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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第168号)
警察署歳入・歳出証拠書部分公開決定審査請求事案
(答申日 平成21年5月14日)
第一 審査会の結論
本件審査請求の対象となった部分公開決定において公開しないことと決定された部分のうち、別表1に掲げる部分を、公開すべきである。
当該部分公開決定におけるその余の判断は妥当である。
第二 審査請求の経過
- 審査請求人は、平成20年5月7日、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、「東署における平成18年4月4日から5月1日までの歳出・歳入の証拠書一切」及び「四条畷署における平成20年3月30日から4月20日までの歳出・歳入の証拠書一切」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
- 実施機関は、平成20年6月4日、本件請求に対応する行政文書として、(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、「公開しないことと決定した部分」(以下「本件非公開部分」という。)及びそれぞれの「公開しない理由」を(2)のとおりとする部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、審査請求人に通知した。
- (1)一部を公開することと決定した行政文書の名称
- ア 歳入・歳出証拠書(東警察署 平成18年4月4日から5月1日まで)
- イ 歳入・歳出証拠書(四条畷警察署 平成20年3月30日から4月20日まで)
- (2)公開しないことと決定した部分及び公開しない理由
- ア 法人代表者の印影等
債権者の取引金融機関情報
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、法人の代表者の印影等が記録されており、これらを公にすることにより、取引の安全を害するなど、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められることから、条例第8条第2項第1号(条例第8条第1項第1号)に該当する。 - イ 警察電話番号
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、警察内部の事務に関する電話番号が記録されており、これは警察の連絡調整事務等に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第2項第1号(条例第8条第1項第4号)に該当する。 - ウ 警察車両の登録番号(外見上警察車両と識別されるものは除く。)
事件通訳に係る事件名、実施日時、通訳人、通訳内容並びに事件取扱課及び係名
変死体検視等立会に係る実施年月日及び依頼先を特定し得る部分
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、警察車両の登録番号等が記録されており、これらは犯罪の予防、鎮圧に関する手法、技術、体制、方針等に関する情報で、公にすることにより将来の捜査に支障を生じ、又は将来の犯行を容易にするなど、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、条例第8条第2項第2号に該当する。 - エ 警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影が記録されており、これらを公にすることにより、当該警察職員及びその家族等の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第2項第3号に該当する。 - オ 個人の氏名(法人代表者等を除く。)、印影及び取引金融機関情報
非常勤職員の氏名
被留置者及び性犯罪被害者の診療に係る請求書
事故車両移動に係る搬送日時、搬送場所及び搬送車両
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、法人従業員、非常勤職員、地域住民、被留置者などの勤務先、所属組織、取引金融機関、健康状態などが明らかとなる情報が記録されており、これらは、特定の個人が識別される個人のプライバシーに関する情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められることから、条例第9条第1号に該当する。 - カ 平面図のうち交番の間取り部分
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、交番の間取りが記録されており、これは交番の構造等に関する情報で、公にすることにより、当該施設に対する犯罪行為を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするなど、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められることから、条例第8条第2項第2号に該当する。 - キ 平面図(借用施設)
(公開しない理由)
本件行政文書(非公開部分)には、法人からの借用施設の平面図が記録されており、これらを公にすることにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められることから、条例第8条第2項第1号(条例第8条第1項第1号)に該当する。
- ア 法人代表者の印影等
- (1)一部を公開することと決定した行政文書の名称
- 審査請求人は、平成20年8月5日、本件決定を不服として、大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定に基づき、審査請求を行った。
第三 審査請求の趣旨
本件決定を取り消し、全部公開を求める。
第四 審査請求人の主張
実施機関のいう公開しない理由には何ら正当性がない。
第五 諮問実施機関の主張要旨
諮問実施機関の主張は、概ね次のとおりである。
1 実施機関の意見
(1)警察署における歳入・歳出事務
