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更新日:2009年8月5日

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大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第101号)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

  1. 平成12年11月14日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「第3回教職員の資質向上に関する検討委員会において報告・提案された案件に関する資料、及び新聞報道された約420名の問題教員に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配布された資料は除く)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
  2. 同年11月28日、実施機関は、本件請求に係る行政文書として「大阪府公立学校教員の分限処分について(伺い)」を特定の上、下記(1)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、公開しない理由を下記(2)のとおり付して異議申立人に通知した。
    • (1)公開しないことと決定した部分
      • ア 起案文書のうち、学校名、関係教職員の氏名、問題行動の発生年月日及びこれらを特定し得る事項
      • イ 内申のうち、学校名、関係教職員の氏名、生年月日、住所、問題行動の発生年月日、履歴事項及びこれらを特定し得る事項
      • ウ 報告書のうち
        • (ア)学校名、校長名、公印、問題行動の発生年月日及びこれらを特定し得る事項
        • (イ)関係教職員の氏名、生年月日、担任学級、教科、校務分掌、住所、家族構成、傷病名、医療機関名、心境や主張等に関する記述及びこれらを特定し得る事項
        • (ウ)関係者の氏名、住所、電話番号、心境や主張等に関する記述及びこれらを特定し得る事項
        • (エ)出勤簿、指定表、休職願、診断書
      • エ 人事記録
    • (2)公開しない理由
      条例第9条第1号に該当する。
      本件行政文書(非公開部分)に記録された情報は、関係教職員その他関係者の氏名、経歴、行動、個人の心境等個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である。
  3. 同年12月1日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定の取消、及び当該情報の全部公開。

本件請求は、実施機関による420名の問題教員が府立学校にいるとの発表の根拠を知るためのものである。しかし、本件決定は、すでに部分公開されているもののみを公開対象として文書特定しており、その他の資料については実質「非公開」と受け取らざるを得ないが、もし非公開であるならば、その旨決定を行うべきである。

このような趣旨から、本件決定の取消、及び異議申立人が当初請求していた内容について、再度文書特定をやり直した上での全部公開を求める。

ただし、個人の住所、電話番号、生年月日、個人を識別するための番号・記号、暗証番号、生育歴、学歴、及び本人の了解を得ていない個人(私人・公務執行中以外の公務員)の氏名を除く。

第四 異議申立人の主張

本件決定は条例前文、第1条、第3条の趣旨に反する。

1 本件文書特定の不当性について

本件請求は、実施機関が府立学校には約430名の問題教員がいるとの発表を行ったことを受けて行ったものである。異議申立人としては、この数字の根拠となる資料及び調査の方法などを示す資料を求めて本件請求を行ったものであるが、実際に公開されたのは「教職員の資質向上に関する検討委員会」において「指導力不足教員の例」として示された懲戒等案件の個別資料のみであった。

異議申立人は、請求時点において、異議申立人が求める資料の内容について、実施機関側に説明を行った上で本件請求を行っているものであり、本件決定において、まず異議申立人が求めた情報についての文書特定あるいは存在しない旨の決定等、又は条例の対象外である等、何らかの意思表示が実施機関から示されなかったのは極めて遺憾であると言わざるを得ない。

2 「約430名」の集計方法について

実施機関は「この集約にあたっては、まず担当の管理主事5名が実施機関の関係職員が府民や保護者等から受けた苦情や通報の内容を聴取し、あるいは、府立学校職員の人事異動等に関するヒアリングや各府立学校長からの個別面談で得られた情報を各自が持ち寄り、当該管理主事5名においていわゆる問題教員と考えられる教員数を府全体としてとりまとめ、その概算数が上記420から430名となったものである。」としている。

約430名もの教員に関する情報を、5名の管理主事がそれぞれ記憶しておくことは不可能であるといえ、当然それには何らかの資料・文書等が存在していたはずである。5名の管理主事のこれらの作業が、後に実施機関が、府立学校には約430名の問題教員が存在すると発表することに繋がっているのであり、これらの作業の過程で作成された基礎資料は、すべて公務員が公務執務中に作成された資料として、つまり行政文書であると特定されるべきであると考える。

3 「特定の個人が識別され得る情報」の範囲について

特定の個人が識別され得る情報とは、その個人(本件の場合は逮捕・補導された児童・生徒や当該案件の関係者)の関係者や地域と全く関わりがない一般府民であっても、ある情報を知ることによって容易にその個人を特定することができる高度の蓋然性がある情報であると解すべきであり、専門的な調査(公的機関、マスメディア、興信所等)をすれば特定できるかもしれないような情報は、この区分にはあてはまらない。なお、これと同様の見解は、2002年3月4日付け熊本県情報公開審査会答申においても示されているところである。

また、その個人の関係者や、地域の住民等、特にその個人に極めて近い環境にいる個人(同じクラス、同じ職場にいる人)にとっては、すでにある一定の情報を保有している場合が多いと一般的に認められ、一般府民が専門的な調査をしなければ入手できないような情報も、容易に入手できる可能性があるが、このような状況を想定して「特定の個人が識別され得る情報」の範囲を判断すれば、その公開の範囲は際限なく狭められる結果となり、条例の本来の趣旨に反することとなるのは明らかである。

以上にそって、本件非公開部分を検討すると、一般府民が学校名(所属名)等の情報から特定の個人を識別するためには、専門的な調査をしなければ、ほぼ不可能であると言うべきである。

よって、専門的な調査をすれば特定できる可能性があることをもって、非公開としたことは、条例第9条第1号を拡大解釈した不当なものである。

4 事故・事件再発防止の観点からの学校名(所属名)公開の必要性

学校とは、PTA、PTAOB会、同窓会や自治会、地域連合会、社会福祉協議会等、学区の地域社会という、極めて狭い社会の核となる存在として、全国的に根付いている。

その核とみなされる学校のネガティブイメージは、直接その地域のネガティブイメージにつながるとの意識から、これらの事実は、学校関係者はもちろん、地域関係者にとって精神的・物理的に排除したい事実であり、協力していわゆる「臭いものに蓋」という考え方をもととした行動に出る結果となっている。

このような学校・地域関係者の閉鎖的な体質は、学校関係者や教育委員会の関係者と共有しているところであり、本件で学校名を非公開としたことにも反映していると想像できる。

しかしながら、近年この流れに一石を投じる審査会答申や教育委員会の決定がなされている。例えば高等学校の中退者や懲戒件数に関する情報公開請求について、熊本県情報公開審査会は前出の答申において、「多数の中途退学や懲戒処分が存在することは、それ自体無視し得ない社会的問題であるから、実施機関としては、問題の根本的解決に努力すべきであって、現状を隠すことは許されない」として、これらの情報が学校名を含めて全部公開すべきであると判断している。

