉強が嫌いだ、勉強がわからないという体験が、生涯の学びにつながってきにくい状況がある。そういった意味で、分かったとかできたという自己肯定感は小中学校で非常に大事ということが一つ。
もう一つは、学力を高めていくという取組みの大前提に学級が落ち着いていること、これが非常に大事なことであると、さまざまな巡回相談等に行きながら感じる。学級が落ち着いているというところから考えるときに、障がいのあるまた支援が必要な子どもたちに、ソーシャルスキルトレーニングということで、様々な人間関係に必要な営みまたはルールということを教えていくというような取組みをしているが、実は、これが学級全体にも必要なのではないかなと最近思っている。そういう意味では、あいさつができること、お礼が言えること、謝ることができること、困ったときに教えてくださいとか助けてくださいとかのヘルプが出せること、こういったことというのは、支援の必要な子だけでなくて、もともと家庭の中や生活経験から学んでいくこととされていたのだけれど、学校教育の中で教えていかなければいけないことかなと。ある意味ではキャリア教育の中の一つかもしれないし、そういうことを道徳ないし人権教育の中で取り組みながら、授業、クラスが落ち着いてくる、規律がきちっと整ってくる、このことが学力向上の非常に重要な基盤になっているのではないかなと思っている。そういった取組みの充実を求められているのではないか。 - (会長)
非常に大事なところをご指摘いただいた。70年代、80年代は落ちこぼれ・落ちこぼしを出さない教育ということでいろんな取組みがあったが、90年代になってゆとり教育になってからはなくなった。ベンジャミン・ブルームという人がアメリカ・ヨーロッパでやった取組を参考にしながらということでやっていくと、下手すると7・5・3教育と言われる、教科書わかって授業についていける子が、小で7割、中で5割、高で3割になるという話があって、実際にいろいろと学力調査してもそういう面が出てくる。それがないような、ある一定まではみんなわかってできる、力が付く、その上は個性ですからどんどんいろんな方向に伸びればいいんだけれども、最低限はきちっとやるという、そのための授業改善ということを昔、大阪でもよくやっていた。それが今ちょっと薄れてきているかなと。今ご指摘の点は、これが自尊感情・自己肯定感に関わってくる。これは何らかの形で入れるかなと思う。
それから、挨拶から始まって、びしっとした学級づくり学校づくり、あとで教師力のほうでもやらないといけないけれども、よく指摘されたのは、大阪の学校では先生がなかなかあいさつができない、けじめがつかないという指摘があったことは事実。今はよくなってると思うが、このことを先生自身が実物モデルで示していく必要がある。 - (委員)
教育力の充実という中で、互いを高めあう人間関係づくりという中で、現場をあまり知らないので感想に過ぎないかもしれないが、クラスの中におけるいわゆるリーダー的役割というか、この育成というのもそれなりに必要ではないかなという気がする。いじめの問題等も一括していうのは難しいかもしれないが、それぐらいにしとけよというリーダーの役割というのもあるのではないかと思ったときに、人間としての役割、自分がその役割ということを知らせるような仕組みづくりや育成がやはり必要ではないかなという気がした。昔はやはりあったような気がするが、その人が言えば黙らざるをえないというところが自然にできていたのか、仕組みの中にとりこまれていたのかは分からないが、そのようなリーダー育成を考えていかなければいけないのではないかと思う。
豊かな人間性のはぐくみの中で、地域との役割というところで、私は京都の出身ということもあって、この時期になると地蔵盆というのがある。これは子どもたちだけでできるお祭で、8月23日に近所にあるお地蔵さんを全部きれいに洗って、カラーチョークでお化粧をし直して、自治会の方から予算をもらっていたと思うが、大人の方がお供えを持ってきてくれるのを全部受け付けて、自分たちで運営するお祭りをやっていた。小学校の1年生から6年生までが全部役割を持ってやる、こういう役割をしっかり持つような仕組みというのを地域との関わりの中でもう一度あってもいいのではないかなという気がした。大阪は祭りもちゃんと残っているので、そのあたりを子どもたちの社会に取り込めるような仕組みというのも地域とともに、そして郷土への誇りや伝統・文化を尊重する心にもつながるのかなという気がする。社会のルールを守るという中に、集団の中での自分の役割、年長者、年少者という役割も教えていくことができるのかなと思う。
すこやかな体のはぐくみというところで、ちょうどオリンピックも終わったところだが、社会人でスポーツ競技者の人口が170万人近くいるということを聞いたことがあって、この方々は、自分の仕事をしながら競技をしているが、中には放課後の子どもたちの指導に行く方もいらっしゃるだろうと思う。こういう方々をうまく子どもたちの体を育てる、あるいはクラブ活動等への活躍の場として何らかの役割を作ることも考えていいのかなという気がした。 - (委員)
私は4.豊かな人間性のはぐくみが、非常に内容があるというか、目指す目標像というのが、夢や志をもつ、チャレンジする人づくり、あるいは自立して力強く生きる、あるいは自律して社会を支える人づくり、この目標像を実現させることにおいて、一番重要な項目ではないかなと思う。前回の教育力向上プランでは目標の3番目として一項目、子どもたちの志や夢をはぐくむという大きい項目で挙げられていた部分が、ここに集約されているということ。これをやっていくにおいてはそれぞれの項目について重点項目としていろいろやっていく必要があるのではないか。特に、読書を楽しむ環境作りや読書については大阪府は非常に力を入れてやってこられているし、そういう項目も一項目になっているけれど、それぞれが非常に大事な重点項目。ここをどのように具体的に重点項目に落とし込んでいくのか、そういうところに力を入れてやってほしいと思う。
それから、社会のルールを守り、人を思いやる豊かな人間性のはぐくみと簡単に書いているけれども、その下に今話題になっているいじめや不登校等生徒指導上の課題解決に向けた対応の強化ということで、一人一人が人を思いやる心を言うのをどのように守っていくか、また育てていくかということと一方でいじめがおきたときにどのような仕組みに府として取り組むのかと、重いなというふうに思っている。ここを具体的にどう取り組んでいくかということを今後やっていただきたい。 - (委員)