大阪府における歳入・歳出事務手続は、地方自治法(昭和22年法律第67号)及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)並びに大阪府財務規則(昭和55年大阪府規則第48号。以下「規則」という。)等の関係法令に基づき、行われている。
警察署長は、知事から予算執行機関の長として指定を受けており、規則に基づき、その所掌に係るものの範囲内において、歳入の収入をする行為及び支出の原因となるべき契約その他の行為を行うこととされている。
(2)本件行政文書
警察署で管理すべき歳入及び歳出の証拠書類には、それぞれ、
ア 歳入証拠書類
収入の執行伺いに係る文書
- 見積書、収入金額の算定に係る計算書等
イ 歳出証拠書類
契約の締結及び支出の執行伺いに係る文書
- 請求書、契約書、入札書、見積書等
の必要書類が添付されている。
本件行政文書については、東警察署及び四條畷警察署に保管されている、一定の期間内に収入又は支払事由の発生した歳入及び歳出の証拠書類であり、その内容は別表2及び3記載のとおりである。
(3)本件決定の妥当性
ア 条例第8条第2項第1号の該当性
条例第8条第2項は、公安委員会と警察本部長が管理する行政文書の適用除外事項について定められたものである。本号は、条例第8条第1項第1号から第4号までの規定に該当する情報について、他の実施機関と同様に、公開しないことができる旨を定めている。
- (ア)条例第8条第1項第1号の該当性
条例第8条第1項第1号は、「法人、その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当する情報について規定している。
本件非公開部分には、- 法人代表者の印影等
- 債権者の取引金融機関情報
- 平面図(借用施設)
- (イ)条例第8条第1項第4号の該当性
条例第8条第1項第4号は、「府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」に該当する情報について規定している。
本件非公開部分には、警察電話番号が記録されている。この情報を公開することは、警察の捜査や事務を妨害しようとするものが、当該電話番号に電話をかけ続けるといった妨害行為に及んだ場合、当該警察の連絡・調整事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第1項第4号に該当するものである。
イ 条例第8条第2項第2号の該当性
公共の安全と秩序を維持することは、府民の基本的な利益を擁護するため、府に課された重要な責務であり、情報公開制度においても、これらの利益は十分に保護する必要がある。特に、警察が保有している情報のうち、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのあるものについては、公開・非公開の判断において、高度な政策的判断を伴う場合があり、また、その性質上、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的な判断を要するという特殊性が認められる。さらに、その性質上、犯罪の捜査等に関する情報については、他の都道府県警察と共有するものが多く、その取扱いには、全国的な斉一性が求められることとなる。こうした理由から、「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」情報に関して、これに該当するかどうかについての実施機関の第一次的な判断を尊重することとしたのが本号の趣旨であり、本号に規定された、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある情報」は公開しないことができる。
本件非公開部分には、
- 警察車両の登録番号(外見上警察車両と識別されるものは除く。)
- 事件通訳に係る事件名、実施日時、通訳人、通訳内容並びに事件取扱課及び係名
- 変死体検視等立会に係る実施年月日及び依頼先を特定し得る部分
- 平面図のうち交番の間取り部分
が記録されている。これらの情報を公開することは、捜査に使用する警察車両、特定事件に関する捜査活動、事件の端緒情報、警察の協力者及び交番の構造に関する情報を公にすることとなり、将来の捜査に支障が生じ、交番施設に対する犯罪行為を誘発し、又は将来の犯行を容易にするなど、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第8条第2項第2号に該当するものである。
ウ 条例第8条第2項第3号の該当性
条例第8条第2項第3号は、「前2号に掲げるもののほか、公にすることにより、個人の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれがある情報」を規定している。これは、個人の生命、身体及び財産の保護に任じる警察の任務の特殊性(警察法第2条第1項)と保護すべき利益の重要性から、他の適用除外事項では非公開とすることができない情報について、警察独自の適用除外事項として定められたものである。
警察官は、犯行現場や警察規制の現場で、被疑者や被規制者と対峙して、逮捕や規制の結果を、直接かつ強制的に実現することとなるなど、その職務は、その相手方から反発、反感を招きやすいことから、攻撃の対象とされるおそれがある。
本件非公開部分には、警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影が記録されている。これらの情報を公開することは、警察職員本人や家族に、襲撃等の危害を加えられるおそれがあることから、条例第8条第2項第3号に該当するものである。
エ 条例第9条第1号の該当性
条例第9条第1号は、
- (ア)個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
- (イ)特定の個人が識別され得るもののうち、
- (ウ)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
という条件に該当する情報が記録されている行政文書を公開してはならないと規定している。
本件非公開部分には、
- 個人の氏名(法人代表者等を除く。)、印影及び取引金融機関情報
- 非常勤職員の氏名
