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農空間リアル・インタビュー(NPO法人里山ひだまりファームのみなさん)
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農空間リアル・インタビュー NPO法人里山ひだまりファームのみなさん
写真 NPO法人里山ひだまりファームの皆さん
自然豊かな河内長野市惣代地区を拠点に活動をされている「NPO法人里山ひだまりファーム」。農林業に取り組むことで地区内の里山と農地を大切に維持・再生し、地区内の資源を地域に還元しようと活動をされています。今回は代表して、理事長の薮本さん、副理事長の坪本さん、理事の内見さんに、活動の内容や将来への想いなど、お話をお伺いしました。
(平成28年9月5日)
---NPO法人里山ひだまりファームの設立経過や組織構成等をお伺いしてもよろしいですか。
平成26年に設立をしました。目的の根っこにあるのは生まれ育った地区内の里山、農地を次世代にも残していきたいということかなと思います。里山、農地を守るのに農業や林業に取り組むといった具合です。
設立して約2年となりますが、はじめからNPO法人でやっていこうと決めていた訳ではないです。活動地区もはじめは惣代と決めていた訳ではなく、バンドを組んだりしていた仲間の2人が、それぞれの家の農作業が大変でお互いに助け合いをしている中で、想いを強くしていったという感じです。
農作業は、昔は人力中心でしたし、隣近所で助け合ってきました。田植えを一緒にする、空いているときは稲刈りを助けてあげるというように。
今は機械化が進んで便利にはなったのですが、寂しいことに助け合いの仕方が違ってきてしまいました。機械化が進むと、農機具を持っている家と、持っていない家が出てきます。農機具を持っている家は、いつも持っていない家に農機具を貸してあげることになります。どうしても助け合いの仕方が昔とは違ってくるのです。
それでも皆で協力し合ってやってきたのですが、個人の活動では限界もあるし、経費の面等も含めて仕組みをつくって取り組むことが大事だと感じ、NPO法人を起ち上げました。
現在は、11名のスタッフで、お米等の担当、野菜の担当、営業の担当というように、それぞれ役割分担をして活動をしています。法人なので経理の担当もいますよ。
---皆さんは、惣代地区の方ばかりなのですか。
惣代の者もいるし、加賀田とか他の集落の者もいるし。もともと勤め人で兼業農家をしていたスタッフもいれば、市街地に住む非農家もいます。まずは組織の基盤を作るのに同じ考えを持った仲間内の方がいいと思い、友達の寄せ集めでスタートしています。職業も、つながりも様々です。
写真 里山の風景(左から夏の風景、秋の風景、ヤマユリ、夕暮れ時の様子。里山では四季や時間の移ろい、自然を感じられます。
---法人化する前と法人化されてから何か違いはありますか。活動内容も変わってきたりしていますか。
法人化する前は、それぞれ自分のところのお米を作る程度でした。田植えとか稲刈りとか忙しい時期は手伝ったたり、機械がつぶれたとなったら貸してあげたり・・・。
『ゆい』という言葉を聞かれたことはありますか。特に機械化される前などは、1日手伝ってもらったら、お返しに1日手伝いに行って、というようにしていました。それが『ゆい』です。機械化された今だと機械は燃料もいるし、メンテナンスもしないといけないし、お金がかかります。昔ながらの『ゆい』だけでは・・・。
これは法人化をした理由でもあるのですが、そういう諸経費や気兼ね、そこをどう助け合いをしやすい制度にするかという意識を持って今は活動しています。当然各作業に係る諸経費や日当もありますし、法人で農業をやるということは税金も払います。これまでの自給農家では考えなかったコスト意識も必要だし、事務所も構えないといけません。
また、活動資金を工面するために、NPO法人として借り受けた農地でお米を作ったり、小麦、こんにゃくいもを栽培して販売したり、その経費の足しにしています。小麦とこんにゃくいもは、ある程度の規模で栽培しているところは府内にほとんどないようで、どちらも地元や知り合いの企業と連携して加工、販売しています。
