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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第103号)
第一 審査会の結論
実施機関の決定は妥当である。
第二 異議申立ての経過
- 平成14年1月31日、異議申立人は、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により「H8.1~H14.1迄の大阪府事務職員A氏の職務義務免除願い 厚生事業と研修の内容が判るもの」の公開請求(以下「本件請求1」という。)をした。
- 同年2月14日、実施機関は、本件請求1に対応する行政文書として「H8.1~H14.1迄の大阪府事務職員A氏の職務義務免除願い 厚生事業と研修に係る職務専念義務免除願の添付参考資料(平成10年4月から平成14年1月分)」を特定の上、非公開決定(以下「本件決定1」という。)を行い、公開しない理由を次のとおり付して異議申立人に通知した。
(公開しない理由)
条例第9条第1号に該当する。
本件行政文書には、職務専念義務免除に係る活動に関する情報が記載されており、これらは個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。 - 同年2月26日、異議申立人は、実施機関に対し、条例第6条の規定により下記(1)~(4)の行政文書の公開請求を行った。
- (1)本件請求2
「H9.1~H14.1月迄の教育委員会事務局府立学校事務職員A氏に係わる人事給与データベースの日割日数、成績率、次期昇給、減額日、時間、職階、時間外、普通昇給、特別昇給の金額の判る電算データ、出力帳票も含む」 - (2)本件請求3
「H9.1~H14.1月迄の府立学校事務職員A氏に係わる減額に関する電算報告書」 - (3)本件請求4
「H9.1~H14.1月迄の府立学校事務職員の普通昇給、特別昇給の起案文書、決裁書」 - (4)本件請求5
「府立学校事務職員A氏に係わるH9~H11年迄の2年間に普通昇給、特別昇給、昇格により約5万円弱の昇給に係わる起案文書、決裁書(添付書類も含む)」
- (1)本件請求2
- 同年3月12日、実施機関は、本件請求2~5について、次のとおり、決定を行い、それぞれ理由を付して、異議申立人に通知した。
- (1)本件請求2についての部分公開決定(以下「本件決定2」という。)
- ア 対象行政文書及び公開しないことと決定した部分
- (ア)給与基本照会画面
- (公開しないことと決定した部分)
- 「給料」、「次期昇給」、「減額日・時間」の各項目に記載された内容
- (公開しないことと決定した部分)
- (イ)(12)職階履歴照会画面
- (公開しないことと決定した部分)
- 職員番号
- (公開しないことと決定した部分)
- (ウ)(15)給料表履歴照会画面
- (公開しないことと決定した部分)
- 職員番号
- 「発令日付」、「登録」、「削除」、「給料表」、「発令事由」の各欄
- (公開しないことと決定した部分)
- (エ)(32)給与減額履歴照会画面
- (公開しないことと決定した部分)
- 職員番号
- 「欠勤日付」、「登録」、「削除」、「欠勤時間数合計」、「日付」の各欄
- (公開しないことと決定した部分)
- (オ)(34)時間外手当履歴照会画面
- (公開しないことと決定した部分)
- 職員番号
- (公開しないことと決定した部分)
- (カ)(37)日割日数履歴照会画面
- (公開しないことと決定した部分)
- 職員番号
- 「発令日付」、「登録」、「削除」、「日割日数」の各欄
- (公開しないことと決定した部分)
- (キ)(38)「期末勤勉成績率履歴照会画面」
- (公開しないことと決定した部分)
- 職員番号
- 「基準日付」、「登録」、「削除」、「勤務手当成績率」、「期末特別手当減額率」の各欄
- (公開しないことと決定した部分)
- (ア)給与基本照会画面
- イ 公開しない理由
条例第9条第1号に該当する。
本件行政文書(非公開部分)には、職員個人の所得に関する情報等が記載されており、これらは、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
- ア 対象行政文書及び公開しないことと決定した部分
- (2)本件請求3についての公開請求拒否決定(以下「本件決定3」という。)
(公開請求を拒否する理由)
当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため。 - (3)本件請求4についての部分公開決定(以下「本件決定4」という。)
- ア 対象行政文書
「普通昇給、特別昇給の起案文書、決裁書(平成9年1月から平成14年1月分まで)」 - イ 公開しないことと決定した部分
普通昇給、特別昇給の起案文書、決裁書に添付されている昇給内申書及び発令書の一例のうち、「職員番号」、「勤務態様コード」、「勤務態様CD」、「昇給コースコード」、「昇給コースCD」、「平成4年4月1日現在」、「平成8年3月31日現在」、「平成8年4月1日現在」、「平成8年4月1日(切替)」、「平成8年7月1日(切替)」、「平成8年10月1日(切替)」、「平成9年3月31日現在」、「平成10年3月31日現在」、「平成10年4月1日現在」、「平成10年4月1日(切替)」、「 年7月1日(切替)」、「 年10月1日(切替)」、「平成11年3月31日現在」、「平成11年4月1日」、「平成11年4月1日(切替)」、「現給」、「発令事由コード」、「次期昇給」、「普通昇給発令」、「特別昇給発令」、「在職者調整発令」、「普昇後の次昇期コード」、「特昇後の次昇期コード」、「生年月日」、「年齢」、「初任給基準年齢」、「初任給加算号級」、「欠勤日数」、「摘要」、「備考」の各欄並びに「氏名」欄のうち、昇給の時期が記載されている部分。 - ウ 公開しない理由
条例第9条第1号に該当する。
本件行政文書(非公開部分)には、個人の所得等に関する情報が記載されており、これらの情報は個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。
- ア 対象行政文書
- (4)本件請求5についての公開請求拒否決定(以下「本件決定5」という。)
(公開請求を拒否する理由)
当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため。
- (1)本件請求2についての部分公開決定(以下「本件決定2」という。)
- 同年4月12日、異議申立人は、本件各決定を不服として、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により、実施機関に対し異議申立てを行った。
第三 異議申立ての趣旨
本件各請求に対応する文書の全面公開を求めるものである。
第四 異議申立人の主張
異議申立人の主張を総合すると概ね次のとおりである。
1 昇格及び昇給について
大阪府立B高等学校事務職員A氏は、法律違反と法令義務違反があったにもかかわらず、昇格及び期間短縮の特別昇給等により不当に給与の支給を受けている。昇格の取消し及び不当な給与の返還を求めるために公開請求した文書の全面公開を求める。
昇格させるために、人事記録の書類を新しく書き直させた可能性がある。A氏は、昭和49年名簿登録されて、昭和51年1月に採用された。採用にも不自然さが感じられる。昭和51年に人事記録を作成していれば、結婚後の姓名や住所の変更をしなければいけないが、A氏は、何の変更もせずに人事記録が新しく作成されている。
昇格は、勤務実態及び勤務評定等で決めることを給与規定の中で記載されている。実際は高度の技術を要していない初歩のパソコン講習を受けているA氏が、2年の間2回の昇格に至っている。昇格は違法である。ちなみに高等学校事務職員は給料の計算はしない。給料計算は大阪府庁、教育委員会の財務グループである。昇格の給与規定がある中で、無視して昇格させたのは違法である。
A氏は、事務職員の立場を利用して法律違反及び勤務実態や勤務評定不良にもかかわらず、給与規定を無視して2度の昇格をさせたのは違法であり、平成9年1月から平成11年7月までの2年6ヶ月の間に約5万6千円程の昇給は不当に支給されたものである。国民の税金が不当に支払われている。給与のアップについて理由と説明を求める。
2 通勤交通費について
通勤交通費の不正請求及び詐欺行為、他の法律違反(交通事故の無報告も含む)があるにもかかわらず、昇格させた。昇格は評価や勤務評定により決まるが、勤務実態が悪いにもかかわらず昇格させている。
大阪府立B高等学校に在職中に通勤交通費の不正請求が発覚するまで、約20年間にわたり通勤交通費の不正請求があった。通勤手当について、66万1840円の約半分の額しか返済していない。詐欺にあたるものと思われるので、全額返済を求める。定期券1枚の添付で約半分の金額しか返済しないで、前月に昇格になっていたことに疑問を感じる。通勤交通費不正請求発覚後、車通勤の届けを提出しているが、自動車通勤理由書は私文書偽造の可能性がある。交通事故報告をしていない。
3 出張について
出張命令簿によりかなり多くの出張をこなし、かなり遠方の出張もできている。
C社会保険事務所にかなりの出張がある。カラ出張の疑いを持っている。C社会保険事務所がD市役所に窓口を設けており、算定基礎届け審査の書類を渡して職場に戻れるにもかかわらず、宅着を利用している。他の出張にも宅着を頻繁に利用している。出張の宅着を頻繁に利用して早く帰宅した。近距離の出張費を不正請求した疑い、詐欺の疑い、カラ出張による裏金工作の疑いがある。
