印刷

更新日:2013年3月22日

ページID:31156

ここから本文です。

見方を変える ―わたしのものさし あなたのものさし―

「社会モデル」の視点で考える差別

権利を侵害している「社会のバリア」について考えます

ねらい

平成28(2016)年4月から障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行され、障がいを理由とする差別的取扱いの禁止と合理的配慮(必要な変更・調整)の提供が求められるようになりました。
日常生活において、障がいのある人が排除されたり権利を制限されたりする背景には、「社会のバリア」(法律上では「社会的障壁」)があります。
では、何が「社会のバリア」なのでしょうか?
このプログラムでは、具体的な場面を通して、なぜ権利侵害が起こっているのか、どうしたら現実にある「社会のバリア」と向き合っていけるのかを、「社会モデル」をキーワードに、他の参加者との対話を通して考え、学んでいきます。

キーワード

「社会モデル」 社会のバリア(社会的障壁) 対話 合理的配慮

準備物

  • シート1(1枚*参加者是認に見えるように拡大します)、シート2(参加者数)
  • コラム1・コラム2(参加者数)、ふりかえりシート(参加者数)
  • 模造紙(グループ数)、マーカー(グループに4から5本)、マグネット(グループ数×2から3個程度)
  • ホワイトボードと専用ペン・イレイザー(黒板でも構いません)

プログラムの流れ

  • (5分)1 はじめの説明・導入・・・・・・・・・・・・・・・ このプログラムのねらいの説明や、参加体験型学習への導入を行います。
  • (10分)2 どうやってここに来ましたか?・・・・・・・ 参加者同士が知り合い、その後の学習への参加を促進します。
  • (20分)3 この人はどうして電車に乗れない?・・・ 具体的な場面から、障がいを「社会モデル」の視点でとらえることを考えます。
  • (35分)4 あなたならどうする?・・・・・・・・・・・・・・ 障がいに関わって葛藤を含む場面から、差別的な状況に対してどう行動するかを考えます。
  • (20分)5 こう考えました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 各グループから考えたことを出し合って共有します。
  • (10分)6 ふりかえり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これまでの活動をふりかえり、社会モデルの基本的な考え方を再確認し、自分の行動の一歩を考えます。

プログラムの内容

時間

学習の進め方

アドバイス

スタート

1 はじめの説明・導入

(5分)

1)ねらいの説明

人のマークまず、私の自己紹介をします。

  • 短くファシリテーターの自己紹介をします。

平成28(2016)年4月に障害者差別解消法が施行され、障がいを理由とする差別的取り扱いの禁止と、合理的配慮(必要な変更や調整)の提供が求められるようになりました。
日常生活においては、障がいのある人が排除されたり権利を制限されたりしていることがあります。
これまで、障がいのある人に対しては「思いやり」をもって接し「手助けする」ことが大切だ、それこそが「人権を守る」ことだ、と思われてきたのではないでしょうか。
しかし、「障がい」についての考え方は以前と大きく変わってきています。障がいのある人の権利を守る動きの中で、障がいのある人をめぐるバリアの原因は社会の側にあるのではないかと考えられるようになりました。
今日は、具体的な場面を一緒に考えることで、現実にある「社会のバリア」にどう向き合い、どう行動していくかを考えたいと思います。

  • プログラムのねらいを伝えます。

2)参加体験型学習の説明

人のマークそのために、今日は参加体験型学習で進めます。これは、皆さん同士で対話をしたり動いたりしながら、皆さんの中で学び合う学習です。

3)ルールの説明

人のマーク最初に、参加体験型学習を進めるためのルールを確認しておきたいと思います。

  • 参加…できる限り参加しましょう。ただし、参加は強制ではありませんので、パスもありです。
  • 尊重…相手の話をよく聴きましょう。
  • 守秘…この講座で聞いた個人的な話はここだけにします。
  • 時間…時間も分け合いながら進めます。

会場設営の例

  • 会場設営:4から5人のグループ
  • テーブルを2台合わせ、周囲にイスを置いてグループを作ります。
  • あまり時間をかけず簡単に説明します。
5分経過

2 どうやってここに来ましたか?