また、大阪府情報公開審査会は、1999年、2000年にそれぞれに同様の判断を示し、これらの情報が全部公開されている。さらに、兵庫県教育委員会に至っては、異議申立てを経ずに、教育委員会としての独自判断で中退者数の全部公開に踏み切っているところである。さらにさいたま市教委においては、教職員処分関連文書のうち、学校名はすべて公開されている。

いずれの自治体も、これらの情報が公開されることにより、地域間格差などが助長されることを懸念しつつも、保護者や生徒に情報を積極的に公開していくことによって、よりよい教育環境を作ろうとする前向きな姿勢がある。学校はネガティブイメージを隠蔽するのではなく、むしろ積極的に公開していくことで、生徒・保護者・学校が協力して、その改善に当たっていくべきである。

さらに、市民は納税者として、公立学校の経費を最終的に負担する立場にあり、学校の状況を知る当然の権利があると言うべきである。

学校名が公開され、このような環境が整うことにより、管理職・現場教員・地域住民が緊張感を持ち、今後の同種同様の問題に対しての抑止力も期待できると考える。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張を総合すると概ね次のとおりである。

1 「教職員の資質向上に関する検討委員会」について

(1)設置の趣旨

実施機関においては、学校改革や教育内容の改善など学校教育の再構築と学校・家庭・地域社会の連携による総合的な教育力の再構築等を柱とした「教育改革プログラム」を策定し、これに基づき、教育をめぐる諸問題に対応して、教育諸条件の整備に努めるとともに、学校にあっても自主的な取り組みを行っているところである。

「教職員の資質向上に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という。)は、「教育改革プログラム」の一項目である「教職員の資質向上と意識改革」の具体化を図る方策を検討する場として平成12年7月に設置された委員会で、学識経験者、学校教育関係者等10名から構成されており、府民から信頼される学校教育や学校運営を行うため、教職員の資質、能力及び勤労意欲の向上など、教職員全般の資質向上方策について検討を行っている。

(2)審議の経過

検討委員会は、それまで3回開催しているが、教育改革プログラム、教職員の現状・研修等の概要など教職員の資質向上に関する現状と課題を実施機関から説明し、検討課題の整理を行うとともに、指導力不足等の教員への対応方策(教職員に求められる資質、指導力不足等教員の範囲)について検討を行っているところである。

このような検討を進めるにあたって、平成12年9月の第2回の検討委員会において、委員から「指導力等不足の教員の典型的な例を出した方が議論しやすい。」との要望を受け、平成12年11月の第3回の検討委員会では「[指導力不足教員]の例」や「問題教員の対応事例」等の資料を作成し、配布したものである。

2 新聞報道された約420名の問題教員に関する資料及び配布資料中の「「指導力不足教員」の例」の作成について

新聞報道された約420名の問題教員の数字は、平成12年7月の第1回検討委員会において、委員からの質問に対し、あくまで議論の参考として、実施機関の職員が口頭で「指導力等に問題があると思われる教員(以下「問題教員」という。)は、全府立学校教員の大体4%程度、420から430人程度であると考えている。」と答えたものである。そもそも、この人数は、実施機関が検討委員会の設置に先立ち、今後、検討委員会を運営していくにあたっての参考数値であって、教職員課長の指示のもと平成11年度に集約したものである。この集約にあたっては、まず、担当の管理主事5名により、実施機関の関係職員が府民や保護者等から受けた苦情や通報の内容を聴取し、あるいは、府立学校教員の人事異動等に関するヒアリングや各府立学校長からの個別相談で得られた情報を各自が持ち寄り、当該管理主事5名においていわゆる問題教員と考えられる教員数を府全体として取りまとめ、その概算数が上記420から430人となったものである。なお、この概算数は、実施機関として検討し、取りまとめたものであるが、あくまで検討委員会での議論の参考とすることが目的であることから、概算数のままとして、検討委員会に備えて準備したものである。

「「指導力不足等教員」の例」という第3回の検討委員会に配布した資料については、第2回の検討委員会を開催した際に、委員から「指導力等が不足していると考えられる教員の典型的な例を出して欲しい。具体例でイメージした方が議論しやすい。」という要望を受け、実施機関としても、今後の検討委員会での議論に必要であると考えたことから教職員人事課長の指示のもと作成したものである。この作成にあたっては、まず、問題教員の事例をどのように分類するのかを検討し、その結果、「指導力に関し支援を要する教員」、「指導力不足教員」、「適格性を欠く教員」という3つの大分類を行い、次に専門性・社会性等の欠如がみられる者や勤務態度・服務上の問題がある者等に細分化し、次いで当該区分に該当する問題教員の事例を挙げていったものである。問題教員の事例については、実施機関の管理主事を含む検討委員会事務局職員(教職員人事課府立学校人事グループ及び制度・事務改善グループ職員計5名)で合議の上、これまでの府立学校現場での勤務において、実際に遭遇した事例、例えば「雨が降ったら休む」、「教科内容の質問に答えない(答えられない)」など経験に基づき把握している事例を抽出した。さらにこれを補強するために、「勤務時間内にパチンコ屋やスポーツクラブに居る」などといった府民や保護者等からの通報や、教員の人事異動等に関するヒアリングで得た情報なども参考にしながら具体的な事例を抽出した。その際、個人が特定できないよう細心の注意を払い、モデル化した表として作成し、これを実施機関として、再度精査したものを、最終的に第3回の検討委員会において配布した。なお、当該資料については、検討委員会の議論が容易に進められることを目的に作成したものであるから、そのモデルは実際に現存する事例だけでなく、過去にあった事例等も含んでいる。

一部の新聞では、問題教員が約420人おり、その具体例が「「指導力不足等教員」の例」で示されたものであるかのように報道されているが、当該資料は、問題教員の概算数約420人の積み上げとは時期的にも、その方法においても別に作成したものであるため、当該配布資料の各事例が概算数とは必ずしも対応するものではない。

3 大阪府公立学校教員の分限処分について

実施機関は、府立学校教職員及び市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定する教職員(以下「府費負担教職員」という。)について、その職における不適切な行為(以下「問題行動」という。)が認められ、校長等による再三の指導にもかかわらず改善されないような事実が認められる場合には、その任命権に基づき必要な調査を行い、情報を収集し、事実関係を把握し、当該教職員に対する分限処分を行う必要性ないしその内容を決定する事務を行っている。

本件各行政文書は、実施機関が行う問題行動が認められる教職員に関する調査の内容が記録されたものであり、同時に、実施機関の行う分限処分の必要性の検討及びその内容の決定に供されたものである。

