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農空間リアル・インタビュー (河南町かうち地区 農と自然を守る協議会)
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農空間リアル・インタビュー 河南町かうち地区 農と自然を守る協議会浅川賢二さん
写真左 浅川賢二さん 右 松原社長
南河内の恵まれた自然や農空間などの地域資源を有効活用しながら、これらの豊かな自然を次世代へと受け継いでいくための人材育成と福祉を融和した新しい地域創生のあり方を研究し実践している「河南町かうち地区 農と自然を守る協議会(以下、農と自然を守る協議会)」。その活動に意欲的であり、率先しておこなっておられるプロジェクト・マネージャーの浅川賢二さんにお話を伺いました。
(平成29年8月18日)
――――農と自然を守る協議会を始めようと思ったきっかけは何ですか?
私は仕事で専門学校の農業分野を担当させていただいています。以前は他の地域の田んぼを利用して実習圃場にしていたのですが、たまたまこの場所を私のおじいちゃんが管理していました。しかし、もう高齢になってしまって、田んぼにくるまでに通ってくる道の傾斜がきついのでこの場所で農業ができなくなってしまった、ということがきっかけですね。
そうしたら、この地域の若い人は農業をしないので、こういった棚田も耕作放棄地になっていくのが目に見えていました。それだったら農業の学科のカリキュラムをこの場所に持ってきて、学生さんの力を借りて保全しようと。それで学生さんもこういった自然の中で勉強するのもいいかなぁと思いました。有機栽培の指導をしていただいている指導教官の方から、この周りは他の田んぼもないので、有機JASも取れる可能性もある、ということで地元の許可をいただいてやろうと思って始めたのが平成27年1月25日ですね。
その時にはほとんど耕作放棄地になっていて、草刈をしないといけない状態でしたが、それだけするのは大変だし面白くないから、村づくりをするテレビ番組(民家の再生や農作物の栽培、動物の飼育等、昔ながらの古き良き山村を忠実に再現する番組)みたいなことをみんなでやろうということになり、別の学科と自然大陸という卒業生が野外体験、野外教育のお仕事をしている集まりがあるのですが、そういった卒業生や在校生、ほかの学生も集めて楽しくみんなでやろうということになりました。
繁茂している竹の伐採や、雨の影響で土砂が流れ込んで使えない状態の水路を、みんなで綺麗にして、それからポツポツポツポツと授業したり卒業生もたまに来て村づくりをするテレビ番組みたいなイベントを、今でも行っています。そういった「みんなで楽しもう!」というのがきっかけですね。
写真 上 田んぼへ続く道
下左 田んぼ 右 ピザ釜
――――現在までの具体的な活動例について教えてください。
定番の田植え、芋掘り、稲刈り、そして収穫したものをここでピザ釜を使って食べる食のイベント、あとオリーブの移植もしていますね。それから古民家の再生。
古民家の方は、もともと幽霊屋敷でした。ここをなぜ再生しようかと思ったかというと、トイレがなかったから。当時学生の女の子が来た時に、トイレがなかったのでどうしようかと困りました。でも授業で連れてくるから無いわけにはいかない。しょうがないから、私の家内の自宅がこの近くにあるので、「うちの家を使っていいよ」ということでしていたら水道代が上がりました。冗談ですけど(笑)
そうしたらやっぱりトイレ要るよねって。着替えする場所も要るし、ちょっと休憩する場所も要るということで、この古民家は築150年以上経っているのですけれども、30数年使われていなかったんですね。それで周りからもったいないなーといわれていまして。家の持ち主さんも他の家に住まれ、一人なので、もうどうしようもなくて。というところをみんなで綺麗にするからと頼んでみました。目的はトイレを使いたかったから。でもトイレも昔の汲み取り式だったんです。それでみんなで綺麗にしようという時に一番お世話になったのが松原工務店の松原社長。松原社長が若い子を応援するという運動をされていまして、「トイレやったろう」と、無償で修繕していただきました。で、浄化槽をつけてまずトイレを作っていただいたというのが、こうして継続的に動くきっかけになりましたね。
古民家の再生、それも授業で。土壁を塗ったりとか、家財もそのまま中に入った状態だったのでそれを片づけたり、壁を拭いたり、襖を綺麗にしたりとか、そういうのも授業の一環で学生と卒業生と一緒に古民家再生イベントとしてやっていました。
ただ片付けするだけだったら大変なので、料理研究家の先生に入ってもらってみんなでお昼ご飯の用意をして食べたりとか、そういったイベントもしています。
――――現在までの活動を振り返って、達成感を得た出来事を教えてください。
それはもうこの古民家ですね。ほんとにね、もうここお化け屋敷だったんです。今もまだ手つかずの状態の場所もありますけど、もとは本当にお化け屋敷で。庭も外から見たら草がボーボーの状態でした。それが今、こういう風に皆さんに関わってもらえるようになったのが一番の達成感です。これからはこの古民家を活動の拠点にしていろいろなことをやっていこうかなと思っています。
写真 古民家
――――会の活動を通じて、この地域の農業や農空間をどのように変えていきたいですか?
