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第1 編道路構造物設計基準(6)
- 1-15 重力式擁壁(3m以下)
- 1-15-1 集録範囲
- 1-15-2 設計条件
- 1-15-3 標準設計の使用について
- 1-15-4 地盤の許容支持力の判定基準(参考)
- 1-16 嵩上擁壁
- 1-16-1 設計方針
- 1-16-2 安定条件
- 1-16-3 単位重量及び許容応力度
- 1-16-4 構造図および既設擁壁安全度
- 1-17 ブロック積擁壁
- 1-17-1 適用、集録範囲
- 1-17-2 使用上の注意事項
- 1-18 他の道路構造物標準構造図の適用
1-15 重力式擁壁(3m以下)
1-15-1 集録範囲
本標準設計の集録範囲は、下表に示す通りである。
1-15-2 設計条件
1.適用範囲と形状および集録高さ
- 車道部に適用する擁壁「RWタイプ」
- 歩道部に適用する擁壁「PWタイプ」
- 盛土形状は背面における地表面が水平な場合と盛土勾配1:1.5について考慮している。
なお、背面の高さ比(H0/H)を0.0(水平)、0.25、0.75、1.00について設計している。 - 断面設定高さ(H)は0.5mから3.0mまでの範囲で0.5m毎とした。
- 擁壁の頂部に遮音壁や車両用防護柵などを直接設ける場合は、道路土工:擁壁工指針を参照し、別途計算すること。
2.安定計算
- 土圧は試行くさび法による。
- 基礎地盤の条件
許容支持力度 |
滑動摩擦係数 |
---|---|
300(30) |
0.6 |
150(15) |
0.5 |
100(10) |
0.45 |
50(5) |
0.4 |
- 3.裏込め土の種類は砂質土とし内部摩擦角(Φ)は30°、単位重量(γs)は ()とする。
- 4.載荷重は、車道部(RW)でW=()、歩道部(PW)でW= ()の活荷重を考慮する。
- 5.安全計算
安全条件 |
許容値 |
---|---|
転倒に対して | e≦B/6(m) |
支持に対して | Q≦Qa() |
滑動に対して | Fs≧1.5 |
3.単位重量および許容応力度
種別 |
項目 |
適用値 |
---|---|---|
コンクリート | 単位重量 | |
設計基準強度 | ||
許容圧縮応力度 | ||
許容引張応力度 | ||
許容せん断応力度 | ||
許容附着応力度 | ||
鉄筋 |
許容引張応力度 |
資料
道路土工 擁壁工指針:日本道路協会、平成11年3月
1-15-3 標準設計の使用について
1.集録の方法と検索方法
- 集録の方法
標準断面図は、車道部で6枚と歩道部で6枚であり、それぞれの集録の集録高さごとに底面幅を数種類に分けて設計し、断面図も形状寸法ごとに示してある。
したがって重力式擁壁を利用する場合は、高さ、許容支持力、背面の盛土形状から該当する形状寸法を見出す必要がある。
形状寸法の選定上の注意事項は次の通りである。- (1)高さが変化する場合で連続施工する場合は背面の型枠のねじれなどを防ぐため現場における最大高さを基準に選定する。
- なお、伸縮目地を入れた個所での背面勾配の変化などはこの限りでない。
- (2)背面の盛土形状が変化する場合は、その盛土形状の範囲で利用できる形状寸法の最大のものを選定する。
- 検索方法
2.使用上の注意事項
- 本標準設計は、地盤許容支持力別に断面設定を行っているが、地盤許容支持力の指定は、次の点に留意して行うものとする。
- (1)基礎地盤の許容支持力()、摩擦係数μ=0.6の条件の適用は、現場基礎地盤の条件が良好でなおかつ土質調査などでその数値の確認を行った場合か、もしくは置換基礎、杭基礎などの設計により、条件を満足する必要がある。
- (2)基礎地盤の許容支持力Qa≦、、の条件の適用については、後記「地盤の許容支持力の判定基準」に示す値を目安にすることができる。
- 裏込め工、基礎工、排水工、防護柵を設ける場合の詳細図ならびに材料表は、別途作成する必要がある。
- 伸縮目地の間隔は10m以下と、厚み10mm以上の瀝青繊維質板とする。
- 前面にV型の切れ目を持つ鉛直施工目地の間隔は5m以下とする。
- コンクリートの水平打継目には、用心鉄筋としてD16mmを@50cm程度に配置すること。なお、これらの材料は別途計上する必要がある。
- 水抜パイプ(VPφ75)は程度に1箇所で路面から20cmの位置で数量を算出している。なお設置については、現場の状況に応じて、別途検討すること。
