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更新日:2010年8月24日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第192号)

関西3空港需要予測資料部分公開決定異議申立事案

(答申日 平成22年8月24日)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件異議申立ての対象となった部分公開決定において公開しないことと決定した部分を公開すべきである。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成22年3月31日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「平成22年1月1日から3月30日まで、関西3空港懇談会の幹事会に関する一切の資料」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年4月14日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書として(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(2)の部分(以下「本件非公開部分」という。)を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を(3)のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)行政文書の名称
      • ア 3月18日開催の幹事会資料「懇談会での取りまとめに向けた議論たたき台」
      • イ 3月30日開催の幹事会資料「懇談会取りまとめ(案)」
      • ウ 最終とりまとめに向けた意見・要望
      • エ 関西3空港懇談会「とりまとめ案」に対する修正意見
    • (2)公開しないことと決定した部分
      • 各空港別の将来需要予測(案)資料
    • (3)公開しない理由
      条例第8条第1項第4号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)には、各空港別の将来需要予測が記録されており、これらのデータは、公表しないことを条件として、関西3空港懇談会事務局から各団体に配付されたものであって、これらを公開することにより、今後、関西3空港のあり方等を検討する国及び関係自治体をメンバーとする関西3空港懇談会での協議や同様のメンバーで構成する関西国際空港全体構想促進協議会の運営において他団体の協力を得られなくなるなど、大阪府の空港関連行政に関わる事務の執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
  3. 同年4月19日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定を取り消し、全部公開を求める。

第四 異議申立ての主張要旨

異議申立人の主張は概ね次のとおりである。

1 異議申立書における主張要旨

本件決定の内容については、既に一部が報じられており、大阪府の空港関連行政に関わる事務の執行に著しい支障を及ぼすとは考えられない。空港ごとの需要予測は関係する住民にとって重要な情報であり、情報公開を推進する大阪府にとっても当然公開すべき内容に該当すると考える。

2 反論書における主張

知事は、これまで関西3空港懇談会の内外で「大阪(伊丹)空港の廃港」を繰り返し提言しており、その提案は、多くの住民に関係する重大な内容でもあり、発言の背景や理由も含め、丁寧に説明することが必要である。非公開とされた文書は、空港ごとの需要予測について触れており、関西3空港のあり方を考える上で、将来の需要がどうなっていくのかは、重要な要素だと考える。

「(資料が)確定的なものではない」とされているが、もとより、需要予測は確定的なものではないことが前提。検討材料として懇談会で提示された以上、文書は公開されてしかるべきと考える。

知事は4月7日に行われた定例記者会見で、3空港懇談会の空港ごとの需要予測を公開しない状況について「あれはおかしい」「結局、なにかぐちゃぐちゃになって、3空港グロスの数字しか出さない。こんなのあり得ないですよ。何のための空港懇談会なのか分からない」と言及している。知事自らが「出すべき」と考えている資料を知事自らが非公開とする理由が理解できない。

しかも、すでに内容の一部は報じられており、現状では秘匿の必要性も極めて薄くなっている。こうした状況のなか、大阪府の空港関連行政に関わる事務執行に支障があるとは考えられない。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 関西3空港懇談会について

関西3空港懇談会(以下、「懇談会」という。)は、社団法人関西経済連合会会長の提案により、関西の3空港(関空・大阪国際・神戸)の設置及び運営に密接な関わりをもつ諸団体が関西国際空港を中心とする3空港のあり方や効果的な活用方策を協議し、その成果としての関西3空港に関わる政策や地元関係者の取組み姿勢を国に示す場として、平成15年に設置され、これまでに計8回(平成22年4月12日時点)開催されている。

構成メンバーは、主催者兼座長である社団法人関西経済連合会会長、大阪府知事、兵庫県知事、和歌山県知事、京都府知事、大阪市長、神戸市長、堺市長、大阪商工会議所会頭、神戸商工会議所会頭、関西国際空港会社社長、国土交通省航空局長、国土交通省大阪航空局長である。

また、関西3空港懇談会幹事会(以下「幹事会」という。)は、懇談会の協議を行うための事前検討を行う場であり、幹事会のメンバーには構成団体の部局長等が幹事として出席している。

2 幹事会の会議資料の取扱いについて

懇談会は公開で開催されているが、幹事会については、懇談会での議論の前提となる各構成団体間の自由な意見交換や、事務局作成の資料の事実関係の確認・検証などを行っているものであることから、主催者判断により非公開で開催されている。

