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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第71号)
答申第71号 府立高校自動車通勤関係文書部分公開決定事案(PDF:51KB)
- 対象行政文書
大阪府立大手前高等学校、大阪府立旭高等学校、大阪府立茨田高等学校、大阪府立市岡高等学校、大阪府立港高等学校、大阪府立大正高等学校及び大阪府立泉尾高等学校の教職員の学校までの自動車使用に関する通勤届及びその理由書 - 実施機関の決定
- (1)実施機関
大阪府教育委員会(担当課 教育政策室総務企画課) - (2)決定内容
部分公開決定- ア 公開しないことと決定した部分
- (ア)通勤届及びその理由書のうち「職員番号」、「個人の印影」、「個人の住所」の部分
- (イ)通勤届の「通勤の実情」の欄中、「距離(概算)」、「所要時間(概算)」、「備考」、「他に利用できる交通機関等がある場合」のうち住所の特定しうる部分、個人の生活状況が記載された部分及び使用する自動車等の「車両名称」及び「車両ナンバー」が記載された部分
- (ウ)通勤届の「確認及び決定欄」の欄中、「1箇月の運賃等の額の算出基礎」、「1箇月の運賃等の額」、「運賃等の額(1箇月)」、「通勤手当の月額」の欄のうち金額又は金額の特定しうる内容が記載された部分並びに「支給要件該当理由」の欄中「自動車等使用」の項目のうち「理由のチェック欄」及び「使用距離」の部分
- (エ)自動車通勤理由書のうち住所の特定しうる部分、個人の生活状況等が識別しうる部分、使用する自動車等の「車両名称」、「色」及び「車両ナンバー」が記載されている部分
- イ 公開しない理由
条例第9条第1号に該当する。
本件非公開部分には、職員個人の住所や自家用自動車通勤が必要な具体的理由の情報等が記載されており、これらの情報は、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
- ア 公開しないことと決定した部分
- (1)実施機関
- 異議申立て
- (1)申立ての趣旨
本件処分のうち、通勤手当の月額(金額)及び車両ナンバーを非公開とした部分を取り消し、これを公開するとの決定を求める。 - (2)理由(要旨)
- ア 通勤手当の月額(金額)について
職務を遂行する為に必要な手当であり、所得税法第9条で非課税所得と決められていることからも、条例第9条第1号の個人の所得等に関する情報に当たらない。
通勤手当の額は規則で細部にわたり決められており、個々の職員の能力等で決められていない以上、個人のプライバシーに関する情報とは理解できない。
同じく所得税法で非課税所得とされている出張費と言われている金品は、公開されている。 - イ 教職員が使用する自動車の車両ナンバーについて
府立高等学校におけるマイカー通勤者は、認定を受けた者以外も多数マイカー通勤を長期にわたり連日繰り返して行っている。申立人としては、校内駐車している車両(認定車両と違反車両)の区別の情報(校内駐車が無い車両を除く)を求めたい。
児童、生徒の安全確保と教職員の規律から条例第11条の公益上の理由による公開の適用を求める。
- ア 通勤手当の月額(金額)について
- (1)申立ての趣旨
- 大阪府情報公開審査会の答申
- (1)審査会の結論
実施機関が本件異議申立ての対象となった部分公開決定において「通勤手当の月額」及び「車両ナンバー」を非公開とした判断は妥当である。 - (2)理由(要旨)
- ア 通勤手当の月額について
自動車通勤者への通勤手当の支給額は、「一般職員」、「通勤不便な職員」及び「通勤が困難な身体障害を有する職員」に区分され、その区分に応じてそれぞれの額が定められていることからすると、支給額を公にすることにより、当該教職員がいずれの区分に該当するかが明らかになり、それによって当該教職員が通勤が困難な身体障害を有する職員であることが明らかになることもあるため、当該情報は、個人の身体的特徴に関する情報に該当するといえる。
通勤手当の支給額は、これのみによって直接特定の個人が識別され得るものとは言いがたいが、本件決定において通勤届の届出者の氏名が公にされていることから、特定の個人が識別され得る情報である。
通勤が困難な身体障害を有することは、まさに個人に専属し、個人の心身に関する基本的な情報であって、公になることにより、何らかの不利益を受けるおそれのある情報である。 - イ 車両ナンバーについて
車両ナンバーは、国土交通大臣が管理する自動車登録ファイルに登録された自動車登録番号であり、同ファイルには自動車登録番号のほか当該自動車の車名及び型名並びに所有者の氏名又は名称及び住所等が登録されており、これらの登録事項については、道路運送車両法第22条第1項に基づき、何人も、国土交通大臣に対し、それらの事項を証明した書面の交付を請求することができる。
特定の職員が通勤に使用している車両ナンバーが明らかになると、自動車登録ファイルと照合すること等により、その車両が当該職員の所有するものであるか否かが明らかになるほか、車両が当該職員の所有するものである場合においては、自動車登録ファイルに登録された住所が、車両が当該職員の所有するものでない場合においては、当該車両が、家族や知人等の他人の所有によるもの、あるいはレンタカーであることが明らかになる。
これらは、当該教職員の財産や生活状況等、ひいては、家族・交遊関係等までうかがい知ることができる情報であり、当該車両が教職員の通勤に使用されている点を考慮したとしても、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
なお、異議申立人の校内駐車等に関する主張を考慮しても、車両ナンバーを非公開としたことについて本号の保護利益を上回る公益上の必要性は見当たらない。