小麦なら全粒粉のパンに、こんにゃくいもは加工してこんにゃくにし、くろまろの郷やスーパーなどの小売店で販売されています。他にも季節ごと野菜も栽培しています。秋なら、ハロウィンのジャック・オー・ランタンに使うカボチャなども作りますよ。スタッフは皆、活動を楽しんでやっていますね。
写真 こんにゃくいもの栽培の様子
---農地を借り受けているということですが、活用された制度があれば教えてください。
私たちの活動を知ってくれた方が、自分が出来なくなった農地を「貸したい」、「管理してほしい」という声を掛けてくれました。それなら貸し手、借り手の権利を守るという考えで、契約関係をきっちりしておいた方がいいと思い、市のアドバイスを受け、農地の利用権設定という方法(農業経営基盤強化促進法に基づき農用地利用集積計画書を作成し貸借する方法)と、農地中間管理事業で貸借する方法(農地中間管理事業の推進に関する法律に基づく貸借の方法)で借りています。
貸し手には契約関係も明確にしていますし、同じ村の「○○ちゃんのいるNPO法人に借りてもらう」ということで安心感があるようで、地元の方には喜んでもらっています。
---それならオファーも多いのではないですか。
増えてきています。農地だけではなく、農産物のオファーも多いですよ。小麦とかは、取引先からもう少し増やせないかという話もあります。リクエストに合わせて増やせたら良いのですが、耕作以前の課題として農地の基盤整備、維持・補修や有害鳥獣から守るための作業も多く、労働力の不足で難しいところです。惣代地区のように、山あいの地域では段々畑ですし、水も道も整備されている訳ではないです。ですから、農業をやるのに条件の良いところばかりではないため、手広くやるのは難しいのです。
先にお話ししましたが、お互いの助け合いを目的に協業の仕組みづくりをと考えていましたが、活動の中心が私たちに借りて欲しいという農地の維持になっているので、現在のところメンバーの農地は基本的にはメンバーやその家族で、オファーがあれば人力や機械で支援しています。
---今後の展望、課題を教えてください。
今はまだ足元を固めている段階で、目先のことだけで精いっぱいな状況ですが、活動の幅がもっと広がっていけばと考えています。
冒頭にもお話ししたように、農作業や山の作業をするのは業として儲けることがメインでやっているのではないです。里山の環境、風景を次世代に引き継ぐため、それを守ろうということでやっています。市街地と森林地帯との境目、こういう里山は全国のどこにもあります。『里山を生かし生活する』ことが大切で、農業や林業はそれを守るための手段のひとつです。経済活動というよりは中山間地域の環境の維持活動かな。だからNPOなのです。
そのため、農産物を生産するという事業とともに、街の人が参加できる体験事業等にも取り組めたらいいなと思います。ひだまりファームでやるからには、我々の活動の目的である里山や農地の保全ということを理解してくれる方に参加いただけるといいですね。一方で参加者のトイレの確保や駐車場、着替えや体験ルームをどうするか等、ハード面の課題があると感じています。空き家活用も視野に入れています。
ハード面と言えば、山あいの惣代地区では段々畑で、道路も整備されていないところも多く、基盤整備の遅れが活動の足かせになっています。借り受けた農地に対する基盤整備の様々な問題もクリアしなければならないと思っています。またここ数年はイノシシ被害が深刻な問題で、次世代にこのままで引き継ぐことができるのだろうか・・・現在の対策では少々限界を感じています。そんな中でも、農閑期の冬場の活動で農地の排水工事や里山の手入れをしています。山の作業で得た薪とシイタケの原木は販売しました。このように、地区の資源は活用します。
そして、こうしたことに取り組むには、人手も必要です。同じ想いを持った個人、あるいは企業等、もっと多くの力が必要です。
人手については、現在の作業を支える人手ということのほかに、後継者としての人手も重要です。我々の世代は定年退職後に活動していますので、時間は十分取れます。むしろ、この活動に関わることで生きがいというか、健康面でもプラスになっています。
でも現在勤めておられる世代は、仕事があるので我々と同じように活動することは難しいです。彼ら定年を迎えた時とか、例えば子育てを終えた女性や学生が機械のオペレーターをするとか、無理なく入ってこられる、そしてスムーズに引き継いでいける、そういった仕組みも整えていけたらと思っています。
ありがとうございました。