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更新日:2024年5月22日

ページID:31155

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見方を変える ―わたしのものさし あなたのものさし―

「いやだな」からはじめる

権利への気付きから自尊感情を高めます

ねらい

「自分はかけがえのない大事な存在だ」と思う気持ちのことを「自尊感情」といいます。自尊感情の高い人は、自分と同じように他の人も大切にすることができます。そこで、人権についての理解を深め、身の回りで起こる人権問題に対し行動を起こすためには、自尊感情を高めることが必要です。
そのためには、自分と向き合うことも大切ですが、自尊感情は他者との関係の中でより育まれ、また、自分が持つ権利への気付きや権利の主体であることへの気付きによってもより促されていきます。
このプログラムでは、日常生活の中で起こるちょっとした「いやだな」というエピソードを通じて、まず「自分を大切にしていい」という権利への気付きを促します。また、私たちは、しんどさや傷付きを感じる時、自分を責めがちですが、状況変化の鍵を握っているのは他者やコミュニティの側でもあることに気付き、具体的な行動につなげる力を引き出すことをめざします。

キーワード

自尊感情 権利意識

準備物

シート(参加者数)、A4白紙(参加者数)、模造紙(グループ数)、マーカー(グループに4~5本)、付せん(8cm角・4色・各色20枚をグループ数)*、ホワイトボードと専用ペン・イレイザー(黒板でも構いません)
*付せんは、色の識別が困難な参加者もいることも想定して組み合わせを考えます(同系色の濃淡の組み合わせは避けるなど)。

プログラムの流れ

  • (5分)1 はじめの説明・導入・・・・・・・・・・・・・・・ このプログラムのねらいの説明や、参加体験型学習への導入を行います。(15分)2 参加者の自己紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参加者同士が知り合い、その後の学習を促進します。
  • (15分)3 エピソードから考える・・・・・・・・・・・・・・ 日常の中にある、自分の意見がなかなか言えずにもやもやしている状況から、自分の意見をきちんと伝えるために必要なことを考えます。
  • (15分)4 必要なものって何?・・・・・・・・・・・・・・ 考えを行動に移す時、行動のエネルギーになるもの・必要なものを整理します。
  • (15分)5 その一歩は?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ なぜ行動に移すことができたか、行動した時の状況などを考えます。
  • (22分)6 得られるもの・失うもの・・・・・・・・・・・・・ 行動の結果を、得られるもの・失うものに整理します。
  • (3分)7 ふりかえり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これまでの活動をふりかえり、自分が一歩を踏み出すためにできることを考えます。

プログラムの内容

時間

学習の進め方

アドバイス
スタート

1 はじめの説明・導入
(5分)
1)ねらいの説明
人のマークまず、私の自己紹介をします。

  • 短くファシリテーターの自己紹介をします。
人のマーク人権問題を考える際には、「自分を大切にする」という自尊感情が大切であると言われます。自分を大切にすることができる人は、他の人のことも大切にすることができるからです。
今日は、日常の中で起こるちょっとした「いやだな」というエピソードから、「自分を大切にしていい」という権利について考えます。そして、それを行動に移していくためにどうすればいいのかを考えていきたいと思います。
  • プログラムのねらいを伝えます。

2)参加体験型学習の説明
人のマークそのために、今日は参加体験型学習で進めます。これは、皆さん同士で対話をしたり動いたりしながら、皆さんの中で学び合う学習です。

3)ルールの説明
人のマーク最初に、参加体験型学習を進めるためのルールを確認しておきたいと思います。

  • 参加…できる限り参加しましょう。ただし、参加は強制ではありませんので、パスもありです。
  • 尊重…相手の話をよく聴きましょう。
  • 守秘…この講座で聞いた個人的な話はここだけにします。
  • 時間…時間も分け合いながら進めます。

人のマーク今日は、具体的なエピソードから自尊感情や権利について考えます。
グループの中に、エピソードと似た経験をした人や見聞きした人がいるかもしれないことを心に留めながら、話をしてください。

会場設営の例

  • 会場設営:4~5人のグループ
  • テーブルを2台合わせ、周囲にイスを置いてグループを作ります。
  • あまり時間をかけず簡単に説明します。
  • 「参加者にエピソードと似た経験をした人がいるかもしれない」ということに思いをはせることなく話をすると、エピソードを矮小化したり、主張しない参加者を責めるような発言が出ることも考えられます。
  • お互いを傷付けず、安心して話し合いができる場になるように努めます。
5分経過