- ア 通勤手当の月額について
- (1)審査会の結論
大阪府情報公開審査会答申(全文)
第一 審査会の結論
実施機関が本件異議申立ての対象となった部分公開決定において「通勤手当の月額」及び「車両ナンバー」を非公開とした判断は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 平成13年7月27日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「府立高校(大手前、旭、茨田、市岡、港、大正、泉尾)教職員の学校までの自動車使用に関する通勤届及びその理由書」の公開請求(以下「本件請求」という。)をした。
- 同年8月10日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、次の(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、次の(2)に示す部分(以下第二において「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない理由を次の(3)のとおり付して異議申立人に通知した。
- (1)本件行政文書
大阪府立大手前高等学校、大阪府立旭高等学校、大阪府立茨田高等学校、大阪府立市岡高等学校、大阪府立港高等学校、大阪府立大正高等学校及び大阪府立泉尾高等学校の教職員の学校までの自動車使用に関する通勤届及びその理由書 - (2)公開しないことと決定した部分
- ア 通勤届及びその理由書のうち「職員番号」、「個人の印影」、「個人の住所」の部分
- イ 通勤届の「通勤の実情」の欄中、「距離(概算)」、「所要時間(概算)」、「備考」、「他に利用できる交通機関等がある場合」のうち住所の特定しうる部分、個人の生活状況が記載された部分及び使用する自動車等の「車両名称」及び「車両ナンバー」が記載された部分
- ウ 通勤届の「確認及び決定欄」の欄中、「1箇月の運賃等の額の算出基礎」、「1箇月の運賃等の額」、「運賃等の額(1箇月)」、「通勤手当の月額」の欄のうち金額又は金額の特定しうる内容が記載された部分並びに「支給要件該当理由」の欄中「自動車等使用」の項目のうち「理由のチェック欄」及び「使用距離」の部分
- エ 自動車通勤理由書のうち住所の特定しうる部分、個人の生活状況等が識別しうる部分、使用する自動車等の「車両名称」、「色」及び「車両ナンバー」が記載されている部分
- (3)公開しない理由
条例第9条第1号に該当する。
本件非公開部分には、職員個人の住所や自家用自動車通勤が必要な具体的理由の情報等が記載されており、これらの情報は、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
- (1)本件行政文書
- 同年9月10日、異議申立人は、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に対し、職員番号、個人の印影及び個人の住所を除く部分の公開を求める異議申立てを行った。
- 平成14年1月7日、異議申立人は、実施機関の弁明書に対する反論書において、公開を求める部分を、通勤手当の月額(金額)及び車両ナンバーとし(以下「本件異議申立て」という。)、その他の部分については争わない旨表明した。
第三 異議申立ての趣旨
本件処分のうち、通勤手当の月額(金額)及び車両ナンバーを非公開とした部分を取り消し、これを公開するとの決定を求める。
第四 実施機関の主張要旨
弁明書における実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。
1 自転車等を使用して通勤する職員に係る通勤手当について
(1)支給対象者
通勤手当は、職員の給与に関する条例(昭和40年10月22日大阪府条例第35号。以下「給与条例」という。)第14条第1項に規定されており、職員が通勤のため交通機関等を利用し、かつ、運賃等を負担している場合(第1号)、自転車その他の交通の用具で人事委員会規則で定めるもの(以下「自転車等」という。)を使用する場合(第2号)又は交通機関等と自転車等を併用している場合(第3号)に支給される。
本件請求は府立高校の教職員の学校までの自動車使用に係る通勤届及びその理由書の公開を求めるものであるが、自動車は、職員の通勤手当に関する規則(昭和41年1月17日大阪府人事委員会規則第5号。以下「通勤手当規則」という。)第7条で定められた自転車等に該当することから、通勤の全行程において自動車を使用する場合については、上記の第2号に基づき、通勤のため自転車等を使用することを常例とする職員であって、自転車等を使用しないとした場合に徒歩による通勤距離が片道2km以上となる者に対して支給される。ただし、徒歩による通勤距離が片道2キロメートル未満であっても自転車等を使用しなければ通勤することが著しく困難であると認められる職員にも支給される。
なお、自転車等を使用しなければ通勤することが著しく困難であると認められる職員とは、通勤手当規則第3条の2において、a 住居が離島等にある職員、b 地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)別表に掲げる身体障害に属する程度の身体障害のため歩行することが著しく困難な職員と規定されている。
(2)通勤手当が支給される自転車等の使用職員の区分
通勤手当支給対象者のうち自転車等を使用して通勤している職員については、次の区分に応じて、通勤手当が支給されている。
ア 一般職員
自転車等を使用して通勤している職員のうち、次のイ及びウに掲げる職員を除く者である。この区分により通勤手当の支給を受ける職員は、次のイ及びウには該当しないが、これらに準じ各学校が定めた基準に基づいて、学校長が真にやむを得ない事情があると判断し、自動車等の使用による通勤認定を受けた者である。