- 被留置者及び性犯罪被害者の診療に係る請求書
- 事故車両移動に係る搬送日時、搬送場所及び搬送車両
が記録されている。これらは、個人に関する情報であり、直接的に又は他の容易に入手し得る情報と結合することにより、個人を特定することができるものであるから、上記(ア)及び(イ)の要件に該当する。また、これらは、それぞれ個人の財産、経歴、犯歴等に関する情報であり、通常、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるから、上記(ウ)の要件にも該当し、条例第9条第1号に該当するものである。
(4)実施機関の結論
以上のとおり、本件決定は条例の趣旨を踏まえて行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
2 諮問実施機関の意見
本件非公開部分は、条例第8条に規定する公開しないことができる行政文書又は条例第9条に規定する公開してはならない行政文書に該当するものであり、実施機関が条例第13条第1項の規定に基づいて行った本件決定に違法、不当はないものと考える。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を促進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下であっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 本件行政文書について
本件行政文書及び本件非公開部分の明細は、別表2及び3のとおりであり、審査請求人は、本件非公開部分の全部について、公開を求めている。
本件非公開部分に記録されている情報を整理すると、以下のとおりである。
- (1)法人代表者の印影等
- (2)債権者の取引金融機関情報
- (3)平面図(借用施設)
- (4)警察電話番号
- (5)警察車両の登録番号(外見上警察車両と識別されるものは除く)
- (6)事件通訳に係る事件名、実施日時、通訳人、通訳内容並びに事件取扱課及び係名
- (7)変死体検視等立会に係る実施年月日及び依頼先を特定し得る部分
- (8)平面図のうち交番の間取り部分
- (9)警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影
- (10)個人の氏名(法人代表者等を除く。)及び印影
- (11)個人の取引金融機関情報
- (12)非常勤職員の氏名
- (13)被留置者の診療に係る請求書
- (14)性犯罪被害者の診療に係る請求書
- (15)事故車両移動に係る搬送日時、搬送場所及び搬送車両
3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について
(1)条例第8条第2項第1号について
条例第8条第2項は、公安委員会と警察本部長が管理する行政文書について、公開原則の適用除外事項を定めたものである。このうち、本号は、条例第8条第1項第1号から第4号までの規定に該当する情報について、他の実施機関と同様に、公開しないことができる旨を定めている。
(2)条例第8条第1項第1号について
事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。
同号は、
- ア 法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、
- イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)
が記録された行政文書は公開しないことができる旨定めている。
本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。
(3)本件非公開部分の条例第8条第1項第1号該当性について
本件非公開部分のうち、条例第8条第1項第1号に該当するため条例第8条第2項第1号に該当するとして非公開とされた情報は、2(1)から(3)までの情報である。これらは、いずれも法人に関する情報であり、(2)アの要件に該当することが明らかである。
次に、これらの情報が(2)イの要件に該当するかどうかについて、検討する。
ア 法人代表者の印影等について
本項の情報は、法人代表者の印影、事業を営む個人及び法人の領収印の印影である。
法人代表者の印影及び事業を営む個人の印影は、通常、法人及び事業を営む個人自らが厳格に管理する情報であると認められる。
また、本件における法人の領収印の印影は、当該法人が作成した請求書に記録された情報であり、領収印が押印されている箇所には、「お願い 本印鑑捺印の領収書持参者に限り御支払い下さい。」と印刷がされており、領収印の照合を取引相手に求めることで、取引の安全を図っているものと認められる。
これらの情報が公になると、当該法人による厳格な管理が意味をなさないものとなり、印章偽造等の不正使用を誘発し、偽造の契約書等の作成が容易になるなど、法人及び事業を営む個人の正当な利益を害すると認められることから、本項の情報は、(2)イの要件に該当する。
イ 債権者の取引金融機関情報
本項の情報は、法人及び事業を営む個人の取引金融機関情報であり、警察が、法人及び事業を営む個人から物品購入等を行った際の振込先の金融機関名、支店名、預金種別及び口座番号である。
これらの情報は、法人及び事業を営む個人の具体的な取引に関する情報であり、通常、取引上必要な範囲で取引先等に開示することはあっても、広く一般に公表しているものではなく、公開することにより、法人及び事業を営む個人の正当な利益を害すると認められることから、本項の情報は、(2)イの要件に該当する。
ウ 平面図(借用施設)
本項の情報は、交番として借用している法人所有の建築物の平面図であり、一般に公開していない事務室の位置等、建築物内部が詳細に図示されている。このような建築物内部の詳細な情報については、通常、事業者の内部情報として取り扱われるものであり、公開すると、不法侵入等が容易となるおそれがあり、当該建築物を所有する法人の正当な利益を害すると認められることから、本項の情報は、(2)イの要件に該当する。
以上のことから、2(1)から(3)までの情報は、条例第8条第1項第1号に該当し、条例第8条第2項第1号により、公開しないことができる。
