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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第96号)

第一 審査会の結論

諮問実施機関の判断は妥当である。

第二 審査請求の経過

  1. 審査請求人は、平成16年3月29日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、「平成13年○○月○○日、枚方市の○○○○の交番で提出した被害届(庭の花、木を折られる被害にあったことを記す)」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 実施機関は、平成16年4月13日、本件請求に対して、非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して審査請求人に通知した。
    (公開しない理由)
    本件行政文書は、大阪府情報公開条例第40条に規定する、刑事訴訟法第53条の2の「訴訟に関する書類」に該当し、同条例の規定を適用しないこととされているものである。
  3. 審査請求人は、平成16年4月26日、本件決定を不服として、大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、行政不服審査法第5条の規定により、審査請求を行った。

第三 審査請求の趣旨

本件決定を取り消すとの裁決を求める。

第四 審査請求人の主張要旨

審査請求人の主張は、概ね、次のとおりである。

被害者本人が提出した被害届の写しをもらえないのは不当だと思う。

警察官が代筆してその後割印を押すように言われ、2枚目の用紙と1枚目の裏側に押したが、2枚目には何も書かれていなかったので、何を書いたか見たい。

刑事訴訟法第53条の2の「訴訟に関する書類」の中の「被疑事件又は被告事件に関し作成された書類をいう。」の言葉のとおり、被疑者、被告に関する書類という意味に捉えるのが正しいと思われる。

被害届は被害者が訴えた書類であり、当然本人の情報開示は、可能だと思う。

諮問実施機関は、「被害届の内容についての確認、修正については、保管所属での閲覧等の対応で足りる。」というが、はっきりと書類の写しを被害者本人に渡して、内容を確認してもらうのが一番良い方法だと思う。

書類の写しの交付で警察側は何の損害もないことは明白で、むしろ非公開に疑問を感じる。

警察官が代筆し、1枚目の裏と何も書かれていない2枚目の表に右手の人差し指の割印を押すように言われ、信用してその通りに押したが2枚目の白紙の紙に何を書いたか知る権利があるし、それを本人が、閲覧のため、疑いを持っている警察へ出向いていくのはおかしい。

偽の書類を見せられても素人の私には判断が出来ない。弁護士に相談するためにも写しが必要である。被害届は本人が書くものではないのかと、警察官に尋ねた時も、間違ってはいけないからと、一切書かせようとしなかった。また、割印の意味についても説明を受けたいと思っている。

以前、電話で大阪府警の監察室で割印について尋ねたとき、「本当に2枚目には何も書かれていなかったのか」と聞き返された。2枚目に何か書いてあったのではと言われた。

~中略~

第五 諮問実施機関の主張要旨

諮問実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 実施機関の意見等

(1)意見の趣旨

「実施機関の決定は妥当である。」との裁決を求める。

(2)実施機関の意見

ア 訴訟に関する書類について

刑事訴訟に関する書類及び押収物については、刑事司法手続の一環として、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)等により規律されることが適当であることから、情報公開法の制定に際し調整措置として改正された刑事訴訟法第53条の2にのっとり、条例の適用対象から除外するのが条例第40条の趣旨である。

刑事訴訟法においては、訴訟に関する書類とは、被疑事件又は被告事件に関し作成された書類をいい、種類及び保管者を問わないと解されており、裁判所・裁判官の保管する書類に限らず、検察官、司法警察職員、弁護人等の保管している書類、また、未だ送致・送付を行っていない書類についても訴訟に関する書類である。

刑事訴訟法は、裁判の適正の確保、訴訟関係人の権利保護等の観点から、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合を除いて、「訴訟に関する書類」を公判の開廷前に公開することを禁止している(刑事訴訟法第47条)。

他方で、刑事訴訟法第53条等において、一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認めているように、その保有する情報について、公開・非公開の要件及び手続等が完結的に定められている。

これらの書類は、秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、公開により犯罪捜査、公訴の維持、その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることから、「訴訟に関する書類」の情報公開については、司法統制の下にある独自の制度に委ねられるべきものとして、条例の適用を除外されたものである。

イ 被害届について

本件対象文書である被害届は、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第61条第1項に「警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。」と定められており、また、捜査の端緒として最も一般的かつ重要なもので、捜査の目的で作成される文書であり、審査請求人が自己の犯罪被害について警察に申告し作成した本件被害届が、刑事訴訟法における訴訟に関する書類であることは明白である。

(3)審査請求人の主張について

審査請求人は、審査請求の理由を「被害者本人が提出した被害届をもらえないのは不当だと思うから」、「警察官が代筆してその後、割印を押すよう言われ、2枚目の用紙と1枚目の裏側に押しましたが、2枚目には何も書かれていなかったので、何を書いたか見たいため」としている。

この点については、行政文書公開請求時において、当府警本部府民応接センター情報公開室職員が、審査請求人に対し情報公開制度の趣旨、適用除外事項等については繰り返し説明し、また、届けた被害届の内容についての確認、修正については、情報公開制度を別にして、当事者として当然可能なものであることも繰り返し説明してきたところである。

条例第6条において、何人に対しても公開請求権を認めており、「被害者本人が提出した被害届がもらえないのは不当」の主張は、特定の文書の関係者(被害者等)であろうと第三者であろうと等しくその権利を認めている条例の趣旨・目的にそぐわないものである。

また、「何を書いたか見たいため」の主張は、情報公開制度によるべきものではなく、被害届の提出者本人として、保管所属において確認、閲覧等の対応を求めるべきものであり、何人でも請求できる同制度を活用しては、個人のプライバシーの保護等からもその目的が実現しないのは明らかである。