全般的に絡む話で、私はどうしても教育システムということが気になる。校長先生、学校の組織力などのところで出てくるが、先生方はみんな大変なんだけど、校長が一人ではどうにもならんということで校長先生を支えるスタッフというか、一人の先生がすべてやるのではなくて分業する必要があるのではと。また、特に小学校の先生なんかは、一人で全部やらないといけなくて、段々しんどくなってきているということも聞いているので、分業してやらないといけないのではないか。たとえば、保護者の関係、子どもの関係などいろいろ得意な人がいっぱいいらっしゃるんで、その辺をうまく活用して。
障がいのある子どものところで、来年から企業では障がい者雇用率の1.8%から2%に引き上げが決まっていて、いろいろな問題はあると思うけれども、学校で障がいのある子どももできるだけ同じクラスでやっておかないと、コミュニケーション力など色々なことを就職するときだけ企業でやれと言われてもなかなかこれいっぺんにはできないなと、できるだけ健常者といっしょにやるということが必要かなと思っている。
健やかな体のはぐくみというところでクラブ活動が出ているが、昔、私たちの時は小学校は全員が文化系でも体育系でも何でもいいから入れということがあった。また、これも無理かもしれないが土曜休みを昔に戻して、半日授業であと半日体力とか。 - (会長)
今、大阪府では校長先生がしんどい。副校長や主幹教諭がどのぐらい進んでいるか。都道府県ごとにかなり違うが、ずいぶん支える仕組みができてきたのではないか。 - (事務局)
概況ということで、小中学校においては、校長・教頭に加え、首席、国で言う主幹教諭の配置を進めて来ている。ただ、全校の配置には至っておらず、全体の半分弱程度にとどまっている。府立学校においては、大規模な課題のある高校に対して、教頭の複数配置を進めている。定時制課程を設置している高校、大規模な支援学校に対しては、准校長、これは校長職で、事実上、定時制課程の校長として勤務する配置をしている。府立学校においては、首席をほぼ全校に配置を進めてきている状況。 - (会長)
いまご指摘いただいた学校が動けるように、全体の大事な役割を色々と分担して担えるような仕組みを一層整備するという方向は大事かなと思う。
また、今の部活の状況も事務局でお分かりになれば。 - (事務局)
平成23年度で、運動部と文化部をあわせて中学校は約83%、高校(全日制)は約62%。 - (会長)
クラブ活動は、今回の学習指導要領改訂の際に大きな課題になった。部活で人間が鍛えられる、このことを大事にしないといけないのではないかと。ただ、これは先生方が非常にしんどいということで、これらの手当てをどうするか考えながら、しかし、教育の機能として授業とは別で、これが大事という趣旨を今回の改訂で入れている。 - (委員)
今回のまとめはよく考えられているなと思っている。ただ、確認をしたいのは、今日、今ここで議論していることというのは、資料2のこの目標を達成する、この目標に近づくためにどういうことができるかということをそれぞれの項目について話をしていると思うのだけれども、そこのストーリーと言うか、この1から10のことを行うと目標を達成できるという関連図、関連のストーリーがあったらうれしいなと思う。
もう一つは、資料の2に知識基盤社会の到来というのがあって、ここにPISAの調査における日本の順位という表がある。梶田先生がおっしゃっていたとおり、順位を言うのはやめましょうということなのだが、順位ってすごく分かりやすくて、すぐこういうふうに出てくる。ただ、PISAの調査の場合は平均点が一応500点に標準化されていて、前回の点数と今回の点数を比較すれば自分の国の学力が分かるようになっている。つい、順位がわかりやすいから使ってしまうけど、点数でいいのではないかなという気がする。OECDが言っていることというのは、絶対的なレベルを1,2,3,4,5と設定していて、その1と2というレベルに入る人たちはちょっと特別な支援が必要ですよということ。1と2という点数の低い子たちをどう減らしていくか、各国は頑張ってやってくださいと、格差の解消ということも含めて言っている。だから、順位や平均などにあまり強く影響されてしまうと、そこのところが見えなくなってしまう。で、大阪はどうかと言うと、資料にも格差の拡大と固定化と注目して施策をうっていこうとしているわけなので、どういう物差しでもって格差の解消を行っていくのか、方針が必要なのではないかと思っている。格差があって、それに強く影響されたような学力の結果が出てくるとして、それをコントロールしているかどうかをどういう物差しで見ていけばいいのか、それが今後の課題だと思う。前回と同じような発言になっているかもしれないが、もう1回。 - (委員)
4点について述べさせていただきたい。
1点目は、障がいのある子どもの自立支援というところで、ここに書いていただいている就労を通じた社会的自立支援というのは大事なところということで重ねて言っておきたい。特に、府立支援学校の就労率が全国平均より低くなっている現状で、ここをしっかり高めていくことが、支援学校の高等部のみならず中等部・小学部の一貫教育の中での教育の充実につながるというように思うので、出口のところの就労支援を充実させることを重点課題の一つにしていただきたい。また、障がいの重い子どもの社会参加である福祉就労をここに入れるべきかどうか分からないが、どこかで、その福祉就労の文言を入れてほしいと思っている。
2点目は、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援の充実の中で、大阪で言うところの支援教育コーディネーターは、幼稚園から高等学校まで全ての学校において指名されているが、まだまだ権限強化がなされていない。認知も含めて役割の明確化をしていくことが重要で、支援教育の充実にむけたキーパーソンとしてはっきり位置付けていく必要があると思っている。そういう意味で文言を入れていただけるといいかなと思っている。
3点目は、発達障がいのある幼児・児童・生徒への支援のところで、小中学校は支援学級、通級指導教室があるという前提があるが、高等学校はそれらがないというところから、発達障害のある生徒の支援を、ここで強調しておいていただけたらと思う。