具体的には、
- 腰痛等による職員の健康状態から長時間の公共交通機関を利用しての通勤が困難な者
- 小学校就学前の児童を養育しており、当該子を保育所等へ送迎する必要のある者
- 家人に病気治療中の者が存在し、病院等への送迎等が必要な職員等であり、自動車等を使用しないと勤務時間に出勤できない者
等である。
イ 通勤不便な職員
給与条例第14条第2項第2号及び通勤手当規則第6条の2第2項並びに「職員の通勤手当に関する規則の運用について」(昭和41年1月17日大阪府人事委員会第558号通知。以下「規則運用通知」という。)及び「職員の通勤手当に関する規則第6条の2第1項第2号の職員の範囲並びに通勤手当の月額について」(昭和49年2月1日大阪府人事委員会第576号通知)で規定されており、自転車等の使用距離が片道5km以上である者のうち、自転車等を使用しないで交通機関を利用して通勤するものとした場合において次のいずれかに該当するものである。
- a 通常の通勤の経路に利用しうる交通機関がない場合
- b 出勤するとき若しくは勤務終了後帰宅するとき利用できるような運行がなされている交通機関がない場合
- c 住居若しくは勤務公署からその利用することとなる交通機関のもよりの駅(停留所等を含む。)までの距離が2キロメートル以上である場合
- d 利用することとなる交通機関の運行回数がいずれの交通機関についても1日10往復以下である場合
- e 利用することとなるいずれの交通機関においても職員が始業時刻前30分内に勤務公署に到着すること若しくは終業時刻後30分内に帰途につくことができるような運行がなされていないものである場合
- f 交通機関による通勤距離が、自転車等の使用距離の2倍程度となり、かつ、交通機関による通勤時間が片道1時間30分以上となる場合
- g 2以上の交通機関を乗り継いで通勤することとなる場合で、乗継ぎに要する時間(乗継ぎの回数が2以上ある場合は、そのうちのいずれか一に要する時間)が往路又は復路のいずれかにおいて、30分以上となる場合
ウ 通勤が困難な身体障害を有する職員
地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)別表に掲げる身体障害に属する程度の身体障害のため歩行することが著しく困難な職員である。
(3)支給額
通勤手当は、交通機関を利用して通勤する者に対しては、1箇月の通勤に要する運賃等の額に相当する額であり、実費弁償的な性格を有するものである。
自転車等を使用して通勤する職員に対する通勤手当額は、給与条例第14条第2項第2号及び通勤手当規則第6条の2第2項並びに「職員の通勤手当に関する規則第6条の2第1項第2号の職員に対する通勤手当の月額の決定について」(昭和62年12月23日大阪府人事委員会第395号通知)で規定されている。
これを表にすると別表1のとおりとなる。
〔以下表について記載略〕
(4)支給対象者の範囲の運用について
実施機関においては、交通事故防止等の観点から、教職員の自家用自動車等による通勤については、「教職員の自家用自動車等による通勤の自粛及び通勤手当の適正な運用について」(昭和57年10月2日付け教委職第652号教育長通達)をはじめとする通達を数回発し、やむを得ない事情がある場合を除き、自粛を求めているところである。
(5)認定手続き
通勤手当の認定にあたっては、当該職員から通勤手当規則第2条第2項に基づく届出書を提出させ、「府立の高等学校等職員の扶養手当等の認定の専決に関する規則」(昭和49年3月4日大阪府教育委員会規則第2号)に基づき学校長が認定している。なお、通勤届の様式については、規則運用通知で定められている。
また、自転車等を使用して通勤する職員がその届出を提出する場合には、運用上、その必要性を証明する、通所(園)証明書、診断書等を添付した理由書等を併せて提出させ、事務の執行の適正化を図っている。
2 本件行政文書について
- (1)本件行政文書は、「大阪府立大手前高等学校、大阪府立旭高等学校、大阪府立茨田高等学校、大阪府立市岡高等学校、大阪府立港高等学校、大阪府立大正高等学校及び大阪府立泉尾高等学校」(以下「関係高等学校」という。)の教職員で住居から所属校までの全行程を自動車を使用するものとして通勤認定を受けている者が認定権者である学校長等に提出した通勤届及び理由書等である。
- (2)通勤届の様式は規則運用通知で定められており、大きく「職員の氏名等」、「通勤の実情」及び「確認及び決定欄」の三つの部分から構成されている。それぞれ、記載されている主な情報や構成は、次のとおりである。
- ア 「職員の氏名等」の部分は、届出者が記入するものであり、「提出年月日」、「勤務公署名」、「所属コード」、「職員番号」、「職名」、「氏名及び印影」、「勤務公署の所在地」、「住所」及び「主な届出理由」が記載されている。
- イ 「通勤の実情」の部分には、通勤の順路ごとに、「通勤方法の別」欄、「区間」欄、「距離(概算)」欄、「所要時間(概算)」欄、「乗車券の種類」欄、「左欄の乗車券等の額」欄及び「備考」欄が設けられ、「他に利用できる交通機関等がある場合」として、「交通機関等の名称」欄、「利用区間」欄及び「左の交通機関等を利用しない理由」欄が設けられている。
- ウ 「確認及び決定欄」の部分は確認者が記入するものであり、「受理年月日」が記載され、その他の部分は、主に、「算出基礎」欄及び「決裁に係る欄」の2つに大別され、それぞれ、次のように構成されている。これらの欄には、必要事項及び該当事項が記載されている。
- a 「算出基礎」欄
