ここから本文です。
大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第69号)
答申第69号 知事あて要望書部分公開第三者異議事案(PDF:34KB)
- 対象行政文書
平成13年8月にA組合に関して大阪府に提出された要望書 - 実施機関の決定
- (1)実施機関
大阪府知事(担当課 商工労働部商工振興室地域産業課) - (2)決定内容
部分公開決定- ア 非公開部分
法人代表者の印影 - イ 公開することとした理由
非公開部分を除き、条例第8条第1項の各号又は第9条の各号に該当しないため。
- ア 非公開部分
- (1)実施機関
- 異議申立て
- (1)申立ての趣旨
本件決定について、意見書のとおり非公開とすること- (意見書において非公開を求めていた部分)
- a 要望者の住所・団体名・代表者氏名
- b 下段の5行
- (意見書において非公開を求めていた部分)
- (2)理由(要旨)
平成13年8月31日実施機関に対し午後1時、要望書を提出した。このことに対して極めて短時間で同年同月同日、条例第6条の規定により要望者の公開請求があって、簡易な処理としてただちに一部を非公開として請求者に交付されていることについては、極めて透明性を欠いている。
何故、異議申立人が「第三者意見書提出機会通知書」を受けた平成13年9月11日の時点で説明をしなかったのか、説明をする必要がないのか、深い疑問と憤りを禁じ得ないと共に大阪府行政に強い不信感を覚えるものである。加えて、一方に偏った情報の提供がうかがわれてならない。
今回の処理は適法処理ではなく情報公開制度自体の欠陥を考えるものである。
- (1)申立ての趣旨
- 大阪府情報公開審査会の答申
- (1)審査会の結論
実施機関の判断は妥当である。 - (2)理由(要旨)
- ア 3(1)bの部分については、異議申立人からの執行停止の申立てに対して、実施機関は執行を停止しない旨の決定を行い、既に実施機関によって公開が実施されているのであるから、異議申立人にはもはや非公開を求める利益はなく、本件異議申立てのうち、本件執行不停止部分に対する異議申立ての部分は不適法であると言わざるを得ない。
- イ 3(1)aの部分は、公にすることにより、本件行政文書である要望書に記載された意見、要望内容等を表明した法人を具体的に明らかにする情報であり、条例第8条第1項第1号に規定する「法人等に関する情報」に該当する。
- ウ 条例の公開原則及び条例第8条第1項第1号の趣旨からすると、要望書を提出した法人の「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められるためには、当該要望書を提出したという事実が明らかになることにより、要望書を提出した法人に具体的な不利益が及んだり、当該法人の社会的評価の低下につながるなどの事情が存在し、それが社会通念に照らして当該法人の「競争上の地位その他正当な利益」を害すると認められる必要がある。
こうした見地から本件行政文書である要望書に記載された情報を確認すると、要望書を提出した法人の事実認識が記載された部分については、要望書を提出した法人の一般的な現況が記載されているに過ぎず、要望書を提出した法人の名称と結びつけることにより、当該法人に何らかの不利益が及ぶとは考えられない。また、これに続く部分については、特定の他の法人に対する批判的な意見とそれを踏まえて実施機関に当該他の法人への対処を求める内容が記載されているが、法人がその組織において意思決定を行った上で公の機関である実施機関に対して特定の法人に係る意見・要望等を表明した事実に関しては、表明した法人に一定の社会的な責任が生じることが否定できないものであり、こうしたことも勘案すると、これらの情報を公にすることにより要望書を提出した法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるに足りる事情は認められないし、異議申立人から特段の主張もされていないところである。
- (1)審査会の結論
大阪府情報公開審査会答申(全文)
第一 審査会の結論
実施機関の判断は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 平成13年8月31日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。なお、平成13年11月1日に「大阪府情報公開条例の一部を改正する条例」が施行され、条例の条項の一部に変更があったが、施行の前後において、本答申に関係する条項の内容に変更がないことから、本答申においては、便宜上、施行前の条項を施行後の条項に読み替えるものとする。)第6条の規定により、「平成13年8月にA組合に関して大阪府に提出された要望書」の公開請求(以下「本件請求」という。)が行われた。