(4)条例第8条第1項第4号について
行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等から、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。
このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。
同号は
- ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
- イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障をおよぼすおそれのあるもの
は公開しないことができる旨を定めている。
(5)本件非公開部分の条例第8条第1項第4号該当性について
本件非公開部分のうち条例第8条第1項第4号に該当するため条例第8条第2項第1号に該当するとして非公開とされた情報は2(4)の警察電話番号である。
警察電話は警察の連絡・調整事務に使用されていることから、警察電話番号は(4)アの要件に該当する。
次に、警察電話番号が(4)イの要件に該当するかどうかについて検討する。
警察電話番号は、内線電話番号であり、警察において、連絡・調整事務に使用しており、一般には公表していない。これを公開することにより、警察の捜査や事務を妨害しようとするものが電話をかけ続ける等の妨害を行うことや、取り締まり等に対する抗議や苦情等が集中することになるなど、警察の連絡・調整事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められ、(4)イの要件に該当する。
以上のことから、警察電話番号は、条例第8条第1項第4号に該当し、条例第8条第2項第1号により、公開しないことができる。
(6)条例第8条第2項第2号について
公共の安全と秩序を維持することは、府民全体の基本的な利益を擁護するため府に課された重要な責務であり、情報公開制度においても、これらの利益は十分に保護する必要がある。
特に警察が保有している情報のうち、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのあるものについては、公開・非公開の判断において、高度の政策的な判断を伴う場合があり、また、その性質上、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的な判断を要することなどの特殊性が認められる。さらに、犯罪の捜査等に関する情報については、他の都道府県警察と共有するものが多く、その取扱に全国的な斉一性が求められることとなる。
こうした事情から、公安委員会と警察本部長が保有する「公共と安全の秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」情報に関して、これに該当するかどうかについての実施機関の第一次的な判断を尊重することとしたのが本号の趣旨であり、本号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある情報」は公開しないことができる旨規定している。
(7)本件非公開部分の条例第8条第2項第2号該当性について
本件非公開部分のうち、条例第8条第2項第2号に該当するとして非公開とされた情報は、2(5)から(8)までの情報である。
ア 警察車両の登録番号(外見上警察車両と識別されるものは除く。)
本項の情報は、外見上警察車両と識別される警ら用無線自動車(パトカー)等を除く警察車両の登録番号である。
これらの警察車両は、日々各種捜査活動において使用されており、その登録番号が公になると、各種捜査活動を行う際に、警察の捜査体制及びその活動を捜査対象者等に知られることになり、その結果、被疑者の逃走や捜査の妨害等により適正な捜査活動が阻害されるなど、犯罪の予防及び捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第8条第2項第2号に該当する。
イ 事件通訳に係る事件名、実施日時、通訳人、通訳内容並びに事件取扱課及び係名
本項の情報には、通訳人を必要とした事件名、通訳を実施した日時、通訳人の氏名及び住所、通訳内容、事件取扱課及び係名、事件担当係長が通訳人を招へいしたことを報告した日が含まれる。
これらは、特定事件に関する捜査活動、特定事件に関して警察からの依頼により通訳を行った者に関する情報であり、これらの情報が公になると、特定の言語による通訳を要する者が捜査の対象となっているなど、警察の捜査活動の動向が被疑者等事件関係者に知られることになり、被疑者の逃走や証拠隠滅等により、犯罪捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められる。また、特定事件に関して警察からの依頼により通訳を行った者に関する情報は、警察への協力者の情報であり、公になると、協力した者の生命、身体、財産等に被疑者等から不法な侵害が加えられるおそれがあると認められ、条例第8条第2項第2号に該当する。
ウ 変死体検視等立会に係る実施年月日及び依頼先を特定し得る部分
警察官は、検視規則(昭和33年国家公安委員会規則第3号)の規定により、変死者又は変死の疑いのある死体(以下「変死体」という。)を発見し、またはこれがある旨の届出を受けたときは、変死体の所在地を管轄する地方検察庁の検察官に所定の報告を行うとともに、同規則第5条の規定により、刑事訴訟法第229条第2号の規定による代行検視を行うこととされている。また、警察官は、死体取扱規則(昭和33年国家公安委員会規則第4号)の規定により、死体を発見し、又は死体がある旨の届出を受けたときは、すみやかにその死体を見分するとともに死因、身元その他の調査を行うこととされている。これらの検視は、いずれも、規則により、医師の立会を得て行うこととされている。
本項の情報は、これらの医師の立会に係る謝礼金を支出するため作成される「支払依頼書」及びその添付書類に記載されている変死体検視等立会の実施年月日及び依頼先である医療機関名、医師の氏名及び住所であり、これらは、犯罪による変死体に係るものとそれ以外の死体に係るものとを区別することなく、記載されているものである。