4 職務義務免除願いについて
職務義務免除願いを不正取得した。身体の不調により人間ドックに行くために職務義務免除願いをとっているが、取得理由に該当しない。年次休暇を利用すべきである。
5 出勤状況について
大阪府立B高等学校在職中、午前8時30分までに出勤していない日が多い。
介護のための休暇なのか疑問に思う。1週間のうち、2日から4日午後からおかずを炊いている臭いや実際にA氏が午後から頻繁に帰宅しているのを不自然に思った。朝、途中で逢う時や用事をして見かけたが、朝8時過ぎに出て○○市のB高等学校まで行くのに午前8時30分の時間には間に合わないと思う。E高等学校も同じである。帰宅時間もかなり早く、午後5時までには帰宅していた。なぜこのようなことがわかったり、よく逢ったかというと、家族の問題があり、早く用事をして出かけて、帰宅してから用事をしてまた出かけたりして毎日多忙だったからである。定時までの勤務をしていないのであれば、ボーナスも退職金もかわってくるものである。
6 名誉毀損について
異議申立人の名誉回復のためにも全面公開により事実確認をしなければ、異議申立人自身が不利益を被る。いやがらせの電話や無言電話は平成9年、平成10年、平成11年、平成12年、平成13年秋頃までかなりあった。このような電話の回数は平成13年秋頃から現在にかけて回数は減ったものの少しはある。
情報公開請求の段階でD市役所の部長に情報公開請求者名をA氏やF氏が漏洩したり、虚偽の発言をしたことにより私の名誉を傷つけられた。名誉毀損であり地方公務員法守秘義務違反である。D市役所の部長から、いやがらせの電話があったことでわかった。
A氏が夫(D市役所職員)を通じてD市役所職員のG部長から訴訟を望んでいる旨の電話があった。
D市役所職員のG部長から電話があり、「訴訟も何も起こさないで、情報公開請求するのはやめろ。ストーカー行為はやめろ」等の発言により精神的苦痛を受けた。A氏も訴訟を望んでいる旨の発言もあった。D市役所職員のG部長からいやがらせの電話がかかってきたのも、A氏が漏洩しなければ、おきなかったことであり、A氏に因果関係がある。
以上のとおり、給与規定を無視しての昇格及び勤務実態、職務義務免除願いの取得、年次休暇の取り方、勤務時間、勤務条件等は地方公務員法第14条に違反している。
A氏に不当に支給された給与は、国民の税金で支給されていることにより、条例第9条第1号に掲げるプライバシーにかかわる情報が記録されている場合であっても、公益上、特に必要があると認めるときは、請求者に対し、当該行政文書の全部又は一部を公開することができるとする条例第11条に該当するので全面公開を求める。
また、人権侵害や名誉毀損を受けていることにより全面公開してもらうことに正当性がある。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は、概ね次のとおりである。
1 服務・給与に関する制度について
(1)職務専念義務免除について
大阪府公立学校事務職員は、地方公務員法(昭和25年法律第261号、以下「地公法」という。)第35条により、法律又は条例に特別の定めがある場合を除き、職務専念義務を負うものである。この職務専念義務とは、全体の奉仕者としての地位に基づく公法上の一方的な責務であって、強い倫理的要請によるものであり、これが忠実に履行されることによって、地方公共団体の能率的で秩序ある事務の執行が確保され、住民の付託に応えることができるとされているものである。したがって、その免除についても、公務優先を原則として、合理的な理由がある場合に限定的に与えられている。
具体的には、地公法第35条に基づき規定された職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和26年大阪府条例第21号、以下「職免条例」という。)第2条に、以下の該当事例が列挙され、あらかじめ任命権者又はその委任を受けた者の承認を得て、職務専念義務の免除を受けることができることとなっている。
- 第1号 研修を受ける場合
- 第2号 厚生に関する計画の実施に参加する場合
- 第3号 その他人事委員会が定める場合
よって、職務専念義務の免除を受けようとする者は、上記免除理由に該当する理由を記載した「職務に専念する義務の免除に係る願」及び必要に応じてその説明を行う添付書類を任命権者又はその委任を受けた者に申し出て、その承認を受けることとなる。
(2)職員の給料表の概要
職員の給料は、職員の給与に関する条例(昭和40年大阪府条例第35号。以下「給与条例」という。)第3条に規定する11種類の給料表によって定められており、その職員の職種、勤務公署等に応じた給料表が適用される。指定職給料表を除く給料表にはそれぞれ4級から11級程度の級が定められており、職員の給与に関する規則(平成41年大阪府人事委員会規則第1号。(以下「給与規則」という。)第4条に規定する級別標準職務表に定められた職務とその複雑、困難及び責任の度合いに応じた級が適用される。また、級にはそれぞれ号給が定められており、その号給ごとに給料月額が定められている。
昇給とは同一級内において号給が上位に上がることをいい、昇格とは同一給料表内において上位の級に上がることをいう。
また、職員の給与等については、地公法第26条により毎年1回、大阪府人事委員会から知事に対して給与等の勧告がなされることとなっているが、これに伴って給料表の給料月額が改正される場合がある。これを一般的に給与改定という。
給料の調整額は給与条例第8条に規定されており、職務の複雑、困難その他の勤務条件が、同じ職務の級に属する他の職員と比べて著しく特殊である場合で、給料表に定める給料月額が適当でないと認められる場合に、その給料月額そのものを増額させるためのものである。府立学校及び市町村立学校に勤務する府費負担教職員に係る調整額については、同条の規定を受けて、学校職員の給料の調整額に関する規程(昭和41年1月17日教委職第38号職内第18号。以下「調整額規程」という。)を定めている。給料の調整額は調整額規程第2条第2項により、適用されている給料表及び級に対する「調整基本額」が定められており、この調整基本額に教育職員の場合については「2.5」を、教育職員以外の職員(例えば事務職員)については「1.25」(以下「調整数」という。)を乗じて得た額が給料の調整額となる。
(3)昇給制度の概要
職員の給料の昇給については普通昇給と特別昇給に大別される。普通昇給については給与条例第5条第5項に規定されている。また、特別昇給については同条第6項に規定されており、勤務成績が特に良好である場合で一定の定数内において実施する定数内特別昇給(給与規則第24条)、職員の任用に関する規則(昭和29年大阪府人事委員会規則第第1号)第2条第4号に規定する昇任をした場合に実施する昇任特別昇給(給与規則第24条の2)、へき地学校等への赴任に伴うへき地特別昇給(給与規則第24条の3)等がある。
実施機関においてはこれらの規定に基づき、普通昇給については普通昇給の実施方法及び内申事務手続要綱(以下「普通昇給実施要綱」という。)を、定数内特別昇給については学校職員の特別昇給定数内の特別昇給実施要綱(以下「定数内特別昇給実施要綱」という。)を定め、それぞれ各府立学校長及び各市町村教育委員会からの内申に基づいて昇給を実施しているところである。
ア 普通昇給の概要
普通昇給は、給与規則第23条の規定により、毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日に実施され、給与条例第5条第5項の規定により前回の昇給日から起算して12ヶ月(以下「最短昇給期間」という。)を良好な成績で勤務した場合に1号上位の号給に昇給することとなる。
ただし、病気休暇や病気休職、育児休業、欠勤等による勤務しなかった日が、現在の号給又は給料月額を受けるに至った日(以下「現給発令日」という。)から起算して月平均5日以上ある者については良好な成績とは認められないことから、普通昇給実施要綱第2項第1号アの規定により条例に規定する最短昇給期間では昇給できないこととしており、それらの勤務状況等に応じて昇給の時期を延伸させることとしている。また、現給発令日以降において地公法第29条に規定する懲戒処分を受けた者についても同様に良好な成績とは認められないことから、同号イの規定により昇給時期について少なくとも3ヶ月延伸させることとしている。
さらに、現給発令日から最短昇給期間を経過した昇給予定日(以下「次期昇給予定日」という。)において、現に休職又は育児休業中である者等についても、同項第2号の規定により最短昇給期間では昇給できないものとしている。
イ 定数内特別昇給の概要
定数内特別昇給は、定数内特別昇給実施要綱第5項の規定により毎年7月1日に実施される。特別昇給の実施方法は、同要綱第4項の規定により7月1日に1号給昇給させ、特別昇給前の次期昇給予定日を6月延伸させることとしている。
対象となるのは同項の規定により毎年度職員定数の30%とされており、勤務成績が特に良好であると判定される事実が認められた職員とされている。ただし、病気休暇や病気休職、育児休業、欠勤等により勤務しなかった日が、7月1日以前1年間において24日(病気休暇については2日を1日として、育児休業及び介護休暇については1.5日を1日としてそれぞれ換算する。)以上である者、懲戒処分を受け、当該処分の日から1年を経過しない職員については、勤務成績が特に良好であるとは認められないことから、定数内特別昇給実施要綱第6項の規定によりこの特別昇給は実施しないこととしている。