「交通機関等の名称」ごとに、「利用区間」欄、「定期券回数券その他の別」欄、「1箇月の運賃等の額の算出基礎」欄、「1箇月の運賃等の額」欄及び「運賃改正による1箇月の運賃等の額」欄が設けられている。本件請求が住居から所属校までの全行程において自動車を使用するものとして認定を受けている教職員の通勤届等を求めるものであることから、「交通機関等の名称」欄には「自動車」と、「利用区間」欄には住居から学校までの趣旨が記載されている。また、「1箇月の運賃等の額の算出基礎」欄には住居から勤務地までの距離が、「1箇月の運賃等の額」欄には金額が記載されている。 - b 「決裁に係る欄」は、各管理職の押印する欄、「支給の始期等」欄、「運賃等の額(1箇月)」欄、「通勤手当の月額」欄、取扱者及び担当者の押印する欄と、「支給要件該当理由」欄で構成されている。
「支給要件該当理由」欄はさらに、「通勤距離2キロメートル以上」と「通勤距離2キロメートル未満」に分かれ、「通勤距離2キロメートル以上」欄には、「交通機関等利用」、「自転車等使用」又は「交通機関等と自転車等の併用」欄のいずれかを選択してチェックする欄が設けられ、「自転車等使用」又は「交通機関等と自転車等との併用」を選択した場合は、その理由として、さらに、それぞれ、「一般」、「不便地」又は「身体障害」のいずれかを選択してチェックする欄が設けられ、「使用距離」の記載欄が設けられている。「通勤距離2キロメートル未満」には、「離島等」又は「身体障害」のいずれかを選択してチェックする欄が設けられている。
- a 「算出基礎」欄
- (3)自転車等を使用する場合に併せて提出させている理由書等については、任命権者である実施機関が様式等を定めているものではなく、認定権者である学校長等が適宜定めているものである。
理由書等の記載事項は、概ね関係高等学校とも、使用する自動車の「車両ナンバー」、「車両名称」等とともに、- a 通勤不便の場合は、住居と勤務公署との交通機関等を利用した場合と自転車等を使用した場合の所要時間や通勤経路
- b 腰痛等による職員の健康状態から長時間の公共交通機関を利用しての通勤が困難な場合は、その健康状態を示す医師の診断書若しくは当該職員からの申立書等
- c 小学校就学前の児童を保育所等へ送迎している場合は、送迎を要する児童の氏名、年齢、保育所等の名称、保育所等の開閉園時間、保育所等と勤務公署との交通機関等を利用した場合と自転車等を使用した場合の所要時間、その他の特記事項
- d 家人に病気治療中の者が存在する場合は、その家人の氏名、続柄及び病名等、入院の場合には病院名などである。
3 条例第9条第1号に該当することについて
- (1)条例第9条第1号においては、「個人の(省略)身体的特徴、健康状態、家族構成、(省略)住所、(省略)所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」が「記録されている行政文書を公開してはならない。」と規定されている。
- (2)異議申立ての対象とされた部分について
非公開部分のうち、「職員番号」、「印影」及び「住所」については、異議申立ての対象とされていないため、異議申立ての対象とされた部分については、次に示す部分(以下第四において「本件非公開部分」という。)である。- ア 通勤届について
- (ア)「通勤の実情」の欄について
- a「距離(概算)」欄、「所要時間(概算)」欄に記載された部分
- b「備考」欄のうち教職員が使用する自動車の「車両名称」及び「車両ナンバー」が記載された部分
- c「他に利用できる交通機関等がある場合」のうち住所の特定しうる部分及び個人の生活状況が記載された部分
- (イ)「確認及び決定欄」について
- a「1箇月の運賃等の額の算出基礎」欄、「1箇月の運賃等の額」欄、「運賃等の額(1箇月)」欄及び「通勤手当の月額」欄のうち金額又は金額の特定しうる内容が記載された部分
- b「支給要件該当理由」の欄のうち「自転車等使用」の項目の「理由のチェック欄」及び自転車等の「使用距離」の部分
- (ア)「通勤の実情」の欄について
- イ 理由書等について
教職員がどのような地域に居住しているのかがわかる部分、教職員の生活状況等が識別しうる部分、教職員が使用する自動車の「車両ナンバー」、「車両名称」、「色」が記載されている部分
- ア 通勤届について
- (3)本件非公開部分が条例第9条第1号に該当することについて
本件非公開部分は、氏名が明らかになっている教職員の通勤届及び理由書等に記載された通勤手当の額、家族の氏名、健康状態等の情報であることから、条例第9条第1号の「個人の・・・身体的特徴、健康状態、家族構成、住所・・・に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもの」に該当する。そこで、以下、本件非公開部分が、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当することについて述べる。- ア 通勤届について
- (ア)「通勤の実情」のうち非公開とした部分について
- a「距離(概算)」及び「所要時間(概算)」に記載された部分について
「距離(概算)」及び「所要時間(概算)」は、各教職員がそれぞれの住居からその勤務地である高等学校までの距離と所要時間の概算を具体的に記載したものであり、これを公開することで当該教職員が勤務地からどのぐらい離れている地域、ひいては、どのような地域に居住しているのかが推測されることとなる。個人がどのような地域に居住しているのかについては、まさに個人のプライバシーに関する情報であって、これは、公務員である教職員においても同様であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - b「備考」欄のうち教職員が使用する自動車の「車両ナンバー」及び「車両名称」が記載された部分について
教職員が使用する自動車の「車両ナンバー」や「車両名称」は、公開すると、その車両の車種や型式等により、また、国土交通省管轄の陸運支局又は自動車検査登録事務所において当該車両が当該教職員本人名義か親族等他人名義かが分かる情報であり、当該教職員の財産状況等が推測される情報と考えられることから、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - c「他に利用できる交通機関等がある場合」のうち住所の特定しうる部分及び個人の生活状況が記載された部分について