本項の情報が条例第8条第2項第2号に該当するか否かを検討するに、実施年月日については、死体が発見された日が特定される情報であり、本項の情報が、犯罪による変死体に係るものを区別することなく記載されていることからすると、公開することにより、警察署における捜査活動の動向が明らかとなり、被疑者の逃走や証拠隠滅等により、犯罪捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
また、依頼先である医師は警察の任意の協力者であり、犯罪事件について警察が捜査した場合には、捜査活動の協力者ともなることから、医師の氏名又は住所、所属する医療機関名等が公になると、当該医師の生命、身体、財産等に対し、被疑者等から不法な侵害が加えられるおそれがあると認められる。
エ 平面図のうち交番の間取り部分
本項の情報は、交番の間取り部分が詳細に記載された平面図である。本項の情報が公になると、交番内部の構造等が詳細に明らかとなり、警察活動に反感を持つ者等からの交番施設に対する犯罪行為を誘発し、又将来の犯行や犯罪の実行を容易にするなど、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
以上のことから、2(5)から(8)までの情報は、条例第8条第2項第2号に該当する。
(8)条例第8条第2項第3号について
警察が保有する情報の中には、個人の生命、身体及び財産の保護に任じる警察業務の特殊性から、条例第8条第2項第1号及び第2号に該当しない場合であっても、公開すると、個人の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれのあるものがある。そうした事態を防止するため、こうした活動を任務とする公安委員会又は警察本部長において、これらの保護に支障を及ぼすおそれのある情報を公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。
本号は、条例第8条第2項第1号及び第2号に掲げるもののほか、公にすることにより、個人の生命、身体及び財産等の保護に支障を及ぼすおそれがある情報が記録された行政文書を公開しないことができると規定している。
(9)本件非公開部分の条例第8条第2項第3号該当性
本件非公開部分のうち、条例第8条第2項第3号に該当するとして非公開とされたのは2(9)の警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影である。
一般に、警察職員は、他の公務員とは異なり、犯罪捜査や警察規制に係る取締りに従事することを本分としており、犯罪捜査や取締りの現場において、相手方の反発・反感を招きやすい立場にあることから、その氏名や氏名が特定され得る情報が公開されると、当該警察職員が過去に従事した犯罪捜査等の関係者など警察職員を標的とする人物等からの加害行為を容易にし、当該職員だけでなく、その家族に対しても脅迫や嫌がらせ等の危害が及ぶおそれがあると認められる。
とりわけ、警部補以下の警察官である職員については、現に職務質問などの街頭活動や犯罪の捜査に従事している、重要事件等発生時にはこれらの職務に従事することが予想される、以前にこれらの職務に従事していたことがあることから、氏名の公開によって個人が特定された場合、本人及び家族の生命、身体又は財産に対して危害が加えられるおそれがあると認められる。
また、警部補相当職以下の一般職員についても、犯罪捜査の業務に直接従事はしないものの、同じ部署内で、これらの業務を支援する業務に従事していることから、同様の危害が加えられるおそれがあると認められる、
以上のことから、警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員の氏名及び印影については、条例第8条第2項第3号に該当する。
(10)条例第9条第1号について
条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、条例第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
同号は
- ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
- イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
- ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報
が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。
そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。
(11)本件非公開部分の条例第9条第1号該当性について
本件非公開部分のうち、条例第9条第1号に該当するとして非公開とされた情報は、2(10)から(15)までの情報である。これらの情報が条例第9条第1号に該当するかどうか検討したところ、以下のとおりである。
ア 個人の氏名(法人代表者等を除く。)及び印影
本項の情報は、法人従業員の氏名及び印影、交番連絡協議会委員の氏名、土地賃貸借契約における土地所有者の印影である。
法人従業員の氏名及び印影は、公にすることにより、特定の個人が、特定の法人に勤務していることが明らかとなる情報であり、(10)ア及びイの要件に該当することは明らかである。また、このような個人の勤務先が明らかとなる情報については、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められることから、(10)ウの要件にも該当する。
次に、交番連絡協議会委員の氏名については、特定の個人が委員に就任していることが明らかとなる情報であり、(10)ア及びイの要件に該当することは明らかである。また、交番連絡協議会が、警察と地域住民等とが相互に協力し、安全で平穏な地域社会の実現を図る趣旨で設置されるものであること、委員の氏名については、会長、副会長を含め、法令の規定により何人も閲覧できる情報でも、慣行上公表されている情報でもないことからすると、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められることから、(10)ウの要件にも該当する。