- 擁壁の根入れ深さは、原則として50cm以上確保するものとする。また、擁壁に接して、水床低下や洗堀のおそれのないコンクリート水路などを設ける場合の根入れ深さは原則として水路底より30cm以上確保するものとする。
1-15-4 地盤の許容支持力の判定基準(参考)
構造物の設計に必要な地盤の支持力は、現位置における土質調査の結果より判定すべきであるが、概略の地盤の判定は、下表に示す値を目安とすることができる。
標準貫入試験 |
砂の種類 | 現場判別法 | 長期許容 地耐力 |
---|---|---|---|
<4 | 非常にゆるい | 13mmφ鉄筋が手で容易に貫入できる。 | 0(0) |
4~10 | ゆるい | ショベルで掘削できる。 | 50(5) |
10~15 | 普通の | 13mmφ鉄筋を2.2kgのハンマーで容易に打ち込める。 | 100(10) |
15~30 | やや密な | 同上でやや打ち込みにくいもの。 | 200(20) |
30~50 | 密な | 同上で30cmくらいはいる。 | 300(30) |
50< | 非常に密な | 同上でも5~6cmしかはいらない掘削にツルハシを要し打ち込み時、金属音を発する。 | 300(30) |
標準貫入試験 |
砂の種類 | 現場判別法 | 長期許容 地耐力 |
---|---|---|---|
<2 | 非常に柔かい | にぎりこぶしが10cmくらい簡易に貫入する。 | 0~20(0~2) |
2~4 | 柔かい | 親指が10cmくらい簡易に貫入する。 | 20(2) |
4~8 | 普通の | 中くらいの力で親指が10cmくらい貫入する。 | 50(5) |
8~15 | 硬い | 親指でへこみ貫入に力がいる。 | 100(10) |
15~30 | 非常に硬い | すきで除去できる。 | 200(20) |
30< | 固結した | 除去するのにツルハシを要する。 | 200(20)< |
- 注)現場判別法は東京都交通局データによる。
- 許容地耐力は日本建築学会建築基礎構造設計基準による。
1-16 嵩上擁壁
1-16-1 設計方針
- 既設擁壁は天端幅20cm、高さ1.50m、擁壁背面勾配10.4と仮定した。
- 嵩上高さは、最高1.0mに限定した。
- 擁壁背面工の状態により下記の2通りを考慮した。
- 擁壁背面工が水平で群集荷重W=を載荷したとき。
- 擁壁背面工が勾配11.5盛土のとき。(H0/H=1.0)
- 嵩上構造の基本方針
図1-16-1については、Sectionで転倒安全率1.5以上なる高さhを限界とし、差し筋はあくまでせん断抵抗のみで引張りは生じないことを前提とした。
(a)TYPEで不可能なものを(b)TYPEとした。 - 既設擁壁安定条件
既設擁壁は現時点において、安定しているものと思われるが、嵩上をすれば既設擁壁の安全率はそれだけ低下する。したがって、安全率は下記の様に緩和する。- ( 転 倒 )安全率1.5以上あるいは、合力作用点がミドルサード内。
- ( 滑 動 )安全率の基本値は1.5以上とするがある程度は下げてよい。
- (地盤支持力)現地盤により検討する。
- 嵩上擁壁採用についての注意事項
嵩上擁壁は新設擁壁と異なり不安定な構造であるとともに、既設構造および嵩上構造も多種多様である。よって復旧の困難な箇所等重要なところにおいては採用すべきでなく、採用するにしても、調査・検討を十分する必要がある。
1-16-2 安定条件
- 土圧は試行くさび法による。
- 基礎地盤の条件
- 許容支持力度 Qa=
- 滑動摩擦係数 μ=0.6
- 裏込め土の種類は砂質土とし、内部摩擦角(φ)は30°
- 単位重量(γs)はとする。
1-16-3 単位重量および許容応力度
種別 | 項目 | 適用値 |
---|---|---|
コンクリート |
単位重量 | |
設計基準強度 | ||
許容圧縮応力度 | ||
許容引張応力度 | ||
許容せん断応力度 | ||
許容附着応力度 | ||
鉄筋 |
許容引張応力度 |
1-16-4 構造図および既設擁壁安全度
- 擁壁背面が水平で歩道の場合
- 擁壁背面が勾配1:1.5の盛土の場合
図 1-16-2 嵩上擁壁構造図(TYPE1~4) - 既設擁壁安全度
注) ( )内は、既設擁壁根入れが0.5mとし全面抵抗土圧(抵抗土圧係数KP=3.0…)を考えた場合である。
1-17 ブロック積擁壁
