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更新日:2011年3月30日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第202号)

滞納等関係文書公開拒否決定異議申立事案

(答申日 平成23年3月30日)

第一 審査会の結論

実施機関の判断は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成22年8月30日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「ア.平成18年4月?頃、本請求人○○○に係る滞納市府民税について、課税権者河内長野市長から大阪府知事に徴収の引継ぎがされた時の発信、受託、通知文書の一切のもの(河内長野市が府知事に提出した河内長野市の徴収経緯を示すものを含む)及びこの行政処分の根拠を示す当時の地方税法の条文。イ.平成19年10月下旬及び同11月下旬大阪府知事は上記のものを強制徴収するため、○○○の財産を差し押さえた。この時の差押調書、執行経緯を示すもの、精算書類、その他執行職員の職氏名、及び財産管理側(銀行、保険会社)職員氏名。さらに、これら大阪府知事の強制行政処分の根拠を示す当時の地方税法の条文。」の行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年9月13日、実施機関は本件請求に対し、条例第13条第2項の規定により、本件請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく本件請求を拒否する旨の公開請求拒否決定(以下「本件決定」という。)を行い、次のとおり理由を付して審査請求人に通知した。
    (行政文書の存否を明らかにしない理由)
    本件公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えることは、何人に対しても、特定の個人が市府民税に関する滞納や差押等を受けたか否かを答えることと同様の結果が生じるものである。
    このような情報は、特定の個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、条例第9条第1号に該当することから、条例第12条の規程により当該行政文書の存否を明らかにしないで本件請求を拒否する。
  3. 同年11月1日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定の取消を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 異議申立書における主張

本件決定は、条例の前文をはじめ、各条項に示される情報公開制度の意義と府民の「知る権利」に対する挑戦的な民主主義の理念に反する劣悪な決定である。

異議申立人が公開請求した行政文書は、大阪府に必ず存在する。異議申立人が平成22年9月10日付けで大阪府知事あてに送付した文書を見れば明らかである。

大阪府知事が、河内長野市が賦課し滞納された市府民税を強制徴収するために異議申立人の財産を差押た行政処分に係る文書は、必ず大阪府に存在する。

「存在を明らかにしないで公開を拒否する。」とする理由はない。

河内長野市が賦課した市府民税を滞納したのは異議申立人であり、大阪府により財産を差し押さえられたのは異議申立人である。その異議申立人が自分に対する行政処分書の開示を請求していることに対して「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」とする公開拒否理由には妥当性もない。

異議申立人が公開請求した行政文書は「納税催告についての異議申立て」に対する「決定書」の教示に従い、催告書及び誤った滞納処分の取消を求める訴えの提起に必要なものである。

憲法第32条に何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないとある。

大阪府知事を被告として、滞納処分の取消を提起するために必要なこの公開請求文書を異議申立人に一刻も早く公開するよう求めるものである。

2 反論書における主張

(1)本件請求の経緯
  • ア.今回の行政文書公開請求は、大阪府総務部税務室徴税対策課A職員(以下「A職員」という。)の指図を受けて行ったものである。
  • イ.異議申立人は、平成22年8月30日早朝、インターネットにより行政文書の公開を請求し公開請求書到達確認がされているものである。
  • ウ.A職員から異議申立人あて「情報公開請求について」が送付された。平成22年9月10日異議申立人は、実施機関あて抗議文を発送した。
  • エ.平成22年9月3日異議申立人の携帯にA職員から「公開請求を取り下げよ」と恫喝する電話があった。異議申立人は、拒否した。「知事に抗議したものだ。知事(情報センター部門)から返事せよ。」と怒鳴り返した。
  • オ.異議申立人は、平成22年11月1日異議申立てを行った。
(2)異議申立人に対する行政処分の妥当性について