広い平野部ではなく中山間地である、かうち地区の一部は土砂災害警戒区域に指定されていたりします。やっぱりこういった狭い不便なところではありますが、地元の人は農業、林業をしてここまで来ているわけですから、その農空間を保全していかないといけない。保全していくにはいろんな仕掛けをしていかないといけないし、いわゆる農業、林業というものを地域の人たちが守ってきた。それを我々がうまくコーディネートして若い世代に引き継いでほしい。みなさんと一緒に何か、こう、いろんな人たちと結びつけながらこの「農空間」「農業」という財産を継いでいくためには付加価値をつけるという点で有機野菜が一番いいのいかなと、指導していただいている先生と相談しながら考えています。草刈などずっとしていかないといけないので手間暇が非常にかかりますね。その手間暇がかかったものをより高く売ることを消費者に理解してもらって、生産者の所得を上げるような仕組みを作っていきたいです。
その中で農泊推進対策に取り組んでいます。国の方で今、インバウンドの人たちを昔の日本の生活体験であったり農業体験であったりをして、インバウンド需要を地方に持ってこようというのが政策としてありますが、そこの認定を協議会が頂きました。最大の目的は農業の若い担い手を育て、有機野菜をこのかうち地区で増やしたい。その手段として農泊であったりエコツーリズムであったりというサービス業の部分を持ってきて、生産者の方に所得を移してあげるような仕組みを作りたいと思っています。それは、私だけでは出来ないのでいろんな方に協力していただきながら、コンセプトは「楽しく」「お洒落に」ということで行っています。
また、「半農半X」という半分農業半分何かという考えも取り入れていきたいと考えています。協議会にも日本舞踊を勉強されている方がいて、古民家でのプログラムに取り入れたいと考えています。収穫した有機野菜を振舞いながら、日本舞踊を見ていただきたいと企画しています。また、ヨガ教室の企画もあり、ヨガ体操の後、食事をとってもらい、お茶やハーブで癒されたりと言う、農業だけじゃなくって農業と何かというのを若い人のアイディアを聞いて実現していこうかなと思っています。
――――最後に農と自然を守る協議会の今後の展望と課題を教えてください。
展望は、若い人達がどんどんこの地域に来てもらえるような仕掛けをしていきたいですね。そのキーワードは「楽しい」と言う、わくわくするようなものをここで発信していきたい。若い人がここに集まった中で気に入って、ここで農業をやろうかというのをどんどん情報発信していきたいなぁというのが今後の目標です。
課題はいっぱいあります。今拠点としている古民家は耐震などの問題から泊まることができないんです。だからまだ農泊はできないんです。たまたまこの古民家はいろいろな方々の力をもらってここまで綺麗にできましたけど、1年2年かかっています。非常にパワーのいる作業になります。この辺りにも結構いろんな古民家が空いてきています。ほんとはそういうのをうまく活用してもっともっと輪を広げていきたいんですけれども、お金の問題がありますよね。補修しないと住めないというのと、空いているところはいっぱいあるんですけれども地元の方で家の財産なのでとか、将来孫が帰ってくるかなとか、ね。それで一週間に一回帰ってきてとか、そのままほったらかしとかいっぱいあります。
まぁそういった空き家を建築のプロとか若い人とかと一緒になって、今、プロジェクトとして「田舎に泊まろう!」の企画があります。都会の人たちが田舎に来て、民泊で1泊だけ泊まって楽しんで帰ってもらおうと。すぐに外国人は難しいので若い人や都会の人があちこちで1泊して、お酒を飲みながらでもいいし、野菜を食べながら地元の人と交流しながら、この地域に空いているおうちがたくさんあるという現状を理解してもらおうというのをやっていこうかなと思っています。区長さんにも打ち合わせをしたんですけれども、理解してくれるところもあれば「なかなかいやいや・・・」という部分もあります。
お金の問題や地域の方との兼ね合い、法律上の問題などもあり、そこらへんが課題かなというところです。
写真 古民家裏側 耐震補強のための骨組み
インタビュー当日はそうめん流しイベントで、古民家には河南町に住む小学生が集まって竹の加工をしたり、協議会の方がかうち地区で採れた野菜を使って昼食を準備していたりと賑わっていました。
ありがとうございました。