よって、審査請求人の審査請求の理由は、情報公開制度の趣旨からは全く懸け離れたものであり、その主張は是認できない。

なお、審査請求人の請求目的を実現するには、情報公開制度ではなく、刑事訴訟法第47条(訴訟書類の非公開)において、その例外として公益上の必要性等の理由を個々具体的に検討し、利益衡量から相当性を認める場合に当該訴訟書類(被害届)の閲覧等を検討することで足りると考える。

(4)実施機関の結論

以上のとおり、本件決定は条例の趣旨を踏まえて行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

2 諮問実施機関のまとめ

本件公開請求に係る文書は、条例第40条に規定する、刑事訴訟法第53条の2の訴訟に関する書類に該当し、条例適用除外になるものと考えるところである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けるとともに、刑事訴訟法第53条の2の訴訟に関する書類及び押収物について、別途、条例の適用除外とする旨の規定を置いている。実施機関は、請求された情報がこれらの適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件請求に係る行政文書は、条例第40条に規定する「刑事訴訟法第53条の2の訴訟に関する書類」に該当し、条例の規定が適用されないと主張しているので、検討したところ、次のとおりである。

(1)条例第40条について

刑事訴訟に関する書類及び押収物については、1.刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成・取得されるものであるが、捜査・公判に関する国の活動の適正確保は、司法機関である裁判所により図られるべきであること、2.裁判の公正の確保、訴訟関係人の権利保護等の観点から、刑事訴訟法第47条により、公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方、事件終結後においては、刑事訴訟法第53条及び刑事確定訴訟記録法に基づき、一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認め、その閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき裁判所に対する準抗告の手続によることとされるなど、刑事訴訟法(第40条、第47条、第53条、第299条等)及び刑事確定訴訟記録法により、その取扱い、開示・非開示の要件及び開示手続等が自己完結的に定められていること、3.類型的に秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により犯罪捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることから、刑事訴訟法第53条の2の規定により、国の情報公開法の適用除外とされている(総務省行政管理局「詳解情報公開法」)。

本条は、この刑事訴訟法第53条の2の規定を受けて、府としても、刑事訴訟に関する書類等を保管している警察等の業務の全国的な斉一性を確保し、刑事司法秩序の維持に資する観点から設けられたものであり、「この条例の規定は、刑事訴訟法第53条の2の訴訟に関する書類及び押収物については、適用しない。」と規定している。

そして、刑事訴訟法上、「訴訟に関する書類」とは、裁判所が事件記録として編てつした「訴訟記録」だけではなく、刑事司法手続における被疑事件・被告事件に関して作成又は取得された書類(意思表示的書類(起訴状など)、報告的書類(鑑定書、証人尋問調書など)、手続関係書類(弁護人選任届など)、証拠書類(捜査報告書、供述録取書、実況見分調書など)を含む。)であれば、不起訴になった事件に関するものも含むと解されていることが認められ、本条の「訴訟に関する書類」についても同様に解すべきである。

(2)本件請求に係る行政文書の条例第40条該当性について

本件請求に係る行政文書は、審査請求人が交番に提出した特定の事案についての被害届である。このように警察の機関に提出される被害届は、刑事事件の捜査に資するため、被害者が、犯罪による自らの被害を届け出るものであって、刑事事件に係る捜査の端緒として最も一般的なものであり、当該事案が起訴に至った場合には、刑事訴訟における重要な証拠書類ともなり得るものでもある。

以上のことからすると、本件請求に係る行政文書である被害届は、実施機関が刑事事件に係る捜査のために取得する文書であり、(1)で述べたところからすると、その事件が刑事事件として起訴に至ったか否かにかかわらず、「刑事訴訟法第53条の2の訴訟に関する書類」に該当すると認められる。

したがって、本件請求に係る行政文書である被害届については、条例第40条の規定により、条例の規定が適用されないから、本件決定は妥当である。

3 審査請求人の主張について

審査請求人は、本件審査請求において、本件請求に係る行政文書が審査請求人自身が提出した被害届であること、また、本件請求に係る行政文書の内容や体裁、作成された際の経過やその後の管理等に関して種々疑義があることを主張して、本件請求に係る行政文書の開示、とりわけ、写しの交付を強く求めている。

しかしながら、条例においては、「何人も、実施機関に対して、行政文書の公開を請求することができる。」(条例第6条)と規定して請求者を何ら区別することなく行政文書の公開を請求する権利を付与しており、第8条及び第9条に規定する公開・非公開の基準においても、請求者が本人である場合について特則を設けず、個人情報の本人開示に不可欠な本人確認の手続も定めていない。また、大阪府では、昭和59年に制定された公文書公開等条例(昭和59年大阪府条例第2号)においては、一般の公文書の公開に加えて、公文書の本人開示に係る規定が置かれていた(同条例第17条)が、平成8年に個人情報保護条例(平成8年大阪府条例第2号)が制定され、同条例に自己に関する個人情報の開示の規定が設けられたことから、公文書公開等条例の公文書の本人開示に係る規定が削除された経緯もある。

これらのことからすると、条例に基づく行政文書公開制度においては、請求者が誰であるかによって、公開・非公開等の決定内容に差異を設けることはできないのであり、その公開請求に係る行政文書が請求者の個人情報を記録したものであるからといって、他の請求者と異なる公開決定を行うことはできない。

なお、本件請求に係る行政文書については、警察本部長が大阪府個人情報保護条例の実施機関となっていないため、同条例に基づく自己に関する個人情報の開示の規定は適用されないが、実施機関においては、本件請求に係る行政文書を当事者である審査請求人の閲覧に供することは差し支えないとしているのであり、これを基に、その文書の作成又は取得及びその後の管理の状況等について可能な範囲で説明するなど、審査請求人が主張する疑義の解消に、引き続き努力されることを期待するものである。

4 結論

以上のとおりであるから、本件審査請求には理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

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