また、幹事会における会議資料についても、懇談会に提出する前段階の検討用資料であり、精度を含め確定的なものではないことから、従来から非公開扱いとしている。このため、今回、請求対象となっている文書(資料)についても、平成22年2月18日開催の幹事会において、構成団体から非公開とすべきとの意見を受け、本府を含め構成団体において協議の結果、非公開とすることが合意されており、とりわけ、同年2月18日、3月18日、3月30日開催の幹事会においては、会議終了時に資料回収も行われたところである。

ただし、平成22年3月18日及び同年3月30日開催の幹事会資料については、本府において空港政策事務を担当する空港戦略室として、同年4月12日の懇談会に出席する知事の政策スタンスを確認、確立する必要から、幹事会における議論の経過を正確に報告するため、特に申出を行い、同年3月19日及び3月31日に、事務局である社団法人関西経済連合会より入手したものである。

3 本件行政文書について

本件行政文書は、ア 平成22年3月18日開催の幹事会資料「懇談会での取りまとめに向けた議論たたき台」、イ 同年3月30日開催の幹事会資料「懇談会取りまとめ(案)」、ウ「最終とりまとめに向けた意見・要望」及びエ「関西3空港懇談会『とりまとめ案』に対する修正意見」である。

このうち、今回、公開しないことと決定した部分(以下「本件非公開部分」という。)は、上記ア及びイの幹事会資料中の各空港別「将来需要予測(案)」である。

この「将来需要予測(案)」は、懇談会としての「懇談会取りまとめ(案)」に関西3空港全体の将来の航空需要の見通しを記載するにあたり、幹事会で議論する基礎資料として、社団法人関西経済連合会から事務局案として示されたものである。

しかし、幹事会において、構成団体より算定手法や数値結果について、種々の意見があり、懇談会に提出するに足りうる資料には至らないとの認識から、その全てを懇談会での検討資料として提示することについて、合意に至らなかったものである。

4 本件決定の適法性について

(1)条例第8条第1項第4号に該当することについて
ア 条例第8条第1項第4号について

条例第8条第1項第4号は、府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものに該当する情報が記録されている行政文書を公開してはならないと規定している。

イ 上記アの要件について

本件行政文書(非公開部分)には、懇談会の事務局である社団法人関西経済連合会が行った各空港別の需要予測が記載されており、これらを公にすることは、幹事会における申合わせ経過からしても、事務局である社団法人関西経済連合会や他の構成団体との信頼関係に混乱が生じ、今後の府政運営に著しい支障を及ぼすおそれがある。したがって、上記の情報は、上記アの要件に該当する。

5 異議申立人の主張について

異議申立人は「既に内容の一部が報じられており、大阪府の空港関連行政に関わる事務の執行に著しい支障を及ぼすとは考えられない。」、また、「空港ごとの需要予測は関係する住民らにとって重要な情報であり、情報公開を推進する大阪府にとっても当然公開すべき内容に該当すると考える。」と主張する。

確かに、各空港別の「将来需要予測(案)」は、前述のとおり、社団法人関西経済連合会が、今後の関西3空港政策について、「懇談会取りまとめ(案)」を作成する際の基礎資料として作成したものであるが、先述のとおり、算定手法や数値結果について種々の意見があり、構成団体間での内容の合意に至らなかったことから、幹事会において、資料を回収し、非公開扱いとすることで合意したものである。

したがって、本件については、第2の2(3)に記載した理由により、部分公開としたものである。

6 結論

以上のとおり、本件決定は、条例の規定に基づき適正に行われたものであり、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件行政文書について

本件行政文書は、平成22年4月12日に開催する懇談会のための事前調整会議である幹事会で配付された資料及び大阪府が提出した意見・要望書であり、その内容は次のとおりである。

(1)「懇談会での取りまとめに向けた議論たたき台」及び「懇談会とりまとめ(案)」

懇談会の事務局である社団法人関西経済連合会が作成した資料であり、平成22年3月18日及び3月30日に開催された幹事会で配付され、議論の参考にした資料であり、将来の航空需要の見通しや関西3空港のあり方について記録されている。本件決定においては、この資料のうち、関西3空港の合計値に基づく国内航空旅客数、国際航空旅客数、国際航空貨物量、将来の航空需要(発着回数)のグラフは公開とし、各空港別(関西国際空港、大阪国際空港及び神戸空港)の国内航空旅客数、航空需要(発着回数)のグラフは非公開とされている。

(2)「最終とりまとめに向けた意見・要望」及び「関西3空港懇談会『とりまとめ案』に対する修正意見」

これらの資料は、上記3月18日の幹事会後に、大阪府としての意見を関西3空港懇談会の事務局である社団法人関西経済連合会へ提出したものであり、本件決定においては全て公開とされている。