実施機関の弁明は、今回の行政文書公開拒否に対する異議申立てにかかる弁明としては当を得ていないと考える。実施機関は、平成18年4月頃及び平成19年11月頃異議申立人の財産を差押えた。異議申立人は、「この滞納処分は間違っている。」と確信している。
本件請求は、まさに異議申立人が間違っていると確信するものを明らかにするために予定している滞納処分取消請求の提訴に必要な資料として公開を求めたものである。
この実施機関の説明から探ると、異議申立人が公開を求める行政文書は、大阪府に存在することは明らかであり、かつ提訴される滞納処分取消請求では、実施機関にとって不利で、不都合な行政文書であるために、公開を拒否しているものと推測するに充分である。滞納処分が間違っているとの異議申立人の確信はますます深まっている。
条例によれば、大阪府の行政処分に係る大阪府に存在する行政文書の公開を拒否する理由はない。

(3)公開拒否決定の妥当性について

異議申立人に係る不当な滞納処分に関わる行政文書の公開を、異議申立人個人がA職員の指図により公開請求したものを、実施機関が公開を拒否する理由はない。
これまでの経緯と現状は、大阪府に現存する行政文書の公開を拒否するために府民(異議申立人)をペテンに掛けたようなものである。これは大阪府職員として許されるものではない。
さらに、個人情報保護条例が弁明の理由に使われている。これは公開請求の根拠法令の違いを指摘しているものと思われる。
しかし、今回の行政文書公開請求は、

  • ア.A職員の指示によったものであり、
  • イ.恫喝的取下げ要求もA職員であり、
  • ウ.拒否決定文書の作成もA職員である。
  • エ.審査会への諮問もA職員であり、
  • オ.今回の弁明書の作成もA職員である。
  • カ.弁明書で個人情報保護条例を説いているのもA職員である。

これが、今日の大阪府である。A職員は大阪府か。大阪府はA職員だけか。大阪府の民主主義はこんな低劣なモノである。
もし仮に、今、異議申立人が個人情報保護条例による“自己情報の開示請求”をしても、”公開拒否決定済み“として自己情報の開示請求を拒否するであろうことは火を見るよりも明らかなことである。
そして次は、異議申立て、諮問、弁明、反論と延々と続くであろう。これがA職員が狙う“千日手”で、府民の行政参加を拒む巧妙な手口である。その手は「クワナのヤキハマグリ」である。

(4)結論

以上に見るように、今回の決定は違法でかつ不当であり、府民を愚弄するものである。
まず、第一義に本件決定を取り消すとの答申を求める。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 異議申立人に対する行政処分の妥当性について

個人の道府県民税については、地方税法第41条及び第319条の規定により、市町村において個人の市町村民税とあわせて賦課徴収することとされているが、地方税法第48条で「市町村長から道府県知事に対し、道府県民税の滞納に関する報告があった場合においては、道府県知事は市町村長の同意を得て当該報告に係る滞納者の全部又は一部について、道府県の徴税吏員が当該滞納に係る道府県民税に係る地方団体の徴収金及びこれとあわせて納付し、又は納入すべき市町村民税に係る地方団体の徴収金について、個人の市町村民税の徴収の例により徴収し、又はこれについて国税徴収法に規定する滞納処分の例により滞納処分することができる。」と規定されている。
今回、異議申立人が本件請求を行った本件請求文書については、地方税法第48条の規定による河内長野市と大阪府との手続きに係る行政文書及び大阪府における滞納処分に係る行政文書であり、そのもととなる行政処分はいずれも適法である。

2 本件公開請求拒否決定の妥当性について

本件請求は、特定の個人に対する行政処分について、その経緯がわかる文書の公開を求めるものである。本件請求に係る行政文書が存在するか否かを答えることは、それだけで特定の個人が市府民税に関する滞納や差押等を受けたか否かを答えることと同様の結果が生じるものである。
このような情報は、特定の個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、保護されるべきものである。
なお、自己情報の開示請求である点については、

  • ア.情報公開制度は、何人に対しても請求の目的や理由を問うことなく公開請求を認める制度であって、公開・非公開の判断にあたり、請求者が誰であるかは考慮されず、公開する情報の範囲(非公開とする情報の範囲)は何人に対しても全く同じである。
  • イ.平成8年の大阪府個人情報保護条例(以下「個人情報保護条例」という。)の施行に伴い、旧条例(大阪府公文書等公開条例)にかつて定めていた本人開示の規定を削除したという改正の経緯から、現行の条例は本人開示を否定する趣旨と解される。