上記には、「交通機関等の名称」欄、「利用区間」欄及び「左の交通機関等を利用しない理由」欄があり、それらに教職員が利用する交通機関名が、あるいは、教職員の生活状況等が具体的に記載されている。これらは、公開することにより、教職員の居住地域が推測され、あるいは教職員の生活状況が具体的に明らかになる情報であるから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- a「距離(概算)」及び「所要時間(概算)」に記載された部分について
- (イ)「確認及び決定欄」のうち非公開とした部分について
- a「算出基礎」欄のうち「1箇月の運賃等の額の算出基礎」欄及び「1箇月の運賃等の額」欄並びに「決裁に係る欄」のうち「運賃等の額(1箇月)」欄及び「通勤手当の月額」欄は、給与条例でいう給与等に関する情報であり、かつ、1で述べたように理由及び距離により「一般職員」、「通勤不便な職員」及び「通勤が困難な身体障害を有する職員」に区別され、それぞれの金額が定められていることから、公開すると、各教職員の身体状況や勤務公署から住居までの距離、ひいては、各教職員がどのような地域に居住しているのかが推測される情報である。よって、これらは、教職員のプライバシーに関する情報であって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- b「支給要件該当理由」欄のうち「自転車等使用」の項目を選択した場合の「理由のチェック欄」には、「一般」、「不便地」又は「身体障害」のうち教職員について該当する事項を記入することになっているが、これらのチェック欄のいずれかを公開すると、当該教職員の居住状況及び身体障害の有無が推測されることから、チェック欄の「一般」欄、「不便地」欄及び「身体障害」欄の全てを非公開とした。
また、「使用距離」欄については、ア(ア)「通勤の実情」の「距離(概算)」で既に述べたとおりである。
- (ア)「通勤の実情」のうち非公開とした部分について
- イ 理由書等
- (ア)理由書等において非公開とした部分のうち、教職員が使用する自動車の「車両ナンバー」及び「車両名称」については、ア(ア)「備考」で既に述べたとおりである。また、「色」についても教職員が使用する自動車の特定に結びつく情報であることから、同様に「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (イ)理由書等は、教職員が通勤において自動車を使用する事由に該当する旨を申し立てるものであり、その事由とは、1(2)ア、イ及びウで述べたとおりであることから、理由書等には、当該教職員の居住地や健康状態、また、家族構成やその健康状態等当該教職員の私生活に関する情報が極めて具体的かつ詳細に記載されている。これらは、まさに教職員のプライバシーに関する情報であって、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当することから、本件処分において非公開としたものである。
理由書等は高校によって様式が定められているものと定められていないものがあり、様式が定められていない高校での理由書については、本人の健康状態、家族構成、家族の年齢やその健康状態等が分かる情報が具体的に記載された部分は、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
また、様式が定められている高校の場合で、あらかじめ理由となる項目が記載されており、該当する項目を記入するようになっているものについては、記入された部分のみを非公開にしても、記入されていない部分をみることによって自ずと理由等が推測されることから、全ての項目を非公開とした。
理由書等において非公開とした部分については、次のとおりである。- a 通勤不便の場合において記入されている通勤経路、距離、所要時間等については、住所が特定若しくは居住地域が推測される情報であることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報であると認められる。
- b 本人の健康状態により自動車の使用が認められている場合の理由については、当該職員の健康状態が具体的に明らかになる情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- c 保育所等への送迎が必要な場合の送迎を要する児童の年齢、保育所等の開園時間、その他の特記事項については、教職員の家族構成、あるいは生活状況に関する情報である。次に、保育所と勤務公署との交通機関等を利用した場合(具体的な交通機関名が記された経路を含む)と自動車を使用した場合の所要時間に関する部分については、具体的な交通機関を利用した場合の経路が記入されており、住所が特定若しくは居住地域が推測される情報であることから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- d 家人に病気治療中の者が存在する場合のその家人の氏名及び続柄、健康状態、入院の場合には病院名は、家族構成や家族の状況が推測される情報であって、これらの情報が「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」ものに該当することは明らかである。
- ア 通勤届について
4 結論
以上のとおり、本件についての実施機関の決定は、条例の趣旨を踏まえたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第五 異議申立人の主張要旨
