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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第89号)

第一 審査会の結論

実施機関は、本件審査請求の対象となった部分公開決定において非公開とした部分のうち、「別記様式第2号 交通指導取締計画(5月中)」の「実施場所」欄中、取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行の「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分を公開すべきである。

実施機関のその余の判断は妥当である。

第二 審査請求の経過

  1. 審査請求人は、平成15年5月7日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府警察本部長(以下「実施機関」という。)に対し、「平成14年5月の布施警察署における交通取締計画」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 実施機関は、平成15年5月21日、本件請求に対応する行政文書として、(1)の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない理由を(3)のとおり付して審査請求人に通知した。
    • (1)本件請求に対応する行政文書
      交通指導取締計画(平成14年5月中)(布施警察署分)
    • (2)公開しないことと決定した部分
      • ア 実施時間、具体的な実施場所、従事員(車両)数及びこれらを特定し得る部分(学童誘導に関するものは除く。)
      • イ 警部補以下の警察職員の氏名
    • (3)公開しない理由
      • ア(2)アに係る理由
        • (ア)条例第8条第2項第1号に該当する。
          本件行政文書(非公開部分)には、道路交通法違反に対する取締場所等の情報が記載されており、これらの情報を公にすることにより、今後同種の事務の目的が達成できなくなり、又は事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
        • (イ)条例第8条第2項第2号に該当する。
          本件行政文書(非公開部分)には、道路交通法違反に対する取締場所等の計画に関する情報が記載されており、これらの情報を公にすることにより、将来の犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるなど、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある。
      • イ(2)イに係る理由
        • (ア)条例第8条第2項第3号に該当する。
          本件行政文書(非公開部分)には、警部補以下の警察職員の氏名が記載されており、これを公にすることにより、当該警察職員及びその家族等の生命、身体、財産等の保護に支障を及ぼすおそれがある。
  3. 審査請求人は、平成15年6月2日、本件処分を不服として、大阪府公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、行政不服審査法第6条の規定により、審査請求を行った。

第三 審査請求の趣旨

本件処分の公開しないことと決定した部分を見直し、「別記様式第2号 交通指導取締計画(5月中)」中非公開とされた、一部の「実施場所」、「実施時間」及び「従事員(車両)数」(以下「本件係争部分」という。)の公開を求める。

第四 審査請求人の主張要旨

審査請求人の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 条例第8条第2項第1号該当性について

実施機関は、本件行政文書中、取締りの実施場所、時間、従事員(車両)数の公開をしない理由に、今後の同種の事務の目的が達せられなくなるおそれを挙げているが、

  • ア 府警のホームページで一斉取締りの情報が提供され、安全な運転を呼びかけていること
  • イ 警察庁依命通達(昭和42.8.1 警察庁乙交 警察庁次長)にも、「交通事故の多発道路、多発時間を選定するなど、交通事故防止に効果的な取締りを実施するよう留意する。」などと記載されているように、目的は事故防止であるべきであること

から、未来・過去を問わず、取締りの実施場所は公開されるべきものである。

少なくとも、過去の取締りの実施場所を公開することは、交通事故の多発道路、多発時間の公開と同様のものとなっているべきことであり、過去の取締りの実施場所、時間、従事員(車両)数については、その全てを公開するべきである。

取締計画は、計画の時間や場所を変更して実施することが出来るものであり、また、計画外の取締りも行える。前者については、関係者から5月2日の取締りについて、そのように回答を受けており、後者については、公開の対象として求めていた平成14年5月の布施警察の取締りで例示すると、5月の一日の取締件数は最大で86件(5月1日)、最小で15件(5月2日)であるが、取締計画が予定されていない日についても5月5日に67件、5月6日に25件などと、取締りが行われている。

このように公開を求めている部分の他でも、充分な取締りが行われ、また、計画した時間・場所も変更もできることなどから取締計画を公開しても大きく影響しないと考えられる。