分限処分の決定を行う際は、起案文書を作成し、教育委員会議で意思決定を行っている。

4 実施機関が行う教職員の問題行動についての指導及び事務について

(1)実施機関の任免権と服務監督権について

府立学校教職員の任免、服務その他の身分取扱等に関する事項は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)第35条の規定により、地教行法及び他の法律に特別の定めがある場合を除き、地方公務員法の定めによるとされているところ、地教行法第23条第3号においては「学校職員の任免その他の人事に関すること」は教育委員会の権限事項とされ、「人事に関すること」の中には職員の服務に関する事務が含まれている。

したがって、実施機関は、府立学校教職員の任免及び服務監督に関する権限を有しており、これに基づき、教職員の問題行動について必要な指導・調査を行うことができる。

一方、府費負担教職員の任命権は、地教行法第37条第1項の規定により、都道府県教育委員会に属しており、この任命権の中には分限処分が含まれる。

また、府費負担教職員の服務監督権は、地教行法第43条第1項の規定により市町村教育委員会が有している。

したがって、府費負担教職員について問題行動がある場合、実施機関は市町村教育委員会が服務監督権に基づき当該行為について必要な指導・調査を行い、改善指導を行っても、なおその職にふさわしくないと判断される場合は、地教行法第38条の規定による市町村教育委員会の内申に基づき、分限処分を行っている。

(2)教職員の問題行動に関する指導の内容について

ア 府立学校教職員に対する指導

実施機関は、校長に対し必要な指導を指示し、実施機関に代わり府立学校の教職員に係る問題行動について指導を行わせ、校長から、その都度、指導結果を得ているが、こうした指導にもかかわらず、当該教職員に改善が見られない場合、実施機関は、直接、当該教職員に指導を行うこととなる。

イ 府費負担教職員に対する指導

実施機関は、府費負担教職員に係る問題行動について、市町村教育委員会に対し必要な指導を依頼し、実施機関に代わり指導を行ってもらい、市町村教育委員会から、その都度、指導結果を得ているが、こうした指導にもかかわらず、当該教職員に改善が見られない場合は、実施機関は、任免権に基づき、直接、当該教職員に指導を行っていることは、府立学校教職員の場合と同様である。

5 本件行政文書及びこれに記録された情報の基本的性格について

本件行政文書は、教職員に係る問題行動に関する調査、当該教職員に対する分限処分の必要性の検討及び内容の決定の段階に応じて、「報告書(府立学校の校長又は市町村教育委員会(以下「報告者」という。)からの報告文書を含む。以下同じ。)」、「内申」及び「起案文書」に大別される。

(1)「報告書」

「報告書」は、府立学校で発生した問題行動については、府立学校長から、また、市町村立学校で発生した問題行動については市町村教育委員会からそれぞれ実施機関に提出された文書であり、実施機関が受領し、事後措置の検討に供したものであって、報告者が実施機関の指示や依頼に応じて、実施機関に代わり、その都度行った指導・調査の結果についてまとめた上で、文書の形で提出されたものである。報告の形式やその記載内容は統一されたものではないが、関係教職員の氏名・職、生年月日、問題行動の発生年月日や問題行動の詳細な経過が記載された文書、当該教職員に対する指導の経過が記載された指導経過記録、当該教職員に対する職務命令者や出勤命令書及び受診命令書、当該教職員からの休職願や診断書、人事記録カード、出勤簿等から構成されている。

報告書は法令上その作成が義務づけられているものではなく、実施機関が事態の事実関係を把握し、教職員に対する分限処分を行う必要性等を判断するための一資料である。

(2)「内申」

「内申」は、府費負担教職員に係る問題行動について、指導・調査及び検討の結果、実施機関が分限処分の対象となると判断し、地教行法第38条第1項の規定により、市町村教育委員会が作成し実施機関に提出された文書であり、処分の対象となった関係教職員の所属、職名、氏名、性別、生年月日、現住所、分限処分の種類、分限処分の対象となる事実、適用法令、履歴事項が記録されている

(3)「起案文書」

「起案文書」は、実施機関が当該教職員に対する事後措置についての意思決定を行うために作成する文書であり、稟議を行うための伺文とその内容を文書として具体化する基礎となる案文で構成されている。