4点目は、豊かな人間性のはぐくみの中の、いじめや不登校等、生徒指導上の課題解決に向けた対応の強化というところで、実際に現場に行ってみて関わってみると、生徒指導の問題と特別支援教育の問題が非常に混在しているというか、境目のわからない事例が非常に多くあるということを経験している。相手の立場に立つことが難しい、または先生の言っていることが言葉だけでは理解できていない、こういう子どもたちの中に、生徒指導が定着していない子どもたちが多くいるなと思っている。これを支援教育でやるのか、生徒指導でやるのかでなくって、タイアップして協働してやっていくことが生徒指導の充実となっていくのではないかなと、その観点をぜひ入れていただきたいとお願いしたい。 - (会長)
就労の問題では、一度就労してもそのあと長続きしない場合が多い。仕事に就けばいいではなくて、そのあとのサポートも含めて考えられるような何かを、今の福祉就労という言葉か何かを入れていただいておくといいのかなと思う。
今の第1セクションは一番大事なところなので、またお気づきの点があれば後で事務局に言っていただきたい。
私の方から、項目的に入れておいていただきたいなというのが、これからの社会で求められる確かな学力のはぐくみのところ、ぜひ今の学習指導要領でねらっているあたり、だれてしまっていた学校教育をもう一度再生させるということで、「活用の力」だけでなくて、基礎・基本の確実な習得と活用する力ということ。活用する力は前から言われているけれども、きちっと土台のあることをわからないまま活用したってしょうがない。これが抜けがち。よく学校でも活用する場面を見せると拍手がくるが、でもその前に、着実な力をつけるというところをやっておいてもらわなければいけない。あるいは、言葉の力ということで、書く力あるいはきちっと読み取るといういわゆる文字言語の力をつけなければいけない。それまでどうしても、話し合い活動、音声言語の活動が非常に多くて、これはこれでいいのだけれど、コミュニケーションといっても音声言語の場合は表情だとか言葉の勢いとか、あるいは言葉がなくてもなんとなくわかりあってしまうという、言葉に依存しない部分が9割はあるということで、そういうことも大事だけれども、それ以上にやはり読み、書くということが確かな学力を支える、理科や社会もあらゆる教科の学習を支えると言われているので、言葉の力、読み・書く、文字言語、これも入れておいてほしい。
それから、豊かな人間性のはぐくみで、夢や志は大事なのだけれど、今は若者にひ弱さがあって、夢はみんな持っているんだけど、ちょっと言われると挫折してしまう。心理学ではコーピング、対処の力という打たれ強さや粘り強さということなのだが、どこの国でも豊かになるとそういうひ弱さが出てきてしまうと言われているので、チャレンジの前に、粘り強くチャレンジするとか、失敗を恐れずチャレンジするとか入れておいていただきたいと思う。
同じところに、郷土への誇りや大阪の伝統・文化というのがあるが、大阪だけでなく「日本の」というのもどこかへ入れてほしい。「しまつをする」とか、これは大阪の伝統でもあるけども、日本が古来から大事にしてきたこと。あるいは「甘やかしすぎをしない」、これは日本の伝統的な子育ての基本思想。いつの間にか、甘ったるいことさえ言えば子どもに寄り添っていることだという、きわめて間違った考え方が日本の教育界、あるいは家庭に入り込んでいるので、とくに90年代以降、今のようなひ弱な若者がでてくるということになっている。日本の伝統、これは今回の学習指導要領の改訂で大きく打ち出していて、小学校から子どもたちに平家物語を暗唱させろというのも出ている。というようなことも含めて、日本のという言葉をどこか入れていただきたい。
【2.公私の切磋琢磨による高校の教育力の向上】【10.私立学校の振興】
- (会長)
この部分は私学に関わる大事な問題。やっぱり公立だけでは考えられない所があって、幼稚園だと8割が私学で、高校は4割が私学。すると、大阪の子どもをきちっと育ててもらうためには、設置者が教育委員会であるか、あるいは学校法人であるかということを越えた、全体の取組みを当然考えないといけないということがある。特に、今子育て支援ということが非常に大きくクローズアップされているが、私立幼稚園が8割の子どもを担っている。ここらをどうサポートしていくかということ、これぬきでは語れない。
このあたりについて、皆さんのご意見を。 - (委員)
府立高校・私立高校の状況というところで、生徒数と本務教員数の数字が私立と府立高校それぞれ出ていて、計算をすると、府立高校は教員1人当たりの生徒数が14.2人位で、私立高校の場合は18人ちょっとくらい。ということは、私立の方が教員1人当たりの生徒さんの数がどうしても多くなる。おそらくこれだけで全て語れるわけではないけれども、やはり若干そのあたりの格差が存在するのかもしれないなと思った。
それから、多分高校の役割もどんどんどんどん変わってきていて、そういうこともあって府立高校でもいろんなバラエティに富んだ学科を作ってきていると思うが、例えば工業系高校などの実業系の高校の役割は、かつて高度成長期には例えば機械系やあるいは電気系の職業人を育成するというのが大変重要だったわけで、今後はものづくりがどうしても円高の関係でどんどん空洞化していくということになると、実業高校に対する需要の内容も変わってこざるをえないだろうと思う。と同時に、もう一方で少しマクロに日本経済の今後を考えると、まず1つは子育ての時に一時退職なさった女性を戦力化しないといけない。さらには元気な高齢者の皆さんも戦力化をしていかないと、もうすでに日本では人口減少が始まっていて、労働人口がどんどん減っていくので、そこで女性や高齢者の戦力化ということをやらないといけないということは皆さんご承知の通りで、その中で実業高校がどういう役割を果たせるのかを考えるのが重要なポイントではないかと思う。例えば一例で申し上げると、イギリスでは若者の失業が大変問題になったが、と同時に実は高齢者の戦力化ということも取り組まれていて、これがいわゆるコミュニティカレッジのような役割を果たしている。場合によっては実業高校もそういう役割の一端を担えるかもしれないと思った。 - (会長)
今のご指摘に関連して、今回の計画では大学は扱わなくていいものなのか。大阪は府立大学と市立大学を持っている。今の学び直しの話は実業高校、いわゆる専門高校の問題であると同時に、今一番大きいのは大学レベルの社会人入学というか、あるいはリタイアした人がもう一度大学に行くというのが、ご承知のようにヨーロッパでは非常に多い。もちろん途中であれば再戦力化ということで大学がやっているというのがあって、この辺との関係では大学まで視野に入れた方がいいのかなという気もしたりするが、これは全体とも関連するので、皆さんにご意見をいただいたり、事務局でも検討していただきたいと思う。 - (委員)