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件非公開部分に記録されている情報について、条例第8条第1項第4号に該当すると主張しているので、以下検討する。

(1)条例第8条第1項第4号について

行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達せられなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。

このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

  • ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの

は、公開しないことができる旨を定めている。

また、本号における「事務の目的が達成できなくなる」とは、事務の性質上、当該情報を公開すれば、事務事業を実施しても期待どおりの結果が得られず、実施する意味を喪失する場合などをいい、「事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」とは、公開することにより、事務事業の実施時期が大幅に遅れるなど、当該事務事業の質を著しく損なうこと、事務事業実施のために必要な情報又は関係者の理解、協力を得ることが著しく困難になることなどをいうものと解すべきであり、本号における「おそれのあるもの」に該当して公開しないことができるのは、当該情報を公開することによって、「事務の目的が達成できなくなり」又は「事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼす」程度が単なる確率的な可能性ではなく法的保護に値する蓋然性がある場合に限られると解される。

(2)条例第8条第1項第4号該当性について

本件非公開部分が上記(1)ア及びイの要件に該当するか否かについて検討したところ、以下のとおりである。

本件行政文書は、懇談会の事務局である社団法人関西経済連合会が作成した文書であるが、懇談会の開催前に実施された幹事会において配付、回収された後に実施機関が申出て収受したものであることから、本件非公開部分に記録されている情報は、「府の機関又は国等の機関が行う事務に関する情報」として、(1)アの要件に該当する。

次に、本件非公開部分に記録された情報が(1)イの要件に該当するか否かについて検討する。

本件非公開部分は関西3空港の各空港別の将来の航空需要予測に係るグラフである。航空需要予測とは、将来、空港を利用する旅客数、貨物量、航空機発着回数がどの程度になるかといった予測を、人口、経済成長率等の社会経済指標等の状況、航空サービスの状況等の想定条件を設定して算出するものである。これらの条件が変わると、当然、予測結果も変わるものであって、確定的な航空需要予測はあり得ない。国土交通省がまとめた全国の空港における航空需要予測においても、実績が予測を上回った空港はわずかであり、航空需要予測に確実なものはない。

幹事会において、算出に係る前提条件や数値結果が精度を含め確定的でないことから構成団体から異論が出て、懇談会には3空港全体の数値結果の資料のみ提示することとし、各空港別の数値結果は非公開との合意になったと実施機関は主張する。しかし、前述したように、航空需要予測のデータ自体、確定的なものはあり得ないのであるから、これに異論がある場合には、別の前提条件や算出手法等を明らかにした新たな航空需要予測データを示すことで反論は十分できるものである。これまでも、関西における航空需要予測は、国や自治体等において様々な条件設定、手法を用いて算出されており、本件非公開部分に記録されている関西3空港の各空港別の需要予測も、このような予測データの一つに過ぎない。

他方、関西3空港のあり方については、大阪府民だけでなく周辺住民、ひいては国民全体においても関心の高いものである。3空港の合計データによる航空需要予測については、平成22年4月12日の懇談会で公表されているところであるが、本件非公開部分である各空港別のデータも含め、これらのデータを広く国民に公開することは、国民全体で関西3空港のあり方を考えていくことに繋がるとともに、懇談会及び幹事会の透明性や信頼性を高めるものでもある。

実施機関は、本件非公開部分を公開すると、幹事会で非公開扱いとした申し合せに反することとなり、事務局である社団法人関西経済連合会や他の構成団体との信頼関係に混乱が生じ、今後の府政運営に著しい支障を及ぼすおそれがあると主張する。たしかに、懇談会の構成団体は、実施機関が事務局である関西国際空港全体構想促進協議会の構成メンバーでもあることから、関西国際空港の集客・利用促進事業やエアポートプロモーション等を実施していくにあたって、多少のやりにくさが生じる可能性は皆無とは言えない。また、対象となった3月18日、3月30日の幹事会において行われていたように、会議での配付資料は全て終了後に回収するといった方法が更に徹底され、会議後の資料要求には一切対応しない、といった事態が生じることも想定され得るところではある。しかし、たとえ、そのような可能性があるとしても、「今後の大阪府の空港関連行政に関わる事務の執行に著しい支障を及ぼす」とまで認めることはできない。

以上のことから、本件非公開部分は、(1)イの要件に該当するとは認められず、公開すべきである。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立ては、理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

主に調査審議を行った委員の氏名

松田聡子、山口孝司、鈴木秀美、細見三英子

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