なお、大阪府警以外にも、ホームページで取締情報を公開している県があるが、滋賀・岡山・熊本等では、「菊池郡旭志村川辺の国道325号で15-17時にはみ禁(はみ出し禁止)」(熊本県警)を取締るといった形で比較的詳細に記されており、大阪府警は必要以上に公開を避けているように感じられる。

2 条例第8条第2項第2号該当性について

実施機関は、暴走行為や飲酒運転を例示しているが、この2点は法律で定められたものであり、公安委員会が道路標識で制定できる、速度や信号などとは趣きの異なるものである。後者についての取締計画を公開しないでおくことは、わかりにくい標識や信号などを設置し、それに基づく取締りを行い、これに関する情報の公開を必要としないと判断するという3つの行為をすべて公安委員会が行えるということであり、行政の透明性の確保を不要なまでに妨げるものと考える。飲酒の取締りについては、非公開もやむなしと判断されたとして、それを他の取締りにまで拡大解釈する際には、熟慮頂きたい。

3 その他

同じ場所で取締りを継続的に行うことが幾度か記されているが、取締りを繰り返し行う以外に、わかりやすい標識や注意を喚起するしくみなど、事故を抑制するよう不断の努力を続けることが第一であり、これを怠らせないよう監視できるしくみが必要と考える。

交通取締りの情報を公開することによって、違法・不当な行為が容易に行われるようになると主張されているが、必要以上に情報を非公開とすることにより、不正の温床となることもあるため、非公開の範囲は極力狭い範囲に限定するよう、厳正に判断頂きたい。

第五 諮問実施機関の主張要旨

諮問実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 交通指導取締計画等について

(1)交通指導取締り及び交通指導取締計画について

  • ア 交通指導取締りは、車両等の運転者、歩行者その他の道路利用者による交通法規の違反を監視することによって交通ルール違反を予防し、違反を発見したときには検挙(告知)又は警告指導等の必要な措置を講ずることによって道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図り、道路に起因する障害を排除することを目的とした警察活動である。
    こうした目的を効果的かつ効率的に達成するため、交通事故の発生状況や市民の取締要望等も踏まえ、取締りの対象、場所、時間及び方法等を総合的に検討して取締計画を策定し、反復・継続した交通指導取締りを実施している。本府警察における交通指導取締りは基本的には上記取締計画に基づき常態的に実施しているものである。
    なお、交通違反の検挙(告知)は、取締現場及びその周辺の交通事故防止に極めて有効な活動であることはもちろんであるが、違反運転者に対しては、将来的に交通法令の遵守と反復違反の抑制を図る効果をもたらし、さらには、運転免許管理における運転者教育(違反者講習、処分者講習)や反復して敢行する悪質・危険運転者の道路交通からの一時的な排除(運転免許の停止又は取消し)等の行政目的を達成する重要な活動でもある。
    このため、交通違反取締りの具体的な対象、日時、場所、体制・規模等に関する情報は、原則として運転者に認知されない方法により実施することが必要である。
  • イ 交通指導取締計画の策定の根拠
    交通指導取締計画書は、平成13年12月13日付け、「交通死亡事故抑止に向けた「2002大阪ブロック作戦」の実施について(依命通達)」に基づき策定し、交通部長あて報告することとしている。