- 同年9月10日、実施機関は、本件請求に係る行政文書に第三者に関する情報が含まれているため、条例第17条第1項の規定により、第三者である異議申立人に対して、意見書提出の機会を「第三者意見書提出機会通知書」により通知した。
- 同年9月18日、異議申立人から、次のとおり記載した「公開請求に係る意見書」(以下「本件意見書」という。)の提出があった。
[行政文書の公開についての意見]
下記の箇所について非公開としていただきたい。- (1)要望者の住所・団体名・代表者氏名
- (2)下段の5行
- 同年9月27日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書として、次の(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、次の(2)に示す部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない理由を次の(3)のとおり付して、本件請求をしたもの(以下「請求者」という。)に通知した。
- (1)行政文書の名称
平成13年8月にA組合に関して大阪府に提出された要望書 - (2)公開しないことと決定した部分
法人代表者の印影 - (3)公開しないことと決定した理由
条例第8条第1項第1号に該当する。
本件非公開部分には法人の代表者の印影が記載されており、これを公開すると法人の取引の安全を害するなど、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
- (1)行政文書の名称
- 同日、実施機関は、本件処分を行った旨及び本件非公開部分を除いて公開することとした理由を次のとおり付して、条例第17条第3項の規定により、第三者である異議申立人に通知した。
[公開決定をした理由]
本件非公開部分を除き、条例第8条第1項の各号又は第9条の各号に該当しないため。 - 同年10月11日、異議申立人は、本件処分を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、本件意見書のとおり非公開とすることを求める異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
また、同日、異議申立人は、行政不服審査法第34条第2項の規定により、本件異議申立てで非公開を求めている部分(以下「本件非公開請求部分」という。)の執行停止の申立てを行った。 - 同日、実施機関は、上記執行停止申立てに対して、次の(1)の部分(以下「本件執行停止部分」という。)については執行停止を行い、次の(2)の部分(以下「本件執行不停止部分」という。)については執行停止を行わないことを内容とする執行停止申立てに対する決定を行い、その理由を次の(3)のとおり付して異議申立人に通知した。
- (1)執行停止を行う部分
要望書を提出した法人の名称、住所及び代表者氏名が記載された部分 - (2)執行停止を行わない部分
要望内容に係る部分(要望書の下段の5行) - (3)理由
執行停止申立てのあった部分には、知事に対する要望を行った法人を特定し得る情報及び要望の項目が記載されている。要望を行った法人を特定し得る情報については、異議申立てがなされていることを踏まえると、より慎重な検討が必要であると認められるため、執行を停止する。しかしながら、上記(2)の要望内容については、法人の名称等について執行を停止するもとでは、執行停止をする必要があるとは認められない。
- (1)執行停止を行う部分
- 同年10月17日、実施機関は、請求者に対して、本件非公開部分及び本件執行停止部分を除き、写しの交付により本件行政文書の公開を実施した。
第三 異議申立ての趣旨
本件処分について、本件意見書のとおり非公開とすること。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。
1 反論の趣旨
実施機関の決定は妥当でないため、平成13年8月31日に執行した一部を非公開とした文書公開は適法に処理されていない。特に、平成13年9月11日に「第三者意見書提出機会通知書」を受け取る前の平成13年8月31日に執行した、一部を非公開とした文書公開は、適法に処理されていない。
申立人に意見書提出機会提示までの間、特に申立日当日に申立人に何の通知もなく第三者に公開した事実について、情報公開条例そのものを疑わざるを得ない。
このことについて、大阪府情報公開審査会の正式な見解を問うものである。
なお、9月11日においても、この件について何の説明もなかったことは、大阪府の一方的な判断である。
この件に関しては、異議申立書で主張してきたが、弁明書には見当たらない。
適法に処理をされていない原点の処理の解明なくして、以後の決定は違法である。