反論書における異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。
- 本件行政文書について、給与条例と通勤手当規則により決定するものであることは、異議申立人も承知している。同条例の第14条、同規則の第2条、第3条の届出と確認及び決定を含む細部まで決められた規則により通勤手当が支給されている。本件文書の個々について、以下のとおり2つに分けたい。第1分類については異議を申立て、公開を要求しその理由を申し述べる。第2分類については、今回争わない。
- 第1分類 公開するように異議を申し立てる箇所
- 通勤手当の月額(金額)、車両ナンバー
- 第2分類 その他の部分については、争わない。
- 異議を求める箇所についてその理由を申し述べたい。
所得税法第28条によれば、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費、及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」とある。実施機関が弁明書で「通勤手当の支給額は、交通機関を利用して通勤する者に対しては、1箇月の通勤に要する運賃等の額に相当する額であり、実費弁償的な性格を有するものである。」と述べている。異議申立人もその様に理解している。即ち、職務を遂行する為に必要な手当であり、所得者が給与(収入)と理解するのは給与条例による解釈の間違いである。正しくは、所得税法第9条で非課税所得と決められていることからも、条例第9条第1号の個人の所得等に関する情報に当たらない。即ち、この金品は職務遂行上必要であり、全額を通勤の公共交通機関に支払う金品である。自己の都合の良い方法や手段で勝手に変更できず、利益があるものではない。また、通勤手当の額は規則で細部にわたり決められており、個々の職員の能力等で決められていない以上、個人のプライバシーに関する情報とは理解できない。同じ所得税法に非課税所得第9条4項の「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行....(以下略)」。一般的に出張費と言われている金品は、公開されている。その一部には自己の裁量で利用できる額も含まれている。府条例上、職員の給与に関する分類であるから非公開とは異議申立人は承知できない。 - 教職員が使用する自動車の車両ナンバーについて
現に、府立高等学校におけるマイカー通勤者は、認定を受けた者以外も多数マイカー通勤を長期にわたり連日繰り返して行っている。異議申立人の目撃によれば、少ない学校で4、5台から多い学校で20台前後が見受けられる。府立高等学校には合理的な駐車場は少なく、通勤者の車両を止める場所は無いのが現状である。しかし、条例や規則を無視して駐車している教職員は、府立高等学校以外の大阪府下市町村立学校でも多数の教職員がマイカー通勤して、学校敷地内に駐車場でもない玄関前や校庭に駐車している。校庭に駐車する状況で児童、生徒に対する人身事故も起きている。学校長よりマイカー通勤を認定された者の数より自己都合による自家用車を校内駐車している規則違反者の数が2-3倍多い現状から、学校長を始め関係機関に規則違反者の校内駐車の禁止を求めているが未だ改善されていない。申立人としては、校内駐車している車両(認定車両と違反車両)の区別の情報(校内駐車が無い車両を除く)を求めたい。如何に個人の所有車とはいえ、大阪府の所有の公有財産に無断で使用する根拠は無く、長期にわたる無認定の車両に公有財産を使用させる権限は学校長には無いと異議申立人は理解している。
次に、車両ナンバーを公開する条例上の根拠、法的根拠について述べたい。条例については、前段で述べた理由で児童、生徒の安全確保と教職員の規律から第11条の公益上の理由による公開を適用して公開する答申をされるよう審査会に求める。日本国憲法の公共の福祉を考える上からも、規則に反しても(認定者も含む)自分に都合が良いし、生徒や学校のためになると考えて校内駐車している教職員は、校内安全義務や環境保全(府が推進しているノーマイカーデイ)からも使用者は情報の公開と使用の取り止め又は自粛を考える時期である。個人のプライバシー情報について「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」について考えると、現に車両ナンバーは校内駐車中や公道でも表示しているのに公有財産に駐車していることを認定した行政文書を公開できないとは理解できない。保護される利益(個人情報)と公益上の必要性(職務上の安全義務、環境保護)とを個別具体的に検討されることを要望する。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 自動車通勤者に対する通勤手当制度について
(1)支給要件について
通勤手当は、給与条例第14条第1項各号に掲げる職員に対して支給される手当である。
本件処分は、教職員の住居から所属校までの全行程について自動車を使用して通勤する教職員(以下「自動車通勤者」という。)の通勤届及びその理由書等を対象とするものであり、その要件は、同第2号に規定されている。
同第2号の規定によると、通勤のため自転車等を使用することを常例とする職員であって、自転車等を使用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が片道2km以上となるものを要件として定めており、この要件に該当する職員に対し、通勤手当が支給される。ただし、この場合、身体障害のため歩行することが著しく困難な職員など、自転車等を使用しなければ通勤することが著しく困難であると任命権者が認めるものについては、徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が片道2km以下であっても、通勤手当が支給される。