私どもも東京のある大学と組んで、再就職を考えておられる女性の方のための大学講座ということで、その時にインターンシップで一度企業に来られて、その方がどのレベルにあるかということをやらせていただくお仕事を一緒にしていたのだが、意識の高い方々が社会に復帰するための仕組みさえうまく作れば、本当に即戦力になる方ばかりだった。そのあたりを考えていくと、外部機関という所に民間企業の情報とか、それから今の現状の社会に普及するためのいろんなインフラ作りの中の流れを外部機関と一緒にやられることも考えられたらいいかなと思う。
大阪のように企業がたくさんあり、大企業と中小企業を比べたらはるかに中小企業が多いと思うが、こういう中で就職率が全国平均より低いということを考えた時に、社会との接点がうまく作れていないのかなと。情報ということもあるだろうが、それと同時にどういう人材が必要なんだということが、社会から高校に対して言えてないのではないかなということと同時に、そのあたりを早い段階でインターンシップでも、企業との接点を作るようなイベントでも構わないし、積極的に取り入れられたらいいのではないかと思う。 - (会長)
公立と私立の関係をちょっと念頭に置いていただいて。ともかく、学校の設置者の違いで子どもが割を食うようなことがあってはいけない。ただしそれぞれのメリット、特徴がありますから、それを生かしながら。 - (委員)
教育振興基本計画ということで、公立だけでなくて私立を含めた大阪の教育のグランドデザインの策定ということで、前回から私立の状況がどのような状況かということで何回か発言させていただいたことを受けて、今回の資料の項目2であったり、あるいは項目6の教員の資質の向上、あるいは開かれた学校運営ということで組織力など、そういう所についても私立と公立の協力関係であったり、私立をきちっと育てていくということが盛り込まれたので、非常に全体としてのバランスというか、内容的にも踏み込んだ形のものになっているなと思う。
具体的にこれを実行するにおいては、従来の公立を管轄しておられた教育委員会だけではなく、私学を担当されている方、今日は府民文化部の方も来られているし、あるいは就職を含めて先ほどの大阪の子どもたちの置かれている環境ということを考えると、経済あるいは商業全般の振興策だとかそういうこともあって、政策企画部にも来ていただいているということで、今回の項目自体が非常に大阪の政策全般に影響する、それぞれが協力し合ってこそこの目標が実現するんだなということを実感している。ぜひ、ここに書かれていることをそういう形で実行に移していただきたい。
あと、私立学校の振興が入って、今回は就学前教育ということで私立幼稚園まで範囲が広がってきている。さらには先ほどのキャリア教育ということになってくると大学まで入ってくるということで、そういう意味で、今回の教育振興基本計画ではどこまでを範囲にして責任を持ってやっていくのか。目標を決めれば当然ながらPDCAで実際にそれについてプランを作っていってやるわけなので、特に私立幼稚園となってくると保育の部分だけでも範囲が広がるし、キャリア教育となると教育委員会だけでなくて非常に大きい話になってくる。そういう意味で、今回の目標というのはきちんと整理されてできているのだけれども、範囲と今後具体的なプランを作っていくときに工夫していただいて、それぞれの役割をはっきりさせて、それぞれの分野でどのように広げていくか。今回の計画が叩き台になって、そういう大きい動きになっていけばいいなと思う。 - (会長)
範囲は少し検討してもらうとして。幼稚園は学校教育法の一番初めに書いてあるように教育機関なので、幼稚園は入れざるをえないけれども、大学の問題をどこまで扱うかということ。ただ、どうしても大阪の場合は大学を持っているし、それから、大阪大学はずっと地域連携ということで、大阪大学そのものが大阪府とはいろんな意味でタイアップしてやってきた今までの経緯がある。それから社会人の受け入れなんかも大阪外大はずいぶん前から積極的にやってて、これは多分府といろんな連携を持ってやって来られたと思うので、ちょっと工夫していただいて、中間まとめを出す時に、ちらっと頭出しぐらいしかできないかもしれないが、考えていただきたい。幼稚園は必ずきちんとやらないといけないなという気がしている。 - (委員)
認定こども園などの話もあり、幼稚園をどのように守るかということと、保育の方でも子どもたちをどうするのかという話にもつながってくるので、今回は幼稚園だけで本当にいいのか、就学前ということになると、そういう意味でもともと幼稚園と保育園の縦割りの難しい所があったので、今回どこまで言えるのか、またやれるのかというのがどうなのか。 - (会長)
制度的には幼稚園は教育機関で、保育所は福祉の一環となっているけれど、実質は幼稚園の教育要領を保育所の保育指針でも同じものを使っている。今、中教審が議論するときも保育所も一緒に議論している、実質的に幼児教育を担っているということで。制度的な位置付けは保育所は福祉だけれども、実質的には幼児教育の機関であるということで、そういうことで認定こども園も、どちらの要素も持つものを考えようということになっている。と言ってもこの辺をどう位置付けるか、どういうふうに振興策を具体化するかは、あまり絵に描いた餅になってもいけないので、工夫していただけたら。 - (委員)
高校の教育力の向上で、一番は授業力と思っている。聞いていない生徒、分かっていない生徒のせいではなく、聞きたい、分かりたいと思えるような授業をどれだけできているかというところに視点を置くというのが、教員の授業のプロ意識というのがまず授業力の一番大きなところかと思う。それに伴って、私立公立ともに、従来の評価のあり方から、どのような柔軟性または多様な評価ということが可能になるかということを検討していく必要があるかなと。なければ留年や退学という方向にもすぐにつながってしまう可能性があると。そういった評価の検討というのが大事な視点かなと思っている。
幼稚園については、前回も発言させていただいたが、非常に私学の幼稚園が多いということの中で、小学校に入る時には多くが公立の小学校にいく。その時にこの子は公立から来ているとか私立から来ているという分け隔てはない。市町村の目が届いているかどうかという点で、私学と公立の大きな違いを作らないようにしていくためにも、幼小連携や接続というものをしっかりしていく必要がある。そのためには誰がそれをしていくのか、それを明確にしていく必要があると思っている。これを管理職だけがやるのか、支援が必要な子どもたちはコーディネーターがやっているところも多いが、全体論として、幼稚園から小学校に連携を働きかけるのか、または小学校から幼稚園に連携を働きかけるのか、地域によっても違うと思うが、こうしたところを含めた接続のあり方が、特に私学の幼稚園と公立小学校との接続に大きな課題があるのかなと思っている。 - (委員)