(2)本件行政文書について

  • ア 本件行政文書は、布施警察署作成に係る平成14年5月の交通指導取締計画である。
  • イ 本件行政文書は、「別記様式第2号 交通指導取締計画(5月中)」と「別記様式第3号 交通指導取締計画集計、本部・ブロック指定路線別取締計画(5月中)」からなり、その記載事項及び本件処分において非公開とした事項は、それぞれ次のとおりである。
    • (ア)「別記様式第2号 交通指導取締計画(5月中)」
      交通指導取締計画の本体である。個別の各取締りごとに「取締日」、「取締曜日」、「取締区分(府下一斉、本部指定、B計画、署計画の別)」、「取締種別」、「現場責任者(係、階級、氏名)」、「実施時間」、「実施場所(地番、交差点名又は目標物、路線名、方向)」、「従事班」、「従事員(車両)数(交通、地域、その他、計、車両)」が記載されており、うち、「現場責任者」欄の氏名、「実施時間」欄の学童誘導の「実施時間」欄を除く全部、「実施場所」欄の学童誘導の「実施場所」欄及び駐車取締りの対象地域名を除く全部、「従事員(車両)数」欄の学童誘導の「従事員(車両)数」欄を除く全部を非公開とした。
    • (イ)「別記様式第3号 交通指導取締計画集計、本部・ブロック指定路線別取締計画(5月中)」
      交通指導取締計画の内容を、取締種別ごと、路線ごとに集計した表である。このうち、交通指導取締計画集計には「報告日」、「取締種別」、「(取締)回数」、「(従事)人員」、「(従事)車両台数」、が記載されており、うち、「(従事)人員」、「(従事)車両台数」を非公開とした。
    なお、本部・ブロック指定路線別取締計画に非公開とした部分は存在しない。

2 条例第8条第2項第1号該当性について

条例第8条第2項第1号は、条例の適用除外事項として「前項第1号から第4号までのいずれかに該当する情報」を規定している。本件係争部分は、このうち、条例第8条第1項第4号に該当する情報として、条例第8条第2項第1号に該当するものである。

行政が行う取締り等の事務事業に係る情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれのあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすものがある。このような支障を防止するため、これの情報については、公開しないことができるとするのが本号により適用される条例第8条第1項第4号の趣旨である。

以下、本件係争部分が本号に該当する理由を述べることとする。

(1)実施時間及び実施場所について

取締りを実施する時間や場所は、無制限に選定できるものではない。現状においては交通事故の発生状況や道路環境を阻害する行為が行われている地域や道路、地域住民の迷惑性、危険性が高い交通違反に対する取締要望等を十分に把握して、その情報を分析し、検討して、総合的に効果が上がる取締りを行うよう、実施時間や実施場所を選定している。更に、取締機材の設置場所、停止・取調場所の安全性の確保、違反の正確な立証、違反車両の安全な誘導、道路交通への影響、その他道路環境の要件を総合的に検討している。

このように選定された取締りを実施する時間や場所については、交通事故の抑止対策等として将来にわたり継続的に取締りを実施していくことが多く、たとえ公開請求された時点においては過去の取締情報であっても、特定の時間や場所において取締りを行っていることが公になれば、将来の取締時間、場所等が推測されることから、交通違反を犯そうとする者が、以後の取締りを逃れようとして対抗措置を講じる蓋然性が高くなり、当該取締時間、場所以外での交通の安全と円滑を確保することが困難となる。

なお、路線名については、特定の警察署の管轄する距離が短い場合や取締りに適した場所が限られている場合などにおいては、特定場所を明らかにすることと同様の結果をもたらすこととなる。また、方向については、取締対象車両の進行方向を示すものであり、交通違反の実態や隣接警察署と連携した取締りの必要性から極めて重要な計画項目であり、取締時間・場所と同様、反復・継続性を有しており、逆方向の道路においては、取締りが実施されないものであると窺わせることができることから対抗措置を講じるといった行為がとられる蓋然性が高くなる。

(2)従事員(車両)数について

従事員(車両)数については、取締りの規模の大小を推測し得る重要な情報であることから、当該情報が公になれば取締りを逃れるための対抗措置を講じる蓋然性が高くなる。

過去における従事員(車両)数であっても、取締体制の編成やその周期を察知し得る情報であることから将来の交通取締りを回避し、他の交通違反を助長する可能性を有している。

この情報が公になると、例えば、いわゆる暴走族等が取締体制を上回る人員体制で暴走行為等を行い、取締りを混乱させるといった対抗措置を取られるおそれがある。したがって、本件係争部分に記載された情報を公にすることにより、公平な交通指導取締りができなくなるといった交通指導取締りの事務に支障を及ぼすだけでなく、道路における危険が増大し、交通の安全と円滑が保てなくなるなど、道路交通法の目的そのものを実現することができなくなり、道路交通行政の事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるものである。