(10分)

1)説明
人のマーク今から、簡単な交流をします。
今日はどうやってここに来ましたか? 電車、バス、自転車、徒歩など、いろいろだと思います。
今から、他の参加者の方たちと、ここまでの交通手段を聞き合ってください。
まず、どなたかとペアになって、じゃんけんをしてください。勝った方が「今日はどうやってここに来ましたか?」と聞きます。聞かれた方は「バスで来ました」など、交通手段を答えます。次に、聞いた方が自分の交通手段を伝えます。同じだったら、笑顔で顔を見合わせましょう。
ペアを変えて5人と聞き合ったら、自分の席に座ってください。

2)交流の実施

人のマークそれではペアになってください。

  • 全員がペアになったことを確認します。

それではじゃんけんをして、聞き合ってください。ペアを変えて5分程度で5人の方と聞き合ってください。

  • じゃんけんをして、会場までの交通手段を聞き合います。

はい、5分たちました。

3)感想の共有
人のマークどんなことを感じましたか? 1から2人に感想をお聞きし、みんなで感想の共有をしたいと思います。

  • 参加者に感想を聞きます。

予想される答え
「意外と電車で来てる人が多かった」
「けっこう遠くから来てる人がいてびっくりした」など

  • ペアになるのをとまどっている人がいる場合、「交替していくのでまずは近くの人とペアになりましょう」などと声をかけてください。
  • 途中から、座る人が出てきます。全員が座ったら、5分たっていなくても終了します。
  • 聞き合う中で、駅名など本来の質問の答えでないことが話されることも予想されますが、それを止める必要はありません(5分程度で5人と交流するという枠をはめているので、長話にはならないと思われます)。
  • 参加者のほとんどが同じ交通手段となるような会場で実施する場合などは、「好きな乗り物は何ですか?」などに変更することもできます。
15分経過

3 この人はどうして電車に乗れない?

(20分)

1)どうして電車に乗れないの?(3分)
人のマークみなさんにここまでの交通手段を聞き合っていただきましたが、その交通手段から、障がいの「社会モデル」について考えていきたいと思います。

  • 社会モデル」と板書します。

この絵には車いす利用者と電車が描かれています。この人は、このままでは電車に乗ることができません。では、「この人はどうして電車に乗れないのか」を考えてみてください。
時間は1分程度です。

  • シート1を拡大して掲示します。

2)発表(7分)
人のマーク電車に乗れない理由について、共有の時間をとりたいと思います。
2から3人から発表してもらいます。挙手でお願いします。
他にありますか…。

  • 発表の例
    • 足が不自由だから
    • 自分で歩くことができないから
    • 助けてくれる人がいないから
    • 階段があるから
    • エレベーターがないから

3)「社会モデル」の説明(10分)
人のマーク車いす利用者が電車に乗れない理由を発表していただきましたが、2つの視点があることに気付きます。
まず、「足が不自由だから」「自分で歩くことができないから」と、本人に理由があるとする視点があります。これだと、本人ががんばってリハビリすべきだということになります。このような視点を障がいの「医学モデル」といいます。

  • 「医学モデル」と板書します。

もう一つの視点は、「そもそも駅に階段しかないことが問題ではないか」と考えるものです。車いす利用者の他にも移動が困難な状態の人がいるのに、歩いて階段を上れる人しか使えない駅であることが問題だ、社会環境が整備されていないことに原因がある、という視点です。いわば「社会のバリア」が問題だということです。このような視点を障がいの「社会モデル」と言います。
障がい者をめぐる現実を考える時に、この「医学モデル」と「社会モデル」という視点はとても重要です。

もう一つ例を挙げます。
洋画には字幕がありますが、日本の映画には字幕がないのが普通ですね。聴覚障がいのある人は長年「字幕を付けてほしい」と運動してきましたが、まだ一部の映画館・一部の時間帯でしか字幕付きはありません。聴覚障がいのある人が日本の映画を楽しめないのは、「耳が聞こえないからだ」と考えるのが「医学モデル」、「字幕が用意されていないからだ」と考えるのが「社会モデル」というわけです。

かつては「医学モデル」の考え方が当たり前でした。しかし、世界で障がいのある人の権利を守る動きが広がる中で「社会モデル」の考え方が出てきて、人権問題として「障がい」をとらえる際の基本になりました。こうした中、障害者権利条約ができ、日本でもこの条約を締結するため障害者差別解消法ができました。障害者権利条約も障害者差別解消法も「社会モデル」の考え方に基づいたものです。

  • 「社会モデル」と大きく書いた紙を事前に準備し、ホワイトボードに貼ることもできます。
  • 場の雰囲気が硬い時には「思い付きでも構いません」など発言がしやすいような言葉がけをすることもできます。また、なかなか発表者が出てこない場合、まず一人を指名して発表してもらい、「別の意見の方はいますか」と数人に聞いていくなどの方法もあります。
  • 発表の内容が同じようなものであれば、左記の発表の例などを紹介することもできます。
  • 「医学モデル」と大きく書いた紙を事前に準備し、ホワイトボードに貼ることもできます。
35分経過 4 あなたならどうする?
(35分)
1)移動と説明(5分)
人のマーク1 移動(グループを作る)
 では、次の活動はグループで行いますので、近くの人と4から5人のグループになって座ってください。
  • 4から5人のグループで着席できたら、シート2を1人1枚、各グループに模造紙とマーカーを配付します。