記録されている内容は、業務の内容や分限の内容、当該対象となった事実、当該関係教職員の所属、氏名等の情報が記録されている。

6 本件決定の適法性

  • (1)本件請求は、「第3回教職員の資質向上に関する検討委員会において報告・提案された案件に関する資料、及び新聞報道された約420名の問題教員に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配布された資料は除く)」に係るものであって、第3回の検討委員会で資料配布し、検討した内容は、「第2回検討委員会での意見を踏まえた修正案」、「[指導力不足等教員]の例」、「教職員に関する処分の種類」、「問題教員への対応事例」、「教職経験の段階と指導力不足の情況に応じた対応策の検討(対応例)たたき台」の5件である。このうち、「第2回検討委員会での意見を踏まえた修正案」、「教職員に関する処分の種類」、「教職経験の段階と指導力不足の情況に応じた対応策の検討(対応例)たたき台」については、第2回までに開催された検討委員会での検討結果や地方公務員法、裁判所の判例などすでに公表されている資料を基に作成したものであり、「問題教員への対応事例」は本件行政文書を基に作成したものである。そして、「[指導力不足等教員]の例」については、実施機関の各管理主事等の府立学校現場での勤務等を中心とした経験に基づき把握している事例をはじめ、府民や保護者等からの通報等で得た情報等も参考にしながら具体的な事例を抽出し、モデル化した表として作成したものであることから、当該配布資料を作成するにあたっては、何ら基礎となった行政文書は存在しない。
    一方、新聞報道された約420名の問題教員に関する資料についても、実施機関への府民等からの苦情の電話や教員の人事異動等に関するヒアリング等の際に得られた情報、あるいは各府立学校長からの個別相談等で得た情報を実施機関のそれぞれの管理主事が持ち寄り、検討委員会での議論の参考にすることを目的として、単に集計した概算数であり、その基礎となった資料は、平成12年度当初の教員の人事異動終了後、一定の期間を経過しており、実施機関としては今後、職務上使用する必要がないと考えられることから、平成12年6月に既に廃棄しており、現実に管理していないものである。
    なお、条例第2条第2項の規定によれば、行政文書とは「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」であることから、これらの要件を満たすものとして現に実施機関が管理している行政文書は、本件行政文書のみである。よって、実施機関の組織において利用、保存するものとして管理している行政文書は検討委員会で配布した「[指導力不足等教員]の例」のみであり、当該配布資料に問題教員の具体的な事例があり、また、問題教員の具体的な人数を答えたからといって、実施機関が当該基礎となる資料を行政文書として管理しているということではない。したがって、本件請求にあたり、実施機関が本件行政文書と特定したことには、何ら違法・不当はなく、適法かつ妥当なものである。
  • (2)本件行政文書の記録内容と取扱について
    本件行政文書には、概ね、教職員の問題行動についての事実に関する調査結果の情報が、氏名等本人を特定できる形で具体的に記録されており、その内容は次のとおりである。
    • ア「報告書」について
      法令上その作成が義務づけられているものではなく、実施機関が事態の事実関係を把握し、教職員に対する分限処分を行う必要性等を判断するための一資料である。
      なお、実施機関は、調査に際し、問題行動のある教職員並びに報告者、同僚の教職員その他関係者から情報を収集する場合、当該情報が特定の教職員の問題行動に関するものであって、個人のプライバシーに該当するものである等の事情により、当該教職員を特定しうる情報は公にしないことを前提として作成していることから、当該教職員等の特定される氏名及び生年月日、関係者の氏名、住所、心境や主張等に関する記述等を非公開とし、その他の部分を公開したものである。
    • イ「内申」について
      「内申」は、府費負担教職員の分限処分に関して、問題行動の概要及び処分の程度等の情報が記載されており、当該教職員が特定される氏名及びこれが識別され得る学校名等を非公開とし、その他の部分を公開した。
    • ウ「起案文書」について
      「起案文書」は、分限処分に関する情報が記録されており、当該教職員が特定される氏名及びこれが識別され得る学校名、問題行動の発生年月日等を非公開とし、その他の部分を公開した。
  • (3)条例第9条第1号該当性について
    本件行政文書は、教職員の問題行動の個別具体的な内容とその問題行動に対して講じられた事後措置の内容が、当該関係教職員の氏名や住所、履歴等とともに、詳細に記録されており、また、関係者の氏名や住所等が記録されているものもある。
    これらは、全て個人の一身に専属する情報であるとともに、特定の個人が識別され得るものである。
    また、大阪府情報公開審査会の答申によれば、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって、直接特定の個人が識別され得る場合に加えて、一般人が容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって、特定の個人が識別され得る場合を含むとされている。
    これを本件行政文書に記録された情報についてみると、実施機関が非公開とした情報のうち、関係教職員や関係者の氏名、住所、生年月日等の情報については、特定の個人が直接識別される情報である。
    また、学校名(校長の氏名や公印等学校名が特定し得る事項を含む。)や問題行動の個別具体的な日時、あるいは関係教職員の具体的な健康状態、経歴等の情報についても、事後措置の内容に加え、職名、性別、年齢等が公開されることを前提として、当該問題行動が全く公にされていないとは言えない情況等を勘案すると、他の関連情報と相互に組み合わせることにより、当該関係教職員等特定の個人が容易に特定される情報である。
    そして、本件行政文書のうち、関係教職員に関する情報については、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、その本人にとっては、過去の不名誉な経歴に関する情報であることや個人の心身情況、健康状態等に関する情報が具体的に明らかになることからすれば、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である。
    また、関係者に関する情報は、過去の決して名誉とはいえない事実等が具体的に明らかになることから、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる情報である。
    したがって、本件行政文書の非公開部分に記録された情報は、条例第9条第1号に該当する公開してはならない情報である。
  • (4)個人の住所等を除いた公開について
    異議申立人は、異議申立ての趣旨で、個人の住所、電話番号、生年月日、個人を識別するための番号・記号、暗証番号、生育歴、学歴、及び本人の了解を得ていない個人(私人、公務執行中以外の公務員)の氏名を除いた全部の情報の公開を求めている。
    しかしながら、これらを除いて公開したとしても、学校名及び学校名を識別し得る情報等が明らかとなり、公開されている他の関連情報と相互に組み合わせることにより、関係教職員等特定の個人が容易に識別されることは明らかである。また、学校名を公表することの公益性を考慮したとしても、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護するという条例の趣旨に照らせば、本件行政文書の非公開部分に記録された情報から上記部分を除いた部分についても、条例第9条第1号に該当する情報であるから公開してはならない情報である。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開請求についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参画を推進するとともに、府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人・法人等の正当な権利・利益を侵害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、その情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、当該行政文書を公開しなければならないのである。

2 教職員の資質向上に関する検討委員会の審議経過等について

実施機関の説明等によると、次のことが認められる。

(1)大阪府教職員の資質向上に関する検討委員会について

実施機関は、様々な教育課題に対応するために策定した「教育改革プログラム」の項目の一つである「教職員の資質向上と意識改革」を具体化する方策を検討する場として、平成12年7月に「教職員の資質向上に関する検討委員会」を設置した。この検討委員会は、学識経験者や学校教育関係者等10名で構成され、指導力不足等教員の資質向上方策について、計7回の会議を開催して、審議・検討を行い、平成13年3月に中間報告「指導力不足等教員の資質向上方策について」を取りまとめるに至った。次いで平成13年6月から平成14年6月にかけて第8回から第23回までの検討委員会で教員全般の資質向上方策についての検討を行い、平成14年7月に最終報告「教職員全般の資質向上方策について」を取りまとめている。

以上のうち本件請求と関わるのは、第3回までの検討委員会であり、それらの審議内容は次のとおりである。

平成12年7月の第1回検討委員会では、「教職員の資質向上に関する現状と課題」について審議された。この際、指導力等に問題があると思われる教員の数を委員に尋ねられたので、実施機関は、全府立学校教員の約4%程度、約420人から430人程度であると口頭で答えている。

平成12年9月に開かれた第2回検討委員会では、「教員に求められる資質の確認、指導力不足教員の範囲」について審議された。この際、委員から指導力不足等教員の典型例を示してほしいとの要望が出されている。

平成12年11月の第3回検討委員会では、実施機関自らが作成し提出した計5つの資料に基づき「指導力不足等教員への対応方策」について審議された。

(2)第3回検討委員会で配付された資料について

第3回検討委員会で実施機関が提出した5つの資料は、「第2回検討委員会での意見を踏まえた修正案」、「『指導力不足等教員』の例」、「教職員に関する処分の種類」、「問題教員への対応事例」、「教職経験の段階と指導力不足の状況に応じた対応策の検討(対応例)たたき台」である。それぞれの内容は、次のとおりである。

ア「第2回検討委員会での意見を踏まえた修正案」

検討委員会でとりまとめた「中間報告」の検討途中段階の案である。「1『教員に求められる資質』の確認」及び「2『指導力不足等教員』の範囲」という項目について、第2回検討委員会に提出された案と第3回検討委員会に向けて修正された案とを対照で記載している。