さらに7月1日において、現に休職、育児休業中である者等についても同項の規定によりこの特別昇給は実施しないこととしている。
(4)人事給与データベースの概要
人事給与データベース(以下「給与DB」という。)とは、給与条例を根拠として行われる給与支給事務のうち、給与計算及び給与支給関係帳票並びに統計資料の作成を本府独自に開発運用している給与システムにより一括処理するために必要な諸種の情報を教職員個人単位に管理しているものであり、時系列を持つデータについては、過去のデータをすべて登録している。
各個人の基礎的なデータについて、最新の情報を的確に機械に記憶させるため、毎月定例的に電算報告書により新規登録又は修正箇所の変更登録を行っている。
2 本件各決定の対象行政文書について
(1)本件決定1の対象行政文書について
本件決定1の対象行政文書は「H8.1~H14.1迄の大阪府事務職員A氏の職務義務免除願い 厚生事業と研修に係る職務専念義務免除願の添付参考資料(平成10年4月から平成14年1月分)」であり当該職員が参加する厚生事業又は研修の具体的内容が記載されており、実施機関が当該職務専念義務免除を承認するにあたり、第3の1の(1)で述べた職務専念義務免除を受けることができる項目に合致することを確認することができる資料である。
(2)本件決定2の対象行政文書について
本件決定2の対象行政文書は、給与DBのデータを表示している画面の写しである。
給与DBのデータについては、「給与基本照会画面」と「履歴照会画面」とから構成されている。それぞれの主な構成は次のとおりである。
- ア「給与基本照会画面」は、給与支給事務に関する個人の氏名、職階、給料などの最新情報が表示されており、「氏名」欄は、その者の最新氏名、「職階」欄は、発令された職階を登録するもので、最新の職階発令年月日及び職階コードとその名称、「給料」欄は、発令された給料表を登録するもので、最新の給料表と給料月額及びその発令年月日と昇給の種類を表す発令事由(例えば「24」は、普通昇給など)、「次期昇給」欄は、次の昇給期までの期間、「減額日時間」欄は、給与条例第28条の規定により減額対象となる場合に登録するもので、減額対象年月日とその時間数、「時間外」欄、「日割日数」欄及び「成績率」欄については項目だけをそれぞれ表示している。
- イ「履歴照会画面」は, 職階、給料表、給与減額、時間外手当、日割日数、期末勤勉成績率などの履歴内容が時系列ごとに新しい年月日のデータを古い年月日のデータの上に積み重ねるように表示されており、それぞれの構成は次のとおりである。
- (ア)「(12)職階履歴照会画面」欄は、職員番号、氏名、部局所属、発令日付、登録年月、削除年月日、職階コードとその名称が表示されている。
- (イ)「(15)給料表履歴照会画面」欄は、職員番号、氏名、部局所属、発令日付、登録年月、削除年月日、給料表とその名称、給料月額、発令事由コードとその名称が表示されている。
- (ウ)「(32)給与減額履歴照会画面」欄は、職員番号、氏名、部局所属、欠勤日付、登録年月、削除年月日、その月の1日単位の減額時間数とその時間数合計が表示されている。
- (エ)「(34)時間外手当履歴照会画面」欄は、職員番号、氏名、部局所属、時間外勤務日付、登録年月、削除年月日、給料表、給料の調整数、支出科目、夜間勤務時間数、休日勤務時間数、時間外勤務時間数、宿直回数、日直回数、半日直回数、土曜宿日回数が表示されている。
- (オ)「(37)日割日数履歴照会画面」欄は、給与条例第9条第6項又は職員の給与の支給方法等に関する規則(以下「支給方法に関する規則」という。)第6条の規定により給与等が日割計算となる月に指定休の取得方法により、実際の日割日数と給与システムが計算する日割日数が異なるときに登録するもので、職員番号、氏名、部局所属、発令日付、登録年月、削除年月、日割日数として要日数勤務、発令前日数、発令後日数が表示されている。
- (カ)「(38)期末勤勉成績率履歴照会画面」欄は、「期末手当、勤勉手当及び期末特別手当の支給について」(平成10年10月30日大阪府人事委員会第292号通知。以下「人事委員会通知」という。)第14、15の規定により勤務成績の優劣や懲戒処分の内容によって個人ごとに決められた勤勉手当成績率や期末特別減額率を登録するもので、職員番号、氏名、部局所属、基準日付、登録年月、削除年月日、勤勉手当成績率、期末特別手当減額率が表示されている。
(3)本件決定4の対象行政文書について
本件決定4の対象行政文書は「普通昇給、特別昇給の起案文書、決裁書(平成9年1月から平成14年1月分まで)」である。
これらの起案文書、決裁書には「起案用紙(様式第1号)」、「発令に関する通知文書」、「昇給内申書の一例」及び「昇給発令書の一例」が添付され、昇給時期によっては給与改定に伴う「給料の切替・昇給内申書の一例」及び「給料の切替・昇給発令書の一例」が添付されている。
- ア 「起案用紙(様式第1号)」はその昇給時期において昇給させる旨を伺い、教育委員会としての発令を決定するものである。「発令に関する通知文書」は各府立学校長及び各市町村教育委員会教育長あてに発令されたことを通知するものである。「昇給内申書」の一例、「昇給発令書」の一例、「給料の切替・昇給内申書」の一例及び「給料の切替・昇給発令書」の一例は実際に府立学校長又は市町村教育委員会から提出されたものの一例を複写の上、添付している。
- (ア)「昇給内申書」の表題部分には、いつ現在の昇給内申書であるかを示す「昇給時期」、どこの学校のものであるかを示す「所属コード」、所属長名及び公印(市町村立学校にあってはこれに加えて市町村教育委員会名及び公印)が記載されている。
「昇給内申書」の内申部分については、以下の各欄がある。- a 「点検」(昇給事務担当者が事務手続き上使用する。)
- b 「職員番号」
- c 「氏名」(氏名の他、異動前の所属コードや昇給の時期が記載されている。)
- d 「職名コード」(事務職員や教諭等の職名を表すコードが記載されている。)
- e 「職階コード」(係員級や課長級等の職階を表すコードが記載されている。)
- f 「職種コード」(一般行政職や栄養士等の職種を表すコードが記載されている。)
- g 「勤務態様コード」(病気休暇や病気休職等の職員の勤務態様を表すコードが記載されている。)
- h 「昇給コースコード」(統計資料に必要なコードであり、給料表及び級を表わす記号が記載されている。)
- i 「現給」「平成4年4月1日現在」(各昇給時期現在における給料、平成4年4月1日現在における給料が記載されている。(「現給」及び「平成4年4月1日現在」欄には、給料表、級及び号給が記載されている「表・級・号給」及びそれに対応する給料月額が記載されている「給料月額」、現給の発令日を表す「発令年月日」、給料の調整額を表す「調整額」又は「調整数」の各欄がある。))
- j 「発令事由コード」(当該昇給の種類を表すコードが記載されている。)
- k 「次期昇給短縮期間」(最短昇給期間に対してなんらかの調整がなされていることを表す記号が記載されている。
- l 「次期昇給期コード」「普昇後の次昇期コード」「特昇後の次昇期コード」(次期昇給予定日を表すコードが記載されている。)
- m 「普通昇給発令」、「特別昇給発令」(各昇給時期に普通昇給発令又は特別昇給発令があった場合にその発令内容が記載されている。(「普通昇給発令」、「特別昇給発令」欄には、それぞれ「表・級・号給」、「調整額」又は「調整数」、「給料月額」の各欄がある。))
- n 「採用年月日」(採用年月日が記載されている。)
- o 「割愛採用年月日」(割愛採用年月日が記載されている。)
- p 「生年月日」(生年月日が記載されている。)
- q 「年齢」(年齢が記載されている。)
- r 「初任給基準年齢」(人事交流により採用となった職員の初任給算出に係る年齢が記載されている。)
- s 「初任給加算号給」(人事交流により採用となった職員の初任給算出に係る加算号給が記載されている。)
- t 「欠勤日数」(現給発令日からの病気休暇や病気休職等により勤務しなかった日数が記載されている。)
- u 「摘要」(病気休暇や病気休職の期間等、昇給に関して特に注意すべき内容や異動前の所属コード、生年月日が記載されている。)
- (イ)「昇給発令書」は「昇給内申書」の複写となっており、基本的に同じ内容が記載されている。
- (ウ)「給料切替・昇給内申書」の表題部分には、支出手続きに係る区分が記載された「支出機関」、いつ時点で実施された(あるいはいつ時点まで遡って実施された)給料切替・内申書であるかを示す「切替時期」、どこの学校のものであるかを示す「所属コード」、所属長名及び公印(市町村立学校にあってはこれに加えて市町村教育委員会名及び公印)が記入されている。
「給料切替・昇給内申書」の内申部分には、以下の各欄がある。- a 「職員番号」
- b 「氏名」
- c 「職名コード」又は「職名CD」
- d 「職階コード」又は「職階CD」
- e 「勤務態様コード」又は「勤務態様CD」
- f 「昇給コースコード」又は「昇給コースCD」
- g 「平成8年3月31日現在」、「平成10年3月31日現在」、「平成11年3月31日現在」(切替時期の前日現在において発令されている給料等が記載されている。(これらの欄には「発令年月日」、「給料表」、「級」、「号給」が記載されている。))