「自転車等」については、通勤手当規則第7条に具体的な交通の用具が規定されており、その中に自動車も含まれている。(以下、本件請求に係るものについては便宜上、「自転車等」を「自動車」ということとする。)
(2)支給額について
前記(1)記載の要件に該当する通勤手当が支給される自動車通勤者への支給額については、給与条例第14条第2項第2号に規定されており、人事委員会規則で定めるところにより通勤が不便であると認められる職員(以下「通勤不便な職員」という。)、通勤が困難であると?められる身体に障害を有する職員(以下「通勤が困難な身体障害を有する職員」という。)、それ以外の職員(以下「一般職員」という。)に区分され、その区分に応じてそれぞれ額が定められている。
これを表にあらわすと別表1のとおりである。
なお、「通勤不便な職員」とは、自動車を使用する距離が片道5km以上である者のうち通勤のため利用しうる交通機関がない場合か、交通機関はあるが利用しようとすれば住居若しくは勤務公署からその交通機関の最寄りの駅(停留所等を含む。)までの距離が2km以上である場合又はその利用することとなる交通機関の運行回数が少ないなどの特別の事情のある場合に該当する職員をいう(通勤手当規則第6条の2第2項)。特別の事情については、規則運用通知及び「職員の通勤手当に関する規則第6条の2第1項第2号の職員の範囲並びに通勤手当の月額について」(昭和49年2月1日付け大人委第576号)と題する人事委員会の通知に定められている。
また、「通勤が困難な身体障害を有する職員」とは、地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)別表に掲げる身体障害に属する程度の身体障害のため歩行することが著しく困難な職員をいう。
そして、「一般職員」とは、自動車を使用して通勤している職員のうち、「通勤不便な職員」及び「通勤が困難な身体障害を有する職員」以外の職員で、各学校が定めた基準に基づいて、学校長が真にやむを得ない事情があると判断し、自動車の使用による通勤認定を受けた者をいう。
(3)届出について
職員は、新たに給与条例第14条第1項の通勤手当支給対象の職員たる要件を具備するに至った場合は、通勤手当規則第2条に基づき、規則運用通知に定める様式の通勤届により、速やかに任命権者に届け出なければならないとされている。また、通勤手当が支給されている職員が任命権者を異にして異動した場合並びに当該職員の住居、通勤経路若しくは通勤方法を変更し、又は負担する運賃等の額に変更があった場合も同様に届出が必要とされている。
任命権者は、前記の届出があったときは、同規則第3条に基づき、その届出に係る事実を確認し、通勤手当支給対象の要件を具備する職員に対し支給する手当の月額を決定するが、実施機関においては、高等学校の教職員の通勤手当の認定に関する事務については、その者が所属する高等学校の校長が行うことととされている(「府立の高等学校等職員の扶養手当等の認定の専決に関する規則」)ことから、自動車通勤者に対し、通勤届とともに自動車通勤の必要性等を記した理由書を併せて所属の高等学校の校長に提出させている。
3 本件行政文書について
本件行政文書は、関係高等学校である大阪府立大手前高等学校、大阪府立旭高等学校、大阪府立茨田高等学校、大阪府立市岡高等学校、大阪府立港高等学校、大阪府立大正高等学校及び大阪府立泉尾高等学校に勤務する教職員のうち、住居から所属の学校までの全行程を自動車を使用して通勤しようとする者が所属の学校長等に届け出た書類であって、下記のとおり通勤届及び理由書等の2種類に分類される。
なお、それぞれの文書に記載されている主な情報等は、別表2のとおりである。
(1)通勤届について
通勤届は、規則運用通知でその様式が定められており、a 届出者個人の属性に関する情報を記入する欄、b「通勤の実情」及びc「確認及び決定欄」の各欄で構成されている。
a及びbの欄は、届出者が必要事項を記入・押印するものであり、cの欄は、任命権者が確認及び決定した際に、必要事項を記入・押印するものである。
(2)理由書等について
理由書等は、上記(1)の通勤届に添付された文書であり、届出者が主に自動車を使用して通勤する理由を記入し、作成したもので、通勤届とは異なり様式は定められていないが、学校によっては独自に様式を定めているところもある。
4 具体的な判断及びその理由
異議申立人が本件異議申立てにおいて公開を求めている部分は、本件処分において非公開とした部分のうち、通勤手当の月額(金額)及び車両ナンバーが記載された部分であり、実施機関は、これらの部分が条例第9条第1号に該当すると主張するので、条例第9条第1号に該当するか否かについて以下検討する。
- (1)条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限に配慮しなければならない旨規定している。
このような趣旨をうけて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。
同号は、- ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
- イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
- ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
- (2)これを、異議申立人が公開を求める部分である「通勤手当の月額」と「車両ナンバー」について検討する。
- ア 通勤手当の月額について
通勤届に記載された通勤手当の月額は、自動車通勤者から届出のあった内容をもとに前記2(1)記載の支給要件に該当するか否かを確認し、該当する場合に前記2(2)記載の支給区分に応じて決定された支給額である。