3 条例第8条第2項第2号該当性について

公共の安全と秩序を維持することは、府民全体の基本的な利益を擁護するため府に課せられた重要な責務である。

条例第8条第2項第2号では、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある情報を、条例の適用除外事項としているものである。

以下、本件係争部分が本号に該当する理由を述べることとする。

本件係争部分に記載された情報は、過去に行われた取締りに係るものであるが、前述のとおり、取締場所を無制限に選定できるものではなく、また、一度選定された取締時間・場所については、将来にわたり継続的に取締りを実施していくことが多いものである。例えば、暴走族や飲酒運転をしようとする者等が過去の一定期間の取締計画の公開請求を行うことにより、将来の実施時間、場所、取締体制等が判明するおそれが極めて高く、これにより、交通違反を犯そうとする者が以後の取締りを逃れようとして対抗措置を講じたり、暴走族が取締りの行われていない場所、時間等において暴走行為、共同危険行為等を繰り返すといった行為が過去の事件からも十分に予想される。

したがって、本件係争部分に記載された情報を公にすることにより、犯罪を誘発し、地域住民に多大の迷惑、危険を与える行為を助長するおそれがあり、又は犯罪の実行を容易にするおそれがあるなど、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められるものである。

4 審査請求人の主張について

審査請求人は、「1.府警のホームページで一斉取締りの情報が提供され、安全な運転を呼びかけていること、及び、2.警察庁依命通達(昭和42.8.1 警察庁乙交警察庁次長)にも、『交通事故の多発道路、多発時間を選定するなど、交通事故防止に効果的な取締りを実施するよう留意する』などと記載されているように、目的は事故防止であることから、未来過去を問わず、取締りの実施場所は公開されるべきものである。少なくとも、過去の取締りの実施場所を公開することは、交通事故の多発道路、多発時間の公開と同様のものとなっているべきことであり、過去の取締りの実施場所、時間、従事員(車両)数については、その全てを公開するべきである。」旨主張している。

確かに、取締情報は大阪府警察のホームページで、週毎の各警察署の主な取締路線と取締種別を一部公開しており、道路交通法の目的の達成及び交通安全の意識を高めるという観点からすれば、取締情報を公開する利益が大きいことも事実である。しかし、それは期間、路線等を抽象的表現によって行うものであり、全ての情報を明らかにするものではない。反対に具体的な取締情報を公開すれば、前述のように違法、不当な行為が容易に行われ、交通事故防止という、交通取締りの目的が果たせなくなるのであって、審査請求人の主張は是認できない。

5 まとめ

本件処分のうち本件係争部分は、条例第8条第2項第1号及び第2号に規定される事務事業及び公共安全に関する情報に該当すると考える。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 交通指導取締り及び本件係争部分について

(1)交通指導取締り及び交通指導取締計画について

諮問実施機関の説明等により、以下のとおり認められる。

交通指導取締りは、道路利用者による交通法規の違反を監視することによって交通ルール違反を予防するとともに、違反を発見したときには検挙(告知)又は警告指導等の必要な措置を講ずることによって道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図り、道路に起因する障害を排除することを目的とした警察活動である。

交通指導取締りについて、実施機関においては、その基本的な在り方を定めた「交通指導取締りの推進について」(平成12年7月28日例規(交指・地総・備)第44号)に基づき、警察本部交通部長が、一斉交通監視、集中機動警ら及び悪質・危険性の高い違反等に対する取締りについて「本部計画」として策定し、その実施日等を各警察署長等に指示するとともに、各警察署長等が「交通指導取締計画」を月ごとに策定して、計画的な指導取締りを推進している。大阪府警察における交通指導取締りは、各警察署等において、必要に応じ随時実施されることがあるものの、交通指導取締計画に基づいて実施される取締りが基本となっているものである。