建設省制度の標準設計を利用する。
1-17-1 適用、集録範囲
- 構造は以下の現地条件によって使用する。
- 擁壁前面に水位を考慮する場合、又は擁壁を河川護岸として用いる場合であって背面の土が砂質土等吸い出され易いものの場合に使用する。
- 擁壁前面に水位を考慮しない場合で、かつ擁壁を河川以外として用いる場合であって、背面の土の種類が砂質土の場合に使用する。
- 擁壁高さ(H)が1.0mから5.0mまでの範囲で0.5m毎とした。
擁壁高さ(H)が5.0mから7.0mについては、道路土工-擁壁工指針(平成11年3月)日本道路協会に拠る。 - 法勾配は直高より決めるものとし、下表を標準とする。
最大直高 |
法勾配 |
|
---|---|---|
盛土部 |
切土部 |
|
1.5 |
10.3 | 10.3 |
3 |
10.4 | 10.3 |
5 |
10.5 | 10.4 |
- 4.裏込め土の種類
裏込め土の種類は、一般に礫質土は良い土、砂質土は普通の土、粘性土は良くない土に分類されるが、対象とする裏込め土は普通の土(砂質土)を基本とした。
1-17-2 使用上の注意事項
1.裏込め材
1 裏込め材の材種と規格
材種 | 規格 | 摘要 |
---|---|---|
再生クラッシャラン | 粒径4cm以下 | RC-40 |
2 裏込め材の厚さ
直高 | 0~1.5 | 1.5~3.0 | 3.0~5.0 | |
---|---|---|---|---|
厚さ(cm) | 上部(C) | 30 (20) | 30 (20) | 30 (20) |
下部(d) | 45 (30) | 60 (45) | 80 (60) |
注)
- ()内数値は裏込め土が良い土(礫質土)の場合を示す。
- 裏込め材の厚さは、現場の裏込め土の地質に応じて決定するものとする。
- 集録図面の寸法表は、盛土部の場合であり、切土部の場合で比較的よく締った地山では裏込め材の厚さを上下等厚として良い。ただし、裏込め材の厚さは、30~40cmとする。また地山がよく締っていない場合、および擁壁背面に埋戻しを多く必要とするような場合は、盛土部に準ずる。
3 裏込め材の下端の位置
裏込め材の下端の位置は、基礎周辺部に背面土からの水の浸透によって悪影響が生じないように上図に示す通り擁壁前面の地盤線程度まで設置することを原則とする。(a)
また、L型側溝の付く場合は側溝底面の位置とした(b)。河川護岸又は前面に水位がある場合は、旧標準設計と同様に基礎底面の位置とした(c)。
- (a)の場合、基礎部への水の集中を防ぐ対策として下図に示すものとする。
- ((b)の場合でも、同様の対策を行うものとする。)
2.裏込めコンクリート
擁壁背面には裏込めコンクリートを設ける。裏込めコンクリート厚さは表1-17-4の値を参考とし、等厚とすることを原則とする。
また、コンクリートの設計基準強度は程度とする。
直高 | ~1.5 | 1.5~3.0 | 3.0~5.0 |
---|---|---|---|
厚さ(b) |
5 | 10 | 15 |
3.基礎、その他
- 基礎は上部荷重に十分耐えられるものとし、その深さは、根石が土中に没する程度以上に入れるものとする。
- 基礎の種類は、支持地盤の状況に応じて次のものから選定するものとする。
- (1)コンクリート基礎
- (2)基礎杭を有するコンクリート基礎
この場合、地盤の状況に応じて、基礎杭の長さ、本数を検討するものとする。
- 基礎の根入れ深さは、積みブロック1個以上が土中に没する程度とする。
- 目地
鉛直方向目地間隔は10m以下を標準とする。 - 水抜き
ブロック積の背面に浸透する水による水圧の増大が起こらないように水抜きパイプをに1箇所設けVP-50mmを使用する。又裏込材料の流出防止を考慮し、流出防止材を設置すること。
1-18 他の道路構造物標準構造図の適用
道路構造物構造図は本第2編による他、次の標準図集を参考にするものとする。
- 土木構造物標準設計 第1巻(側こう類・暗きょ類):建設省制定、平成12年9月
- 土木構造物標準設計 第2巻(擁壁類):建設省制定、平成12年9月
- 近畿地方建設局:土木工事標準図集
資料
- 土木構造物標準設計 第1巻(側こう類・暗きょ類):建設省制定、平成12年9月
- 土木構造物標準設計 第2巻(擁壁類):建設省制定、平成12年9月
- 道路土工擁壁工指針:日本道路協会、平成11年3月
- 近畿地方建設局:土木工事標準図集