さらに、土地賃貸借契約における土地所有者の印影については、個人が所有する土地について、大阪府と土地賃貸借契約を行った際の契約書等に押印された印影の情報であるが、特定の個人の氏名が表示されており、公にすることにより、その使用する印影が明らかとなる情報であることから、(10)ア及びイの要件に該当することは明らかである。また、個人が、土地賃貸借のような契約書の作成の際にどのような印鑑を用いているかという情報は、通常、みだりに他人に知られないようにするものであり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められることから、(10)ウの要件にも該当する。
以上のことから、本項の情報は、条例第9号第1号に該当する。
イ 個人の取引金融機関情報
本項の情報は、大阪府と土地賃貸借契約を行った土地所有者である個人の取引先金融機関に関する情報であり、金融機関名、支店名、預金種別及び口座番号が含まれる。本項の情報は、契約者及び口座名義人である個人の氏名と照らし合わせることにより、個人が特定されることから、(10)ア及びイの要件に該当することは明らかである。また、これらの情報は、通常、みだりに他人に知られないようにするものであり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められることから、(10)ウの要件にも該当する。
以上のことから、本項の情報は、条例第9号第1号に該当する。
ウ 非常勤職員の氏名
本項の情報は、単身寮の寮監の氏名である。寮監とは、単身寮の管理事務を行う非常勤職員である。本項の情報は、特定個人の勤務先及び職業が明らかとなる情報であることから、(10)ア及びイの要件に該当することは明らかである。また、個人の勤務先や職業に関する情報は、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であり、実施機関においても、非常勤職員の氏名は公表していないことから、(10)ウの要件にも該当する。
以上のことから、本項の情報は、条例第9条第1号に該当する。
エ 被留置者の診療に係る請求書
本項の請求書は、別表2の「14 留置人診療費に係る支払依頼書」に添付された請求書である。請求書は、被留置人を診療した医師又は当該医師が所属する医療機関が、1ヵ月ごとにまとめて作成したものであり、文書作成日、医療機関の名称、住所、電話番号及び代表者の氏名、法人代表者の印影、被留置人の氏名、年齢、病名、初診日、再診日、診療費の合計額、診療費の内訳、警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影が記載されている。
本項の請求書に記録されている情報のうち、既に条例第8条第1項第1号又は第8条第2項第3号に該当すると判断した法人代表者の印影並びに警部補(同相当職含む。)以下警察職員の氏名及び印影を除く情報が条例第9条第1号に該当するか否かを検討するに、これらの情報は、特定の被留置人の診療費に関して作成された請求書に記載されている情報であることから、原則的には(10)ア及びイの要件に該当するが、様式として予め印刷されている情報は、個人に関する情報ではなく、(10)アの要件に該当しないことが明らかである。
次に、上記で(10)ア及びイに該当すると判断した情報が、(1?)ウの要件に該当するか否かについて、項目ごとに検討する。
- (ア)文書作成日
本項の情報は、被留置者が受けた診療に係る請求書が作成された年月日が明らかとなる情報であるが、医療機関においては、毎月1回、1ヵ月分をまとめて請求書を作成しており、診療を受けた日が具体的に特定される情報ではないから、社会通念上他人に知られないことを望む情報であるとは認められず、(10)ウの要件には該当しない。 - (イ)医療機関の名称、住所、電話番号及び代表者の氏名
本項の情報は、被留置者が診療を受けた医療機関が明らかとなる情報であるが、本項の情報から直ちに被留置者の具体的な病状等が明らかとなるものではないから、社会通念上他人に知られないことを望む情報であるとは認められず、(10)ウの要件には該当しない。 - (ウ)被留置人の氏名について
本項の情報は、特定の個人が特定の警察署に留置されていたことが明らかとなる情報であり、通常、他人に知られることを望まない情報であると認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。 - (エ)被留置人の年齢、病名、初診日、再診日
本項の情報は、特定の個人の固有の属性や健康状態が明らかとなる情報である。(ウ)において被留置人の氏名を公開してはならない情報であると判断したことから、一般人から見た場合、当該情報のみでは、個人が特定されることはないが、当該個人が警察署に留置されていたことを知り得る一定の関係者からみれば、当該関係者が知らない固有の属性や健康状態を知ることになりうる情報であり、社会通念上、他人に知られないことを望む情報であると認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。 - (オ)診療費の合計額
本項の情報は、特定の被留置者の診療について1ヵ月間に要した診療費の合計額が明らかとなる情報であるが、当該情報のみによっては、具体的な病名や症状等が明らかとなるものではないから、社会通念上、他人に知られることを望まない情報とは認められず、(10)ウの要件には該当しない。 - (カ)診療費の内訳
本項の情報は、診療費の項目ごとの金額が、表形式で記載されているものである。診療費の項目としては、あらかじめ9つの項目が印刷されているほか、空欄が設けられており、必要に応じて医師が項目を加筆する様式となっている。
本項の情報のうち、印刷された項目名については、個人の具体的な病名等が明らかになる情報ではないから、社会通念上、他人に知られることを望まない情報とは認められず、(10)ウの要件には該当しない。