2 本件(要望書)の経過
- (1)平成13年8月31日実施機関に対し午後1時、要望書を提出した。このことに対して2から3時間後の同年同月同日、条例第6条の規定により請求者による文書の公開請求があって、迅速に一部を非公開として請求者に交付されていることが後日(平成13年10月2日)判明した。
- (2)実施機関は、平成13年9月11日大阪府商工労働部商工振興室地域産業課団体グループ(団体担当)2名が当組合事務所に来所、公文書公開の請求があった「第三者意見書提出機会通知書」を受けた。意見があれば平成13年9月18日までに申し出るようにとの説明であった(平成13年8月31日に要望者の公開請求があって、簡易な処理でただちに一部を非公開として請求者に交付されていることについては何ら説明はなかった)。
- (3)平成13年9月18日、「第三者意見書提出機会通知書」に基づき本件意見書を提出した。
[公開請求に係る本件意見書の内容]
下記の箇所について非公開としていただきたい。- 要望者の住所・団体名・代表者氏名
- 下段の5行
なぜ、これまでに説明がなかったのか、常に行政は透明性を求められていると考えるが。意図的に伏せていたのではないか。
このような状況であれば、意見書提出は、極めて形式行為のみと判断せざるをえない。 - (4)実施機関は、提出した本件意見書に対し平成13年9月27日「法人の代表者の印影」を除いて、公開するとの部分公開決定処分の通知があった。
- (5)印影部分の非公開は理解できるが、平成13年9月18日「第三者意見書」として提出した趣旨とは異なるため、処分に不服がある。
- (6)平成13年10月2日大阪府府民情報課において、担当者に、要望書を提出した状況を説明した。
平成13年8月31日大阪府知事に対し午後1時、要望書を提出した。このことに対して同年同月同日、条例第6条の規定により要望書の公開請求があって、ただちに一部を非公開として請求者に交付されていることが判明した。
確認したところ、簡易な処理として既に公文書は、本公文書提出日と同日の平成13年8月31日本件の公開の請求者に公開されていることが、はじめてわかった。
何故、平成13年9月11日の時点で説明をしなかったのか、説明をする必要がないのか、深い疑問と憤りを禁じ得ないと共に大阪府行政に強い不信感を覚えるものである。 - (7)平成13年10月11日、処分不服として、行政不服審査法第6条の規定により、本件意見書のとおり非公開を求める異議申立てを行った。
また、平成13年10月11日、異議申立てで非公開を求めている部分の執行停止の申立てを行った。 - (8)平成13年10月11日、要望書を提出した法人の名称、住所及び代表者氏名の部分について執行停止の決定があった。
3 反論の理由
- (1)平成13年8月31日大阪府知事に対して提出した要望書は、提出した2から3時間のちに公開請求があり、いとも簡単に既に公開されていること。
- (2)実施機関は、公開されているにも関わらず、意見を求めることは、何の意味があるのか。適法に処理していないための事後の手続きなのか。理解できない。制度上の問題か、何なのか。
簡易な処理での公開(法人の名称、住所及び代表者氏名の部分と印影)があった。
意見書提出はつじつま合わせなのか。 - (3)公開決定通知(印影のみ非公開)
異議申し立てた。
執行停止申し立てた。
執行停止申し立てに対する決定通知(法人の名称、住所及び代表者氏名の部分について執行停止) - (4)実施機関として、公開の処理手続きに一貫性がなく異議申立て等の都度公開の内容が二転三転することは、適法な処理とはいい難い。
したがって、印影は決定どおり、他については、「第三者意見書提出機会通知書」に基づき本件意見書のとおり非公開とされるようお願いする。 - (5)平成13年8月31日午後1時、大阪府知事に対し要望書を提出した。このことに対して同年同月同日、条例第6条の規定により要望書の公開請求があって、ただちに一部を非公開として請求者に交付されていることが判明した。
実施機関に対し表明した意見や要望の内容は、行政の透明性の確保の観点・・・云々といわれるが、この間の処理過程を見て空々しく響く。
職員は、公文書取り扱いの守秘義務に問題はないのか。
情報公開条例そのものを疑わざるを得ない。 - (6)結論
本件の処分決定は、平成13年8月31日の処理段階で著しく条例を逸脱していると考える。
平成13年8月31日大阪府知事に対し午後1時、要望書を提出した。このことに対して極めて短時間で同年同月同日、条例第6条の規定により要望者の公開請求があって、簡易な処理としてただちに一部を非公開として請求者に交付されていることについては、極めて透明性を欠いている。