- h 「平成8年4月1日」、「平成10年4月1日」、「平成11年4月1日」(切替日現在の給料等が記載されている。(これらの欄には「級」、「号給」、「調整率」又は「調整数」、「給料月額(百円)」が記載されている。))
- i 「平成8年4月1日(切替)」、「平成8年7月1日(切替)」、「平成8年10月1日(切替)」、「平成10年4月1日(切替)」、「 年7月1日(切替)」、「 年10月1日(切替)」、「平成11年4月1日(切替)」、「平成11年7月1日(切替)」、「平成11年10月1日(切替)」(給料の切替に伴って発令された発令事項が記載されている。(これらの欄には「既発令」の「級・号給・給料月額(百円)」、「追加発令」の「級」、「号給」、「給料月額(百円)」の欄がある。))
- j 「次期昇給」
- k 「備考」(病気休暇や病気休職の期間等、昇給に関して特に注意すべき内容や発令事由コードが記載されている。)
- (エ)「給料切替・昇給発令書」は「給料切替・昇給内申書」と基本的に同一の内容が記載されている。
- (ア)「昇給内申書」の表題部分には、いつ現在の昇給内申書であるかを示す「昇給時期」、どこの学校のものであるかを示す「所属コード」、所属長名及び公印(市町村立学校にあってはこれに加えて市町村教育委員会名及び公印)が記載されている。
3 本件各決定の妥当性について
- (1)条例第9条第1号においては、「個人の(省略)身体的特徴、健康状態、家族構成、(省略)住所、(省略)所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」が「記録されている行政文書を公開してはならない。」と規定されている。
また、条例第12条においては、「公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、第10条各号に掲げる情報を公開することとなるときは、実施機関は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該公開請求を拒否することができる。」と規定されている。 - (2)本件決定1、2及び4における非公開部分及び本件決定3及び5の公開請求拒否決定を行った請求内容は、氏名が明らかになっている職員に関する給与等の情報であることから、条例第9条第1号の「個人の・・・身体的特徴、健康状態、家族構成、住所、財産、所得等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもの」に該当する。そこで、以下、本件決定1、2及び4における非公開部分並びに本件決定3及び5の公開請求拒否決定をした公開請求に係る行政文書の存在に関する情報が、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当することについて述べる。
- ア 本件決定1について
H8.1~H14.1迄の大阪府事務職員A氏の職務義務免除願い厚生事業と研修に係る職務専念義務免除願の添付参考資料(平成10年4月から平成14年1月分)(平成14年2月14日教委職人第509号 非公開決定)
職務専念義務免除願の添付資料は、当該職員が参加した厚生活動の内容が具体的に明らかになる情報である。
厚生計画への参加は、当該職員の日頃の問題意識や関心などに基づいて選択されるものであることから、この職務義務免除願及び添付資料には、願出者の個人的な問題意識や関心の対象、健康状態等といったプライバシーに関する情報が含まれる。これらの情報は、たとえ公務員に関する情報といえども、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報に該当するものである。 - イ 本件決定2について
H9.1~H14.1迄の教育委員会事務局府立学校事務職員A氏に係わる人事給与データベースの日割日数、成績率、次期昇給、減額日、時間、職階、時間外、普通昇給、特別昇給の金額の判る電算データ、出力帳票も含む。(平成14年3月12日教委職企第280号 部分公開決定)- (ア)「給与基本照会画面」のうち非公開とした部分について
- a「給料」欄に記載された部分について
「給料」欄のうち、「給料表」と「給料月額」は、給与条例でいう給与等に関する情報であり、給料表ごとにその金額が定められていることから、公開すると個人の所得額の一部が明らかになる情報であり、「給料の発令年月日」と「発令事由」は、昇給経過が明らかになり、公開すると病気休暇などの昇給できない事由の有無がわかることとなり、ひいては、個人の健康状態などが推測され得る情報であることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - b「次期昇給」欄に記載された部分について
「次期昇給」欄は、次の予定する昇給日を示すこととなる情報であることから、公開すると病気休暇などの昇給できない事由の有無がわかることとなり、ひいては、個人の健康状態などが推測され得る情報であることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - c「減額日時間」欄に記載された部分について
「減額日時間」欄は、勤務時間条例第16条による介護休暇の取得により、その勤務しない時間による減額時間等が表示されており、公開すると家人に介護を要する者が存在することの有無がわかり、家族構成や生活状況が推測される情報と考えられることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- a「給料」欄に記載された部分について
- (イ)「履歴照会画面」のうち非公開とした部分について
- a「(12)職階履歴照会画面」欄に記載された部分について
「職員番号」については、公立学校共済組合員証等にも使用されており、公開すると悪用される可能性があり、個人の財産を脅かす情報にもなり得ると考えることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - b「(15)給料表履歴照会画面」欄に記載された部分について
「職員番号」については、上記aで述べたとおりである。
「給料表」と「給料月額」は、給与条例でいう給与等に関する情報であり、給料表ごとにその金額が定められていることから公開すると個人の所得額の一部が明らかになる情報である。また、「登録」「削除」は、「給料表」及び「発令事由」を機械登録又は削除する年月日であり、「発令年月日」と「発令事由」は、昇給経過が明らかになり、公開すると病気休暇などの昇給できない事由の有無がわかり、ひいては、個人の健康状態などが推測され得る情報であることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - c「(32)給与減額履歴照会画面」欄に記載された部分について
「職員番号」については、上記aで述べたとおりである。
「欠勤日付」、「登録」、「削除」、「欠勤時間数合計」、「日付」の各欄は、勤務時間条例第16条による介護休暇の取得等により、その勤務しない時間等が表示されており、これらを公開すると家人に介護を要する者が存在することの有無など明らかになるおそれがあり、家族構成や生活状況が推測される情報と考えられることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - d「(34)時間外手当履歴照会画面」欄に記載された部分について
「職員番号」については、上記aで述べたとおりである。 - e「(37)日割日数履歴照会画面」欄に記載された部分について
「職員番号」については、上記aで述べたとおりである。
「発令日付」、「登録」、「削除」、「日割日数」の各欄は、給与等が日割計算となる月に登録する可能性があるが、日割計算が発生するのは、支給方法に関する規則第6条の規定により、育児休業、90日を超える病気休暇、休職発令された場合であるため、当該情報を公開すると日割計算の発生の有無がわかり、個人の健康状態、家族状況が推測される情報であることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - f「(38)期末勤勉成績率履歴照会画面」欄に記載された部分について
「職員番号」については、上記aで述べたとおりである。
「基準日付」、「登録」、「削除」、「勤勉手当成績率」、「期末特別手当減額率」の各欄は、人事委員会通知第14、15の規定により勤務成績や懲戒処分の内容によって個人ごと異なるものであり、公開すると勤務成績の優劣及び懲戒処分の有無や内容が明らかになることから「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- a「(12)職階履歴照会画面」欄に記載された部分について
- (ア)「給与基本照会画面」のうち非公開とした部分について
- ウ 本件決定3について
H9.1~H14.1月迄の府立学校事務職員A氏に係わる減額に関する電算報告書(平成14年3月12日教委職企第280号?開請求拒否決定)
「減額に関する電算報告書」は、勤務時間条例第16条による介護休暇の取得や欠勤により、その勤務しない時間等を機械登録するためのものである。異議申立人の請求は「H9.1~H14.1月迄の府立学校事務職員A氏に係わる減額に関する電算報告書」であり、これらに係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、当該職員の家人に介護を要する者が存在することなどが明らかになるおそれがあり、家族構成や生活状況が推測される情報を公開することとなる。よって、請求に係る行政文書の存在に関する情報は、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。 - エ 本件決定4について