一方、空欄に医師が加筆した項目名については、審査会で実際に記載されている項目名を確認したところ、医療費制度に関する情報と照らし合わせることにより、特定の複数の病名のうちいずれかで受診したことがわかる情報であると認められる。また、金額欄については、金額が記載されていること自体や金額から、どのような処置が行われたかが一定程度推測できる情報である。(ウ)において被留置人の氏名を公開してはならない情報であると判断したことから、一般人から見た場合、これらの情報のみでは、個人が特定されることはないが、当該個人が警察署に留置されていたことを知り得る一定の関係者からみれば、当該関係者が知らない具体的な病名等を推測し得るものであり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報と認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。
オ 性犯罪被害者の診療に係る請求書
本項の請求書は、別表2の「15 性犯罪被害者に対する初診料等に係る支払依頼書」に添付された請求書である。性犯罪被害者を診察した医師又は当該医師が所属する医療機関が診察の都度作成したものであり、文書作成日、医療機関の名称、住所及び代表者の氏名、法人代表者の印影、診察日及び診療日の区分、診療費の合計額、診療費の内訳、診療内容、診療費の振込先口座及び口座名義人、警部補(同相当職含む。)以下の警察職員の氏名及び印影が記載されている。
本項の請求書に記録されている情報のうち、既に条例第8条第1項第1号又は第8条第2項第3号に該当すると判断した法人代表者の印影、振込先の金融機関名、支店名、預金種別及び口座番号並びに警部補(同相当職含む。)以下警察職員の氏名及び印影を除く情報が条例第9条第1号に該当するか否かを検討するに、これらの情報は、特定の性犯罪被害者の診療費に関して作成された請求書に記載されている情報であることから、原則的には(10)ア及びイの要件に該当するが、様式として予め印刷されている情報は、個人に関する情報ではなく、(10)アの要件に該当しないことが明らかである。
次に、上記で(10)ア及びイの要件に該当すると判断した情報が、(10)ウの要件に該当するか否かについて、項目ごとに検討する。
- (ア)文書作成日
本項の情報は、特定の性犯罪被害者が受けた診察に係る請求書が作成された年月日が明らかとなる情報であるが、請求書は、診察の都度作成されていることから、当該被害者が診察を受けた日、ひいては、被害を受けた日が特定され得る情報でもある。請求書には、被害者の氏名等は記載されておらず、一般人からは、被害者が特定されることはないが、当該被害者が何らかの事件に巻き込まれたことを知る一定の関係者からみれば、当該被害者が被害を受けた日を知ることとなり得る情報であり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。 - (イ)医療機関の名称、住所及び代表者の氏名並びに振込先の口座名義
本項の情報は、性犯罪被害者が診察を受けた医療機関が明らかとなる情報であるが、本項の情報から直ちに被害者の具体的な病状等が明らかとなるものではないから、社会通念上他人に知られることを望まない情報であるとは認められず、(10)ウの要件には該当しない。 - (ウ)診療日及び診療日時の区分
診療日については、当該被害者が犯罪被害を受けた日が特定されるおそれがある情報である。また、診療日時の区分は、表中の初診料の備考欄にチェックボックス形式で記載されており、診療した日時が、「診療時間内」、「時間外」、「深夜」、「休日」のいずれに該当するかが明らかとなる情報である。
請求書には、被害者の氏名等は記載されておらず、一般人からは、被害者が特定されることはないが、当該被害者が何らかの事件に巻き込まれたことを知る一定の関係者からみれば、当該被害者が被害を受けた日時を知ることとなり得る情報であり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。 - (エ)診療費の合計額
本項の情報は、性犯罪被害者が受けた診察に係る医療費の総額が明らかとなる情報であるが、本項の情報から直ちに被害者の具体的な病状等が明らかとなるものではないから、社会通念上他人に知られることを望まない情報であるとは認められず、(10)ウの要件には該当しない。 - (オ)診療費の種別ごとの金額
本項の情報のうち、消費税額については、公開している合計額から容易に推察される情報であり、また、この情報だけで個人の病名等が明らかになるとは認められないことから、社会通念上他人に知られることを望まない情報であるとは認められず、(10)ウの要件には該当しない。
次に、初診料については、診療日時の区分によって金額が違うことから、犯罪被害の日時が特定され得る情報であり、(ウ)で述べたところにより、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号により、公開してはならない情報である。
また、処置料、緊急避妊処置・性感染症予防処置料、性感染症検査費用及び診断書料については、金額が記載されていること自体又はその金額から、具体的な診察内容、ひいては、具体的な犯罪被害の内容が明らかになるおそれがある情報であると認められる。請求書には、被害者の氏名等は記載されておらず、一般人からは、被害者が特定されることはないが、当該被害者が何らかの事件に巻き込まれたことを知る一定の関係者からみれば、当該被害者が受けた被害の内容を知ることとなり得る情報であり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。 - (カ)診療内容
本項の情報は、表中の処置料、性感染症検査費用の備考欄にチェックボックス形式等で記載される具体的な処置又は検査の内容である。その内容から、公にすると、犯罪被害の内容を推測し得ることとなると認められる。請求書には、被害者の氏名等は記載されておらず、一般人からは、被害者が特定されることはないが、当該被害者が何らかの事件に巻き込まれたことを知る一定の関係者からみれば、当該被害者が受けた被害の内容を知ることとなり得る情報であり、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であると認められるから、(10)ウの要件にも該当し、条例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。
カ 事故車両移動に係る搬送日時、搬送場所、搬送車両