自動車通勤者への通勤手当の支給額は、先に述べたとおり、「一般職員」、「通勤不便な職員」及び「通勤が困難な身体障害を有する職員」に区分され、その区分に応じてそれぞれの額が別表1のとおり定められていることからすると、支給額を公にすることにより、当該教職員がいずれの区分に該当するかが明らかになり、それによって当該教職員が通勤が困難な身体障害を有する職員であることが明らかになることもあるため、当該情報は、個人の身体的特徴に関する情報に該当するといえる。
次に、通勤手当の支給額は、これのみによって直接特定の個人が識別され得るものとは言いがたいが、既に本件処分において通勤届の届出者の氏名が公にされていることから、特定の個人が識別され得る情報であるといえる。
そして、通勤が困難な身体障害を有することは、まさに個人に専属し、個人の心身に関する基本的な情報であって、公になることにより、何らかの不利益を受けるおそれのある情報であるといえる。
よって、特定の教職員の通勤手当の月額は、当該情報の性質及び条例の原則である「個人のプライバシーの最大限保護」の考え方を踏まえれば、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - イ 車両ナンバーについて
車両ナンバーは、自動車の所有者が道路運送車両法に基づき国土交通大臣に対し自動車の登録を申請し、同大臣が管理する自動車登録ファイルに登録された自動車登録番号であり、同ファイルには自動車登録番号のほか当該自動車の車名及び型名並びに所有者の氏名又は名称及び住所等が登録されている。
これらの登録事項については、同法第22条第1項において、何人も、国土交通大臣に対し、それらの事項を証明した書面の交付を請求することができると規定されている。
自動車は、所有者の財産であり、それに属する車両ナンバーについては、上記のとおり所有者の氏名が自動車登録ファイルに登録されており、車両ナンバーから当該車両の所有者の氏名や当該教職員が所有しているかどうか等が明らかになることから、個人の財産等に関する情報といえる。
次に、本件行政文書である通勤届及び理由書に記載されている車両ナンバーは、既に本件処分において当該教職員の氏名が公にされていることから、当該車両を通勤に使用している特定の個人が識別され得る情報であるといえる。
そして、特定の職員が通勤に使用している車両ナンバーが明らかになると、上記自動車登録ファイルと照合すること等により、その車両が当該職員の所有するものであるか否かが明らかになる。
このうち、車両が当該職員の所有するものである場合においては、車両のナンバーが公になることにより、当該教職員がどのような種類・型等の自動車を所有しているかが明らかになるばかりでなく、自動車登録ファイルに登録された住所も明らかとなる。
一方、車両が当該職員の所有するものでない場合においては、当該車両が、家族や知人等の他人の所有によるもの、あるいはレンタカーである場合等が考えられ、車両のナンバーが公になることにより、当該教職員が自己の所有でない自動車を使用していることが明らかになる。
これらは、当該教職員の財産や生活状況等、ひいては他の情報と組み合わせることにより、家族・交遊関係等までうかがい知ることができる情報であり、当該車両が教職員の通勤に使用されている点を考慮したとしても、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
なお、異議申立人は、当該車両ナンバーが個人情報であるとしても、自動車通勤者の車両が学校の敷地内の駐車場でもない場所に駐車されていること、自動車通勤者による児童、生徒に対する人身事故が校内において生じていること、校内駐車をしている教職員は自動車通勤が認定されていない者が多いこと、府はノーマイカーデーを推進していることを考えると、校内駐車を行っている教職員の校内安全義務、環境保護といった公益上の必要性が認められ、これは条例第11条第1項に該当し、公開すべきであると主張する。
しかしながら、車両ナンバーが条例第9条第1号に該当することは先に述べたとおりであり、当審査会において審査したところ、異議申立人の校内駐車等に関する主張を考慮しても、車両ナンバーを非公開としたことについて本号の保護利益を上回る公益上の必要性は見当たらないと言わざるを得ないことから、異議申立人の主張は認めることはできない。
- ア 通勤手当の月額について
5 結論
以上のとおりであるから、本件行政文書のうち、「通勤手当の月額」及び「車両ナンバー」を非公開とした実施機関の判断は妥当であり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
(別表1)(ワード版)
自動車の使用距離 (片道) |
支給額 |
||
---|---|---|---|
一般職員 |
通勤不便な職員 |
通勤が困難な身体 障害を有する職員 |
|
5キロメートル未満 5キロ以上10キロ未満 10キロ以上15キロ未満 15キロ以上20キロ未満 20キロ以上25キロ未満 25キロ以上30キロ未満 30キロ以上35キロ未満 35キロ以上40キロ未満 40キロ以上45キロ未満 45キロ以上50キロ未満 50キロ以上55キロ未満 55キロ以上60キロ未満 60キロ以上 |
2,000円 4,100円 6,500円 8,900円 11,300円 13,700円 16,100円 18,500円 20,900円 23,300円 25,700円 28,100円 30,500円 |
- 6,000円 9,400円 12,800円 16,200円 19,700円 23,200円 26,700円 26,700円 26,700円 26,700円 28,100円 30,500円 |
2,900円 6,000円 9,400円 12,800円 16,200円 19,700円 23,200円 26,700円 29,900円 33,300円 36,800円 40,200円 43,600円 |