なお、大阪府警察のホームページ上の「お知らせ」中「交通指導取締り・府下一斉取締り」において、「交通指導取締り予定」という表題で一定の情報が公表されている。

同ホームページにおいては、例えば、平成15年は「大阪ブロック作戦2003」に伴う交通指導取締り予定として、

「○主な速度、飲酒、信号、ベルト等の取締り予定は次のとおりです。

○なお、この予定場所以外でも交通指導取締り等を実施いたしますので、ご理解とご協力をお願いします。」

との説明の下部に「○月○日~○月○日(一週間)の主な取締り予定」として、表形式で、府内の「警察署」名及び当該警察署が当該期間内に取締りを実施する予定のある「路線」名が2~3路線ずつ掲載されているが、取締種別や具体的な実施日時、実施場所は特定されておらず、路線名も全てが掲載されているものではない。

(2)「別記様式第2号 交通指導取締計画(5月中)」について

本様式は、表形式で、「日」、「曜」、「取締区分」、「取締種別」、「現場責任者」、「実施時間」、「実施場所」、「従事班」、「従事員(車両)数」の各欄が設けられており、計画されている取締りごとに、所定の情報が記載されている。本件係争部分は、全て、本様式に含まれているので、記載内容を確認したところ、以下のとおりである。

ア「日」、「曜」

取締りが計画されていた日の日付及び曜日が記載されている。

イ「取締区分」

「府下一斉」、「本部指定」、「B計画」、「署計画」に区分されており、該当する欄に○印が記入されている。

ウ「取締種別」

「速度」、「信号」、「夜間飲酒」、「駐車」、「夜間駐車」、「学童誘導」のいずれかが記載されている。

エ「現場責任者」

「現場責任者」の欄は、「係」、「階級」、「氏名」に区分され、現場責任者である警察職員の係及び階級の略号と氏名が、取締種別が「夜間飲酒」である場合のみ記載されている。

オ「実施時間」

取締りの開始時刻と終了時刻が時間単位で記載されている。

カ「実施場所」

「実施場所」の欄は、「地番 交差点名又は目標物」、「路線名」、「方向」に区分されており、「地番 交差点名又は目標物」としては、実施場所の住居表示による町名及び番号(取締種別が「駐車」の場合は、町名等)と交差点名(取締種別が「駐車」の場合は目標となる施設名、「学童誘導」の場合は対象となる校園名)、「路線名」としては、具体的な路線名等、「方向」としては、取締りの対象とする車両の進行方向(方角)が記載されている。

キ「従事班」

取締りに従事する班の略号が、取締種別が「夜間飲酒」である場合のみ記載されている。

ク「従事員(車両)数」

「従事員(車両)数」の欄は、「交通」、「地域」、「その他」、「計」、「車両」に区分されており、取締りに従事する警察職員の所属別の人数(「交通」、「地域」、「その他」)及び合計の人数(「計」)と取締りに使用する車両の台数が(「車両」)記載されている。

(3)本件係争部分について

本件処分における公開・非公開の区分と本件係争部分の範囲について、取締種別ごとに整理すると、以下のとおりである。

ア 取締種別が「速度」である行

「実施時間」欄、「実施場所」欄及び「従事員(車両)数」欄は非公開、その他の欄は公開とされている。非公開部分全部が本件係争部分に含まれている。

イ 取締種別が「信号」である行

「実施時間」欄、「実施場所」欄(「方向」の部分の「全」の記載を除く。)及び「従事員(車両)数」欄は非公開、その他の欄は公開とされている。非公開部分全部が本件係争部分に含まれている。

ウ 取締種別が「夜間飲酒」である行

「現場責任者」欄中の「氏名」、「実施時間」欄、「実施場所」欄中の「地番」、「交差点名又は目標物」、「路線名」(「市道」の記載を除く。)及び「方向」(「全」の記載を除く。)の部分並びに「従事員(車両)数」欄は非公開、その他の欄は公開とされている。「現場責任者」欄中の「氏名」を除く非公開部分全部が本件係争部分に含まれている。