イ「『指導力不足等教員』の例」

第2回検討委員会において、委員から要望のあった指導力不足等教員の典型例を整理したものである。指導力不足等教員の種類を、(ア)指導力に関し支援を要する教員、(イ)指導力不足教員、(ウ)適格性を欠く教員の3つに区分し、さらにそれぞれを細区分した上で、各タイプ毎に「教育的愛情や使命感等に欠如がみられる」といった「状態・態様」及び「自分の授業や教育実践を公開できない」、「自己を語れず、夢や希望を語れない」といった「具体例」を個人が特定できないようモデル化して記述している。

ウ「教職員に関する処分の種類」

地方公務員法で規定される分限処分及び懲戒処分が簡潔に説明されており、参考として、地方公務員法の関連条文及び過去の分限処分に関する3つの判例が付されている。

エ「問題教員への対応事例」

3名の問題教員の実例をとりあげ、各教員の問題行動を具体的に説明し、これに対して実施機関が取った対応と最終的な結果までが記述されている。3名の教員のうち2名が分限免職となった事例であり、残り1名は依願退職の事例である。各事例毎に、「教員に関する事項」(「所属等」、「履歴」、「休職歴」)に引き続き、分限免職された2名に関しては「職員の勤務状況」、「処分の結果」等が、依願退職した1名の分には、「事件の概要」、「事実の認定」、「当時検討した事項」が記載されている。

オ「教職経験の段階と指導力不足の状況に応じた対応策の検討(対応例)たたき台」

教員の指導力不足を予防・解消するために、教員の経験の度合いと指導力不足の内容に応じて、どのような方策をとるべきであるのかを整理した資料である。

縦の欄に教職経験の段階(「採用時」、「初任者」、「経験者」、「管理職」、「共通項目」)をとり、横の欄に指導力不足の状況(「専門性」、「社会性」、「勤務態度・服務」、「疾病〔精神疾患等〕」、「共通項目」)をとって、両者が交差する箇所に該当する指導力不足を解消するための対応策が教職経験の段階ごとに記載されている。たとえば、「採用時」と「専門性」であれば、「生徒を前にした模擬授業、指導主事を前にした模擬授業、専門テストの比重を増やす」という方策である。

(3)「約420名の問題教員」に関する新聞報道について

本件請求に係る行政文書公開請求書に記載されている「新聞報道された約420名の問題教員」については、第3回検討委員会に配付された資料の中には、その根拠となる記載はない。

そこで、審査会において調査したところ、ここでいう「新聞報道」とは、産経新聞の平成12年11月6日付け夕刊に掲載された記事を指しており、当該記事には「大阪府教委 無気力な指導力不足の先生”一掃”民間の智恵借り公聴会 来年開催『適正評価』制度化へ」との見出しの下、「府教委によると、府立高校・養護学校の教員計約1万1千人のうち、児童・生徒を適切に指導できない『指導力不足教員』は約4%、420-430人に達している。こうした教員のなかには生徒の質問を受けつけない、雨が降ったら休む、暴力団とのつきあいがある-など教員に不適格ともいえるケースも報告されている。」という府立学校における問題教員の状況が記載されていることが確認された。

この420人―430人(異議申立人によれば約420人)という問題教員の数値は、第3回検討委員会後に実施機関の担当職員が新聞記者の取材を受けた際に、その時点で把握していた指導力不足等教員の数を提供したものが新聞記事として掲載されたものであるということが確認された。

そして、実施機関がこの指導力不足等教員数を把握した経緯は、実施機関において、平成12年7月の検討委員会設置に先立ち、検討委員会を運営するに当たっての参考数値として把握しておく必要から、平成11年度に当時の教職員課長の指示により集約していたもので、具体的には、教職員課において府立学校教職員の人事事務を担当している管理主事5名が、府民等からの苦情電話、人事異動等に関するヒアリング及び各府立学校長からの個別相談等で得た情報を持ち寄り、府全体のいわゆる問題教員と考えられる数を概数として420から430人程度と集計したというものであることも確認された。

3 本件処分に係る具体的な判断及びその理由について

異議申立人は、本件決定について、対象行政文書の特定が不当であるとともに、対象行政文書として特定された本件行政文書の非公開部分の範囲も不当であると主張しているので、以下、検討する。

(1)本件決定における対象行政文書の特定についての判断

ア 行政文書公開請求書の対象となる「行政文書」について

行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の要件については、条例第2条第1項において、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真及びスライド並びに電磁的記録」であって、「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして当該実施機関が管理しているもの」(同条但し書きに該当するものを除く。)と規定されている。したがって、実施機関は公開請求に係る情報が、この要件に該当する「行政文書」に記録されている場合は、当該行政文書を当該公開請求に対する公開・非公開等の決定の対象行政文書として特定しなければならないのである。

イ 本件決定における対象行政文書の特定の妥当性について

本件請求に係?行政文書公開請求書に記載されている内容は、「第3回教職員の資質向上に関する検討委員会において報告・提案された案件に関する資料、及び新聞報道された約420名の問題教員に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)」である。ここで言及されている第3回検討委員会で報告・提案された案件は「指導力不足等教員の資質向上方策について」であり、その時に配付された資料は上記2(2)の5つの資料である。検討会において配付された資料は、請求の対象から除かれているので、それ以外の2(2)の5つの資料及び2(3)の新聞記事の内容に「関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。)」が本件決定において特定すべきであった行政文書ということになる。

当審査会が、本件決定における対象行政文書の特定について、検討したところ、以下のとおりである。

(ア)「第2回検討委員会での意見を踏まえた修正案」に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)

本件決定において本項に対応する行政文書として、実施機関が特定した文書はない。

本項に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「本資料については、第1回及び第2回検討委員会で配付された資料を基に検討委員会で議論された内容を踏まえて、修正を加え作成したものであり、基礎となる資料としては、これまで検討委員会で配付された資料以外には行政文書は存在しない」というものである。

この説明については、本資料が前回の検討委員会に提出された同様の資料を修正したものであり、その他の文書を参考にすることなく作成できる内容であることからすると、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。

(イ)「『指導力不足等教員』の例」に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)