大阪の府立高校は特色づくりということで色々考えてやっておられる。一方の私学の方も、もっともっと特色を出して、公立と同じでは意味がないと思うので、私学は私学らしく、例えば、もっともっと学業レベルを高めることもありますし、クラブ活動を含めての特徴、それを合わせて特徴を出していただきたい。私学が公立化したのでは何もならない。それから、私学の中にはついていけない子がずいぶんいると私学の先生に聞いているので、学校のレベルもあるだろうが、進学校以外の学校もあるわけで、そこらもレベルを上げるというか、興味を持たせる教育、その辺もきちんとフォローしていかないと無償化の意義が問われるのではないかなと思っている。 - (会長)
私学は一般的に言うと、本当に公立にないくらいの特徴をみんな出しておられる。特徴がないと公立と違って生徒が来ないもんですから、非常に出しておられる。それから私学の方が公立と比べていろんな意味で多様な生徒、例えば学力的にも上から下までいるような生徒を扱っている。また、きめ細かなリメディアル、学び直し、いわゆる補習的なものも私学はすごくやっていて、一度引き受けたら非常に細かくやってくださっているという印象がある。先ほどの教員1人当たりの人数も、確かに私学の方が平均的にたくさんの生徒を持っているだろうけれども、きめ細かさでは私学だという感じを私は持っている。実は大学になると私立大学と国立大学であれば1人の先生当たりの学生数の差が3倍近くになる。すごい違い。それに比べれば高校はほとんど差がないのではというのが若干ある。私は公立の世界ばかり長くやっていて、やっとこの10年で私学の世界を垣間見ることになったけれども、やはり雰囲気は違うなということがある。だから両方とも大事にしなければいけないので、今日出ておりますようなそれぞれの特徴を生かした支援をどうするかということ。
学校の特徴ということに関係して、2.(3)に、顕著な成果をあげた学校、優れた取組みを実践した学校に対する支援とあるが、これは、公立私立を問わずにコンクールをやって表彰するとか、表彰にあたって1年間の取組みのためのお金を50万とか100万出すとか、大阪府として、こういう特徴ある面白いことやっていますよということを大々的に府民に分かってもらうようなことをやってもらうといいなと。私立は前にずっと長くやっていたのだが、予算がなくなった。今は公立も面白いことやっている所がたくさんある。大学の進学はどこがいいとかどこに何人行ったとかそういうことではなくて、面白い取組みを検証して同時に府民の方々に分かってもらうのは必要だと思う。 - (委員)
ここでは、私学と公立、プライベートとパブリックをどういうふうに関係づけるかという話だと思うが、これちょっと悩ましくて、私にはあまりよく理解できていないところがある。住み分けをするのか、それとも同じ目標に対して競争という形になるのか、あるいはその間なのか。このあたりのポリシーが見えにくいなという感じはちょっとしている。ただ、教育力に関するコンテストは非常に面白いと思うのでどんどんやっていったらいいかなと思う。
それから、セーフティネットの整備とセカンドチャンスの提供という、これなんかは公立学校として決して外すことのできない点なのではないかなと思っている。 - (会長)
私学をプライベートと言っていいかどうかというのは難しい所。というのは、例えば公の支配に属さないものは補助金を出してはいけないことになっている。よく私学はプライベートかという議論があって、今、私立学校法では「公法人」ということを強調している。プライベートではなくてパブリック。だから学校法人に対しては運営の仕方でも何でも非常にきちっとやらないといけない。例えば、理事長が一存でいろんなことをやることができなくなっているわけ。そういう意味で、私は私立学校法という法律の名前を学校法人法に変えないといけないとずっと主張してきた。つまり、私立というからプライベートな感じで、たしかにある時期まではかなり理事長さんが私企業的にやるというのがあったが、企業だって今は実はプライベートではなくてパブリックな、いわば法人としてやっているわけなので、そこのとこを少しはっきりさせないといけないなということもあると思う。これは、私学が情報をどこまで開示するかということにも関わっていて、今は私学も基本的な情報は全部開示しなければいけない、お金の問題も含めて。それから、今日ここに私学・大学課の方が来ておられけれども、何か問題があれば、例えば理事会の記録、評議委員会の記録、私学の運営に関わるものは全部いつでも出せるようになっていて、全てチェックする。昔は色々あってか関西でも大学法人ではこの4,5年で理事全部が吹っ飛んだところがいくつかある。やはりそういうパブリックであるということが前提になる。逆にいうと、パブリックだから補助が出せるという所がある。
ついでに言うと、資料にあるような国の標準額に比べて府の補助が最下位というのは、これをどういうふうに報告に書くかは別として、大阪の名折れだなという気がする。学校法人の自主性を大事にしているといえば聞こえはいいけれども、よそでは学校法人はある意味でパブリックなもので、だから行政もいつも常に見守って必要があれば指導する。私学に対する指導ってかなり厳しい。大阪もそう。それと同時に補助金が出るという、そういう意味でのパブリックな成果。大阪では子どもの側、家庭の側に出ていると言ってもいいのだけれども、それにしてもちょっとどうかなという気もする。この辺も少しまた検討してご意見があれば。
世の中的に言うと、みんな公立の学校は馴染みがあって良く分かるけど、私立・学校法人立の学校についてはいわば内側がブラックボックスであるような感じがある。だからここでもし言うとすれば、補助金やいろんな振興策と同時に、情報開示。私学の情報開示については、ホームページを見てもらうといろんなことを私学はむしろ公立以上に出しているけれど、肝心なことを出しておられるかという問題もあるので、この情報開示のことは強く言っておいた方がいいかもしれない。 - (委員)
資料にある私立高校における学校状況のホームページでの公表状況で、自己評価についてのホームページの公表は上がってきているけれど、学校関係者の評価が22年と23年で変化がなくて、そういう所はぜひ工夫していただきたいなと思う。