何故、平成13年9月11日の時点で説明をしなかったのか、説明をする必要がないのか、深い疑問と憤りを禁じ得ないと共に大阪府行政に強い不信感を覚えるものである。加えて、一方に偏った情報の提供がうかがわれてならない。
今回の処理は適法処理ではなく情報公開制度自体の欠陥を考えるものである。
従って、申立人意見のとおり非公開を主張する。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。
1 本件行政文書について
本件行政文書は、実施機関に対して中小企業等協同組合法に基づき実施機関が設立の認可を行った法人から提出された要望書である。要望書の内容は、特定の団体に関して、要望書の提出者が意見を表明したうえで、実施機関に対して、一定の対処を求めているものである。要望書である本件行政文書の主な構成は、「本件行政文書を提出した法人の名称、住所及び代表者の氏名」、「本件要望書を提出した法人が特定の団体に関して表明している意見」及び「要望内容に係る部分(要望書の下段の5行)」である。
2 本件非公開請求部分について
異議申立人が非公開を求めている部分は、本件非公開請求部分である。
このうち、「本件行政文書を提出した法人の名称、住所及び代表者の氏名」は、要望書である本件行政文書を実施機関に提出した法人の名称等が具体的に明らかになる情報であり、また、「要望内容に係る部分(要望書下段の5行)」には、本件行政文書の提出者が特定の団体について実施機関に対処を求めた内容が具体的に記載されている。
3 条例第8条第1項第1号に該当しないことについて
- (1)本件非公開請求部分に記載された情報は、公にすることにより、本件行政文書を実施機関に提出した法人の名称及び当該法人が実施機関に対して対処を求めた内容が具体的に明らかになる情報であるから、まず、本件非公開請求部分が条例第8条第1項第1号に該当しないことについて述べる。
大阪府は、許認可、補助、調査等の事務事業を通じて、法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)その他の団体や事業を営む個人の情報を取得しているが、これらの情報は、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報を除き、原則として公開することとしているのが条例第8条第1項第1号の趣旨である。 - (2)本件行政文書を提出した法人の名称、住所及び代表者の氏名は、公にすることにより、本件行政文書に記載された法人の意見及び要望内容の表明者が具体的にどの法人であるのかを明らかとする情報である。しかし、プライバシー保護の観点から特に慎重な配慮が必要とされる個人の場合とは異なり、要望等の提出者の法人の名称等、つまり、特定の法人がその組織において意思決定を行った上で公の機関である実施機関に対してどのような意見や内容を表明したのかという事実については、その意見や要望の内容等を個別に判断し、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる場合を除いて公にされるべきものである。
また、実施機関に対して表明された意見や要望の内容は、行政の透明性の確保の観点から、個人のプライバシーに関する情報を最大限に保護するとしても、原則として明らかにされるべきものである。 - (3)そして、本件行政文書に記載された情報について具体的にみると、まず、「本件行政文書を提出した法人の意見」に関する部分は、既に公になっている新聞記事の内容をもとに実施機関に対して意見を表明したものであって、本件行政文書を提出した法人に関連して新たに明らかにされている事実は含まれていない。次に、上記の意見を踏まえて記載されている「要望内容に係る部分(要望書の下段の5行)」には、本件行政文書を提出した法人が実施機関に対処を求める具体的な内容が記載されているが、これは、要望書を提出した法人とは別の法人への対処を求めるものであって、要望書を提出した法人に直接関わる情報は含まれておらず、この部分を公にすることにより要望書を提出した法人に不利益が及んだり、法人の社会的評価の低下につながるとは考えられない。
以上のことからすると、原則公開の条例の趣旨に照らし、本件非公開請求部分を公にすることにより、条例第8条第1項第1号の法人の競争上の地位その他正当な利益を害するとは認められない。
4 その他の適用除外事項に該当しないことについて
本件行政文書に記載されている情報が条例に規定する他の適用除外事項に該当するかについて、実施機関において再検討したが、本件行政文書には、個人のプライバシーに関する情報や法令の規定により公にすることができない情報等も含まれておらず、本件非公開請求部分が条例第8条第1項又は第9条に規定する、条例第8条第1項第1号以外の適用除外事項に該当しないことは明らかである。
5 結論