本件決定においては、本項に対応する行政文書として、実施機関が特定した文書はない。

本項に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね次のとおりである。

本資料については、第2回検討委員会(平成12年9月)で委員から要望があり、それを受けて、教職員人事課長の指示により検討委員会事務局を担当する教職員人事課の職員5名が作成したものである。これに記載されている指導力不足等教員の事例は、担当職員が過去に勤務していた府立学校で実際に経験した事例を基に、府民・保護者からの通報や教員の人事異動等に関するヒアリングで得た情報も加味しながら、合議の上抽出したものである。本資料に記載された指導力不足等教員の事例は、本資料の作成当時、実際に存在したものだけではなく、過去に存在した事例も含んでいる。本資料は、事務局職員が自分自身の記憶だけを頼りに具体的事例を挙げて、指導力不足等教員に該当するかどうかを検討した上で、まとめあげたものであり、参考とした文書はない。資料が完成するまでの作成過程で途中段階の案としての文書はあったが、完成した後は不必要となり処分しているので、基礎となる資料としては、何も存在しない。

この説明については、本資料が、2(2)イで述べた指導力不足等教員の典型例を整理したという性格のものであること及び本資料に記載されている“具体的事例”も1、2行の簡潔な文章であることからすると、特段、不自然、不合理な点は認められず、その他審査会において調査したところによっても、請求の趣旨に該当する行政文書の存在は確認されなかった。

(ウ)「教職員に関する処分の種類」に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)

本件決定においては、本項に対応する行政文書として、実施機関が特定した文書はない。

本項に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね「本資料は、地方公務員法や裁判所の判例という公表されている情報を基にして作成したものであり、基礎となる資料しての行政文書は存在しない」というものである。

この説明については、本資料の記載内容が、処分の概要説明、地方公務員法及び判例から構成されていることからすると、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。

(エ)「問題教員への対応事例」に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)

本件決定において、実施機関は、本項に対応する行政文書として、本資料に記載されている教員3名の事例のうち、分限免職となった2名の処分の原議である本件行政文書を特定した。本件行政文書は、「起案文書本文」(市町村立学校教員1名及び府立学校教員1名についてのもの)、「内申」(市町村立学校教員1名についてのもの)及び「報告書」(市町村立学校教員1名及び府立学校教員1名についてのもの。事案の内容に応じて、種々の資料が添付されている。)からなっている。一方、依願退職となった他の1名に関し、実施機関が特定した文書はなかった。

府立学校教員の任免及び服務監督に関する権限は、地教行法第35条の規定により実施機関が有しており、実施機関において府立学校教員の分限処分が行われている。

一方、市町村立学校教員の任免に関する権限も地教行法第37条第1項の規定により実施機関が有しているが、服務監督に関する権限は地教行法第43条第1項の規定により市町村教育委員会が有しており、実施機関は地教行法第38条第1項の規定による市町村教育委員会の内申をまって、市町村立学校教員の分限処分を行っている。

また、実施機関が事実関係を把握し分限処分を行うかどうかを判断するための資料として、報告書が、市町村立学校教員の場合は市町村立教育委員会から、府立学校教員の場合は府立学校長から提出されることとなっている。

以上のような分限処分に関する実施機関の権限及び事務の実情からすると、分限免職とした教員のうち、市町村立学校教員に関しては、「起案文書本文」並びに市町村教育委員会から提出された「内申」及び「報告書」を特定し、府立学校教員については、「起案文書本文」及び府立学校長から提出された「報告書」を特定したことについて、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。

また、依願退職となった1名の教員に関して本件請求に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね、「本資料は、担当者が個人的メモを基に第3回検討委員会(平成12年11月6日)の配付資料として作成したものである。実施機関は、処分を行うかどうか検討するために市教育委員会からの報告書(顛末書、事情聴取書、人事記録カードの写、出勤簿の写等)を取得していたが、この報告書については、平成10年に教員が依願退職し、保存の必要性がないと判断し廃棄したので、本件請求の時点(平成12年11月14日)には該当する文書は管理していなかった。また、本資料の基になったメモは、この事例の発生当時に担当者が個人的に作成していたものであるが、本資料を作成していた時点でそのメモも廃棄した。」というものである。

この説明については、実施機関は、公立小・中学校の教員の任命権を有しているものの、日常の服務監督権は市町村教育委員会が有しているものであること、公立小・中学校の教員の依願退職に際して、実施機関は、市町村教育委員会からの内申に基づいて辞令を発行するにすぎないものであること等からすると、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。また、担当者が作成したメモが行政文書に該当するかどうかという点については、当該メモが現存せず実際に見分できないため、審査会としては確認することはできない。

(オ)「教職経験の段階と指導力不足の状況に応じた対応策の検討(対応例)たたき台」に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)

本件決定においては、本項に対応する行政文書として、実施機関が特定した文書はない。

本項に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は「本資料は、第1回及び第2回検討委員会で議論された内容を踏まえて、作成したものであり、基礎となる資料としては何も存在しない」というものである。

この説明については、本資料に記載されている内容が、教員の指導力不足を予防・解消するためにとるべき方策を整理したものであり、その他の文書を参考にすることなく作成できるものであることからすると、特段、不自然、不合理な点は認められなかった。

(カ)「新聞報道された約420名の問題教員」に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く。)

本件決定においては、本項に対応する行政文書として、実施機関が特定した文書はない。

本項に対応する行政文書が存在しないことについての実施機関の説明は、概ね次のとおりである。

新聞報道された問題教員の数は、実施機関が、平成12年7月の検討委員会の設置の前に、検討委員会を運営するにあたっての参考数値として把握しておく必要から、平成11年度に教職員課長の指示により指導力不足等教員の数を集約したものである。具体的には、教職員課に所属する管理主事5名が、府民等からの苦情電話、人事異動等に関するヒアリング及び各府立学校長からの個別相談等で得た情報を持ち寄り、府全体のいわゆる問題教員と考えられる数を単なる概数として集計したものである。そのため、この数字は一斉調査による正確性を期したようなものではない。

問題教員の数を算出するための基礎となった資料としては、各管理主事が個人的に保管していた人事異動に関する備忘のためのメモが存在した。これは、人事異動のためのヒアリングにおいて得られた情報等を基に各管理主事が参考のために作成していたもので、たとえば「転居予定である」、「介護のために親の近くに住む必要がある」といったものであり、中には「指導力不足である」という情報も含まれているものもあった。これを活用して、問題教員数の集計を行ったものである。しかしながら、この備忘メモは、個人のメモであり、行政文書の要件である「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして当該実施機関が管理しているもの」には該当しない。そして、あくまでも、人事異動事務のために作成したものであり、平成12年4月の教員定期人事異動が終了すれば不要となるので、平成12年6月頃までには各管理主事が自分の判断で処分してしまっていた。

また、それ以外の、府民等からの苦情電話、学校長からの個別相談等については、管理主事自身の記憶だけから問題教員の数を把握したものであるので、基礎となる資料としては、何も存在しない。