あともう1つ、私学の場合は本当に授業力がない先生はすぐにやめないといけないということで、その日その日を緊張感の中で努力されてやっておられる。さらに先ほどの資料のとおり本務教員数が私立と公立では違うけれども、私立は講師の人が多くて、なかなか本採用にならないと聞いている。本当に授業力があってできる人でないと本採用にしない。だからそういう意味で講師たくさんの中でやっているので、本採用だけで見て1人当たりの生徒数が多いか少ないのかというのではなくて、もし出されるのであれば、そういう詳しい情報や、私学が教師力あるいは授業力を上げるためにどういう工夫をされているのかということなども合わせて、きちんと評価をする仕組みが必要なのかなと思う。 - (会長)
私学の問題まだまだあると思うが、時間の関係もあるので、これもまたお気づきの点を事務局に寄せていただくことにしたい。
【6.教員の資質向上】【7.学校の組織力向上と開かれた学校運営】
- (会長)
続いて第3セクションの項目6と7について。すでに色々と出ているけれども、皆さんのお気づきの点をご発言いただきたい。 - (委員)
まず一番目として、ミドルリーダーの養成、あるいはマネジメント力に秀でた管理職の養成と確保という項目があるが、当然のことだが、たとえ大変優秀な先生であっても組織をマネジメントしていく能力に長けているとは限らない。そういう方がシニアになり管理職になる時には組織をマネージする能力、あるいは戦略を立てる能力を育成していかなければならない。そういうトレーニングを是非、強化していく必要がある。
もう一つは、先生方にできるだけ広い経験、特にグローバル化に即して言うと、例えば豊かな国際経験を積んでいただく機会をもっと作れないものかという気がする。また、グローバル化の中でキャリア教育の重要性が高まっているが、全く企業での就業経験のない先生が「企業はこういうものだよ」という事を教えるのは無理があると思う。そういう意味では、国際経験や企業での一定期間の就業経験を積んでいただくような機会を積極的に作れないものかという気がしている。 - (会長)
今ご指摘のとおり、教師として優れているということと、管理職として優れているというのは全く違う。教員の世界では普通の年功序列というのは切り離した方が良いと思う。筑波大学の附属中学校には全国から選ばれた教員が集まってくるが、そこに来る教員は、絶対に教頭や校長にはならない。定年まで一教員で教壇に立ち続けることにプライドを持っている。そういうことがあってもいい。主幹教諭などは管理職を補佐するのでアドミニストレーションの方に行くが、優れた先生の処遇、アドミニストレーターではなく教員として優れた方の処遇の道を考えなくてはならない。全国的にもないわけではないが、まだあまり機能していない。他府県では指導力の優れた教員の待遇を特別に教頭クラスにあげるような対応をしているところもあるようだが、大阪府の場合はどうか。 - (事務局)
国の制度にならって、指導教諭という職を配置してきている。主幹教諭については配置がなかなか進んでいないのが現状だが、学習指導面等で秀でた力を持っていて他の教員の模範になるような教員を配置している。 - (会長)
今おっしゃったように二つの道をどこかできっちり分け、管理職になる先生はどこかで集中的にしっかりトレーニングしなければいけない。
国では中央研修というものがあって、大阪の先生はあまり今まで行かなかったが、全国から中堅の先生を集めて6週間研修する。法規研修などを非常に大事にして、判例の演習などを6週間行い、最後に外国の学校を見て回るような内容の研修セットにして30から40年やって来た。いいやり方だと思っている。大阪府でも中堅の教員でアドミニストレーターに進む候補となる人を特別に府の教育センターで訓練すればいい。今もそれに類する研修はあるのかもしれないが、例えばそれに国際視察を付けるなど、もう少しはっきり打ち出した取組みがあってもいいのではないかと思う。現在は、指導の面で力のある人とアドミニストレーターになる人がどこか渾然としている印象がある。府ではアドミニストレーターの予備軍を集中的に研修する取組みがあるか。 - (事務局)
教育センターでリーディングティーチャーの養成研修をしている。教職経験が5から15年ぐらいの教員100名程度を対象として、マネジメントを中心とした内容の研修と授業における指導力を高めるカリキュラムマネジメント等の研修の2本立てで実施しており、それぞれの教員の適性に応じてどちらの道に進むのかの見極めもしたいと思っている。 - (会長)
二つの道の両方の内容の研修を受けるのか。 - (事務局)
両方学んでいただくようにしている。 - (会長)
これに関しては、ある段階でセパレートした方がいいのではないかと思う。言い過ぎかもしれないが、私の知っているすごい授業をする人はみんな、教壇に立ってこそ光るという人が多く、それほどアドミニストレーションの力があるわけではない。
その辺りについても、どうしていったらいいか少し意見を出していただきたい。 - (委員>
たしかに研修も重要だが、例えば、ある先生が一年間、外国で暮らすような機会をつくるということもインパクトを与える可能性があるではないかと思う。
もう一つは、民間との交流、産業界との交流。例えば、大学で学生が就職をするときに、企業の名前を聞いてもコマーシャルしか思い出さない、どういうことをしている企業か分からないと言ってくることがあるのだが、そういう時に、先生に就業経験がなければ、なかなかそういう状況に対応しにくいのではないか。例えば、自動車業界はこういうところが面白いんだというようなことを話せる先生がもう少しいてもいいのではないかと思う。それと同時に会社の中で揉まれることで組織のマネジメント力を身に付けていただくということも期待できるのではないかと思う。 - (委員)
今は、非常に変化の激しい時代。大量退職や大量採用に伴う取組みの推進とあるが、それだけではなく、新しいニーズや、新しく対応しなければならないことがたくさんあることを踏まえて、「新しい時代に対応するような取組みの推進」という文言をどこかに入れてもらいたい。同時に、研修というかサバティカルというか、何年か務めた後は、一年間とは言わないが、少し充電して新しいことを学ぶことができないと、消耗戦のようになって、ずいぶん前に学んだことを伝え続けなければならないという難しい状況で働くことになるのではないかと思う。大学にもそういうことが必要なのだが、学校にもぜひそういう制度を導入することを考えてはどうか。それとともに、研修は学校外に出て行うことも重要だけれども、これまで授業研究会というか、日本では伝統的に欧米にはない教員の自主的な勉強会というものを行ってきたのだから、そういう取組みを支援していくべき。若手の育成という事になるが、子どもも含めてみんなが学び合うコミュニティのようなものを学校の中で活性化させるような取組みへの支援が、今後の新しい時代においても重要になってくるのではないかと思う。 - (会長)