普通昇給、特別昇給の起案文書、決裁書(平成9年1月から平成14年1月分まで)(平成14年3月12日教委職企第281号 部分公開決定)- (ア)「職員番号」は、上記イ(イ) aで述べたとおりである。
- (イ)「勤務態様コード」、「勤務態様CD」は病気休暇や病気休職等、職員の勤務態様を管理する情報が記載されており、公開することによって当該職員の健康状態を公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (ウ)「昇給コースコード」、「昇給コースCD」は当該職員の給料表及び級を表わす記号であることから、公開することによりその者の給与の額が推測されることなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (エ)「平成4年4月1日現在」、「平成8年3月31日現在」、「平成8年4月1日」、「平成8年4月1日(切替)」、「平成8年7月1日(切替)」、「平成8年10月1日(切替)」、「平成9年3月31日現在」、「平成10年3月31日現在」、「平成10年4月1日」、「平成10年4月1日(切替)」、「 年7月1日(切替)」、「 年10月1日(切替)」、「平成11年3月31日現在」、「平成11年4月1日」、「平成11年4月1日(切替)」、「現給」、「普通昇給発令」、「特別昇給発令」「在職者調整発令」については、それぞれの時点における給料表、級及び号給が記載されており、公開することにより職員の給料月額を公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (オ)「発令事由コード」は当該昇給の種類が記載されており、公開することによりその時点において「昇給した」という事実を公開することとなる。また、普通昇給は一般的には12ヶ月を良好な成績で勤務した場合に1号給昇給し、病気休暇や病気休職等の日数が一定以上あった場合や懲戒処分を受けた場合には昇給が延伸することは、1の(3)のアにおいて述べたとおりであるが、この「発令事由コード」を公開して、仮に12ヶ月で昇給していなかった場合には、病気休暇や病気休職等若しくは懲戒処分があったことが推測されることとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (カ)「次期昇給短縮期間」については、何らかの理由で次期昇給に対する短縮又は延伸となった期間が記載されているが、これには特別昇給や昇格等による場合のほか、病気休暇や病気休職等により延伸となった場合や懲戒処分を受けたことにより延伸となったことが記載されている。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (キ)「調整率%」、「調整数」は、給料の調整額が支給されている者に対する調整数が記載されている。職種によっては(例えば教諭)その職種であるだけで適用されている給料表及び級がわかってしまうが、この場合、調整数を公開することにより給料の調整額が明らかになってしまうこととなり、ひいてはその者の所得に関する情報を公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (ク)「次期昇給期コード」、「次期昇給」、「普昇後の次昇期コード」、「特昇後の次昇期コード」は、次回の昇給時期を具体的に示す情報が記載されており、公開することにより「いつ昇給する」予定であるということを公開することとなる。また、これらのコードには58歳を超えたことにより昇給停止となることを示すものもあり、公開することによりその職員の年齢が推測されることとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (ケ)「生年月日」、「年齢」はまさに職員の年齢に関する情報が記載されていることから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (コ)「初任給基準年齢」は人事交流により採用となった職員のうち、年齢により初任給を決定される者に係る割愛採用年月日時点の年齢が記載されており、公開することによりその者の年齢を公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (サ)「初任給加算号給」は人事交流により採用された職員の初任給基準に対する加算号給が記載されており、その者の初任給があきらかになる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (シ)「欠勤日数」は、現給発令日からの病気休暇や病気休職等の日数が記載されており、公開することによりその者の健康状態を公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (ス)「摘要」、「備考」は病気休暇や病気休職の期間等、昇給に関して特に注意すべき内容や生年月日が記載されており、公開することにより職員の健康状態や所得に関する情報や年齢を公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- (セ)「氏名」欄のうち、昇給の時期が記載されている部分については、特別昇給が実施される年度が記載されており、公開することにより「いつ特別昇給する」予定であるということを公開することとなる。このことから、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当する。
- オ 本件決定5について
府立学校事務職員 A氏に係わるH9~H11年迄の2年間に普通昇給、特別昇給、昇格により約5万円弱の昇給に係わる起案文書、決裁書(添付書類も含む)(平成14年3月12日教委職企第282号 公開請求拒否決定)
「5万円弱の昇給」ということはまさに個人の所得や勤務成績等に関わる情報である。異議申立人の請求は「約5万円弱の昇給に係わる起案文書、決裁書」であり、これらに係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、個人の所得や勤務成績等に関わる情報を公開することになる。
以上のとおりであるから、本件決定1、2及び4における非公開とした部分は、条例第9条第1号に該当する。
また、本件請求3及び5に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため、条例第12条の規定により当該公開請求を拒否したものである。
- ア 本件決定1について
4 公益上の理由による公開について
異議申立人は、条例第11条に規定する公益上の理由による公開を求めている。条例第11条の「公益上特に必要があると認められるとき」とは、本件においては条例第9条第1号によって保護される利益と公益上の必要性とを個別具体的に比較衡量し、公益上特に公開する必要があると認められる場合にのみ公開することができるのである。本件処分において非公開とした部分及び公開請求拒否決定の請求に係る行政文書の存在に関する情報は、上記のとおり、条例第9条第1号に該当する情報であり、実施機関に対しては、個人のプライバシーに関する情報は一旦公開されると当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに十分配慮し、個人の権利利益を不当に侵害することのないよう、特に慎重に取り扱う責務が課せられており、条例第9条第1号による保護法益を上回る公益上の特段の事情、必要性が現に存するとは認められない。
5 結論
以上のとおり、本件についての実施機関の決定は、条例の趣旨を踏まえたものであり何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保するとともに、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けるとともに、第12条において、公開請求に係る文書の存否を答えるだけで、これら適用除外事項に該当する情報を明らかにすることになる場合には、当該公開請求を拒否することができる旨定めているのであり、実施機関は、請求された情報がこれらの規定に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。
2 条例第9条第1号及び第12条について
(1)条例第9条第1号について
条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。
本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。
同号は、
- ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
- イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
- ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる
情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。
そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。
また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。
(2)条例第12条について
本条は、「公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、第10条第1項各号(第8条第1項各号又は第9条各号の規定により公開しない情報)又は第2項各号(第8条第2項各号又は第9条各号の規定により公開しない情報)に掲げる情報を公開することとなるときは、」当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該公開請求を拒否することができる旨規定している。
本条による公開請求の拒否は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かも明らかにしないというものであり、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねないが、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによる権利利益の侵害や事務執行の支障等が具体的かつ客観的に認められる場合には、本条によって公開請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否することができるものである。
3 本件決定1についての判断
(1)本件決定1の対象行政文書について
実施機関の説明及び本件決定1の対象行政文書を見分した結果等により、以下のとおり認められる。
大阪府公立学校事務職員は、地公法第35条により、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならないとする職務専念義務を負っている。
この「法律又は条例に特別の定がある場合」として、職免条例は、研修の受講、厚生に関する計画の実施への参加、その他人事委員会が定める場合には、職員は、あらかじめ任命権者又はその委任を受けた者の承認を得て、その職務に専念する義務を免除されることができると規定しており、この規定に基づき、職務専念義務の免除を受けようとする場合には、職員は、「職務に専念する義務の免除に係る願」及びその説明を行う添付書類を任命権者又はその委任を受けた者に提出し、その承認を受けることとされている。
本件決定1の対象行政文書は、職免条例の規定に基づく職務専念義務の免除を受けるため、特定の職員が実施機関に提出した職務専念義務免除願において、職免条例に規定されている事由に該当することを証するために添付された文書である。当該職員が受講する研修又は参加する厚生事業等の具体的な内容が記載されており、本件決定1においては、当該対象行政文書の全部が非公開とされている。
(2)本件決定1の妥当性について
本件請求1は、職員個人を特定した公開請求であり、本件決定1の対象行政文書が2(1)ア及びイの要件に該当することは明らかである。そこで、本件決定1の対象行政文書が、2(1)ウの要件に該当するか否かを検討するに、本件決定1の対象行政文書には、上述のとおり、職務専念義務免除の理由である研修の受講、厚生に関する計画の実施への参加などの具体的な内容が記載されている。また、これらの研修等は、職務専念義務を免除して参加させるということの性質上、当該職員の本来の職務とは直接のかかわりのないものであり、厚生に関する計画の実施に参加する場合など職員個人の興味や関心に基づいて活動するものが含まれる。
以上のことからすると、本件決定1の対象行政文書に記録されている情報は、当該職員の個人的な興味や関心をうかがい知れる情報であって、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものであり、2(1)ウの要件にも該当する。
したがって、本件決定1において、実施機関が、条例第9条第1号の規定により、対象行政文書の全部を公開しないこととしたことは妥当である。
4 本件決定2についての判断
(1)職員の給料について
実施機関の説明等により、以下のとおり認められる。
ア 給料表、級、号給について
職員の給料月額は、給与条例第3条に規定する11種類(当時)の給料表によって定められており、その職員の職種、勤務公署等に応じた給料表が適用される。指定職給料表を除く給料表にはそれぞれ4から11程度の級が定められており、給料規則第4条に規定する級別標準職務表に定められた職務とその複雑、困難及び責任の度合いに応じた級が適用される。また、級にはそれぞれ多数の号給が定められており、その号給ごとに給料月額が定められている。
イ 職員の給料月額が増額される事由について
職員の給料月額が増額される事由としては、(ア)給料表の改定、(イ)昇格、(ウ)昇給の3つがある。
給料表の改定は、地公法第26条に規定する人事委員会の勧告などに基づいて、給料表が改定されるのに伴い、各号給ごとに給料月額が増額されることがあるものである。
昇格は、同一給料表内において上位の級に上がることに伴い、給料月額が増額されるものである。当該職員の職階や職務に要求される知識及び経験の程度が上がる場合に、上位の級に格づけられる。
昇給については普通昇給と特別昇給に大別され、普通昇給については給与条例第5条第5項、特別昇給については同条第6項に規定されている。特別昇給には、勤務成績が特に良好である場合で一定の定数内において実施する定数内特別昇給(給料規則第24条)、職員の任用に関する規則(昭和29年大阪府人事委員会規則第第1号)第2条第4号に規定する昇任をした場合に実施する昇任特別昇給(給料規則第24条の2)等がある。
実施機関においては、これらの規定に基づき、普通昇給については普通昇給実施要綱を、定数内特別昇給については定数内特別昇給実施要綱を定め、それぞれ各府立学校長及び各市町村教育委員会からの内申に基づいて昇給を実施している。
普通昇給は、原則として、前回の昇給日から起算して12ヶ月(最短昇給期間)を良好な成績で勤務した場合に1号上位の号給に昇給するものであり、毎年1月1日、4月1日、7月1日、10月1日に実施されるが、病気休暇や病気休職、育児休業、欠勤等により勤務しなかった日が、現給発令日から起算して月平均5日以上ある者については、それらの勤務状況等に応じて昇給の時期を延伸させることとしている。現給発令日以降に懲戒処分を受けた者についても、少なくとも3ヶ月延伸させることとしているほか、昇給予定日において、現に休職又は育児休業中である者等についても、最短昇給期間では昇給できないものとしている。
定数内特別昇給は、勤務成績が特に良好であると判定される事実が認められた職員について、職員定数の30%を対象に、毎年7月1日に実施されている。実施方法は、7月1日に1号給昇給させ、特別昇給前の次期昇給予定日を6月延伸させるというものであるが、病気休暇や病気休職、育児休業、欠勤等により勤務しなかった日が、7月1日以前1年間において24日(病気休暇については2日を1日として、育児休業及び介護休暇については1.5日を1日としてそれぞれ換算する。)以上である者、懲戒処分を受け、当該処分の日から1年を経過しない職員については、この特別昇給は実施しないこととしている。さらに、7月1日において、現に休職、育児休業中である者等についても、この特別昇給は実施しないこととしている。
ウ 給料の調整額について
給料の調整額は、給与条例第8条に規定されており、職務の複雑、困難その他の勤務条件が同じ職務の級に属する他の職員と比べて著しく特殊である場合で、給料表に定める給料月額が適当でないと認められる場合に、その給料の月額を増額するものである。府立学校及び市町村立学校に勤務する府費負担教職員に係る調整額については、同条の規定を受けて、実施機関が調整額規程を定めている(現在は、その後制定された「職員の給料の調整額に関する規則」(平成15年大阪府人事委員会規則第20号)により、定められている。)。調整額規程においては、養護学校等に勤務する教職員に、給料の調整額を支給することとしており、調整額規程第2条第2項により、適用されている給料表及び級に応じて定められている調整基本額に調整数(教育職員以外の職員(例えば事務職員)については「1.25」)を乗じて得た額が給料の調整額となる。
(2)本件決定2の対象行政文書について
実施機関の説明及び本件決定2の対象行政文書を見分した結果等により、以下のとおり認められる。
人事給与データベースは、給与支給事務のうち、給与計算及び給与支給関係帳票並びに統計資料の作成を本府独自に開発運用している給与システムにより一括処理するために必要な諸種の情報を教職員個人単位に管理しているものであり、時系列を持つデータについては、過去のデータがすべて登録されている。
各個人の基礎的なデータについて、最新の情報を的確に機械に記憶させるため、毎月定例的に電算報告書により新規登録又は修正箇所の変更登録を行っている。
人事給与データベースは、「給与基本照会画面」及び各種の「履歴照会画面」から構成され、給与事務担当者は、このデータベースを活用して給与事務を実施している。
本件決定2の対象行政文書は、この人事給与データベースの画面の写しであり、本件決定2においては、次の部分が非公開とされている。
ア 「給与基本照会画面」
「給料」(「給料表コード・級・号給」、「給料月額」、「発令年月日」、「発令事由コード」が記載されている。)、「次期昇給」、「減額日・時間」の各欄