エ 取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行

「実施時間」欄、「実施場所」欄中「交差点名又は目標物」、「路線名」(「市道」の記載を除く。)及び「方向」の部分並びに「従事員(車両)数」欄は非公開、その他の欄は公開とされている。非公開部分全部が本件係争部分に含まれている。

オ 取締種別が「学童誘導」である行

全部公開されている。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

諮問実施機関は、本件係争部分に記載された情報が条例第8条第2項第1号及び第2号に該当すると主張するので検討したところ、以下のとおりである。

(1)条例第8条第2項第1号該当性について

本号は、第8条第1項第1号から第4号までのいずれかに該当する情報が記録されている行政文書を公開しないことができると規定しており、本件処分において実施機関は第8条第1項第4号に該当するものとして本号を適用している。

行政が行う事務事業に係る情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれのあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすものもある。

このような支障を防止するため、これらの情報については、公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第4号の趣旨であり、同号は、

  • ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、交渉、渉外、争訟等の事務に関する情報であって、
  • イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの

について公開しないことができる旨定めている。

これを本件についてみるに、本件係争部分に記録された情報は、実施機関が行う交通指導取締りの計画に関する情報であり、上記アの要件に該当することは明らかである。

また、本件係争部分が上記イの要件に該当するか否かについて、既に公開されている取締種別ごとに検討した結果は、以下のとおりである。

(ア)取締種別が「速度」、「信号」及び「夜間飲酒」である行

速度違反の取締りは、取締資機材を沿道に設置し、通行する車両の速度を測定した上、違反車両を停止させるなどの方法により行われるものである。

信号無視の取締りは、交差点周辺に要員を配置して通行車両を監視し、発見した違反車両を停止させるなどの方法により行われるものである。

飲酒運転の取締りについては、沿道に要員を配置して通行車両の検問を行い、飲酒運転の疑いある運転者に対して呼気検査を実施する方法により行われるものである。

これらの取締りについては、取締資機材の性能や違反者、警察官及び他の通行者の安全確保等のため、実施場所に相当の制約があるとともに、各警察署において、限られた人員や車両で効果的な取締りを行う必要上、実施時間や従事員(車両)数についても、おのずと一定のパターンが生ずるものであることが、実施機関の説明及び審査会において本件行政文書を見分した結果により認められる。

このため、本件係争部分のうち取締種別が「速度」、「信号」及び「夜間飲酒」である行の「実施場所」、「実施時間」及び「従事員(車両)数」の各欄に記載されている情報を公にすると、長期間にわたる交通指導取締計画を対象とする公開請求が行われることを想定した場合、既に公開されている「日」、「曜」及び「取締種別」の各欄に記載されている情報とも相俟って、布施警察署が今後とも行うこれらの取締りが実施されることが多い場所や時間帯、実施されがたい場所や時間帯、実施される場合の取締体制が類推され、悪質な違反者が回避行動をとったり、強行突破を図ることが容易になるなど、今後、同種の取締りに係る事務の目的が達成できなくなるおそれがあると認められる。

(イ)取締種別が「駐車」及び「夜間駐車」である行

駐車違反の取締りは、要員に一定の地域を巡回させ、違反車両を確認するとともに、レッカー車で移動させるなどの方法により行われるものである。

このような駐車違反の取締りについては、面的に行われるものであり、実施場所に関し特段の制約はないが、各警察署において、限られた人員や車両で効果的な取締りを行う必要上、実施時間や従事員(車両)数について、実施場所ごとにおのずと一定のパターンが生ずるものであることが、実施機関の説明及び審査会において本件行政文書を見分した結果により認められる。