大阪には、以前はそういう自主的な先生の勉強会がたくさんあったが、最近は無くなってきた。これは世代層が変わってきたせいかもしれないし、ゆとり教育でそういうことをしなくなった影響かもしれない。ご指摘のとおり、組織的な教員の資質向上の取組みも必要だが、基本的に自主的なサークル的な取組みをどう支援していくかということが重要。
30年ほど前に箕面市で大きな教育センターを作った。その時のコンセプトは9時まで開いていて、先生のたまり場となり、資料がたくさんあって色々な活動ができるセンターを作ろうというものだった。センターでは研修や講座も行うが、それ以上に重要なのは9時まで開いているセンターであるということだった。そこで先生が集まり普通の教科書よりも立派な生活科の副読本を作ったりしていた。そういうサークル的な活動をいかにして支援するかというのも重要な視点。
もう一つは、大学との関連。府教委と大阪教育大学は色々な点で連携していると思うが、兵庫県では、県教委と兵庫教育大とはフォーマルなものもインフォーマルなものも含めてかなり頻繁に連絡協議会を行っていた。県教委からは、陰に陽に、つまりフォーマルにもインフォーマルにも、こういう教員養成をしてもらいたいなどの意見があったり、大学が教員の研修を引き受けたりもしていた。兵庫県の管理職研修は兵庫教育大がずっと引き受けていたが、研修の内容は大学と県教委が話し合って決めるなど。兵庫教育大のカリキュラムのあり方なども話をしていたし、教委から教員を教授として迎えたりもしていた。そういうことも含め、地元の教員養成大学とのより一層緊密な連携も必要なのではないか。 - (委員)
校務の効率化について、小学校・中学校ではコンピューターの整備率が全国平均に比べてかなり厳しいのではないかと思う。この辺りに予算を付けてもいいのではないか。
校務処理については、今どのようにしているのか分からないが、アウトソーシング化できるものをうまく考え、教職員がしなければならない仕事とそうでない仕事が整理されるべき時期ではないかと思う。 - (会長)
校務処理は、今は色々なソフトができていて、昔と違って学校で簡単にできるようになっている。毎年大阪でも東京でも教育関係のエキスポがあるが、そこには校務処理の新しいソフトだけでも毎年何百も出る。そういうところにアンテナを張ってもらいたい。私学はわりとそういうものを取り入れるが、公立はどこまでそういう新しいテクノロジーを取り入れているのか。物を入れるだけでなく、今はむしろソフトが重要だと思う。 - (委員)
教員の質の向上を考えた時に、採用試験の合格者に辞退者が多い、または途中で他府県に移る先生方が多いと聞くが、そこが課題。頑張った教員が報われる仕組みづくりや、「全国に比べて給料が少ない」といったことばかりが前に出ないように、先生方の元気が出るような取組みが必要だと思う。そういった意味で、単なる給与反映だけではないと思うけれども、評価においても、もう少しきめ細かい評価の中で、先生方が「さらに頑張ってみよう。」という目標を持てるようなシステムを考えていかなければ、これだけ辞退者や他府県へ変わっていく先生が多いということがあると、少し先を考えた時に資質向上という点で危機感を感じる。
もう一点は校長先生のマネジメントによる学校運営についてだが、校長先生が変わると学校が変わったという話を聞くことが多い。実際にそういった学校では校長先生の方針が明確に進められているということもあるが、同時に教頭先生や首席、指導教諭、主任といったリーダースタッフのマネジメントが大きいのではないかと思うが、そこも含め、そういう学校がなぜ変わったのかという点を分析して、共有していくことも大事なのではないかと思っている。 - (会長)
書き方は難しいと思うが、管理職の人事のシステムについても書く必要があるのではないか。公立だと校長は何年かで変わっていくという定型的なものになりやすい。今、府立高校の校長を経験してから私立の校長を経験した人に色々と話を聞いているが、双方で何が違っているかを聞くと「世界が違っている」という答えが返ってくる。一つには、私立では、もちろんダメであれば1,2年でクビになるが、うまくいけば長く腰を据えて自分なりの学校づくりができるという点がある。3,4年、あるいは5年で変わるとそれは難しい。
京都市が、課題のある学校の校長は本人の希望があっても動かさないという、割と思い切ったことをやっている。私の知っている、非常に荒れた学校に努めていた校長は結局定年まで10年か11年変わらずに勤めていたが、その代り、見違えるほどいい学校になった。今度、教育委員会に戻られた堀川高校の荒瀬先生は、堀川が新しい体制になってから教頭と校長合わせて10年以上勤めて毎年毎年すごい成果を上げた。こういう思い切った取組みもできるとういか、臨機応変に、ダメな人は1年、2年で辞めさせるがこの人に任せようという先生には10年任せるということもあっていいのではないか。学校は校長で変わる。書き方は難しいが、ポイントの1つに考えてみてほしい。 - (委員)
校長の更なる権限強化という事で予算を取っているが、人事権とは言わないまでも人事異動に関して校長の意見がどの程度反映されているのか。冒頭申し上げたが、校長を支える先生が多ければ多いほど校長の目標に従って学校が運営されることになると思うので、校長の権限拡大、強化はぜひ実施してもらいたい。人事異動についても反映されるとよい。
もう一つは、中学校、高校の先生は自分の専門を教えるので比較的余裕の時間があるが、小学校の先生は何でもしなければならず、特に低学年の先生は非常に負荷が多いと聞いている。そういう点で小学校の先生は大変。予算があればもっと人を増やせるのだろうが、そういう訳にいかない。つまり、20代の先生も50代の先生も同じことをするのではなく役割分担をしてお互いに助け合うようにするべき。例えばしつけの問題。ある人に言わせると、しつけをするのは家庭だと言うが、私は学校だと思う。もちろん、両方大事なのだがどちらかというと学校。我々の時代も学校で挨拶や返事、忘れ物をするなとか、してはいけないことを学校でも先生に色々と教わり、先生の言われることはみんな守ってきた。そして家庭でそれをフォローしてきた。そういう点で学校の先生、特に小学校の先生は非常に大切だと思っているので、小学校の先生の負荷は少しでも軽減しなければならないと思う。 - (委員)