以上のとおり、本件処分は条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法性、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 本件行政文書について
本件行政文書は、中小企業等協同組合法に基づき実施機関が設立認可を行った法人が、特定の他の法人に対して行政上の対処をすることを求めることを内容として、平成13年8月31日に実施機関に対して提出した要望書である。
本件行政文書である要望書は、1枚の文書であり、その内容は、次のように構成されている。
- a 宛名及び標題に関する部分
要望書の右肩に「平成13年 月 日」(月日は記載されていない。)と記載され、宛名は「大阪府知事 齊藤房江様」と記載されている。そして、表題は「要望書」と記載されている。
この部分については、本件処分において公開しないことと決定された部分はなく、既に公開が実施されている。 - b 要望書を提出した法人の名称、住所及び代表者氏名が記載された部分(本件執行停止部分)
要望書を提出した法人の名称、住所及び代表者氏名が記載されている。そして、法人の名称を示す印影が記載されている。
これらの部分は、本件処分において公開することと決定したものの、異議申立人が非公開とすることを求めている部分であり、異議申立人からの執行停止の申立てを受けて、執行を停止し、公開を実施していない部分である。 - c 要望書を提出した法人の代表者の印影(本件非公開部分)
要望書を提出した法人の代表者の印影が記載されており、この部分は、本件処分において公開しないことと決定した部分である。 - d 要望書を提出した法人の事実認識及び意見が記載された部分
要望書の本文においては、冒頭に時下の挨拶が記載され、続いて要望書を提出した法人の現況について記載されている。次に、新聞報道に記載された情報をもとにして、他の特定の法人に対する批判的な意見を記載し、当該法人への厳正な対処を実施機関に対して求めている。
これらの部分については、本件処分において公開しないことと決定された部分はなく、既に公開が実施されている。 - e 要望内容が記載された部分(要望書下段の5行)(本件執行不停止部分)
要望書を提出した法人が、上記dにおいて他の特定の法人への厳正な対処を実施機関に対して求めている要望内容が、具体的に記載されている。
この部分については、本件処分において公開することと決定されたものの、異議申立人が非公開とすることを求めている部分である。そして、異議申立人から執行停止の申立てが行われたが、実施機関により執行停止を行わない旨の決定がなされ、既に公開が実施されている。
3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由
本件処分のうち、本件異議申立ての対象となるのは、次のa及びbの部分である。異議申立人は、本件異議申立てにおいて、これらの部分を非公開とすることを求めている。
- a 要望書を提出した法人の名称、住所及び代表者氏名が記載された部分(本件執行停止部分)
- b 要望内容が記載された部分(要望書下段の5行)(本件執行不停止部分)
このうち、bの本件執行不停止部分については、異議申立人からの執行停止の申立てに対して、実施機関は執行を停止しない旨の決定を行い、既に実施機関によって公開が実施されているのであるから、異議申立人にはもはや非公開を求める利益はなく、本件異議申立てのうち、本件執行不停止部分に対する異議申立ての部分は不適法であると言わざるを得ない。したがって、この部分については、当審査会において、非公開とすべきかどうか、すなわち、条例第8条第1項及び第9条の該当性についての判断を行わない。
次に、実施機関は、aの本件執行停止部分について、条例第8条第1項第1号をはじめとして条例第8条第1項及び第9条の適用除外事項のいずれにも該当しないと主張するので、以下、本件執行停止部分が条例の適用除外事項に該当するかどうかについて検討する。
(1)条例第8条第1項第1号該当性について
- ア 事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが、条例第8条第1項第1号の趣旨である。
同号は、- a 法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
- b 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)
- イ これを本件執行停止部分に記録された情報について検討する。
- (ア)本件執行停止部分は、公にすることにより、本件行政文書である要望書に記載された意見、要望内容等を表明した法人を具体的に明らかにする情報であり、言い換えれば、本件行政文書である要望書を提出した法人が、本件行政文書に記載された意見・要望内容等を実施機関に要望したという事実が明らかになる情報である。よって、条例第8条第1項第1号に規定する「法人等に関する情報」に該当する。