2 参加者の自己紹介
(15分)
1)説明とシートの記入(5分)

  • A4白紙を1人1枚配付します。

人のマーク同じグループの人はどんな人なのか、お互いに自己紹介していただきます。
今から4つの質問をしますので、A4の白紙に書いてください。じっくり考えずに、思い付きやひらめきで書いてください。

  • 読み上げながら、1~4を板書します。
    1. 名前(呼ばれたい名前・ニックネーム可)
    2. 好きな食べ物
    3. 日頃楽しんでいること(趣味など)
    4. ストレス解消法

人のマーク記入時間を今から1分とります。
迷ったり書けなかった項目は空けておいてください。自己紹介をしていると思い付くこともあります。
では、今から1分とります。

2)自己紹介(10分)
人のマークでは、グループでそれぞれ自己紹介してください。
1人が話し、残りのメンバーはしっかりと聴きます。質問したくなるかもしれませんが、質問はなしでお願いします。1人2分程度でお願いします。

  • グループで自己紹介をしてもらいます。
思い付き、ひらめきで書くように勧めます。読みながら、「ちなみに私の趣味は寝ることです」などど、ファシリテーターの自己紹介を兼ねて、場を和ませることもできます。
20分経過

3 エピソードから考える

(15分)

1)説明(5分)
人のマーク今からシートにある4つのエピソードを読みます。エピソードに登場するAさん・Bさん・Cさん・Dさんが「いやだな」と思っている状況を想像してください。正しい答えがあるわけではありません。
Aさん・Bさん・Cさん・Dさんそれぞれの立場になって想像してください。そして、状況を変えるための一歩を踏み出す時、必要だと思うものをたくさん挙げてください。

  • 各グループに付せんのセット、マーカー、シート(1人1枚)を配付します。

エピソードをゆっくり読み、必要に応じて簡単に1~4の状況を補足説明します。)

2)付せんに書く(10分)
人のマーク1のエピソードから、Aさんが状況を変える時に必要なものを付せんに書き出していきます。グループで話をしながらメンバーそれぞれで考えたことを書いていってください。ポイントは質より量です。できるだけ多く考えてください。
同じように、BさんからDさんまで、状況を変える時に必要なものを付せんに書き出してください。
1つのエピソードについて2分で書いてください。次のエピソードに移る時は、付せんの色を変えてください。
2分経過したらお知らせします。

まず、Aさんに必要なものから、グループで次々挙げて付せんに書いていってください。

  • 1つのエピソードの記入時間(2分)を計り、2分経過したら知らせます。
  • エピソードはゆっくり読み、簡単に状況を言葉で説明します。
  • 必要なものが出にくい場合、「Aさんはどうしたいと思っているか?」「Aさんが自分の気持ちを表現する時、助けになるものは?」など、具体的に説明を加えていきます。状況を変える具体例が出にくい場合は、「仲のいい友人」「最初の一声」など、ファシリテーターから例を示します。
  • 時間が短い場合は、エピソードを絞っても構いません。
  • A~Dさんの付せんを何色にするかは、具体的に指定します。
    例 「では、Aさんに必要なものを青色の付せんに書いてください。」

【育児休業取得に関する参考データ】
平成25(2013)年10月1日から平成26(2014)年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性又は配偶者が出産した男性のうち、平成27(2015) 年10月1日までに育児休業を開始した者の割合は、女性81.5%、男性2.65%です。
また、育児休業を取得している男性の休業期間は、5日未満が56.9%と、半数を占めています。
出典:厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査(事業所調査)」

35分経過

4 必要なものって何?