これらの説明のうち、「備忘メモ」が、組織的に共用されていなかったので、行政文書公開請求の対象となる「行政文書」に該当しないとする点については、当該メモが現存せず実際に見分できないため、審査会としては確認することはできない。しかしながら、少なくとも、当該メモが請求時点では廃棄されていたという点については、問題教員数の集計に活用した管理主事の備忘メモが人事異動事務用に作成されたものであること及び集計した問題教員数があくまでも議論の参考のために算出した概数にすぎないということなどからすると、その概数の数字としての精度はともかく、特段、不自然、不合理な点は認められない。また、その他審査会において調査したところによっても、請求の趣旨に該当する行政文書の存在は確認されなかった。

なお、この点に関し、異議申立人は、「約430名もの教員に関する情報を、5名の管理主事がそれぞれ記憶しておくことは不可能であるといえ、当然それには何らかの資料・文書等が存在していたはずである。(5名の管理主事の)これらの作業の過程で作成された基礎資料は、すべて公務員の公務執行中に作成された資料として、つまり行政文書であると特定されるべきである」旨主張している。しかしながら、5名の管理主事は、人事異動事務用に作成していた備忘メモに基づいて資料を作成したというのであるから、全てを記憶に頼っていたわけではないし、仮に当該メモが現存すれば「行政文書」に該当するものであるとしても、既に廃棄されている以上、これを対象として公開・非公開等の決定を行うことはできないものである。

以上のとおりであるから、本件決定における行政文書の特定は妥当であったと認められる。

ウ 異議申立人の主張について

異議申立人は、「本件請求は、実施機関が府立学校には約420名の問題教員がいるとの発表を行ったことを受けて行ったものである。異議申立人としては、この数字の根拠となる資料及び調査の方法などを示す資料を求めて本件請求を行ったものである」、「異議申立人は請求時点において、異議申立人が求める資料の内容について、実施機関側に説明を行っているものであり、本件決定において、まず異議申立人が求めた情報についての文書特定あるいは存在しない旨の決定等、何らかの意思表示が実施機関側から示されなかったのは極めて遺憾である」旨主張している。

しかしながら、本件請求に係る行政文書公開請求書の「行政文書の名称、ファイル名等」欄の記載内容は、「第3回教職員の資質向上に関する検討委員会において報告・提案された案件に関する資料、及び新聞報道された約420名の問題教員に関する資料のすべて(その基礎となる資料を含む。ただし同委員会において配付された資料は除く)」であり、このような「○○の全て」という文言による網羅的な公開請求に対しては、実施機関として、該当する行政文書を特定して公開・非公開等の決定を行うことはできても、該当する行政文書がなかった事項を逐一特定して不存在決定を行うことは困難である。一方、請求者は、特定された行政文書以外に対象行政文書があるはずだと考える場合には、本件のように文書の特定の不備を主張して不服申立てを行うこともできるのであるから、実施機関においては、本件決定以外に不存在等の決定を行う必要はないものである。

(2)本件決定における本件行政文書の部分公開についての判断

ア 本件行政文書について

本件行政文書の内容は次のとおりである。

(ア)起案文書

「起案文書」は、実施機関が、教員に対する分限処分の意思決定を行うための稟議書であり、伺文と教育委員会会議の議題案(辞令案及び処分説明書案を含む。)と市町村教育委員会・教育振興センター所長への通知文案又は府立学校校長への通知文案から成っている。この行政文書の記載内容は、分限処分の対象となった教員の氏名・所属等、分限処分の種類、分限処分の対象となった事実等である。

(イ)内申

「内申」は、実施機関の調査・検討の結果、市立中学校教員が起こした問題行動が分限処分の対象となると判断した事案について、地教行法第38条第1項の規定により、市町村教育委員会が作成し、実施機関に提出したものである。実施機関は、この内申をまって、当該教員の処分を行う。この行政文書の記載内容は、分限処分の対象となった教員の氏名・所属・職名・性別・生年月日・住所、分限処分の種類、分限処分の対象となる事実、適用法令及び履歴事項等である。

(ウ)報告書

「報告書」は、市町村教育委員会又は府立学校校長が、実施機関からの指示又は依頼に応じて実施した、教員の問題行動に関する指導・調査の結果をまとめ、実施機関に提出したものである。この行政文書は、法令上作成が義務づけられているものではなく、形式や記載内容は統一されていないが、分限処分の対象となった教員の氏名・職名・生年月日、問題行動の発生年月日、問題行動の詳細な経過が記載された文書、分限処分の対象となった教員に対する指導の経過が記載された指導経過書、分限処分の対象となった教員に対する職務命令書、出勤命令書及び受診命令書、分限処分の対象となった教員からの休職願や診断書、人事記録カード、出勤簿等から構成されている。

イ 本件係争部分について

本件行政文書のうち、本件決定において非公開とされたのは、学校名、校長名、公印、問題行動の発生年月日、関係教員の氏名、生年月日、担任学級、教科、校務分掌、住所、家族構成、傷病名、医療機関名、履歴事項及び心境や主張等に関する記述、関係者の氏名、住所、電話番号及び心境や主張等に関する記述並びにこれらを特定し得る事項(関係教職員を特定し得る事案の経過に係る日付又は場所、学校が特定し得る所在地、電話番号、郵便物を発送した郵便局名及び教頭名、住所を特定し得るマンションの管理会社名、担当教科がわかる施設、物品及び単元の名称)が記録された部分と出勤簿、週休日等の指定表、休暇願、診断書及び人事記録カードである。

一方、異議申立人は、本件異議申立てにおいて、「個人の住所、電話番号、生年月日、個人を識別するための番号・記号・暗証番号、生育歴、学歴、及び本人の了解を得ていない個人(私人・公務執行中以外の公務員)の氏名については、公開を求めない。」としている。

以上のことから、本件において争われている部分(以下「本件係争部分」という。)を整理すると、

  • (ア)分限処分の対象となった教員に関する情報(当該教員の氏名、問題行動の発生年月日、担任学級、教科、校務分掌、家族構成、傷病名、医療機関名、履歴事項(学歴を除く)及び心境や主張等に関する記述並びにこれらを特定し得る情報(住所を特定し得るマンションの管理会社名、担当教科がわかる施設、物品及び単元の名称)と出勤簿、週休日等の指定表、休暇願、診断書及び人事記録カード)
  • (イ)関係者に関する情報(当該関係者の氏名(公務執行中の同僚教員に限る。)及び心境や主張等に関する記述が記録された部分)
  • (ウ)学校を特定し得る情報(学校名、校長、公印、所在地、電話番号、郵便物を発送した郵便局名及び教頭名)

に分類することができる。

ウ 本件係争部分の条例第9条第1号該当性について

実施機関は、本件係争部分に記録された情報について、条例第9条第1号に該当すると主張するので、この点について検討する。

条例は、その前文で、府の保有する情報は、公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号の規定である。同号は、