イ 各種の「履歴照会画面」
- (ア)各画面の「職員番号」
- (イ)「(15)給料表履歴照会画面」の「発令日付」、「登録」、「削除」、「給料表(「給料表コード・級・号給」も記載されている。)」、「給料月額」、「発令事由」の各欄
- (ウ)「(32)給与減額履歴照会画面」の「欠勤日付」、「登録」、「削除」、「欠勤時間数合計」、「日付」の各欄
- (エ)「(37)日割日数履歴照会画面」の「発令日付」、「登録」、「削除」、「日割日数」の各欄
- (オ)「(38)期末勤勉成績率履歴照会画面」の「基準日付」、「登録」、「削除」、「勤勉手当成績率」、「期末特別手当減額率」の各欄
(3)本件決定2の妥当性について
本件請求2は、職員個人を特定した公開請求であり、本件決定2の対象行政文書が2(1)ア及びイの要件に該当することは明らかである。そこで、本件決定2の対象行政文書のうち非公開部分に記録されている情報が、2(1)ウの要件に該当するか否かについて、検討する。
ア 「給与基本照会画面」に係る非公開部分について
「給料」欄に表示されている情報のうち「給料表コード・級・号給」と「給料月額」は、当該職員の給料に関する基本的な情報であり、上述のとおり、給料表ごとに具体的な給料月額が定められていることから、公にすることにより、職員個人の収入の主要部分が明らかになる情報である。また、「給料」欄に記載されている情報のうち「発令年月日」及び「発令事由」並びに「次期昇給」欄に記載されている情報は、昇給の経過及び次の昇給予定を明らかにする情報であるとともに、病気休暇などの昇給できない事由の有無、ひいては、個人の健康状態がわかる場合のある情報でもある。
「減額日・時間」欄は、勤務時間条例第16条による介護休暇の取得により、その勤務しない時間による減額時間等が表示されており、公開することにより、家人に介護を要する者が存在することの有無がわかり、職員個人の家族や生活の状況が推測される情報である。
イ 各種の「履歴照会画面」に係る非公開部分について
(ア)各画面に共通する「職員番号」について
職員番号は、大阪府の職員が、個人の認証、人事給与、決裁等の業務の基本的な番号として使用しており、共済組合員証の番号の一部にもなっていることから、公にすることにより、職員個人の職務の正常な遂行や取引の安全等を害するおそれがある。
(イ)「(15)給料表履歴照会画面」の非公開部分について
「給料表」及び「給料月額」の欄に表示されている情報は、当該職員に適用される給料表の名称及びコード番号並びに級・号給と給料月額であり、これらの情報が、公にすることにより、職員個人の収入の主要部分が明らかになる情報であることについては、アで述べたとおりである。
「登録」及び「削除」の欄に表示されている情報は、「給料表」及び「発令事由」を登録又は削除する年月日であって、アで述べた「発令年月日」及び「発令事由」と同じ情報である。これらの情報が、公にすることにより、当該職員の昇給の経過が明らかとなる情報であるとともに、病気休暇などの昇給できない事由の有無、ひいては、個人の健康状態がわかる場合のある情報でもあることについては、アで述べたとおりである。
(ウ)「(32)給与減額履歴照会画面」の非公開部分について
「欠勤日付」、「登録」、「削除」、「欠勤時間数合計」及び「日付」の各欄には、勤務時間条例第16条による介護欠勤の取得等により、勤務しない時間等が表示されており、これらを公にすると、介護を要する家族の有無が明らかとなり、個人の家族や生活の状況が推測されることとなるおそれがある。
(エ)「(37)日割日数履歴照会画面」の非公開部分について
「発令日付」、「登録」、「削除」及び「日割日数」の各欄には、給与等が日割計算となる月にその日割日数等が表示されるが、日割計算が発生するのは、支給方法に関する規則第6条の規定により、育児休業、90日を超える病気休暇、休職発令された場合であるため、これを公にすると日割計算の発生の原因となる事由の有無がわかり、個人の健康状態や家族の状況が推測されることとなるおそれがある。
(オ)「(38)期末勤勉成績率履歴照会画面」の非公開部分について
「基準日付」、「登録」、「削除」、「勤勉手当成績率」及び「期末特別手当減額率」の各欄には、勤務成績が良好な職員と異なる勤勉手当成績率が適用される場合又は懲戒処分を受けたため期末特別手当が減額される場合に該当の事項が表示されるが、「勤勉手当成績率」及び「期末特別手当減額率」は、人事委員会通知第14及び15に規定するところにより、勤務成績の優劣や懲戒処分の内容に応じて個人ごとに異なるものであり、これらを公にすることにより、当該職員の勤務成績の優劣や懲戒処分の有無及び内容が明らかになるおそれがある。また、「基準日付」、「登録」及び「削除」の各欄に表示される情報については、勤務成績が良好な職員以外の職員についてのみ該当の事項が表示されるものであるから、同様に、当該職員の勤務成績の優劣や懲戒処分の有無及び内容が明らかになるおそれがあるものである。
以上のことからすると、本件決定2の対象行政文書のうち非公開部分に記録されている情報は、いずれも公にすることにより、職員個人の収入、健康状態、家族又は生活の状況、勤務成績、懲戒処分歴などが明らかとなり又は明らかとなるおそれのある情報であり、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるから、2(1)ウの要件に該当する。
したがって、実施機関が、本件決定2において、条例第9条第1号の規定に該当するとして、これら非公開部分を公開しないこととしたことは妥当である。
5 本件決定3についての判断
実施機関は、本件請求3に係る行政文書は、当該文書があるかどうかを答えるだけで条例第9条第1号に該当する情報を公開することになり、条例第12条に該当すると主張しているので、検討する。
本件請求3は、特定の職員の給料の減額に関する電算報告書の公開を求めるものである。
職員の給料の減額については、給与条例第28条に、職員が正規の勤務時間中に勤務しないときは、勤務時間条例第12条に規定する休暇が与えられた場合その他勤務しないことにつき特に承認があった場合を除くほか、その勤務しない時間1時間について、勤務1時間当たりの給与額を減額するとの規定がある。また、職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例第16条第3項に規定する介護休暇により給与額を減額する場合もある。
このように、給料の減額は、職員の欠勤や介護休暇の取得などがあった場合におこるものであるから、本件請求3に係る行政文書の存否を明らかにするだけで、当該職員の勤務の実態や介護を要する家族の有無などの状況などが明らかになる。このような情報は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められ、条例第9条第1号に該当するものであるから、実施機関が、本件決定3において、条例第12条に基づき、請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否することとしたことは妥当である。
6 本件決定4についての判断
(1)本件決定4の対象行政文書について
実施機関の説明及び本件決定4の対象行政文書を見分した結果等により、以下のとおり認められる。
本件決定4の対象行政文書は、平成9年1月から平成14年1月分までの府立学校及び府内市町村立学校の教職員に係る普通昇給及び特別昇給の決裁文書である。
これらの決裁文書には「起案文」と「発令に関する通知文書」のほか、「昇給内申書の一例」及び「昇給発令書の一例」が添付されており、昇給時期によっては給与改定に伴う「給料の切替・昇給内申書の一例」及び「給料の切替・昇給発令書の一例」も添付されている。
「起案文」はその昇給時期において昇給させる旨を伺い、教育委員会としての発令を決定するものである。「発令に関する通知文書」は各府立学校長及び各市町村教育委員会教育長あてに発令されたことを通知するものである。「昇給内申書の一例」、「昇給発令書の一例」、「給料の切替・昇給内申書の一例」及び「給料の切替・昇給発令書の一例」は、実際に府立学校長又は市町村教育委員会から提出されたものの一例を複写の上、添付している。
本件決定4において公開しないこととされた部分は、普通昇給、特別昇給の起案文、決裁書に添付されている昇給内申書及び発令書の一例のうち、次の部分である。
- ア「職員番号」
- イ「勤務態様コード」、「勤務態様CD」
- ウ「昇給コースコード」、「昇給コースCD」
- エ「発令年月日」
- オ「給料表」、「級」、「号級」
- カ「発令事由コード」
- キ「給料月額」
- ク「調整額」又は「調整数」
- ケ「次期昇給短縮期間」
- コ「調整率%」、「調整数」
- サ「次期昇給期コード」、「次期昇給」
- シ「在職者調整発令」、「普昇後の次昇期コード」、「特昇後の次昇期コード」
- ス「生年月日」「年齢」
- セ「初任給基準年齢」、「初任給加算号給」
- ソ「欠勤日数」、「摘要」、「備考」
- タ「氏名」欄中、昇給の時期が記載されている部分
(2)本件決定4の妥当性について
本件決定4においては、職員の氏名は公開されており、その昇給に関する情報が記録されている本件決定4の対象行政文書が2(1)ア及びイの要件に該当することは明らかである。そこで、本件決定4の対象行政文書のうち非公開部分に記録されている情報が、2(1)ウの要件に該当するか否かについて、検討する。