校長先生のリーダーシップについては前回もお話しさせてもらった。教員の資質向上と学校の組織力向上については、大阪府では「教育力向上」プランの時から非常に力を入れて取組んでこられていると思っている。特に教育センターと協力して非常に色々な取組みをされていて、授業評価についても3年ほど前は非常に実施率が低かったが、今は中学・高校の先生方の授業評価の取組みも高くなっているし、この点については課題もあると思うがさらに取組んでもらいたいと思う。
【8.安全で安心な学びの場づくり】【9.地域の教育コミュニティづくりと家庭教育への支援】
- (会長)
大阪は、本当にいろいろな街で、地域と学校が、見回り隊など、いろいろな取組みをしておられて、いい姿が出てきているという気がしている。 - (委員)
地域の教育コミュニティづくりとなると、おそらく学校だけではできないことが随分とあるのではないかなと思う。例えば、地域にいる定年でリタイアされた高齢者の方は元気でいらっしゃるので、色々な形で貢献をしていただけるだろうと思うが、やはり旗振り役は必要だと思うし、それをオーガナイズする人も必要だろうが、そこまで学校が全部やるとなると、大変負担が大きくなるだろうと心配している。そういう意味では、行政との有機的な協力関係というのが、大変重要な役割を果たすのではないかと思っている。 - (会長)
PTAなど、あまり今回の計画では出てきていないが、そういう地域の色々な会の人、高齢者の方、それらと学校がどういうふうに連携するか、東京の杉並区で藤原さんが校長をやっているときに、地域連携本部というのを学校の中に作って、これは大阪でも同じようなことを一部でやっていると思うけれども、これをあまり手をかけずに、うまくオーガナイズする仕組みというのを、少し考えていかなければならないと思う。
大事なこととして、災害時のこと。治にいて乱を忘れずで、大阪の場合、阪神淡路大震災ももう19年も前のことになってしまったが、また何が起こるかわからない。学校というのは、防災拠点になったり、避難のセンターになったりする。これを普段から、学校の子ども達だけでなく、地域との関わりの中で考えておかなければならない面があると思う。資料では地域とのことがあまり出てきていない。事務局の方で、宮城県の教育復興懇話会の報告書というのがあるので、東日本大震災の後、学校をきちっとした防災拠点、避難の拠点にもう一度作り直すということで、普段からどういうことをやっておかなければならないのかということを、5つある柱のうちの1つとしていて、いろいろな具体策が出ているので、これも参考にしてもらえればいいと思う。柱を立てるにあたって、兵庫県の教育委員会から助言をいただいた。兵庫県は阪神淡路大震災の後、とても大変な状況だったので、県教委に資料がたくさん残っていて、それを持って行って、何度も話し合いをして、宮城県の復興に向けての提言を作っていただいた。そういうこともあるので、東日本大震災の経験から学びながら、大阪での体制づくりをしていただけたらと思う。 - (委員)
家庭教育の支援の充実は非常に大事で、保護者支援、親学習が非常に大事だと思う。けれども、聞いてほしいと思う保護者が研修会等に参加できない、参加しないという現状が多々ある中で、保護者同士、または地域での声の掛け合いが大事だと思う。その中で、保護者といえども、おじいちゃん・おばあちゃんが教育などいろいろな面で力を持っている場合があって、そういう意味では、子ども、保護者、おじいちゃん・おばあちゃんという、三世代支援、家族支援をしないと、ということが入ってくる。計画に書くということとは別にしても、そういった家族支援という観点については、単なる親だけではないという視点が必要だと思う。
また、就学前教育については、保育所・保育園も幼稚園と同時に考えていかないと大事なところが抜けてしまうと思う。
3.閉会
- (会長)
申し訳ないが、最後のセクションのところは、時間が足りなくて十分に皆さんのご意見をいただくことができなかった。もう一度、項目を見ていただいて、また後からお気づきの点などを来週の28日までに事務局に連絡してもらいたい。
その後の扱いだが、もしお許しいただけるなら、私に一任していただいて、目標との関連も含めて、委員、事務局と相談しながら、中間まとめというところまで持っていきたいと思うが、お任せいただいてよろしいか。 - (委員)
異議なし。 - (会長)
それでは、そのようにさせていただきたい。 - (中西教育長)
今日がいわば折り返しというか、前半終了のような形になるので、一言お礼を申し上げたい。3回にわたって熱心なご討議をいただき、非常に密度の濃い議論をしていただけたなと思っている。
このあとは、中間まとめということになるので、会長、会長職務代理と、我々事務局とで相談させていただきながら、今日いただいた多くの貴重なご意見もしっかり反映できるようにしたいと思っている。その上で、24日に知事と教育委員との意見交換会を行い、知事から意見を色々と頂戴をした上で、取りまとめていきたい。
今日、いただいたご意見で若干触れさせていただくと、大学等を含めて扱う範囲をどうするかという点については、大学は国立大学、私立大学含めて、トータルな責任は文部科学省ということになり、大阪府の場合も独立行政法人が府立大学を運営しており、そこで検討されたビジョンをお持ちなので、大学振興なり大学教育そのものについては、この計画では扱わないという方向でいきたいと思っている。ただ、今日のご意見にあったような、教員養成やキャリア教育のような連携に関わることについては、しっかりと検討させていただきたい。また、文化行政なり、スポーツの範囲については、府民文化部でビジョンをお持ちなので、この委員会では直接的には扱わないということにさせていただきたい。
それから、委員からお話があった、目標達成の関連について、今日の1から10をやるとどう目標達成できるのかということは、非常に重要なご指摘だと思うので、最終的なまとめに向けて、森田先生から具体的なサジェスチョンもいただきながら、検討させていただきたいと思っている。
これまで本当にありがとうございました。 - (事務局)
次回以降の検討委員会については、第4回を11月中旬に、第5回を12月中旬頃に開催したいと考えており、詳細の日程については、ご相談のうえご連絡させていただきたい。 - (会長)
それでは、どうもありがとうございました。