  • a 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
  • b 特定の個人が識別され得るもののうち、
  • c 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については、公開してはならないと定めている。

一方、条例は、第10条において、行政文書の部分公開を実施機関に義務づけており、実施機関は、公開請求に係る行政文書に条例第8条各項各号及び第9条各号に該当する情報が記録されている部分がある場合においても、その部分を容易に、かつ、公開請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは、その部分を除いて、当該行政文書を公開しなければならないと定めている。

これらを本件係争部分について検討したところ、以下のとおりである。

(ア)分限処分の対象となった教員に関する情報について

これらの情報は、分限処分の対象となった教員個人に関する情報であって、その氏名等により当該教員個人を識別し得る情報であるから、上記a及びbの要件に該当することは明らかである。

また、これらの情報は、いずれも公開することにより、特定個人が分限処分の対象となったという不名誉な経歴が明らかとなる情報、あるいは、特定個人の家族構成、病歴、休暇の取得、所得など私生活に関する事項や心境・主張等が明らかとなる情報であり、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められ、上記cの要件にも該当する。

なお、これらの情報は、当該教員の氏名を除いて公開したとしても、既に公開されている問題行動等の事実内容等の情報と結びつけることにより、同僚、担当する生徒及びその保護者など一定の関係者には、当該教員を識別し得るものであり、当該既に公開されている情報がこれら関係者においても必ずしも知られていないものであることから、部分公開することはできないと認められる。

(イ)関係者に関する情報について

これらの情報は、分限処分の対象となった教員の親族、同僚、担当する生徒及びその保護者など関係者が、当該教職員に関して述べた心情や主張等であり、そこに記載されている氏名や文書題名等により、少なくとも当該分限処分の対象となった教員等一定の関係者には、個人を特定し得る情報であると認められ、上記a及びbの要件に該当する。

また、これらの情報は、関係機関が分限処分の対象となった教職員の問題行動に関して調査を行う過程で、関係者から任意に聴取したものであり、事案の性質上、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められ、上記cの要件にも該当する。

なお、これらの情報は、当該関係者の氏名を除いて公開したとしても、既に公開されている問題行動の事実内容等の情報と結びつけることにより、分限処分の対象となった教員など一定の関係者には、当該関係者を識別し得るものであり、当該既に公開されている情報がこれらの者においても必ずしも知られていないものであることから、部分公開することはできないと認められる。

(ウ)学校を特定し得る情報について

これらの情報は、公開することにより、分限処分の対象となった教員が在籍した学校を容易に特定することができる情報である。このような学校を特定し得る情報を公開すると、一般に公開されている当該学校の職員名簿等の情報と結びつけることにより、分限処分の対象となった教員や関係者が識別されるおそれがあり、既に公開されている部分に記録されている分限処分の内容や問題行動の事実に関する情報とあいまって、特定の個人が分限処分の対象となったという不名誉な経歴等一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められる情報を明らかにする結果となる。

したがって、これらの学校を特定し得る情報は、上記a、b及びcの要件のいずれにも該当するとともに、その一部でも公開すると学校を特定する結果となることから、部分公開することもできないと認められる。

以上のとおりであるから、本件係争部分に記録されている情報については、いずれも、条例第9条第1号に該当し、公開してはならない情報であると認められる。

エ 異議申立人の主張について
(ア)個人を特定し得る範囲について

異議申立人は、「特にその個人に極めて近い環境にいる個人(同じクラス、同じ職場にいる人)にとっては、すでにある一定の情報を保有している場合が多」く、「一般府民が専門的な調査をしなければ入手できないような情報も容易に入手できる可能性がある」。「このような状況を想定して『特定の個人が識別され得る情報』の範囲を判断すれば、その公開の範囲は際限なく狭められる」。「一般府民が学校名(所属名)等の情報から特定の個人を識別するためには、専門的な調査をしなければほぼ不可能である」と主張する。

しかしながら、条例第9条第1号のもとで非公開となる情報については、「特定の個人が識別され得る情報」であって、さらに「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」ものであることを要する。この「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」ものの中には、情報の種類や性質によって、たとえ一般人によっては特定の個人を識別することができないとしても、当該特定の個人と一定の関係にある関係者によっては特定の個人を識別するおそれがあり、そのような一定の関係者によって特定の個人が識別され得る場合にも、他人に知られたくないと望むことが社会通念上正当であると認められるものがあり得る。そのような情報の場合、「特定の個人が識別され得る」かどうかは、当該一定の関係者を基準として判断されることも許されると解されるのである。

これを本件についてみると、本件係争部分には、教員個人の勤務実績がよくない、教員としての適格性を欠いているといった分限処分の要件に係る具体的な情報が記載されているが、このような情報は、個人の心身の状況に関する情報であって、個人のプライバシーに関する情報の中でもとりわけ機微にわたるものであり、たとえ一般人によっては当該個人を識別することができないとしても、当該個人と一定の関係にある関係者によって当該個人を識別され得る場合にも他人に知られたくないと望むことが社会通念上正当であると認められる情報である。

したがって、本件係争部分に記録されている情報が「特定の個人が識別され得る」ものであるかどうかについては、分限処分の対象となった職員と一定の関係にある者を基準として判断すべきであり、この点についての異議申立人の主張は採用できない。

(イ)学校名の公開について

異議申立人は、「事故・事件の再発を防止する観点」から「学校はネガティブイメージを隠蔽するのではなく、むしろ積極的に公開していくことで、生徒・保護者・学校が協力して、その改善にあたっていくべきであ」り、「学校名が公開され、このような環境が整うことにより、管理職・現場教員・地域住民が緊張感を持ち、今後同種同様の問題に対しての抑止力も期待できる」として、学校名を公開することの意義を強調している。

しかしながら、既に述べたとおり、学校名を公開すると、特定の個人が識別され得ることとなり、個人のプライバシー情報を明らかにする結果となるから、条例第9条第1号に該当し、公開することができないのはやむを得ないものである。

なお、異議申立人が引用する学校別の中退者数等の公開を巡る当審査会の答申事例は、学校名を公開したとしても、関係者個人のプライバシー情報を公開することとならない事例であり、本件とは明らかに事情が異なる。また、他の地方公共団体の事例についても、それぞれ本件とは異なる種類の文書について、異なる条例と事情の下に学校名が公開されているのであり、これらの事情があることをもって直ちに、本件においても学校名を公開すべきであるということにはならないものである。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、実施機関が行った本件部分公開決定は妥当である。

よって、「第一 審査会の結論」のとおり、答申するものである。

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