- ア「職員番号」が、公にすることにより、職員個人の職務の正常な遂行や取引の安全などを害するおそれがある情報であることについては、4(3)イ(ア)で述べたとおりである。
- イ「勤務態様コード」、「勤務態様CD」の各欄には、病気休暇や病気休職等、職員の勤務態様を管理する情報が記載されており、公にすることにより、当該職員の健康状態等が明らかとなる。
- ウ「昇給コースコード」、「昇給コースCD」は当該職員の給料表及び級を表わす記号であることから、公にすることにより、その給料月額が推測されることとなるおそれがある。
- エ「現給」、「普通昇給発令」、「特別昇給発令」、「在職者調整発令」及び「平成○月○日現在」の各欄には、給料表、級及び号給が記載されており、これらの情報が、公にすることにより、給与所得者である職員個人の収入の主要部分が明らかとなる情報であることは、4(3)アで述べたとおりである。
- オ「調整率%」、「調整数」の各欄は、本来は、給料の調整額が支給されている者に対する調整数(平成9年4月1日付け昇給分までは調整率。以下同じ。)が記載される欄である。調整数は、職種(校長、教頭、教諭、事務職員等)及び勤務箇所(養護諸学校、養護学級)に応じて、調整額規程により一義的に定まるものであり、職員の職種及び勤務箇所の情報が、一般に公開される情報であることからすると、調整数自体は、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められる情報であるとは認められない。しかしながら、「調整率%」、「調整数」の各欄の記載内容を見分したところ、昇給期間の延伸又は短縮に係る月数等が手書きで記入されている箇所が少なからずあることが確認された。昇給期間の延伸は、4(1)イで述べたとおり、病気休暇や病気休職等の日数が一定以上あった場合や懲戒処分を受けた場合にも行われるものであり、これらの記載を公にすることにより、病気休暇、病気休職等又は懲戒処分を受けたことがわかり、当該職員の健康状態や懲戒処分歴が明らかとなるおそれがある。本来の記載事項である調整数が記載されている欄や空白となっている欄についても、これを公にすると、非公開とされた欄に昇給延伸の月数等の情報が記載されていることが推測されることとなり、昇給延伸等の月数が記載された欄を公にするのと同様の結果となるおそれがある。
- カ「発令事由コード」の欄には当該昇給の種類が記載されており、これを公にすることにより、その時点において「昇給した」という事実及び当該昇給の種類を明らかにすることとなる。また、普通昇給は一般的には12ヶ月を良好な成績で勤務した場合に1号給昇給し、病気休暇や病気休職等の日数が一定以上あった場合や懲戒処分を受けた場合には昇給期間が延伸されることとなるため、この「発令事由コード」を公にすると、仮に12ヶ月で昇給していなかった場合には、病気休暇、病気休職等又は懲戒処分が受けたことがわかり、当該職員の健康状態や懲戒処分歴が明らかとなるおそれがある。
- キ「次期昇給短縮期間」の欄には、特別昇給や昇格等による昇給期間の短縮の月数のほか、病気休暇・病気休職等や懲戒処分による昇給期間の延伸の月数が記載されており、公にすることにより、カと同様に、当該職員の健康状態や懲戒処分歴が明らかとなる場合がある。
- ク「次期昇給期コード」等及び「次期昇給」の欄には、当該職員の次回の昇給時期を具体的に示す情報が記載されており、公にすることにより、当該職員が「いつ昇給する」予定かという情報が明らかになる。また、これらのコードには58歳を超えたことにより昇給停止となることを示すものもあり、公にすることにより当該職員の年齢が明らかとなる場合がある。
- ケ「氏名」欄のうち、昇給の時期が記載されている部分については、特別昇給が実施される年度が記載されており、公にすることにより、当該職員がいつ特別昇給する予定であるかという情報が明らかになる。
- コ「生年月日」及び「年齢」の欄を公にすると、当該職員の年齢等の情報が明らかになる。また、「初任給基準年齢」は人事交流により採用となった職員のうち、年齢により初任給を決定される者に係る割愛採用年月日時点の年齢が記載されており、公にすることにより、一般に公表されている職員録に掲載されている情報等と照らし合わせることにより、当該職員の年齢が明らかとなる。
- サ「初任給加算号給」の欄には人事交流により採用された職員の初任給基準に対する加算号給が記載されている。初任給基準に対する加算は、部内の他の職員との均衡を失すると認められる者について、当該職員の年齢や従前の勤務先での経歴、収入等の個人的な事情を反映して行われるものであり、公にすることにより、当該職員の年齢や従前の勤務先での経歴、収入等個人的な事情が明らかとなるおそれがある。
- シ「欠勤日数」の欄には、現給発令日からの病気休暇や病気休職等の日数が記載されており、公にすることによりその者の健康状態等が明らかになる。また、「摘要」及び「備考」の欄には病気休暇や病気休職の期間等、昇給に関して特に注意すべき内容や生年月日が記載されており、公にすることにより職員の健康状態や所得に関する情報や年齢が明らかとなる場合がある。
以上のことからすると、本件決定4の対象行政文書のうち非公開部分に記録されている情報は、いずれも公にすることにより、当該職員個人の収入、昇給時期、健康状態、家族又は生活の状況、勤務成績、懲戒処分歴、年齢などが明らかとなる、又は明らかとなるおそれのある情報であり、たとえ公務員の身分を有する個人の情報といえども、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるから、2(1)ウの要件に該当する。
したがって、本件決定4において、実施機関が、条例第9条第1号の規定により、これら部分を公開しないこととしたことは妥当である。
7 本件決定5についての判断
実施機関は、本件請求5に係る行政文書は、当該文書があるかどうかを答えるだけで条例第9条第1号に該当する情報を公開することになり、条例第12条に該当すると主張しているので、検討する。
本件請求5は、特定の府立学校事務職員に関して「2年間に普通昇給、特別昇給、昇格により約5万円弱の昇給に係わる起案文書及び決裁文書」の公開を請求するものである。
本件請求5に係る行政文書は、いずれも当該職員が2年間に約5万円弱の昇給を受けたということを前提に作成されるものであり、請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、2年の間に当該職員にそのような昇給があったかどうかが明らかとなる。このような昇給の有無などの情報は、個人の収入や生活に関する情報であって、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるから、本件決定5において、実施機関が、条例第12条に基づき、請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否したことは妥当である。
8 条例第11条第2項に基づく公益上の理由による公開について
異議申立人は、職員Aによる違法行為、不当行為等を主張し、条例第11条第2項に規定する公益上の理由による公開を求めているので、検討する。
条例第8条及び第9条に規定する公開原則の適用除外事項に該当する情報であっても、個別具体的な場合においては、公開することに優越的な公益が認められる場合があり得るところであり、このような場合には、実施機関の高度の行政的判断により、公開することが合理的である。
本条は、このような観点から、公益上の理由による公開について定めたものであり、第2項においては、公開請求に係る行政文書に条例第9条第1号に掲げる情報が記録されている場合であっても、「公益上特に必要があると認めるとき」は、請求者に対し、当該行政文書の全部又は一部を公開することができる旨規定している。本項の「公益上特に必要があると認めるとき」とは、第9条?1号の規定によって保護される個人のプライバシー保護の利益と公益上の公開の必要性とを個別具体的に比較衡量し、公益上特に公開する必要があると認められる場合をいうと解され、そのような場合には、本項に基づいて、当該情報を公開することができるものである。
しかしながら、条例は、一方で、第5条において、実施機関は、条例の解釈及び運用に当たっては、条例第9条第1号に規定する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定しており、実施機関が、本項の規定により行政文書を公開しようとする場合にも、第11条第3項の規定により、大阪府個人情報保護条例の趣旨を勘案し、個人の権利利益が適正に保障されるよう特段の配慮をしなければならないとされている。
以上のことからすると、本項の「公益上特に必要があると認めるとき」に該当して行政文書を公開できる場合とは、具体的には、災害時等における人の生命、身体、財産等に対する重大な被害の発生を防止するため当該情報を公開することが必要不可欠であるなど、基本的人権に関わる個人のプライバシー保護の利益に匹敵する特段の事情、必要性が現に存する場合に限られると解すべきであり、本件において、異議申立人が主張する事情のみをもって、公益上特に本件各請求に係る行政文書を公開する必要があるとは認められず、本件各請求に係る行政文書を、条例第11条第2項の規定に基づき、公開すべきであるとはいえないものである。
9 審査の進行について
(略)
10 結論
以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり、答申するものである。