このため、本件係争部分のうち取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行の「実施時間」及び「従事員(車両)数」の各欄に記載されている情報を公にすると、長期間にわたる交通指導取締計画を対象とする公開請求が行われることを想定した場合、既に公開されている「日」、「曜」、「取締種別」(「駐車」又は「夜間駐車」)の各欄及び「実施場所」欄中「地番」の部分に記載されている町名等の各情報と結びつくことにより、布施警察署が今後とも行う駐車違反の取締りが実施されることが多い時間帯、実施されがたい時間帯、実施される場合の取締体制が地域ごとに類推され、悪質な違反者が回避行動をとることが容易になるなど、今後、同種の取締りに係る事務の目的が達成できなくなるおそれがあると認められる。

しかしながら、「実施場所」欄中「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分に記載されている情報については、既に「地番」の部分に記載されている町名等が公開されており、また、上述のとおり、駐車違反の取締りについては実施場所に関し特段の制約がないことからすると、これらの情報を公にすることにより、当該若しくは同種の取締りの事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。

以上のことから、本件係争部分のうち取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行の「実施場所」欄中「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分に記載されている情報については、条例第8条第2項第1号に該当しないが、その余の部分に記載されている情報については、同号に該当し、公開しないことができる情報であると認められる。

なお、審査請求人は、大阪府警察のホームページで一斉取締りの情報が提供されている(他府県警察のホームページではさらに詳細に提供されている。)、取締りの目的は事故防止であるべきである、計画以外でも取締りが行われている、少なくとも過去の取締りの実施場所を公開することは交通事故の多発道路、多発時間の公開と同様のものとなっているべきであるなどとして、本件係争部分は全て公開すべきであると主張している。しかしながら、本件係争部分のうち取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行の「実施場所」欄中「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分を除く部分に記載されている情報については、過去の取締りに係る情報ではあるものの、上述のとおり本号に該当する事由が認められるのであり、各都道府県警察のホームページにおいては、交通指導取締りを効果的に行う上で適当と認める情報を適宜抜粋して掲載しているものであると考えられること、交通指導取締りは悪質違反者の交通からの排除を通じて交通安全の確保を図るものであること、大阪府警察における交通指導取締りは基本的には本件行政文書に記載されている交通指導取締計画に基づいて行われていると認められることからしても、これらの審査請求人の主張は当を得ないものである。

(2)条例第8条第2項第2号該当性について

公共の安全と秩序を維持することは、府民全体の基本的な利益を擁護するため府に課された重要な責務であり、情報公開制度においても、これらの利益は十分に保護する必要がある。

特に、警察が保有している情報のうち、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのあるものについては、公開・非公開の判断において、高度の政策的な判断を伴う場合があり、また、その性質上、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的な判断を要することなどの特殊性が認められる。さらに、その性質上、犯罪の捜査等に関する情報については、他の都道府県警察と共有するものが多く、その取扱いに全国的な斉一性が求められることとなる。

こうした事情から、公安委員会と警察本部長が保有する「公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」情報に限定して、これに該当するかどうかについての実施機関の第一次的な判断を尊重することとしたのが本号の趣旨であり、本号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある情報」は公開しないことができる旨規定している。

これを、本件係争部分のうち、(1)において条例第8条第2項第1号に該当しないと判断した部分(取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である場合の「実施場所」欄中の「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分)についてみるに、これら部分に記載されている情報が、上述したとおり、公にすることにより当該若しくは同種の取締りの事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとは認められないものであることからすると、これら部分に記載されている情報が犯罪の予防等に支障を及ぼすおそれがあると認めるにつき相当の理由があるとは到底認められないものである。

以上のことから、本件係争部分のうち、取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行の「実施場所」欄中「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分に記載されている情報については、条例第8条第2項第2号にも該当しない。

4 結論

以上のとおりであるから、本件審査請求は、「別記様式第2号 交通指導取締計画(5月中)」の「実施場所」欄中、取締種別が「駐車」又は「夜間駐車」である行の「交差点名又は目標物」、「路線名」及び「方向」の部分の公開を求める部分について理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

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