2 説明
シート2には、障がいに関して具体的な場面が載っています。ケース1はマンションの住人(Aさん)からの相談、ケース2は聴覚障がいのある会社員(Cさん)からの相談、ケース3は発達障がいのある子どもの保護者(Dさん)からの相談です。
3つのケースを読んで、書かれている話し合いのポイントに沿ってグループで話し合ってください。
また、コラム1とコラム2をお配りしますので、必要に応じて話し合いの参考にしてください。

  • コラム1・2をそれぞれ1人1枚配付します。

人のマーク出された意見を模造紙に書いてください。意見を一致させる必要はありません。分かれた意見も書いていってください。
後で各グループから発表していただきます。
2)話し合いと模造紙への記入(30分)
人のマークそれでは、話し合った内容を模造紙に書き込んでください。それぞれが自由に書き込んでください。
模造紙は後で全体で共有します。

  • 各グループで話し合いと模造紙への記入をしてもらいます。
  • ファシリテーターは、各グループを回りながら話し合いの様子をつかみ、補足やアドバイスを行っていきます。
  • 残り5分で合図をします。
  • グループを作る時は、知り合い同士などで固まらないようにします。
  • 余裕があれば、話し合いのポイントを板書しましょう。
  • ケースごとの補足や留意点については、ファシリテーター用資料を参考にしてください。事前にファシリテーター自身が各ケースについて考える際に読んだり、グループでの話し合いの状況を見ながら適宜紹介するなどしてください。
70分経過

5 こう考えました
(20分)
1)説明(1分)
人のマークでは、各グループで話し合ったことを全体で共有していきたいと思います。
みなさん、自由に他のグループの模造紙を見て回ってください。時間は4分です。
2)他のグループの模造紙を見る(4分)

  • 他のグループの模造紙を見て回ります。
3)感想を出し合う(15分)
それでは、自分の席に戻ってください。
他のグループの模造紙を見て、同じだったこと、違ったこと、自分のグループにはなかった視点など、いろいろ気付いたことがあったと思います。
他のグループの模造紙を見た感想なども含め、各グループの話し合いをさらに深めてください。
  • 各グループで話し合ってもらいます。

車いす利用者や杖を使用される方など、移動への配慮が必要な方がいる場合は、必要に応じ机を動かしましょう。

90分経過

6 ふりかえり
(10分)
1)まとめ
人のマークこれまでの活動をふりかえり、障がいのある人にとってどんなことがバリアになるのかを考えてみたいと思います。
障がいのある人を「困っているから助けてあげないといけない」と思い込んだり、逆に、「何をするか分からない」として警戒するのではなく、一対一で向き合って対話を試みてほしいです。
また、バリアの原因は障がいのある人にではなく社会環境の中にあるという見方をしてみることです。そうやって初めて気付くことが必ずあります。そのとき、自分自身のものの見方そのものを見直してみるという姿勢があれば、対話がよりスムーズになると思います。

今回は、障がい者をとりまく「社会のバリア」を通じて学習しましたが、社会には他にも様々なバリアがあることに思いをはせていただければと思います。
どんな人権問題にも共通することですが、自分の見方だけでなく、当事者の視点に立ってみることも必要です。当事者の社会への働きかけにはどんな願いや思いがあるのかなどにも思いをはせ、自分の見方や考え方を今一度ふりかえってみたいものです。

2)ふりかえり
人のマークふりかえりシートを配付します。
活動をふりかえって、お書きください。時間は3分程度ですので、書ける範囲でお書きください。
後で回収させていただきます。

  • ふりかえりシートに記入してもらいます。
  • ふりかえりシートを回収します。
  • ファシリテーターの体験なども加えて話すこともできます。
  • 例えば、視覚障がい(弱視)のある人は、街で知らない人から(おそらく善意で)勝手に白杖を引っ張られると困惑してしまうそうです。また、スマートフォンを文字拡大して見ていたら、「障がい者のふりをしている」と誤解されることもあるそうです。思込みで接するのでなく、相手の意思を確認する姿勢が大事です。(この場合、「弱視」への無理解がバリアになっています)

前へ 次へ≫ 目次へ

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?