本項の情報は、交通事故発生後、当該事故車両を事故発生場所から搬送した民間レッカー業者が警察本部長あてに搬送料を請求した書類に記載されている情報である。これらは、特定の車両が、特定の日時場所において交通事故に関係したことが明らかとなる情報であり、車両番号から、一定の関係者には所有者又は使用者が特定し得ることから、所有者又は使用者が個人である場合には、(10)ア及びイの要件に該当する。また、自らが所有又は使用する車両が交通事故に関係したという情報は、社会通念上、他人に知られることを望まない情報であることから、(10)ウの要件にも該当し、例第9条第1号の規定により、公開してはならない情報である。
4 結論
以上のとおりであるから、本件審査請求は、本件非公開部分のうち別表1に掲げる部分の公開を求める部分について理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
主に調査審議に関与した委員
岡村委員、福井委員、松田委員、山口委員
別表1 公開すべき部分(東警察署分)
番号 | 行政文書の名称 | 公開すべき部分 |
---|---|---|
1 |
留置人診療費に係る支払依頼書 |
「被留置人診療費請求書」中、文書作成日、医療機関の名称、住所及び電話番号、診療費の合計額、診療費内訳の項目名のうちあらかじめ印刷されている部分 |
2 |
性犯罪被害者初診料等に係る支払依頼書 |
「請求書」中、医療機関の名称及び住所、診療費の合計額及び消費税額、診療費内訳の項目名のうちあらかじめ印刷されている部分、振込先の口座名義人 |
別表2 本件決定の対象行政文書及び非公開部分(東警察署分)
番号 | 行政文書の名称 | 公開しないことと決定した部分 |
---|---|---|
1 |
行政財産の使用料金の収入伺い |
|
2 |
光熱水費(私用料金)の収入伺い (H18.4月分・5月分) |
|
3 |
不用品の売却に伴う契約伺い |
|
4 |
府帰属拾得物品売払代金の収入伺い |
|
5 |
府帰属拾得物品換金代金の収入伺い |
|
6 |
高速道路通行料の支出伺い |
|
7 |
警察署協議会に係る経費支出伺い |
|
8 |
交番連絡協議会に係る経費支出伺い(南大江交番・北久宝寺町交番・安土町交番・上町交番・北浜交番) |
|
9 |
被留置者等食料費の支払依頼 |
|
10 |
光熱水費等負担金支払依頼(城見交番・天満橋交番)(安土町交番) |
|
11 |
ごみ処理契約の締結及び経費の支出伺い |
|
12 |
府帰属車両の廃棄に係る経費の支出伺い |
|
13 |
民間レッカー車による事故車両移動料支払依頼書 |
|
14 |
留置人診療費に係る支払依頼書 |
|
15 |
性犯罪被害者初診料等に係る支払依頼書 |
|
16 |
新聞購入に伴う契約の締結及び経費の支出伺い |
|
17 |
留置場備付け新聞の購入に伴う契約の締結及び経費の支出伺い |
|
18 |
物品購入伺書、支出負担行為即支出命令伺書(文房具、来客用お茶) |
|
19 |
自転車の修繕に伴う単価契約の締結及び経費の支出伺い |
|
20 |
物品購入伺書、支出負担行為即支出命令伺書(物品修繕、自転車修理) |
|
21 |
電気料金支払依頼書(H18.4月分、5月分) |
|
22 |
ガス料金支払依頼書(H18.4月分、5月分) |
|
23 |
水道料金支払依頼書(H18.4月分、5月分) |
|
24 |
交通信号機等電気料金支払依頼書(H18.4月分、5月分) |
|
25 |
修理の施工に伴う契約及び経費の支出伺い |
|
26 |
土地(建物)賃借料の支出伺い |
|
27 |
自動車の燃料購入に係る単価契約の締結及び経費支出伺い(H18.4月分、5月分) |
|
28 |
自動車等の修繕に伴う単価契約の締結及び経費支出伺い |
|
29 |
物品購入伺書、支出負担行為即支出命令伺書(自動車修繕) |
|
別表3 本件決定の対象行政文書及び非公開部分(四條畷警察署分)
番号 | 行政文書の名称 | 公開しないことと決定した部分 |
---|---|---|
1 |
行政財産の使用料金の収入伺い(H19年度分、H20年度分) |
|
2 |
光熱水費(私用料金)の収入伺い(H20.3月分・4月分) |
|
3 |
高速道路通行料の支出伺い |
|
4 |
警察署協議会に係る経費支出伺い |
|
5 |
被留置者等食料費の支払依頼 |
|
6 |
一般廃棄物処理に係る契約の締結及び経費の支出伺い(H19年度分、H20.4~7月分) |
|
7 |
し尿処理に係る経費の支出伺い(H19年度分、H20.4~7月分) |
|
8 |
通訳謝礼金に係る経費の支出伺い |
|
9 |
変死体検視等立会謝礼金の支出伺い(H20年3月分、4月分) |
|
10 |
新聞購入に伴う契約の締結及び経費の支出伺い(H19年度分、H20.4~7月分) |
|
11 |
留置場備付け新聞の購入に伴う契約の締結及び経費の支出伺い(H19年度分、H20.4~7月分) |
|
12 |
物品購入伺書、支出負担行為即支出命令伺書(備品修繕、文具消耗器材) |
|
13 |
電気料金支払依頼書 (H20.3月分、4月分) |
|
14 |
ガス料金支払依頼書 (H20.1~3月分、4月分) |
|
15 |
水道料金支払依頼書 (H20.2~4月分) |
|
16 |
交通信号機等電気料金支払依頼(H20.3月分、4月分) |
|
17 |
工事の施工に伴う契約及び経費の支出伺い |
|
18 |
土地賃借料の支出伺い (H19年度分、H20年度分) |
|
19 |
電柱共架料の支出伺い (緊急通報装置用配線) (H19年度分、H20年度分) |
|
20 |
自動車の燃料購入に係る単価契約の締結及び経費支出伺い(H19.3月分) |
|
21 |
自動車の燃料購入に係る単価契約の締結及び経費支出伺い(H20.4月分) |
|
22 |
自動車の燃料(軽油)購入に係る単価契約の締結及び経費支出伺い (H20.4~7月分) |
|
23 |
自動車等の修繕に伴う単価契約の締結及び経費支出伺い(普通自動車) |
|
24 |
自動車等の修繕に伴う単価契約の締結及び経費支出伺い(原動機付自転車) |
|
25 |
物品購入伺書、支出負担行為即支出命令伺書(自動車等修繕) |
|