(15分)

1)似たものを集める(8分)

  • 各グループに模造紙を配付します。

人のマーク今から、書き出した付せんを内容で分類します。
模造紙の左半分に、Aさん・Bさん・Cさん・Dさんそれぞれの「必要なもの」を内容の似たもの別に集めます。

2)集めたものに名前を付ける(5分)
人のマーク次に、分類した付せんのまとまりにそれぞれ名前を付けます。
例えば次のとおりですが、その他は皆さんでいろいろ考えてください。

  • まとまりの名前の例を紹介し、板書します。
    • 「権利意識」
    • 「本人のあり方」
    • 「人間関係のあり方」
    • 「コミュニティのあり方」

3)ふりかえり(2分)
人のマーク4つのエピソードすべてに共通していた「必要なもの」はどんなことですか。挙手をお願いします。

  • 挙手のあったグループに発表してもらいます。
  •  参加者がグループで活動している時、ファシリテーターはグループの様子を見て回ります。
  • 質問に答えたり、話し合いが進みにくいようであればヒントになるような言葉がけをします。
  • 注意が必要な参加者の発言例とその対応策をファシリテーター用資料に掲載しています。

模造紙の例

  • 参加者から名前が出るようなら、板書は最後に参考程度にとどめます。

模造紙の例

50分経過

5 その一歩は?

(15分)

1)説明(2分)
人のマークでは、みなさんにエピソードの続きを考えてもらいたいと思います。
AさんからDさんは「いやだな」という状況を変えるために一歩を踏み出しました。それはどんな一歩でしょうか。具体的な状況などをグループで考えてください。
正解はありません。想像して「お話」を作ってください。

2)どんな一歩?(13分)
人のマーク模造紙の左側に貼られた「必要なもの」の内容を参考に、模造紙の右側にAさんからDさんの一歩の言葉又は行動を書いてください。物語やセリフ、状況の具体的な説明などをマーカーで書いてください。

  • 具体的な状況を、エピソードを膨らませて想像し創造することで、日常場面で行動を起こす時の潜在的な力になります。できるだけ具体的な「お話」になるように、ファシリテーターは、各グループや全体に対して「Aさんはどんな言葉や行動で自分の気持ちを表現したでしょうか」などの言葉がけをします。

模造紙の例

  • 時間がない場合は、グループで、エピソードを1 ~2つ選んで考えてもらいます。
65分経過

6 得られるもの・失うもの

(22分)

1)説明(2分)
人のマークAさんからDさんが一歩を踏み出し、こうありたいと思う状況が実現した時、それによって「得られるかもしれないもの」と「失うかもしれないもの」があります。
その両方を考えていきます。

2)「得られるもの」と「失うもの」を考える(5分)
人のマーク「得られるかもしれないもの」と「失うかもしれないもの」をグループで出し合います。「得られるかもしれないもの」と「失うかもしれないもの」を模造紙のAさん・Bさん・Cさん・Dさんそれぞれの「お話」の下に書いてください。

3)話し合う(5分)
人のマークここまでの活動で感じたことを、模造紙を見ながらふりかえります。グループで感想を話し合ってください。

4)発表(10分)
人のマーク模造紙を見せながら各グループに発表してもらいます。
時間は各グループ2分程度です。

  • 各グループから話し合った内容のまとめ、その一歩の報告をしてもらいます。
  • 各グループの発表時間を計り、終わりの合図をします。
  • 「失うかもしれないもの」への不安が「いやだな」と思う状況を改善しようとする行動を妨げることが多いので、参加者が「得られるかもしれないもの」を具体的に考え、その大きさに気付いていくことがポイントです。
  • グループの場所によっては、全員に模造紙が見えない場合もあるので、全員に模造紙が見えやすい場所で発表してもらいましょう。
87分経過

7 ふりかえり

(3分)

1)参加者の感想
人のマーク全体を通して感じたことなど、この学習の感想を挙手でお願いします。

  • ふりかえりシートを配付します。
  • 何人かに発表してもらいます。

2)ファシリテーターのまとめ
人のマーク例)
これまでの活動で、自分が一歩を踏み出す時にできることや、人が一歩を踏み出す時に私たちにできる関わり方を考えました。
自分を大切にするために行動を変えることで、より良い関係や社会を築くことにつながる可能性にも気付かされたように感じました。

3)ふりかえり
人のマーク短くてもいいので、配付したふりかえりシートをお書きください。後で回収させていただきます。

  • ふりかえりシートに記入してもらいます。
  • ふりかえりシートを回収します。
  • 数名から感想を聞きますが、残り時間により調整します。
  • まとめは、その日の参加者の印象的な発言や、ファシリテーターの体験などを交えて話します。

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