- (イ)次に、本件執行停止部分を公開することによって、本件行政文書である要望書を提出した法人の「競争上の地位その他正当な利益を害する」かどうかについて検討する。
条例の公開原則及び条例第8条第1項第1号の趣旨からすると、要望書を提出した法人の「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められるためには、当該要望書を提出したという事実が明らかになることにより、要望書を提出した法人に具体的な不利益が及んだり、当該法人の社会的評価の低下につながるなどの事情が存在し、それが社会通念に照らして当該法人の「競争上の地位その他正当な利益」を害すると認められる必要がある。
こうした見地から本件行政文書である要望書に記載された情報を確認すると、要望書を提出した法人の事実認識が記載された部分については、要望書を提出した法人の一般的な現況が記載されているに過ぎず、要望書を提出した法人の名称と結びつけることにより、当該法人に何らかの不利益が及ぶとは考えられない。また、これに続く部分については、特定の他の法人に対する批判的な意見とそれを踏まえて実施機関に当該他の法人への対処を求める内容が記載されているが、法人がその組織において意思決定を行った上で公の機関である実施機関に対して特定の法人に係る意見・要望等を表明した事実に関しては、表明した法人に一定の社会的な責任が生じることが否定できないものであり、こうしたことも勘案すると、これらの情報を公にすることにより要望書を提出した法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるに足りる事情は認められないし、また、異議申立人から特段の主張もされていないところである。
よって、本件執行停止部分を公開することによって、競争上の地位その他正当な利益を害するとは認められない。
以上のことから、本件執行停止部分は、条例8条第1項第1号に該当するとは認められない。
(2)条例第8条第1項第1号以外の条例第8条第1項及び第9条への該当性について
続いて、本件執行停止部分に記録された情報が、条例第8条第1項第1号以外の条例第8条第1項及び第9条の適用除外事項に該当するかを検討する。
本件執行停止部分には、要望書を提出した法人の代表者の氏名が記載されており、これは、特定の個人が識別され得る情報であるが、中小企業等協同組合法第83条において中小企業等協同組合の代表権を有する者の氏名及び資格は登記しなければならない旨が規定されており、当該法人は先に述べたとおり中小企業等協同組合法に基づき実施機関が設立認可を行った法人であるから、法人の代表者の氏名は、他人に知られたくないことが正当であると認められる情報に該当しないものであり、条例第9条第1号に該当しないことは明らかである。
そして、本件行政文書である要望書に記載された意見、要望内容等を表明した法人の名称を具体的に明らかにすることについて禁ずる法令は全く見当たらないことから条例第9条第2号に該当する余地もない。また、その他の条例第8条第1項の適用除外事項に該当しないことも明らかである。
以上のことから、本件執行停止部分は、条例第8条第1項及び第9条のいずれの適用除外事項にも該当しないことが認められる。
なお、異議申立人は、本件請求の前後において実施機関が行った手続等が適法に処理されたものではなく、そのことを理由に本件処分が違法である旨を中心に主張している。しかしながら、本件異議申立ての趣旨は、異議申立人が提出した異議申立書に明記されているとおり、本件処分について本件意見書のとおり非公開とすることを求めているものである。このため、本件異議申立てに対する決定は、異議申立てが不適法である部分を除き、本件執行停止部分が実質的に条例第8条第1項及び第9条に規定する適用除外事項に該当するか否かの判断により行われるべきものであり、実施機関が行った手続や過程だけで判断されるものではない。そして、当審査会は、条例第20条の規定により本件異議申立てに対する決定について実施機関からの諮問を受けて調査審議を行い、本件執行停止部分については、条例第8条第1項及び第9条の適用除外事項に該当しないことが認められたところであり、その判断の理由は、上記に述べたとおりである。
6 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立てのうち、本件執行不停止部分については不適法な異議申立てであり、本件執行停止部分については異議申立てに理由がないので、実施機関の判断は妥当なものであり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。