などから一切考慮する必要がないものである。
なお、すでに異議申立人に説明したとおり、本件請求に係る情報については、個人情報保護条例第12条第1項に基づく自己情報の開示請求を行うことが適切である。

3 結論

以上のとおり、本件決定は条例の趣旨を踏まえたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件請求に係る行政文書があるかどうかを答えるだけで条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため、条例第12条の規定を適用したと主張しているので検討したところ、次のとおりである。

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。同号は、

  • ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

(2)条例第12条について

本条は、公開請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで第8条及び第9条に規定する適用除外事項によって保護される利益が害されることとなる場合には、例外的に公開請求に係る行政文書の存否自体を明らかにしないで公開請求を拒否することができる旨を定めたものである。
本条は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かも明らかにしないというものであり、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねないが、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによる権利利益の侵害や事務執行の支障等が、具体的かつ客観的に認められる場合には、本条によって公開請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否することができるものである。

(3)本件請求に係る行政文書の存否を答えることにより明らかとなる情報と条例第9条第1号の該当性について

本件請求は、特定の個人に対する市府民税の滞納や差押処分に関して、その経緯や処分通知等の行政文書の公開を求めるものであるから、本件請求に該当する行政文書が存在するとして公開あるいは非公開の決定を行う、または、存在しないとして不存在による非公開の決定を行うだけで、特定の個人に対して市府民税の滞納や差押処分が行われたか否かということが明らかとなるものである。
このような特定個人の税に関する滞納等処分に関する情報は、2(1)ア及びイの各要件に該当することは明らかであり、社会通念上、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められることから、2(1)ウの要件にも該当する。
以上のことから、本件請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなると認められることから、実施機関が、条例第12条の規定により、本件請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく本件請求を拒否したことは妥当である。

3 異議申立人の主張について

異議申立人は、本件請求については、異議申立人本人の情報であることから、滞納処分等が行われたこと、行政文書が存在することは明らかであると主張する。
しかしながら、条例は、「何人も、実施機関に対して、行政文書の公開を請求することができる。」(条例第6条)と規定して請求者を何ら区別することなく行政文書の公開を請求する権利を付与しており、第8条及び第9条に規定する公開・非公開の基準においても、請求者が本人である場合や、あるいは請求の目的等で特則を設けず、個人情報の本人開示に不可欠な本人確認の手続も定めていない。また、大阪府では、昭和59年に制定された公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号)においては、一般の公文書の公開に加えて、公文書の本人開示に係る規定が置かれていた(同条例第17条)が、平成8年に個人情報保護条例(平成8年大阪府条例第2号)が制定され、同条例に自己に関する個人情報の開示の規定が設けられたことから、公文書公開等条例の公文書の本人開示に係る規定が削除された経緯もある。
これらのことからすると、条例に基づく行政文書公開制度においては、請求者が誰であるかや、請求の目的によって、公開・非公開等の決定内容に差異を設けることはできないのであり、請求者が滞納処分等を受けた者本人であるからといって、他の請求者と異なる公開決定を行うことはできない。

以上のことから、異議申立人の主張は採用することはできない。

なお、本件請求に至った経緯には、行政文書公開請求の手続きと個人情報保護条例による個人情報開示請求の手続きとの相違についての説明において行き違いがあったことが推測される。
実施機関は、条例第7条第5項の規定に基づき、公開請求をしようとするものに対し、当該公開請求に係る行政文書の特定に必要な情報を提供し、情報の内容について慎重に確認するよう努めるべきである。審査会としては、実施機関において、情報公開制度及び個人情報開示制度の両制度について、なお一層の理解を深め、説明責任を果たすよう望むものである。

4 結論

以上のとおりであるから、本件請求には理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

松田聰子、山口孝司、鈴木秀美、細見三英子

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